6月度の観察記録
カテゴリ : 2012年
2012年6月度の観察記録です。
Untitled Page

初夏の白雲の浮かぶ晴れで,陽差しは強かったですが,そよ風の吹く木陰は非常に快適でした.東山公園周辺の道路は,家族連れの車で混雑していました.街路のキンシバイ(金糸梅,オトギリソウ科)の黄色い花は盛りをすぎ,しぼんだ花が多くついていました.不思議なことに昆虫は全くついていませんでした.新池のスイレン(睡蓮,スイレン科)は白い花を水面いっぱいに咲かせていました.アカバナユウゲショウ(赤花夕化粧,アカバナ科)は,一時の勢いはありませんが,歩道脇で小さな花を咲かせていました.新池の近くではムクドリ(椋鳥,ムクドリ科)だけが鳴いていました.東星ふれあい広場横の公園のアジサイ(紫陽花,アジサ科)花壇では,小ぶりの花が咲いていました.里山の家のクスノキ(楠または樟,クスノキ科)周辺に40数羽のムクドリがいました.クローバー(Clover,マメ科,別名:白詰草)の実を食べているようでした.参加者は,子供11名と大人42名と大勢でした.

アジサイ花壇

種々の催しの紹介から始まり,その後,東京で捕獲したアカボシゴマダラ(赤星胡麻斑,タテハチョウ科)を見せながら,中国原産の外来種で,見つけたら駆除してほしいという話がありました.在来のゴマダラチョウ(胡麻斑蝶,タテハチョウ科)の幼虫が木をおりて枯葉の中で越冬するのと違って,アカボシゴマダラは木の上で越冬できるので広がっているということでした.
ナス(茄子,ナス科)についていた幼虫から育てたメンガタスズメ(面形天蛾,スズメガ科)を観察しました.大きな幼虫は,葉をよく食べたそうです.持ってきた人が,翅にお面の模様があるという説明をしようとして,止められていました.まず観察して,特徴に気づくのが大事ということでした.害虫という説明に,誰にとって害虫かという話題がでました.ナスは人間の食草でもあり,メンガタスズメは仲間ではということでした.関連して,エスキモーの神話である「ナヌークの贈り物」と宮沢賢治の「よだかの星」の話がでました.あらゆる生命は,つながっているということです.宮沢賢治の「よだかの星」は,自らの存在への嫌悪感を語っており深刻ですが,高校の国語の授業で,宮沢賢治は恥ずかしそうに食事をしたという話を聞いたことを思い出しました.

アカボシゴマダラ メンガタスズメ

ユスラウメ(桜桃,バラ科)の実のついた枝と実の焼酎漬けとジャムを持ってきた参加者がいました.そのジャムのついたパンと焼酎漬けの実を皆で分けて食べました.
赤星病になったボケ(木瓜,バラ科)を観察しました.虫こぶではなく,さび病の一種で,病原菌(担子菌)は姿を変えて冬の間はカイヅカイブキ(貝塚伊吹,ヒノキ科)などのビャクシン類の葉や枝で過ごし,春になるとナシ(梨,バラ科)やボケなどに寄生するそうです.どうしてそんなことをするのかという質問が出ましたが,胞子を作って繁殖するためという回答がありました.カイヅカイブキの近くにバラ科のナシなどは植えてはいけないという言い伝えがあるそうです.

【外部リンク】ナシ赤星病(あいち病害虫情報)

ユスラウメの焼酎漬け 赤星病のボケ

先月の報告を見て,アヤメ(菖蒲,アヤメ科)は水辺でなく山野の草地で生えることができるという話がありました.このとき,小さな女の子がプラスチック容器に入れた大きなアメリカザリガニ(亜米利加蜊蛄,アメリカザリガニ科)を大事そうに持ってきました.最初は見せてくれませんでしたが,何度も頼んだら容器から出して皆に見せてくれました.挟みを振り上げるアメリカザリガニを,後ろから上手につかんでいました.

アメリカザリガニ

10時過ぎに出発して,まず,先月と同じように大坂池南のイタドリ(虎杖.タデ科)を観察に行きました.2本のイタドリの茎を切取って,縦割りにして観察しました.1つめは幼虫の食痕だけがありました.その後,2cm大くらいの木くずと糞を糸で綴ったような黒っぽい覆いのある茎を見つけて,覆いをとると食入孔がありました.挟みで茎を縦断し始めると,奥の方へささっと逃げる幼虫を見つけました.隠れた方向の茎を縦断して,3cm長くらいの横縞のある幼虫を発見しました.さらに細い茎にも覆いがあったので,茎を縦断すると,小さな幼虫をまた見つけました.こんな細い茎では大きくなれないのではという感想がでました.図鑑を見て,コウモリガ(蝙蝠蛾,コウモリガ科)の幼虫であることを確認しました.イタドリ虫として渓流釣りで使われるのは,イタドリの茎に生息するカミキリムシ(髪切虫または天牛,カミキリムシ科)やアズキノメイガ(小豆螟蛾,メイガ科)の幼虫なども入れた総称のようです.何故,コウモリガという名前がついたかという質問がでました.「この蛾の成虫が頑丈な前脚で枝や葉にぶら下がることに由来すると思われる」という記述がウェブにありました.

