3月度の観察記録
カテゴリ : 2007年
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 天気予報では午前中の降雨確率は50%でしたが,曇りのち晴れで,雨にぬれずに観察会ができました.ただし,風が強く,じっとしていると寒く,まだ,春が来たという実感はありませんでした.日陰は特に寒く,2月までの暖かさがどこかへ行ってしまったようでした.新池は,強い風でさざ波が立っていました.コサギ(2羽),カワウ(1羽),バン(2羽),カルガモ(1羽),カイツブリ(1羽)などの水鳥がいましたが,さすがにバンなども水面に少し出てきては,すぐに岸に上がっていました.ムクドリ,ヒヨドリ,スズメも周辺にいましたが,羽根をふくらませて寒そうでした.また,集合場所のソメイヨシノ(染井吉野,バラ科)の花芽もまだ堅く,早咲きのサクラの蕾がかろうじてふくらんでいるだけでした.しかし,ユキヤナギ(雪柳,バラ科)は,白い花を既に咲かせ始めていました.
 参加者は集合時には,25名程度でしたが,出発時には6名の子供を含めて,34名となりました.今回は,東京など遠くから3名の方も参加されました.

集合場所の早咲きのサクラの蕾 ユキヤナギの花

 説明が始まった時に,少しだけ陽が照ってきました.まず,昨年の観察会の記録の本「なごや平和公園の自然 2006」が出来たことが報告され,必要な人に頒布されました.これで,3年続けて観察記録が本としてまとまりました.
 参加者が持ち寄ったソウシジュ(相思樹,マメ科),ゴモジュ(五毛樹,スイカズラ科)およびヒガンバナ(彼岸花,ヒガンバナ科)を観察しました.ソウシジュは,フィリピンや台湾原産で1900年代の始めに沖縄に防風林用に持ち込まれたそうです.アカシアのような羽状複葉と稲の葉のような細長い葉の両方がついた不思議な形状でした.それも,複葉は普通の葉柄から出ているものと,細長い葉の尖端から出ているものがありました.前に観察したアカシア・メラノキシロンのように先祖帰りした葉かと思いましたが,細長い葉は葉柄が変化したものだそうです.複葉はすぐに落ちてしまい,細長い葉状になった葉柄が葉の代わりをするそうです.そうだとすると,葉の定義は一体何だろうという疑問が出ました.黄色い1cm大の球状の花が咲き,マメの鞘のような実がなるそうです.ソウシジュのロマンチックな漢語表記(相思樹)が話題になりました.葉状になった葉柄の表と裏が同じ模様で,昔は恋文に添えて出し,「私の思いは表裏がありません.二心はありません」という意味だと説明する参加者がいました.よく見ると表裏が分かるのではという比喩的なことを言う参加者もいました.
 ゴモジュは,ガマズミの仲間で葉はシャリンバイのようでした.ピンクがかかった白い花が付いていました.赤い実がなるそうです.亜熱帯の木で,日本では沖縄に多いそうです.
大きな球根のついたヒガンバナは,希望者に配布するため沢山持ってこられたそうです.モグラよけに畦道に植えるという話が出ました.
ソウシジュ ゴモジュ ヒガンバナ

 次に,先月の記録を見ました.よく歩き,観察会が終わった時には本当に疲れていたという感想がまた出ました.先月,ある参加者が持ってきた筍は,別の参加者が食べたそうです.ヒメカンアオイ(姫寒葵,ウマノスズクサ科)の話題で,いつも観察後に枯葉でヒメカンアオイを厚く覆ってきましたが,今後はもう少し光が入るようにした方がよいということになりました.また,スズカカンアオイなど他のカンアオイは,ぽつりぽつりと植生しているのに,ヒメカンアオイだけは群生しているのは何故かという疑問が出ました.ヒメカンアオイは主として,根で広がって,他のカンアオイはアリだけに頼って種を運んでもらっているのかもしれないということでした.
 東山森づくりの会の蒔いたナノハナ(菜の花,アブラナ科)は,名古屋市から提供された園芸用のナノハナであり,名古屋市は食用や油を取るためのナノハナの種は,特定の個人が利益を受けるので提供できないということでした.最終的には,バイオディーゼルの試行をしたいという趣旨は活かされそうもありません.
 今回は,先月の予告通り春を探す観察会にすることにして出発しました.

