9月度の観察記録
カテゴリ : 2014年
2014年9月度の観察記録です。
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すっきりした秋晴れの快晴でした.街路の桜は黄葉を始めていました.新池の水面は,花期を終えたスイレン(睡蓮,スイレン 科)にまだ覆われていました.水面上では,ギンヤンマ(銀蜻蜓,ヤンマ科)などのトンボが飛んでいました.野鳥は,キジバト(雉鳩,ハト科)とヒヨドリ (鵯,ヒヨドリ科)しかいませんでした.サルスベリ(百 日紅,ミソハギ科)の花は,先月と同様に満開でした.東星ふれあい広場では,スズメ(雀,スズメ科)が10数羽何かをついばんでいました.
参加者は,大人17名と子供4名でした.昆虫に詳しい男の子が1人来ていました.また,7年ぶりに来られた高齢の男性参加者もいました.

サルスベリ

里山の家の前の広場の上空では,たくさんのウスバキトンボ(薄羽黄蜻蛉,トンボ科)が飛んでいました.カエル池の水は澄ん でいて,数十匹のカダヤシ(蚊絶やし,カダヤシ科)と数匹のアメリカザリガニ(亜米利加蜊蛄,アメリカザリガニ科)を見ることができました.里山の家の屋 根には,クズ(葛,マメ科),花のついたヒメムカシヨモギ(姫昔蓬,キク科),実をつけたタカサゴユリ(高砂百合,ユリ科),ヤハズソウ(矢筈草,マメ 科),ハナヤスリ(花鑢,ハ ナヤスリ科),セイタカアワダチソウ(背高泡立草,キク科),メリケンカルカヤ(米利堅刈萱,イネ科),アレチヌスビトハギ(荒地盗人萩,マメ科)などが 所狭しと繁茂していました.里山の家の中で,今年の灯火採集の昆虫標本を10名くらいの参加者が見ていました.標本を外の縁台の上に出してきて,観察会を 始めました.標本箱は,セイロガンの臭いがしましたが,防かびのためわざとセイロガンを入れているそうです.
まず,先々月と先月の観察記録を見ました.先月の観察会は正式には台風で中止でしたが,有志4名で風雨の中で実施しました.まず,先々月の観察記録の中のハナヤスリが話題になり,ヤスリの部分を触り たいという女性参加者がいました.倉庫から脚立を出してきて,背の高い男性参加者が2株だけ屋根から採取して,皆で触りました.ハナヤスリはシダ植物なのに,何故屋根のよう な陽の当たる所で生長しているのかという疑問が出ました.発芽のときは,芝に隠れて日陰だという説明がありました.

ハナヤスリ

ボロの羽を持つ外来種のホソオチョウ(細尾揚羽蝶,アゲハチョウ科)を平和公園で見たと言う人がいました.食草のウマノス ズクサ(馬鈴草,ウマノスズクサ科)が同じなので,ジャコウアゲハ(麝香揚羽,アゲハチョウ科)の住み処を奪うそうです.
縁台上の今年7月の灯火採集の昆虫標本を観察しました.グリーンの札のついた標本は「くらしの森」で採れたもので,その他が「うるおいの森」で採れたもの だそうでした.毎年,「うるおいの森」の方で採集昆虫が多いのは,水場などの環境の多様性があるからではという説明がありました.
次に,男性参加者がベトナムで入手した10cm大の大型昆虫のト ロルカン(Tororukan,キリギリス科?)の標本を観察しました.クサキリモドキ(草螽斯擬,キリギリス科)の類だそう ですが,2km先からもきれいな鳴き声(コロコローン)がする南洋の虫の王様として戦前の論文(石井悌,1930年,昆蟲)で報告されているという説明が ありました.

トロルカン

里山の家を出発して,大坂池の直ぐ南で,まずエ ノコログサ(狗尾草,イネ科)を観察しました.ムラサキエノコログサ(紫狗尾草,イネ科),キンノエノコログサ(金狗尾草,イ ネ科)およびアキノエノコログサ(秋狗尾草,イネ科)の可能性を探りましたが,普通のエノコログサでよいということになりました.穂の花のおしべはすぐ分 かりましたが,めしべはどれかという質問がでました.穂先の赤く見えるブラシのようなものはノギではなく小穂の柄から出た数本の刺毛だそうです.周辺のカ ゼクサ(風草,イネ科)も観察しました.

