初夏を思わせる快晴で,地下鉄の東山公園駅を出た所で思わず上着を脱ぎました.新池の水面は,すっかり濃緑のスイレン(睡
蓮,スイレン科)に覆われ,水鳥は何も来ていませんでした.土手のセ
ンダン(栴檀,センダン科)は,薄紫色の花をいっぱいつけていました.また,ハリエンジュ(針槐,マメ科,別名:ニセアカシ
ヤ)の白い花が,風もないのにはらはらと落ちて,小径に積もっていました.周辺には,ヒヨドリ(鵯,ヒヨドリ科),ムクドリ(椋鳥,ムクドリ科)およびス
ズメ(雀,スズメ科)だけが飛び交っていました.
里山の家の納屋(倉庫)の屋根には,紫色の小さな花をつけた30cm丈くらいのマツバウンラン(松葉海蘭,ゴマノハグサ科)
が群生していました.集合場所で,まず先月の報告を見ました.コナラ(木楢,ブナ科)に関連して,街路の木楢を切ってしまうという話しがでました.ドング
リで転び怪我をしたときに訴える市民がいるためだそうです.悪いのは,訴える市民か切ることを聞き入れる役所かという議論が出ました.こんなのは,自己責
任というのが多数意見でした.
報告の中のアオキ(青木,アオキ科)の写真は男木だという指摘がありました.太田道灌の話しの中の農家の女性(後に紅皿と いう名前の尼さん)の碑が,新宿にあるという指摘をした参加者がいました. 畑の土と一緒にエビガラ
スズメ(蝦殻天蛾,スズメガ科)のさなぎ殻を持ってきた女性参加者がいました.掘り出すときに傷つけ死んだようでした.
大坂池土手のズミ(酸 実,バラ科)の白い花を観察しました.ズミは棘があるので,公園には向かないという指摘があったという説明がありました.何が安全なのかという議論がまた ありました.直ぐ横のイボタノキ(水 蝋の木,モクセイ科)も観察しました.
オタマジャクシ池の横のカワヤナギ(川柳,ヤナギ科)(以前はイヌヤナギとしていた)にナカグロモクメシャチホコガ(中黒木目鯱蛾, シャチホコガ科)の小さな1齢幼虫ともう少し大きな幼虫を数匹見つけました.どちらが頭かという質問が出ました.触ると2本の触角状のものがついた尾部を 盛んに振って威嚇してきました.カワヤナギの葉に,黄色と黒色の模様のヤナギハムシ(柳葉虫,ハムシ科)の成虫も見つけました.葉の食痕が,バラバラな形 をしていたので,どのような昆虫が食べたのかが話題になりました.蝸牛(かたつむり)は,葉の表面を食べ,コフキゾウムシ(粉吹象虫,ゾウムシ科)のよう に葉の端から食べる昆虫もいますが,食痕がバラバラなのは,いきあたりばったりに食べる幼虫のせいだという意見がでました.
オタマジャクシ池の奥のバンブー(bamboo,イネ科)の桿(さお)に1cm大の穴が沢山あいていました.タイワンタケクマバチ(台湾竹熊蜂,ミツバチ
科)の巣で,周辺をぶんぶんと10数匹が飛び回っていました.捕獲して雄の頭が白いのを確認しました.雌は真っ黒ですが,刺されると危ないので昆虫少年が
針を抜いて子供に渡しました.
また,大坂池の土手に戻り,ハ
ンノキ(榛の木,カバノキ科)の昨年の実殻と小さな今年の雌花の新芽を観察しました.昨年の房状の雄花も木の下で見つけまし
た.
周辺でスイカズラ(忍 冬,スイカズラ科)の白色と黄色の花が混じっているのを見つけました.別名の金銀花の様子でした.花をとって根元を吸うと上品なジャスミン (Jasmine,モクセイ科)の味がすると複数の女性参加者が言いました.野鳥に食べられたのか翅の端がボロになったナガサキアゲハ(長崎揚羽,アゲハチョウ科) を昆虫少年が捕獲しました.このとき,上空をオオタカ(蒼鷹,タカ科)が飛び去りました.
炭焼広場では,多くの親子連れが,サツマイモ(薩摩芋,ヒルガオ科)の苗を植えて,水やりをしていました.水辺近くの大き なエノキの木の幹を数匹のヒオドシチョウ(緋 縅蝶,タテハチョウ科)の幼虫が上下していました.周辺の草むらにもヒオドシチョウの幼虫,前蛹および蛹を見つけました.マイマイガ(舞舞蛾,ドクガ科)の幼虫もエノ キにいました.
水辺の近くで葉だけのゼ
ンマイ(銭巻,ゼンマイ科)を見つけました.林の中でヤマトゴキブリ(大和蜚蠊,ゴキブリ科)を捕獲した昆虫少年は,母親から
捨てるように言われていました.冷凍庫に入れておいて叱られた経験があると言っていました.
柑橘類を植えた場所で,ナミアゲハ(並揚羽,アゲハチョウ科)の一齢幼虫を見つけました.柑橘類の木々は白い花を付けてい
ましたが,木の種類は分かりませんでした.
11:45になり急いで,里山の家に戻り感想会をしました.イナゴ(稲子または蝗,イナゴ科)の佃煮と朝摘みイチゴ(苺,バラ科)が回され ました.「昆虫の幼虫がたくさん見られて良かった」,「金銀花は上品な味がした」,「葉を囓ってみて幼虫の気持ちが分かった」などの感想がでました.ま た,「この観察会は無責任で話しを聞かないで途中どこへ行っても良いので大変気楽だ」という感想まで出ました.虫たちの生きる力を見せつけられた初夏の快 適な観察会になりました.
観察項目:
エビガラスズメの蛹殻,クスノキ,ヨコズナサシガメ,ズミの花,イボタノキ,カワヤナギ,ナカグロモクメシャチホコの幼虫,ヤナギハムシ,タイワンタケク
マバチ,ユズ,ツマグロヒョウモン,アヤメ,ハンノキ,アオサギ,モチツツジ,スイカズラ,ヒオドシチョウの幼虫,前蛹および蛹,マイマイガの幼虫,ウス
ノキ,スノキ,ゼンマイ,ヤマトゴキブリ,サワフタギ,シロシタホタルガの幼虫,カキツバタ,アシ,柑橘類の花,ナガサキアゲハ,ナミアゲハの幼虫,ヒメ
ウラナミジャノメ,エノキ |