 まず,新池の土手のセンダンの葉痕と冬芽を観察に行きました.枝を下から傘の柄で引っ張って,観察しました.冬芽は葉痕の上に必ずあり,葉痕は「子羊の顔」,「小猿の顔」,「コアラの顔」などに見えるという図鑑の紹介がありました.図鑑を見る前に,葉痕が各自にとって何に見えるかを言うべきだったという感想も出ました.
 次に,元清風荘横のイロハモミジの冬芽を観察に行きました.女の子に擁壁の上に登ってもらい,枝を下げてもらいました.枝は細いので,葉痕は見えませんでした.冬芽は,対生の新枝の尖端も含めて2つずつ出ていました.交互に90度回転した形で冬芽の付いた新枝は出ていましたが,地面に垂直の新枝は落ちてしまうそうです.光の当たる効率が悪いという説明もありました.合理的に考えれば,そのような枝を出すこと自体をやめればと思いますが,まだ,進化中なのかもしれません.
センダンの葉痕と冬芽 イロハモミジの冬芽

 平和公園に入ってすぐのオタマジャクシ池の中を観察しました.水の中には,ヒキガエルの卵塊と既にオタマジャクシになっているものが混在していました.卵塊の中も原腸胚や尾芽胚のものなどがありました.昔は,3日ほどの違いはありましたが,ほぼ同時期に産卵して,その後孵化していたはずが,最近は温暖化の影響などでだらだらと続いているという話が出ました.気候変動に対応して,種の保存を図っているのではという意見も出ました.池の中のオタマジャクシを見ようとして,男の子が前のめりになって池の中に落ちてしまいました.元気いっぱいの男の子は泣かずに,お姉ちゃんにすぐに引き上げられ上着を脱がせてもらっていました.上着の下はぬれなかったようでした.
ヒキガエルの卵塊

 オタマジャクシ池のすぐ横の草むらで,テントウムシの幼虫と成虫を観察しました.春は確かにここに来ていました.カスマグサ(カス間草,マメ科)も同じ所で観察しました.尖端のつるが1本のものがカスマグサで,3本のものがカラスノエンドウ(烏野豌豆,マメ科)ということを図鑑で確認しました.オタマジャクシ池の向えの草むらでカラスノエンドウも見つけました.カラスノエンドウにはシミのように見える蜜腺もあり,アブラムシも付いていました.
 さらに歩いていくと,小径の横で背の低いコバノミツバツツジ(小葉の三葉躑躅,ツツジ科)が,ピンクの花を咲かせていました.何とも言えない上品な色でした.その向えの畑には,ヒメオドリコソウ(姫踊子草,シソ科)が群生していました.小さな薄紫のラッパ状の花が,それぞれに付いていました.写真を撮りに行くと,ジョウビタキの雄が,私の横を鳴きながらすっと飛んで行き,茂みに隠れました.
カスマグサ コバノミツバツツジ ヒメオドリコソウ

 芝生広場前の水田まで行き,3本の花の咲いたヒサカキ(姫榊または不榊,ツバキ科)を観察して比較しました.湿地の角の大きな木は,すぐに雌花を咲かせた雌株だと分かりましたが,畦道の2本は,花の中に多くの雄しべがあったので,最初は雄花を咲かせた雄株ではということでしたが,よく観察して,雄しべと雌しべのある両性花であることが分かりました.雌花は,両性花に比べて,花は小さいですが開きが大きく,花粉を受け入れやすくなっていることを観察しました.後で,別の場所で雄株の雄花も観察しました.花の香りをかいだ人もいました.後で行った感想会で出ましたが,ヒサカキの花はガスのにおいがするというのが一般的のようです.ガス漏れを消防署に通報して,実は庭のヒサカキの花の臭いだったという話も出ました.お新香の臭いだという人がいることも紹介されました.
【外部リンク】日本緑化工学会 コラム緑化植物 ヒサカキ

