11月度の観察記録
カテゴリ : 2008年
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 雨を心配しましたが,ずっとどんよりとした曇りでした.きれいな写真は撮れませんでしたが,大変歩きやすい観察会でした.街路樹のサクラ(桜,バラ科)は,葉を落とした木と,きれいに紅葉や黄葉した木がありました.トウカエデ(唐楓,カエデ科)はもっと極端な個体差があり,真っ赤にきれいに紅葉した木とまだ緑のままの木が並んでいました.センダン(栴檀,センダン科)の実は,まだ表面に皺はありませんでしたが淡黄色くなっていました.新池には,カイツブリ(鳰,カイツブリ科)が2羽とコガモ(小鴨,カモ科)が8羽来ていました.コガモは,しきりに藻を食べていました.モズ(百舌鳥,モズ科)とセグロセキレイ(背黒鶺鴒,セキレイ科)の鳴き声がしました.弱々しいコオロギの鳴き声もしました.集合場所のフェンスの外側にノコンギク(野紺菊,キク科)が小さな白い花を咲かせていました.参加者は,ボーイスカウト風(女性も入っていた)の団体さんも来て,59名と大人数になり,その内,2歳くらいから中学生までの子供は16名でした.

トウカエデ センダンの実 セグロセキレイ

 まず,先月の記録を皆で見ました.カワラケツメイ(河原決明,マメ科)の近親にアレチケツメイ(荒地決明,マメ科)があり,本来はアレチカワラケツメイという名にすべきで,区別はDNAによらなければ分からないという話がありました.

【外部リンク】アレチケツメイ(花花...花よ花...)

 ホシアサガオ(星朝顔,ヒルガオ科)とガマズミ(莢迷または鎌酸実,スイカズラ科)の虫えいも話題になりました.クロマダラソテツシジミ(黒斑蘇鉄蜆,シジミチョウ科)については,名古屋で初見ということで,各種の新聞に写真などを送りましたが,結局掲載されなかったという報告がありました.名古屋の種々の場所のソテツ(蘇鉄,ソテツ科)が既に食害にあっているようです.蝶が好きな人からは「繁殖できている」という表現になるようです.沖縄で観察して来た蝶好きの参加者から詳しい説明がありました.
 次に,参加者が持ってきた種々の木の実を観察しました.まず,赤紫色の7cm大のムベ(郁子または野木瓜,アケビ科ムベ属)の実を取り上げました.アケビのようには,実は割れないそうです.次にオオウラジロ(大裏白,バラ科)の2〜3cm径の丸い実を沢山持ってこられた参加者がいたので,ナイフで切ってリンゴのような断面を観察すると同時に食べてみました.「渋い」という感想がでました.赤いカラスウリ(烏瓜または唐朱瓜,ウリ科)の実と種を持ってきた人もいました.種の形は打ち出の小槌に似ており,お金が入ってくるので財布に入れておけばという勧誘がありました.

ムベの実 オオウラジロの実の断面

 スダジイ(すだ椎,ブナ科)の煎ったドングリを沢山持ってこられたので,皆で少しずつ分けて食べました.「そんなにうまくない」という感想と「うまい」という感想の両方がでました.ツブラジイ(円椎,ブナ科)の5mm大の小さな丸い2つのドングリも比較のため並べました.マテバシイ(馬刀葉椎または全手葉椎,ブナ科)の大きなドングリを観察して,このドングリは2年がかりで実るという話があり,今回は1年ものを後で観察することにしました.東京などでは,クヌギ(櫟,椚または橡,ブナ科コナラ属)が代表格のドングリですが,名古屋にはクヌギはなく,代わりにアベマキ(阿部槙または?,ブナ科)のドングリが代表格であるという説明がありました.見分け方は,アベマキのドングリは先が尖っているということでした.葉を比べられれば,アベマキは葉の裏に毛があるので,すぐに分かります.マテバシイとコナラ(木楢,ブナ科)のドングリの見分け方も話題になり,後で確認することにしました.もちろん,食べてみればすぐに分かりますが.小さな子供達は,ひっつきむしが付くのもかまわず,集合場所の草の上を転げ回っていました.

