6月度の観察記録
カテゴリ : 2013年
2013年6月度の観察記録です。
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薄曇りで日差しが弱く,初夏の観察会には最適な日でした.歩道横のビヨウヤナギ(美容柳,オトギリソウ科)やキンシバイ (金糸梅,オトギリソウ科)が黄色い花をいっぱいつけていました.キンシバイの一輪のみにヨコズナサシガメ(横綱刺亀,サシガメ科)が いました.それ以外 はどちらの花にも,ハナムグリ(花潜り,コガネムシ科)などの昆虫はついていませんでした.ハナゾノツクバネウツギ(花衝羽根空木,スイ カズラ科,別名: アベリア)も白い小さな花をいっぱいつけていました.こちらには,ニホンミツバチ(日本蜜蜂,ミツバチ科)などが来ていました.
新池のスイレン(睡蓮,スイレン科)はまばらに白い花を咲かせていました.アオサギ(青鷺,サギ科)が池の中心と北側の岸に各1羽いました.土手のアカメ ガシワ(赤芽柏,トウダイグサ科)の黄色の雄花が咲き,ニホンミツバチが来ていました.センダン(栴檀,センダン科)には,緑の実が できはじめていまし た.電線にはカワラヒワ(河原鶸,アトリ科),スズメ(雀,スズメ科)およびムクドリ(椋鳥,ムクドリ科)がいました.集合場所前の大坂池の水面上には, 3羽のツバメが飛び,ときどき水面をかすめて水を飲んでいました.
参加者は,初めて参加した数名を入れて,大人19名と子供4名でした.

キンシバイとヨコズナサシガメ ハナゾノツクバネウツギの花 アカメガシワとニホンミツバチ センダンの実

まず,先月の報告をじっくりと皆で見ました.報告の中のアゲハチョウに関連して,ジャコウアゲハ(麝香揚羽,アゲハチョウ 科)が最近名大構内で見ないと言われていますが,平和公園で観察したという報告がありました.ジャコウアゲハの幼虫の食草は,木本のオオバウマノスズクサ (大葉馬鈴草,ウマノスズクサ科)または草本のウマノスズクサ(馬鈴草,ウマノスズクサ科)などのウマノスズクサ属なので,除草は繁殖には関係ないという ことでした.名城公園外堀の草刈りの時期は,予算がついているので,ヒメボタル(姫蛍,ホタル科)にとって最も無難なときにやることを検討しているという 報告がありました.
里山の家の屋根のカラスノエンドウ(烏豌豆,マメ科)はすっかり枯れており,落ちた種はどうして発芽しないかという質問がでました.低温を経験しないと発 芽しないという話はききません.オクラ(秋葵,アオイ科,英名:okra)は,ある気温になると発芽し,ソバ(蕎麦,タデ科)は種を落とすとすぐ発芽する という話がでました.発芽を促すトリガーは何かという話題でした.あきらめかけたときに,スマホで調べた人がおり,ある研究者の報告によると,カラスノエ ンドウの種は休眠していて,中まで水分が入ったときに発芽するそうです.種に傷をつけ,水分が入りやすくすると発芽は早まるそうです 普通は,10月から11月にかけて発芽するそうです.
参加者が持って来たクワ(桑, クワ科)の実ジャムと前田の クラッカーを皆で分けて食べました.子供達が特に喜んで食べていました.砂糖をひかえめにして甘 さを押さえてあり,おいしいジャムでした.「あたり前田のクラッカー(てなもんや三度笠の藤田まこと)」の方を懐かしんだ参加者もいました.里山の家の屋 根の新しい野草としてセイタカアワダチソウ(背高泡立草,キク科)はすぐに分かりましたが,小さな10数cm丈の野草は下から見ただけでは,何か分かりま せんでした.脚立を借りて,取ってきた男性参加者がいました.カミヤスリという紹介でしたが,後で調べても何か分からず,他の参加者からカミヤスリは誤り でハナヤスリ(花鑢,ハナヤ スリ科)の一種だと教えてもらいました.海岸に咲くハマハナヤスリ(浜花鑢,ハナヤスリ科)かその変種のコハナヤスリ(小花 鑢,ハナヤスリ科)のようでした.名前の「ヤスリ」は,先端の胞子の出る生殖器官を金属を磨くやすりに見立てたもののようです.