ヒサカキの両性花 ヒサカキの雌花

 この場所で,ツルマメ(蔓豆,マメ科)の種が飛び出した後の鞘が捻れているのを見て,その鞘を水につけると捻れが直ることを観察しました.同じマメ科のフジも乾燥して,捻れて種を飛ばすときに大きな音を出すという説明もありました.
 井戸の横にあるネコヤナギ(猫柳,ヤナギ科)には,まだ,ふわふわの芽はついていませんでした.この井戸の水を飲んだある新聞記者が,偶然名水を種々の所で飲んでいて,この水はまずいと即座に言ったそうです.周辺の湿地の水の中には,アカガエルのオタマジャクシが沢山いました.
 小径横のレンギョウ(連翹,モクセイ科)は,まだ,ほとんどが枝ばかりで,黄色い花の蕾は2〜3しかありませんでした.陽当たりの良い他の場所では,既に,黄色い花を満開にしているレンギョウもあり,同じ公園の中でもこんなに違いがあるかと驚きました.ツバキ(椿,ツバキ科)が,白い花や赤い花を咲かせていました.サザンカ(山茶花,ツバキ科)ではないかという問いには,葉柄が長いので種類は分からないが,ツバキであるということになりました.

ツバキ

 さらに歩いて,カラタチ(枳,枸橘または枳殻,ミカン科)を観察しました.まだ,棘だらけで葉は出ていませんでした.アゲハチョウの幼虫もまだいませんでした.何故こんなに棘だらけになっているのだろうということが話題になりました.一般に,植物の棘は草食動物から身を守るためと言われていますが,子供からアゲハの幼虫を鳥から守ろうとしているのでは,という意見が出ました.それにしても,これほどのトゲトゲにならなくてもという感想も出ました.

 次に,クズの葉痕と冬芽を探しに行きました.園芸バサミでクズの枝を切って,皆で観察しました.子供の顔やナマケモノなどに見えると図鑑に載っていることが紹介されました.葉痕のHPでは,クズの葉痕が人気第1だそうです.人の顔に見えるといっても,種々の形があり,美人に見えるものを探した人もいました.

【外部リンク】冬芽と葉痕

クズの葉痕 クリの葉痕と冬芽

 キンモクセイ(金木犀,モクレン科)とコブシ(辛夷,モクレン科)も観察しました.キンモクセイの葉には,5mm大のフンがいくつかついていました.何のフンかは分かりませんでした.昨年,木の下に沢山落ちていたコブシの実は,今年はほとんどありませんでした.コブシの種には,果肉がほとんどなく鳥だましだそうです.他の木の種も,そのようになると鳥がだまされなくなるという話も出ました.
 次に,グミ(茱萸または胡頽子,グミ科)とクリ(栗,ブナ科)も観察しました.葉痕のすぐ上にあるクリの冬芽は,栗の実そっくりでした.周辺には,ジョウビタキとフユシャクガ(冬尺蛾,シャクガ科)がいました.フユシャクガは冬に適応して,外敵がいないときに出てくる蛾で,雌は羽根が退化して飛べません.

【外部リンク】OWL Museum フユシャクガ

陽当たりが良くて,風が遮られる場所で,感想会をしました.先月まで,オオアカハラがいた林のすぐ横の草地です.地面はしめっており,直接草の上に座って,ズボンのお尻がぬれてしまいました.家族連れで来ていた参加者は,ビニール風呂敷を広げて,楽しいお弁当を食べました.周辺には,黄色いミモザ(別名:銀葉アカシア,マメ科)の花が咲き,ムクドリ(4羽),ツグミ(1羽)およびアオジ(2羽)がいました.オタマジャクシ池に落ちた小さな男の子も,大きな声で感想を言えました.平和公園に秘密基地を造るのだいうことを言っていましたが,お父さんには早くお家に帰りたいということも言っていました.
 黒蜜とクルミを入れた素朴なクッキーがふるまわれました.昔食べた蕎麦ボーロのような味でした.
 密かにまばらに来ている春を探した楽しい3月の観察会になりました.

感想会

観察項目:ソウシジュ,ゴモジュ,ヒガンバナ,センダンの葉痕と冬芽,イロハモミジの冬芽,クワ,ヒキガエルの卵塊(原腸胚,尾芽胚)とオタマジャクシ,テントウムシの幼虫と成虫,カスマグサ,カラスノエンドウ,アブラムシ,コバノミツバツツジ,ヒメオドリコソウ,アカガエルのオタマジャクシ,ヒサカキ(雌花,雄花,両性花),ネコヤナギ,レンギョウ,カラタチ,クズ,キンモクセイ,コブシ,グミ,クリ,蛾の卵,フユシャクガ(概ね観察順)
伊藤義人
監修 滝川正子

「なごや平和公園の自然」,「なごや平和公園の自然 ?」および今年出た「なごや平和公園の自然 2006」は,平和公園の里山の家で入手できます.