2月度の観察記録
カテゴリ : 2007年
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 少し風はありましたがほぼ晴天で,よく薮こぎする観察会にとって最適な日となりました.新池には,オオバン数羽,アオサギ1羽およびカイツブリ4羽が水面にいました.周辺には,コサギとアオサギが各1羽とヒヨドリ,ムクドリおよびドバトが沢山いました.新池の土手のセンダン(栴檀,センダン科)は,すっかり実を鳥達に食べられて幹と枝だけになっていました.集合場所は冬景色で,イチョウの木は,すくっと空に向かって枝を伸ばしていました.サクラ(桜,バラ科)の枝にはスズメの群がとまっていました.元清風荘では,スイセン(水仙,ヒガンバナ科)とウメ(梅,バラ科)の花が咲いていました.
 集合時間の9時半には25名の大人だけでしたが,出発時には2人の女の子を含めて,37名となりました.

サクラにとまるスズメ 集合場所のイチョウなど 元清風荘のスイセン 元清風荘のウメ


 集合場所で,まず,名古屋市の「次世代におくる魅力的な都市の実現に向けて」の2種のパンフレットが配布されて,その説明がありました.緑化地域の指定と高度地区の拡充素案のパンフレットでした.是非,パブリックコメントを出すように要請がありました.生物多様性条約締約国会議(COP10)の開催場所を名古屋市として立候補する閣議決定に関しても説明がありました.藤前干潟のラムサール条約指定や東山森づくりが市民参加で行われていること,および万博の実績が評価されたそうです.藤前干潟を廃棄物処分場に,また,平和公園をオリンピックのメイン会場にしようとした名古屋市が,反対運動の成果をもとにして,今回は生物多様性条約の国際会議の場所を提供するという皮肉な結果になりそうです.
 次に,先月の記録を見ました.最近,モズやセグロセキレイが田畑の減少に伴って少なくなっていること,逆に,シジュウカラやコゲラが都市内で増えていることが話題になりました.ハクセキレイが増えているのは,スーパーの駐車場が増えたせいだとする説も出されました.
 参加者の持ってきたウバメガシ(姥目樫,ブナ科)とシリブカガシ(尻深樫,ブナ科)のドングリとアメリカセンダングサ(亜米利加栴檀草,キク科)を観察しました.シリブカガシのドングリの表面はピカピカの光沢がありました.ウバメガシのドングリは,3本の木から持ってきたもので,10mm長超のドングリから数mm長の小さなドングリまでありました.木の栄養状態が違うという説と小さなドングリは未受精でシイナ(未熟落下する実)であるとする説がでました.小さな筍(タケノコ)を持ってきた参加者もいました.アメリカセンダングサを最後に観察しました.茎が横に伸びている特徴を確認しました.まだ,葉が緑の状態なのは,この暖冬の影響だろうということになりました.

ウバメガシのドングリとタケノコ


 平和公園に向けて出発してすぐ近くで,ホームレスが6〜7年いた住居跡を見ました.途中の通り道は,トラ柵で入れないようにしてありました.周辺にはビンや時計など生活用品が散乱していました.頭上でエナガが大きな鳴き声で鳴いていました.その後,さらに回り込んで元清風荘跡地裏に行きました.元清風荘の跡地が意外と広いのを実感しました.今は,土地供給公社の所有物ですが,今後の利用の調査費がついたそうです.
 東星中学校の裏手に行く途中で,カラスの死骸が落ちていました.鳥インフルエンザが怖いので,触らないように注意がありました.東星中学校裏手には,草に覆われた数個のテーブルと椅子がありました.憩いの場所として造られたそうですが,種々の理由で,ほとんど使われず放置されているそうです.

休憩所のテーブルとイス

 東山工業高校のフェンス際の狭い所を,ウラジロ(裏白,ウラジロ科)などを踏みながら無理矢理移動しました.アレチヌスビトハギ(荒れ地盗人萩,マメ科)のひっつき虫がズボンに多くつきました.途中,崖になっている所もあり,ひやりとしました.その後,ゴルフ練習場跡地のマンション建設場所の裏手に行きました.東山のスカイタワーから見ると,この地域が東山の森を分断していることがよく分かります.
 学生の参加者が,アベマキ(阿部槇,ブナ科)の枯れ木の中でコクワガタの4cm長の薄茶色が混じった白い幼虫を見つけて,皆で手にとって観察しました.カブトムシの幼虫を小さくした感じでした.
【外部リンク】湯沢町の昆虫 コクワガタ
コクワガタの幼虫 コクワガタの幼虫


 さらに薮こぎをして,大乗寺裏に出ました.そこで2つの石造りの観音像を見ました.また,近くで太いマツの枯れ枝についた2つのキノコを観察しました.マンネンダケのような色でしたが,触ると堅くてサルノコシカケのようなキノコでした.ここから,下りの薮こぎをして,先月も見た東山子ども森づくりの会が森の復元をしようとしている場所に着きました.数名の大人の人達が周辺を整備していました.近くには花の咲いたウメ(梅,バラ科)が2本あり,タンポポ(蒲公英,アブラナ科)の黄色い花も一輪見つけました.この復元場所をつっきって,上りの薮こぎをして,キラニン広場に着きました.キラニン自身は,来なかったそうですが,IOC委員をここで接待したそうです.そのときに対応した名古屋市の当時係長クラスの人達が,もうすぐ退職の年齢だそうです.国有地であるので,説明看板を建てるのにも許可が必要で,一悶着あったそうです.