コウモリガの幼虫の食痕 イタドリの茎の中のコウモリガの幼虫

大坂池を回って,カエル池に行きました.「自然と遊ぶ親子の会」がザリガニ釣りをしていました.イカを餌にしていました.昔は,カエルやザリガニの身を使っていたことを思い出しました.直ぐ横のクワの実が黒く熟していたので,多くの参加者が食べました.向えのスモモ池にアオサギ(蒼鷺,サギ科)が1羽来ていました.

カエル池でのザリガニ釣り クワ

炭焼広場の前の道で,男の子達が3cm大のコクワガタ(小鍬形,クワガタムシ科)を6匹も捕まえていて,手に這わせていました.ポリバケツに入れて,皆で観察しました.捕った場所は秘密だそうで,教えてくれませんでした.雄のカナヘビ(金蛇,カナヘビ科)も捕まえて,同じようにポリバケツに入れて観察しました.尾を逆なですると鱗がとれるという説明がありました.男の子が,お腹をなでて眠らせようとしました.キアゲハ(黄揚羽,アゲハチョウ科)を網で捕まえた女の子がいて,皆で観察して,大きさも測定しました.翅を広げると横幅は11cmでした.

コクワガタ カナヘビ キアゲハ

水田に行き,イネ(稲,イネ科)の栽培用の5つのポリバケツに土と水を入れて,かき回して土を細かくしてから,各バケツにイネを1本ずつ植えました.
山側の林の中に入ると,風が通って木陰は大変涼しく気持ちのよい場所でした.そこではミヤマヨメナ(深山嫁菜,キク科)がたくさん薄紫色の花をまだ咲かせていました.ウラギンシジミ(裏銀小灰,シジミチョウ科)とコムラサキ(小紫,タテハチョウ科)を捕獲して,羽の表面の色を観察しました.ウラギンシジミはなかなか翅を広げてくれないので,笹の葉で無理矢理こじ開けて観察しました.コムラサキはボロで表面に紫色は見えないという人がいて,観察容器を回転して,鱗粉が紫色に光ることを確認してもらい写真も撮りました.

植えられたイネ ウラギンシジミの表面 コムラサキ

登りの藪こぎの途中でネズミモチ(鼠黐,モクセイ科)の白い花を観察しました.大乗寺の境界の道に出て,少しだけ道を西に歩き,直ぐに下りの藪こぎをしました.お母さんがいない方が楽しいと男の子達ははしゃいでいました.途中で,ケラ(螻蛄,ケラ科)とイオウイロハシリグモ(硫黄色走蜘蛛,キシダグモ科)を見つけて観察しました.子供達は,昔の子供と同じで虫に大変興味があるようでした.

ネズミモチの花 ケラ イオウイロハシリグモ

途中で名古屋市街の遠景がよく見える場所で止まりました.ちょうど,遮っている枯木があり,切ってしまおうという話になりました.その手前の木に5匹のキマワリ(木廻,ゴミムシダマシ科)を見つけて,捕獲して観察容器に入れました.帰りに,元が畑であった所でアップルミントが野生化しているのを見つけました.

名古屋市街の遠景 キマワリ アップルミント

感想会は里山の家の倉庫のコンクリートのたたきで行いました.そこで絵を描いていた女性がいましたが遠慮してどいてくれました.感想会で,オトシブミ(落とし文,オトシブミ科)を持ってきた人がいました.オトシブミは,葉を切り落とすものと,葉を巻くだけのものがいますが,葉が出すガスに抵抗できない種類のオトシブミは,葉を切り落とすという説明がありました.オトシブミやゾウムシ(象虫,ゾウムシ科)の信頼できるHPの話が出ました.

【外部リンク】オトシブミの観察記録(山と花のデジカメ日記)

【外部リンク】象鼻虫関係のサイト

【外部リンク】オトシブミ・チョッキリの世界

オトシブミ

芋虫の好きな女の子をイモラーと呼ぶという話がでました.隠れイモラーは,イモムシが好きなのに,他の人に気持ち悪がられるので,黙っているということでした.イモラーはもともとは,ポテトチップスなどの芋菓子を好む人を指していましたので,もう少ししゃれた名前を付けてやるとよいかもしれません. 子供の参加者が多く,一緒に遊べて幸せだという感想が出ました.木陰の快適な風を感じた心地よい初夏の観察会になりました.

観察項目:アメリカザリガニ,ユスラウメ,ユスラウメのジャム,ユスラウメの実の焼酎漬け,赤星病のボケ,メンガタスズメ,アカボシゴマダラ,ブナ,コウモリガの幼虫,イタドリ,ヘビイチゴ,カナヘビ,コクワガタ,ムクドリ,ケラ,キアゲハ,ウラギンシジミ,コムラサキ,名古屋市街の遠景,ムカデ,キマワリ,イオウイロハシリグモ,スズメバチ,センチコガネ,オトシブミ

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子