エノコログサの花

アリモドキ(蟻 擬,アリモドキ科)を捕まえてビンに入れて観察しました.早い動きで写真が撮りにくい虫でした.ばっと見るとアリ(蟻,アリ科)と区別ができないという感 想がでました.じっと見ると形状は少しだけ違い甲虫の仲間であることが分かりました.周辺で枯れ草を踏むたびにエンマコオロギ(閻魔蟋蟀,コオロギ科)が 数匹ずつ飛び出してきました.捕まえたメス2匹を入れたビンの中にオスを入れても今回は騒ぎになりませんでした.カナヘビ(蛇舅母,カナヘビ科)の子供と オオカマキリ(大蟷螂,カマキリ科)も捕まえて観察しました.別の種類のコオロギ(蟋蟀,コオロギ科)を探しましたが,中々見つかりませんでした.やっと 捕まえた小さめのコオロギが,ツヅレサセコオロギ(綴刺蟋蟀,コオロギ科)かハラオカメコオロギ(原阿亀蟋蟀,コオロギ科)か,図鑑やスマホで検索して調 べても直ぐには分かりませんでした.周辺では,ハラオカメコオロギが鳴いていましたが,捕まえたコオロギはメスでしたので,鳴かないのでビンに入れて持ち 帰ることになりました.

アリモドキ

ヨツボシホソバ(四 星細翅,ヒトリガ科)をヌルデの葉の下で見つけて,網で採取しました.ヌ ルデ(白蓼,ウルシ科)の直ぐ横に,赤い実をつけたウ メモドキ(梅擬,モチノキ科)がありました.葉がビロードのような感触だという感想が出ました.アオマツムシ(青松虫,コオロギ科)を捕まえ て,これもビンにいれて観察しました.網でカノコガ(鹿子蛾,カノコガ科)も捕獲しました.

【外部リンク】ヨツボシホソバ(みんなで作る日本産蛾類図鑑)

ヨツボシホソバ ヌルデの花 ウメモドキ アオマツムシ

マメガキ(豆柿,カキノキ科)を見つけて,その実をドングリのようだという人がいました.木の下にはアップルミント (Apple mint,シソ科)が沢山ありました.小径の谷側にはママコノシリヌグイ(継子尻拭,タデ科)が小さなピンクと白の花を咲かせていました.その上をクロア ゲハ(黒揚羽,アゲハチョウ科)が飛んで行きました.コムラサキ(シキブ)(小紫,クマツヅラ科)の木を見つけて,蝶にもコムラサキ(小紫,タテハチョウ 科)という種類がいるという指摘がありました.ムラサキシキブ(紫式部,クマツヅラ科)に対して,実の付き方が違うのでこの木はコムラサキというのが一般 的なようですが,ウェブの情報では,コムラサキとコムラ サキシキブの両方とも検索にヒットします.また,科の違う植物のコムラサキ(小紫,ツツジ科)もありますので,コムラサキシキ ブと言っておいた方が混乱はないようです.
小径の両側には,種々のキノコが沢山ありました.ナラ枯れの所によく生えると言われているカエンタケ(火焔茸,ニクザキン科)注意として縄貼りをしたとこ ろで,食べられる黄色のトキイロラッパタケ(鴇 色喇叭茸,アンズタケ科)がありました.カエンタケは,誰かが除去したのか見つかりませんでした.10cm大の黒い丸いキノコも2本ありました.

コムラサキシキブの実 キイロラッパタケ

いつもの湿地では,シラタマホシクサ(白玉星草,ホシクサ科)が一面に小さな白い球状の花を咲かせていました.ミズギボウ シ(水擬宝珠,ユリ科)の花はまだありましたが,サギソウ(鷺草,ラン科)の花はもうありませんでした.
水田の稲籾はイネモミガレサイキン(稲 籾枯細菌)に侵されていま した.紋枯病の説明もここで聞きました.籾を数えてみると,約3割にしか種子はできていなかったそうです.農薬を使うことには,賛成が得られなかったそう です.

【外部リンク】イネもみ枯細菌病に対するシードラック水和剤の種子消毒の防除効果(鳥 取県農林総合研究所)

イネモミガレサイキン病の籾

平和堂の無縁塚までいく途中で,アマチャズル(甘茶蔓,ウリ科)の花,セスジツユムシ(背条露虫,キリギリス科), オナガクサキリ(尾長草切,キリギリス科),シロバナマ ンジュサゲ(白花曼珠沙華,ヒガンバナ科)などを観察しました.集合場所で話題になったウマノスズクサ(馬鈴草,ウマノスズクサ科) も観察しましたが,花はもう付いていませんでした.下に落ちていた花殻を見つけて観察しました.白い花をつけたシロバナサクラタデ(白花桜蓼,タデ科)とア ベマキ(阿部槇,ブナ科)の幼木も道端で観察しました.