大乗寺裏の観音像 枯れた松についたキノコ 子ども東山の森づくり隊の復元場所 キラニン広場


 キラニン広場から,通り道を作らないように下りの薮こぎをバラバラのルートを取って,ヒメカンアオイ(姫寒葵,ウマノスズクサ科)を数えに行きました.途中で2.5cm長のコクワガタの雌の成虫を学生の参加者が見つけ,観察しました.女の子は,怖がって掌に載せるのを拒否しました.その小さな女の子は,参加者に助けられ転がりながら薮こぎをしていましたが,数回ころんだ後で,手を傷つけないようにお父さんに手袋をもらっていました.

 ヒメカンアオイのコロニーの場所に着き,エナガの甲高い鳴き声が頭上からしきりに聞こえてくる中で,皆で手分けして葉と花の数を数えました.葉が526で花が124でした.昨年と比べ,ほぼ増減無しでした.ヒメカンアオイは,エライオゾームというおいしい餌になるタンパク質を種の周りにつけ,アリなどの虫に運んでもらい,生育地を広げるそうです.そのため,ヒメカンアオイが広がるのには非常に多くの時間が必要という説明がありました.
【外部リンク】アマナの里を守る会 エライオソーム

 雲ってきて,ほんの少しパラパラと雨が降りましたが,すぐにやみました.近くで,学生の参加者が,枯れ木をハンマーで砕き,越冬している昆虫を探しました.他の参加者が,腐った木を倒すと,根元の木の中でコクワガタの幼虫がいました.前に見つけたものと同じようでしたので,取り出さずそのままで観察しました.

ヒメカンアオイ コクワガタ コクワガタ


 さらにずっと薮こぎをして,東山動物園の象がミネラル補給のため食べる土を掘削したユーカリ(フトモモ科)畑まで行きました.途中で,木の根元にある別のヒメカンアオイのコロニーも見ました.また,くぼみの土の壁に小さな穴となっている,もう使われなくなったカワセミの巣跡も見ました.

象のためのミネラル採取場所 カワセミ巣跡

 さすがに小さな女の子は疲れて,お父さんにおんぶされていました.さらに薮こぎをして,陸軍の石柱のある尾根を経由して,平和公園入口のナノハナ(菜の花,アブラナ科)畑まで戻りました.途中,私のバックパックに,小さなセミの抜け殻が付いていると言って,女性参加者が取ってくれました.非常に小さな抜け殻で,ツクツボウシの抜け殻のようでした.薮こぎをしているときに,偶然ついたものでした.
 薮こぎの途中で夫婦で仲良く座って,お弁当を食べているのを見かけました.普段は,あまり人が通らない場所でした.オタマジャクシ池の横の石段の近くでは,メジロが大きな声で鳴いていました.

セミの抜け殻

 感想会の前の雑談で,今回の薮こぎに対して,「今日は最高に厳しかった」とか「こんなサバイバルになるとは」という感想がでました.実際に途中でギブアップして,緩いルートを取った人や帰った人もいたようでした.
 風の強いナノハナ畑で感想会を行いました.ナノハナの花は真っ盛りでした.残念ながら観賞用のナノハナで食べても旨くないそうです.座った周辺には,ヒメオドリコソウ(姫踊子草,シソ科)とオオイヌノフグリ(大犬のふぐり,ゴマノハグサ科)の小さな花が咲いていました.ナズナ(薺,アブラナ科)やホトケノザ(仏の座,シソ科)などの野草もありました.テントウムシやニホンミツバチも出てきていました.この場所には,既に春が来ていました.少し離れた所には,カラスの群もいました.
 感想会の時に,先月採ったフユイチゴ(冬苺,バラ科)のジャムを使った大変おいしいクッキーがふるまわれました.クワガタを参加した子供の数だけ捕りたかったという学生の参加者の感想に対して,他の参加者から子供の参加者は2名であり,その分は捕れたという発言がありました.クワガタは,今回のような尾根筋ではなく谷筋の枯れ木にもっといるそうです.コクワガタの幼虫を持って帰る親子から,成虫になるまで育てるという話がありました.
 まだ,薮こぎする良い場所は他にもありますが,来年1月までとっておくということになりました.沢山歩く気持ちの良い2月の観察会になりました.

感想会
ナズナ オオイヌノフグリ ナノハナの花 ヒメオドリコソウ

観察項目:ウバメガシのドングリ,シリブカガシのドングリ,筍,アメリカセンダングサ,ヤママユガ,コクワガタの幼虫と成虫,コクラン,オオタカの声,ヒメカンアオイ,カワセミの巣跡,テントウムシ,ヒメオドリコソウ,オオイヌノフグリ,ナズナ,ホトケノザ,ナノハナ,ニホンミツバチ(概ね観察順)

伊藤義人
監修 滝川正子