8月度の観察記録
カテゴリ : 2014年
2014年8月度の観察記録です。
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台風11号が四国上陸直前から日本海に抜ける間の観察会になりました.暴風・大雨警報が愛知県にも出たので,公式には観察 会は中止になりました.変わり者の有志のみの観察会に成りましたが,合羽を着て,長靴を履いて,カメラを濡らさないように傘を差しての重装備になりまし た.雲行きは最悪でしたが,地下鉄東山公園駅から新池に着いたときには,風は吹いていましたが,雨は小休止していました.新池の西南角の排水口の鉄柵の手 すりに1羽のカワセミ(翡 翠,カワセミ科)が風に吹かれて,とまっていました.観察会後の帰りの12時過ぎにも,カワセミはこの周辺にいました.新池の遮光幕実験場では,スイレン (睡蓮,スイレン科)の代わりにマツモ(松藻,マツモ科)が水面を覆っていました.
周辺ではクマゼミ(熊蝉,セミ科)の鳴き声が盛んにしました.前の集合場所のイチョウ(銀杏,イチョウ科)の木の下には,風で落ちた緑色の銀杏(ぎんな ん)が落ちていました.東星ふれあい広場には,もちろん誰もいませんでした.
参加者は,大人4名でした.炭焼広場に畑班が3名いましたので,これを入れると合計7名でした.私以外は,全て女性でした.

カワセミ カワセミ

集合場所の里山の家の屋根には,先月報告したもの以外に,大きな花のつぼみをつけたタカサゴユリ(高砂百合,ユリ科)が2本あり ました.納屋の屋根の方は野草だけでなく,芝生もかなり枯れていました.水やりがうまくいかなかったようです.里山の家と大坂池の間では,風で折れたケヤキ(欅,ニレ科)の小枝がたくさん落ちて いました.里山の家のすぐ横のムクゲ(木 槿,アオイ科)の花に数匹のタイワンタケクマバチ(台湾竹熊蜂,ミツバチ 科)が蜜を吸いに来ていました.大きな花の中にもぐり込むのですが,花が風に大きく揺られて直ぐに放り出されるのを繰り返していました.里山の家の南側の 草原で,スズメ(雀,スズメ 科)がカマキリ(蟷螂,カマキリ科)を捉えたのを撮影しました.10数羽のツバメ(燕,ツバメ科)は,大坂池には来ずに,奥の大きな樹木の林の手前で風に 逆らいながら盛んに飛んでいました.

タカサゴユリ ケヤキ ムクゲの花の中のタイワンタケクマバチ カマキリを捕まえたスズメ

先月の報告は,来月配ることにして,4名だけで出発しました.まず,カエル池へ行き,カダヤシ(蚊絶やし,カダヤシ科)を 見ようとしましたが,濁っていて見つけられませんでした.この池では,最近,ザリガニ釣りがはやっていますが,里山の家の中のニホンザリガニ(日本蜊蛄, ザリガニ蚊)の写真につられて,赤くないザリガニを釣るとニホンザリガニだという人が多いという話題がでました.日本固有のニホンザリガニは,北海道と北 東北地方にしかいないので,それを追記すべきという結論になりました.

【外部リンク】ニホンザリガニ(RDB図鑑)

このとき,風とともに雨が降ってきました.炭 焼広場に到着して,3名の畑班と落ち合い,まず,サ トイモ(里芋,サトイモ科)の 葉に水を垂らして,ロータス 効果(超撥水性の自浄効果)を見ました.ハス(蓮,ハス科)の葉と同様に,サトイモの葉の表面に球状の細胞の微細構造があり, 超撥水性を示すので,葉を揺らして,球状になった水滴が表面を移動して,表面の泥を溶かす様をおもしろがって観察しました.既に応用例もありますが,車の フロントガラスなどに応用するため,これらの葉の超撥水性をまねる研究が名大工学部でされています.

【外部リンク】ハスやサトイモの葉が水をはじくわけ(結晶美術館)

炭焼広場の畑 サトイモの葉でロータス効果の実証 ロータス効果の実験 葉の汚れを集めた水滴

関連して象鼻杯(ぞうびはい)の話しが出ました.ハスの葉を杯代わりにお酒を注ぎ,茎をストローにして飲むものです.古代 中国から伝わり,客をもてなす最高のお酒として知られているものです.また,不老長寿,暑気払いの薬としても飲まれているようです.

【外部リンク】御祝いのイベントに象鼻杯 (辻乃園)

水を入れてきたバケツの中にエ ンマコオロギ(閻魔蟋蟀,コオロギ科)の 幼生(幼虫)が1匹いました.顔つきが,まだ閻魔様でなかったので,他のコオロギではという意見もありましたが,ミツカドコオ ロギ(三角蟋蟀,コオロギ科)や他のコオロギではないのでエンマコオロギの幼生(幼虫)だろうということになりました.