セスジツユムシ シロバナマンジュサゲの花 ウマノスズクサ シロバナサクラタデ

3cm長くらいの頭部と腹部が白でその他が濃茶色の幼虫を見つけて,シャチホコガ(鯱鉾蛾,シャチホコガ科)ではないかと いうことになりましたが,後で図鑑を見て,鳥の糞に擬態するス カシカギバ(透鉤翅蛾,カギバ科)の 幼虫だと判明しました.オニヤンマ(鬼蜻蜓,オニヤンマ科)が,めずらしく枝にとまったので網を持っていた男の子に教えました が,逃がしてしまいました.私はおもわずヘタと言ってしまいました.大きな網なので,オニヤンマの頭の方向の上からかぶせれば簡単に捕獲できますが,下か ら網で捕ろうとして逃げられました.私の子供時代は,魚を捕る小さな網で,簡単にトンボも捕っていました.

スカシカギバの幼虫
平和公園の北公園近くの樟並木の下の日当たりの悪い所でハナヤスリをまた観察しました.ここにハナヤスリがあることを知っていた参加者がいました.
平和公園北交差点の信号を渡った歩道で,ハイメドハギ(這蓍萩,マメ科)が地を這うようにはみ出しているのを観察しました.小さな白と紫の花を付けていま した.
無縁塚の周辺で,まず薄紫色の花をつけたツルボ(蔓 穂,ユリ科)がまばらにあるのを見つけました.その後,無縁塚東側の土手でツ リガネニンジン(釣鐘人参,キキョウ科)が群生しているのを観察しました.釣鐘状のピンクの花が一杯ついていました.サイバ (サイヨウ)シャジン(細葉沙参,キキョウ科)ではないかということで,スマホやパッドで調べました.花がすぼんでいないのでサイヨウシャジンとは違うと いうことになりました.釣鐘状の花の中にコバンゾウムシ(小判象虫,ゾウムシ科)がいないかを調べた参加者がいました.近くで,3cmくらいのピンク色の 花をつけたモモイロヒルサキツキミソウ(桃 色昼咲月見草,アカバナ科)も観察しました.実を付けたアオツヅラフジ(青葛藤,ツヅラフジ科)を採取した参加者もいました.
ツルボ ツリガネニンジン モモイロヒルサキツキミソウ

公園の周辺の歩道を急いで歩いて,12:20にやっと里山の家に帰り着きました.里山の家の中の机の上に大きなイグチ(猪 口,イグチ科)が数本置かれていました.食べられるキノコで,どこかでとってきたもののようでした.感想会をしたときに,女性の参加者が自製した蜂蜜とレ モンの入ったケーキが供されました.おいしいので私は3つもいただきました.感想会では,まず,いつもの倍以上歩けたことが良かったという感想が出まし た.いつも親子で来る中学生の男の子がコンピュータに夢中で,父親だけが来られたのが残念という意見も出ました.持ち帰ったコオロギは,ツヅレサセコオロ ギということになりました.男の子が里山の家の男子トイレで見つけたコオロギの死骸もツヅレサセコオロギでした.多くの虫たちに出会った秋の大変さわやか な楽しい観察会になりました.

観察項目:ハナヤスリ,灯火採集の昆虫標本,トロルカン,エノコログサ,アリモドキ,エンマコオロギ,カナヘビ,ハラオカメコオロギの鳴き声,ヨツボシホ ソバ,ヌルデ,ウメモドキ,カノコガ,アオマツムシ,マメガキ,ママコノシリヌグイ,スカシカギバの幼虫,クマバチ,イナゴ,コムラサキシキブ,トキイロ ラッパタケ,シラタマホシクサ,ミズギボウシ,イネモミガレサイキン病の稲籾,ジャコウアゲハ,ナミアゲハ,ウマノスズクサ,アマチャズルの花,セスジツ ユムシ,オナガクサキリ,シロバナマンジュシャゲ,パンパスグラス,クロアゲハ,オニヤンマ,ハイメドハギ,ツルボ,ツリガネニンジン,モモイロヒルサキ ツキミソウ,ツチイナゴの幼虫,ショウリョウバッタ,オンブバッタ,クサキリ,クビキリの幼虫,ツヅレサセコオロギ,カツオゾウムシ

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子