スダジイのドングリ ツブラジイのドングリ マテバシイのドングリ 根が出たアベマキのドングリ

 10時15分になって,やっと持ち寄ったものの観察が終わり出発しました.今回は,参加人数が多くて非常にゆっくり歩いたため,観察項目が少なくなりました.
 まず,いつもの道路脇の所でマテバシイを観察しました.木の下に沢山の大きなマテバシイのドングリが落ちていました.周辺の葉だけのマンジュシャゲ(曼珠沙華,ヒガンバナ科)の中にもドングリは落ちていました.1年もののドングリを捜すためマテバシイの枝を観察しましたが,なかなか見つかりませんでした.小さなドングリのついた枝を見つけたと思ったら,触るとすぐにおちてしまうので,未成熟の2年ものだとわかりました.結局,10cm長くらいの枝に新芽のようなものがついたものが,多分,来年の秋にドングリになるのだろうということになりました.

【外部リンク】ウリカワ/マテバシイ(スケッチ観察ノート)

マテバシイのある場所の横の街路樹の多少枯れかかった深紅色のハナミズキ(花水木,ミズキ科)の紅葉が大変きれいでした.ただし,例年見る真っ赤な実は少ないように感じました.

 いつもの農道から,平和公園に入りました.来月から,ここからは入れないというお知らせがありました.鉛除去のため工事が始まるそうです.南と北の尾根からは平和公園に入れるそうです.ここで,ある参加者が小学校でドングリを使った工作をしているとクリシギゾウムシ(栗鷸象虫,ゾウムシ科)の幼虫が8匹も出てきて困ったという話がありました.クリシギゾウムシの幼虫がドングリの中でかりかりと囓る音がするとう話もありました.小学校の教諭である私の家内によると,ドングリで工作をするときは,かわいそうですが事前にゆでてから使うとよいそうです.
 1m超高のキクイモ(菊芋,キク科)の葉が枯れはじめていたので,引き抜いてイモを観察しました.同じように見えても,イモが鈴なりのものと全く無いものもありました.子供達は喜んで,イモを掘り出していました.キクイモの主成分は食物繊維と難消化性の多糖類イヌリンでダイエットによいそうです.ただし,イヌリンは水溶性なので,みそ漬けなどはだめということでした.そうであれば,みそ汁に入れて食べれば良いという意見がでました.
 キクイモのある草原の逆側には,コセンダングサ(小栴檀草,キク科)が花と実を混在させていました.ヨウシュヤマゴボウ(洋種山牛蒡,ヤマゴボウ科)の濃紫色の実も少なくなっており,まだ青い実もありましたが,もう成熟しそうもありませんでした.
 ここで団体で参加した人達は離れていきました.

キクイモ ヨウシュヤマゴボウ

 湿地に着いて,ナンキンハゼ(南京黄櫨,トウダイグサ科)の紅葉と白い実を見ました.15年ぐらい前に生え始めたときに切ろうとして,紅葉がきれいだとの理由で残したものが大きくなった木と,その種で増えた小さな木の2本のナンキンハゼがありました.あんなに沢山の実があるのに,1本しか増えないということに驚きがありました.枝から実をとって観察しました.硬い実がはじけて,中の白い種が出ていました.とって食べましたが,白い種皮の下は硬い殻で,中に子葉が入っていました.小さくかみ砕いた殻が固く口の中に広がって,中の子葉の味はよくわかりませんでした.香ばしくて,クルミ(胡桃,クルミ科)のようだという参加者もいました.キジバト(雉鳩,ハト科)が大好きな実ですが,鳥達は種の周辺の白い蝋質のみを食べ,種は食べないそうです.後で種子の油は有毒だという記述を発見して驚きました.和蝋燭のろうはこの殻の表面の白い種皮の部分から作るそうです.

【外部リンク】木の名前の由来 ナンキンハゼ(役立つ?お庭ブログ-北山造園)

 周辺には沢山のスズメ(雀,スズメ科)がいました.秋の実りを集団で楽しんでいるようでした.近くのジュズダマ(数珠玉,イネ科)の葉の上で,イナゴ(蝗または稲子,イナゴ科)が交尾中でした.5cm大のイオウイロハシリグモ(硫黄色走蜘蛛,キシダグモ科)を見つけた参加者が捕らえて,女の子に渡したところ,手の上を平気で歩かせていました.