【外部リンク】コハナヤスリ(ちゅーピーむら)

クワの実ジャムを食べる子供 ハナヤスリ

里山の家を出発して,すぐ前の庭から南へ小さな茶色のアリ(蟻,アリ科)の10mくらいの長さの行 列を発見して観察しまし た.オオバコ(大葉子,オオバコ科)やコマツヨイグサ(小待宵草,アカバナ科)の根元から行列は続いていました.ある割合でアリが白いものを咥えていまし たが,球形でなく何だろうと話し合っていましたが,拡大鏡で見て,複数の卵であることが分かりました.行列の移動はフェロモンを分泌させて維持していると いう話がありました.ここまでで,10:20になり,急いで新池に向かいました.
途中でブタナ(豚菜,キク科,別名:タンポポモドキ)が群生している所で,一株を抜いて,根と花を観察しました.根は15cm長くらいあり,茎は50cm 長もあり,途中で枝分かれして複数の花を咲かせていました.フランスでの俗名 Salade de porc(豚のサラダ)を翻訳したものが名前の由来と言われますが,普通のタンポポ(蒲公英,キク科)の葉はサラダとして人が食べますが,ブタナは豚しか 食べないのでこのような名称があるようです.セイヨウタンポポと同じように3倍体で減数分裂ができなく,受粉能力がないので単性生殖でクローンだという話 がありました.同一環境では,繁殖に適していますが,環境が激変したときに多様性によって対応できないということが話題になりました.

卵をくわえたアリ

新池でスイレンとクワを観察するつもりでしたが,土手に入る通り道の球場では子供達がピッチングマシンを使って野球の練習 をしていたので,柵内に入るのをあきらめました.水面が長方形に見える場所は,長方形の遮光幕を張った所でした.水面上に見える赤白のポールを立てた所 は,遮光幕を撤去して経過観察している場所だそうです.マツモ(松藻,マツモ科)などが繁茂して,トンボのヤゴなどが増えているそうです. フェンス近くでツバメシジミ(燕 小灰,シジミチョウ科)がクズ(葛,マメ科)やアレチヌスビトハギ(荒地盗人萩,マメ科)の葉に止まって,羽を擦り合わせ る産卵動作をしていました.土手のオオキンケイギク(大金鶏菊,キク科)の黄色い花は,前に比べれば随分少なくなって,まばらにしか残っていませんでし た.

ツバメシジミ

東星ふれあい広場に入り,水路の40cm大のミ シシッピアカミミガメ(密士失比赤耳亀,ヌマガメ科)を観察しました.甲羅 の年輪を数えて16年くらいだと検討をつけました.ビニル袋に入れて,子供達に持たせようとすると,最初は嫌がる男の子もいました.泥水の中から亀を取り 出したときに,お尻からボトリとヤゴが泥にまみれて落ちました.拾って,水の入った瓶に入れて観察しました.ショウジョウトンボ(猩猩蜻蛉,トンボ科)の ヤゴのようでした.
水路脇のモモ(桃,バラ科) を観察しました.3〜4cm大の実をたくさんつけていましたが,毎年,熟す前に落下してしまうそうです.それでも今年こそはと いう参加者もいましたが,男の子たちが面白がって,摘果して投げて遊んでいました.ヤシャブシ(夜叉五倍子,カバノキ科)が2本 植樹されていましたが,2 本とも実がついていました.

ミシシッピアカミミガメ ショウジョウトンボのヤゴ モモの実 ヤシャブシの実

ここで,シオカラトンボ(塩辛蜻蛉,トンボ科)とオオシオカラトンボ(大塩辛蜻蛉,トンボ科)を捕まえた人がいて,透明な虫かごに入れて観察しました.シ オカラトンボはオオシオカラトンボに比べて小さく,塩を吹いたような白さが目立ちました.羽の模様でも見分けることができます.新たにできた広場奥の斜面 の階段を登り,広場北の斜路に出ました.芝生の養生用の緑色のプラスチック鋲が打ち込んでありましたが,歩きにくいという市民の苦情によって,もうすぐコ ンクリートに打ちかえられてしまうという報告がありました.
坂道を登り切ったところは,両側に大きな木があり,風が抜けて大変心地よい感じがしました.ここで,キビタキ(黄鶲,ヒタキ科)のきれいなさえずり声がし ました.木々が緑葉をたくさんつけているので,黄色の目立つ鳥ですが,近くで鳴き声が聞こえても姿は見えませんでした.イソノキ(磯の木,クロウメモドキ 科)の花芽とオオバノトンボソウ(大葉の蜻蛉草,ラン科)2株の写真を撮りました.道路わきの枯草をどけると,モウセンゴケ(毛氈苔,モウセンゴケ科)も ありました.トンボエダシャク(蜻蛉枝尺蛾,シャクガ科)を見つけた参加者もいました.