エンマコオロギの幼生

畑の3種のシソ(紫 蘇,シソ科)を比較しようとしたときに,風と雨が急に激しくなり,炭焼窯にかぶせてあったブルーシートが風をはらんでめくれてしまいました.周辺をトラ ロープで止めてありましたが,ハトメと一緒にシートが破れていました.急いで,かぶせ直して,縁(へり)に大きな石やコンクリートブロックを置いて,風を はらまないようにしました.私が差していた傘は,骨が数本折れて,たたむこともできないほど壊れてしまいました.
畑から,3種のシソを採っ て,食べ比べをしました.NHKのためしてガッテンで話題になったように,葉の裏の毛の間に独特の香りの成分(ペリルアルデヒド)があり,洗ってはいけな いという説明がありました.3つのシソの内,葉が縮んでいるアオジソ(青紫蘇,シソ科)が一番うまいという感想が出ました.これが,普通に市販されている シソだという説明がありました.アカジソ(赤紫蘇,シソ科)は,えぐみがありうまくないという感想でした.

風で飛ばされたブルーシート 3種のシソ

同じシソ科のエゴマ(荏 胡麻,シソ科)のシソより大きな葉も採ってきて食べましたが,味はほとんどありませんでした.茎を折って臭いをかぐと,かなり強い香りがしました.種から エゴマ油を採りますが,大変高価だという感想が出ました.葉は漬物などにするそうです.
サツマイモ畑の伸びた茎を持ち上げて,茎からでた根を観察しました.サツマイモ(薩摩芋,ヒルガオ科)は,伸びた茎の途中から根を出すので,放置しておく と,そこにクズ芋ができてしまうので,蔓がのびた7〜8月に「蔓 返し」と言って,抜いてしまうそうです.畑が乾燥して甘い芋ができる副次効果もあるようです.畑班の人は,「床上げ」と言って いました.栄養がありすぎると,蔓ばかり出て,芋ができない「蔓ボケ」するそうです.

【外部リンク】菜園Q&A(かんちゃんの趣味のページ)

エゴマの葉 サツマイモの茎から出た根 サツマイモの蔓返し

水田に行くと,水が満杯になっていました.籾ができ始めていて,白い小さいオシベも見えました.このような天候では花は 咲かないそうです.食痕のある稲の葉に,ヤブキリ(藪 螽斯,キリギリス科)の幼生(幼虫)が1匹とまっていました.

イネの穂のオシベ 稲についたヤブキリの幼生

タマガヤツリ(玉 蚊帳吊,カヤツリグサ科)とコナギ(小 菜葱,ミズアオイ科)が,稲の間にありました.水中からすぐには名前が分からない藻を見つけて,採取しました.出水路には,黒い小さなヒメモノアラガイ(姫物洗貝,モノアラガイ 科)がたくさんいました.

タマガヤツリ コナギ ヒメモノアラガイ

最後に,湿地に行きサギ ソウ(鷺草,ラン科)の花を観察しました.41個の花を数えました.サギソウの花に1頭のイチモンジセセリ(一文字挵,セセリチョウ 科)がとまっていました.ミズギボウシ(水 擬宝珠,ユリ科)とミソハギ(禊 萩,ミソハギ科)も湿地で花を咲かせていました.周辺の樹木が,風に激しく揺さぶられて大きな音をたてていました.

サギソウとイチモンジセセリ ミズギボウシ ミソハギ

11:10に里山の家に戻りました.畑班の3名はとっくに戻って昼食を食べていました.水田から持って来た藻を紙の上に広 げて,2種の藻がからまっていることが分かりました.図鑑やスマホで調べて,1つはその輪生の特徴からシャジクモ(車軸藻,シャジクモ科)であり, もう1つはフラスコモ(ふらすこ藻,シャジクモ科フラスコ属)?の一種だろうということになりました.しかし,後で調べて連絡があり,フラスコモではなくトリゲモ(鳥毛藻,トチカガミ科)のたぐい で,ひょっとすると貴重種かもしれないということでした.

【外部リンク】トリゲモ(超水草図鑑)

シャジクモとトリゲモ

自家製のチョコレート入のクッキーが提供され,賞味しました.隣の畑班からは,昔懐かしいソバボウロが差し入れられまし た.里山の家は,午後は閉館になりました.台風の中での観察会も楽しいという感想が出ました.
合羽のおかげで服はぬれませんでしたが,汗で下着も上着もぐっしょりになりました.

観察項目: タカサゴユリ,サトイモの葉のロータス効果,エンマコオロギの幼生,3種のシソ,エゴマ,サツマイモの蔓返し,イネ,ヤブキリ,タマガヤツリ,コナギ,ヒ メモノアラガイ,サギソウ,イチモンジセセリ,ミズギボウシ,ミソハギ,シャジクモ,トリゲモ

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子