ナンキンハゼの実 交尾中のイナゴ

 湿地からキラニン広場に向かうアスファルト舗装された道端で,ウンヌケ(牛の毛のなまったもの,イネ科)とススキ(薄,イネ科)が並んでいるところで,両者の違いを観察しました.ススキに似た最近少なくなったウンヌケは,元々中国大陸からインドにかけて分布しており,日本と大陸が陸地でつながっていた証拠ともいえる植物だそうです.ウンヌケの葉は,表側が白く,普通の植物の逆でした.ウンヌケの穂の数はススキに比べて少ないようでした.葉がねじれて裏で光合成をしているようでした.近くに,きれいに紅葉したヌルデ(白膠木,ウルシ科)があり,この時期のヌルデは,そんなにはかぶれないと言って平気で触る参加者がいました.

ウンヌケとススキ

 キラニン広場に行き,シャシャンボ(小小坊,ツツジ科)の実とマツ(松,マツ科)の実をとって食べました.シャシャンボの濃紺の実はそれ程甘くなく,酸っぱいといった方がよいくらいでした.次回の芋煮会用にジャムを作りたい人がおり,皆で実をビニール袋に集めました.マツの実は,開いたマツボックリでは既に種は飛んでしまっているので,硬い殻のものをとって,中から小さな種を取りました.食べても味が分からないほどの大きさでした.種を数個とって女の子が飛ばすと,くるくると回りながら落ちていきました.カエデの種と同じ様相でした.開いた松かさは,水につける元に戻るということでした.つまみに出てくるマツの種はもっと大きいですが,それは別種の松のものだろうということになりました.
 キラニン広場の端にある大きなコナラ(木楢,ブナ科)は,カシノナガキクイムシ(樫の長木喰い虫,ナガキクイムシ科)に進入され,木の根元に沢山の木くずが落ちていました.

シャシャンボの実 マツボックリと種

 ここで,終了時間になってしまい多少風で寒かったですが,キラニン広場で感想会を行いました.近くでとってきたウバメガシ(姥目樫または馬目樫,ブナ科)のドングリのついた枝が回覧されました.ゾウムシが出てきた穴のあるドングリも回覧されました.2人の男の子は,お弁当を食べた後で,シャシャンボの実を取りに行って,昔の子供のように口の回りを真っ黒にして食べていました.食べ過ぎてお腹を壊さないか心配しました.
 感想として,1)子供達が生き生きと動き元気をもらった,2)紅葉がきれいであった,3)種々の木の実が食べられてよかった,4)目玉となる観察物がなかった などが出ました.シジミチョウ(蜆蝶)がどうして,蝶マニアに人気があるのかという質問に対して,種類が多くて森の宝石といわれる程きれいだという回答がありました.平和公園で狸の糞が見つかり,ガマズミやハゼの実を食べていることが分かったという報告もありました.ハラビロカマキリ(腹広蟷螂,カマキリ科)のお尻を水につけると長い線虫が出てくるという話や,ヨメナ(嫁菜,キク科)の花は,ノコンギクとの区別が難しく,併せて野菊と呼ばれているという話題もありました.感想会のときにセグロセキレイが頭上を,甲高くなきながら飛んでいきました.
 いろいろな木の実のお土産を沢山持った参加者も2〜3名いました.先月よりもっと沢山の秋の実りを楽しんだ感想会になりました.

ウバメガシ ゾウムシの出たドングリの穴

観察項目:ムベの実,スダジイのドングリ,マテバシイのドングリ,ツブラジイのドングリ,カラスウリの実,オオウラジロの実,マンジュサゲ,キクイモ,アベマキのドングリ,オオオナモミ,ナンキンハゼ,イナゴ,ジュズダマ,ヨウシュヤマゴボウ,ウンヌケ,ススキ,イソノキ,シャシャンボ,マツの実,クズの実,コナラ,ウバメガシ,ヨメナ(概ね観察順)

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子