シオカラトンボとオオシオカラトンボ イソノキの花芽 モウセンゴケ

葉の上で20数匹がかたまってまどいをしている小さな昆虫を見つけました.最初,クモだという人がいましたが,数mmと大 きく,片側に脚が3本(合計6本)であり,カメムシの一種で,ヨコズナサシガメではという人がいました.しかし,胴体がまるいので形が違うように見えまし た.容器に一匹だけ捕獲して,後で標本にして同定することになりました.
後で調べてもらった結果,農業害虫のクサギカメムシ(臭木亀虫,カメムシ科)の1回目の脱皮後であることが分かりました.カメムシは,幼虫(1齢〜5齢) から成虫にかけて姿が大きく変わることが分かりました.

【外部リンク】クサギカメムシ(幼虫図鑑)

クサギカメムシ

近くでムラサキシキブ(紫式部,クマツヅラ科)の花芽の写真を撮りました.ピンクの小さな花を咲かせた枝もありました. いつも観察するカラタチ(枸橘,ミカン科)の東側のコデマリ(小手毬,バラ科)にからまりついたウマノスズクサ(馬の鈴草,ウマノスズクサ科)を皆で観察 しました.蔓植物で,ジャコウアゲハの食草です.この植物はアリストロキヤ酸(芳香族カルボン酸)という腎性毒を持っているそうです.ジャコウアゲハはこ の毒に耐性があり,そのため鳥にも捕食されにくいそうです.沖縄では,ジャコウアゲハに擬態する蝶もいるという話が出ました.ウマノスズクサには花はつい ていませんでした.サキソホンの形の花が咲くという説明が,パッドを見せながら説明がありました.ここでベニシジミ(紅小灰,シジミチョウ科)の写真を撮 りました.

【外部リンク】黒蝶の戦略(なみへいの最新サイエンス)

ムラサキシキブの花芽 ウマノスズクサ ベニシジミ

12時近くになり急いで,里山の家に戻る途中で炭焼窯から煙が出ているのを見ました.本格的な炭焼の前の試し焼きだそうです.里山の家の外では,煙の化学 物質の検知機がおいてありました.芝生広場前のアシ原ではオオヨシキリ(大葦切,ウグイス科)が盛んに鳴いていました.ひょっとすると営巣しているかもし れません.里山の家の南側の林で,ネットをかぶせて幼虫を育てている人がいるということで,見に行きましたが,ネットは既に撤去されていました.平和公園 の工事看板を見て,墓園整備事業が平成26年3月まで延長されていることを知りました.平和公園の南側50haは,今後も里山として残ることが確認されま した.
感想会は里山の家の中で食事をしながら行いました.図鑑と本物が違うように見えるという指摘もありました.大きな景観でなく,ミクロの自然を楽しんだとい う感想もでました.初夏の快適な観察会になりました.

観察項目: カラスノエンドウ,セイタカアワダチソウ,ハナヤスリ,クワの実ジャムと前田のクラッカー,アリの行列,コマツヨイグサ,オオバコ,ブタナ,オオキンケイ ギク,ツバメシジミ,ミシシッピアカミミガメ,ショウジョウトンボのヤゴ,モモ,ヤシャブシ,オオシオカラトンボ,シオカラトンボ,キビタキの鳴き声,イ ソノキ,オオバノトンボソウ,ムラサキシキブ,モンシロチョウ,モリチャバネゴキブリ,クサギカメムシ,カシワマイマイの幼虫,コデマリ,ウマノスズク サ,ベニシジミ,コアオハナムグリ,センダン,オオヨシキリの鳴き声.

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子