3月度の観察記録
カテゴリ : 2017年
2017年3月度の観察記録です
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雲が少し多い晴れの天気で,かなり暖かく着てきたものを1枚脱いだ方が良いようでした.新池には,オオバン(大鷭,クイナ科)4羽,ヒドリガモ(緋鳥鴨,カモ科)4羽,コガモ(小鴨,カモ科)16羽がいました.
コガモは北側の張り出した樹木の下におり,隠れてよく見えない部分もありました.大坂池周辺には,先月と同じようにカワセミ(翡翠,カワセミ科)が1 羽とコゲラ(小啄木鳥,キツツキ科)とシジュウカラ(四十雀,シジュウカラ科)が2羽ずついました.
参加者は,子供6名と大人34名と大勢で,久しぶりの子供たちの参加で賑やかな観察会になりました.

オオバン シジュウカラ

里山の家の中で集合して,まず,先月の報告を皆で見ました.新池のコサギ(小鷺,サギ科)の写真を見て,最近,少しずつコサギが戻ってきたという感想がでました.湿地のアシ(芦,イネ科)を切ったので,オタマジャクシがコサギに食べられてしまうという人がいました.

【外部リンク】コサギ(湖北の自然)

関連して,カラス(烏,カラス科)は人を見分けることができ,エナガ(柄長,エナガ科)の巣を観察している人について行って,巣を襲うという説明がありました.参加した1人の男の子が,校庭に烏が落ちていて処分されたという話をしました.関連して日本野鳥の会の「ひなを拾わないで」という22年目のキャンペーンについての説明がありました.巣から落ちたひなも,近くに親鳥がいて面倒を見ている可能性もあるということです.また,ひなを持ち帰っても育てるのは難しいといわれています.
ニホンアカガエル(日本赤蛙,アカガエル科)の卵塊は,これまで平和公園で最大で84個でしたが,今年は4個だけという報告でした.昨年はあった,猫ヶ洞池のヒキガエル(蟾蜍,ヒキガエル科)の卵塊は,今年はまだ見つけられないということでした.定光寺には,まだヒキガエルはいるということでした.
モリチャバネゴキブリ(森茶翅蜚?,チャバネゴキブリ科)の写真を見て,まだ,これは幼体(幼虫)で,ゴキブリは不完全変態なので,さなぎにならないという説明がありました.これだけ広がっているトウネズミモチ(唐鼠黐,モクセイ科)の駆除は難しいですが,東山公園の植物園は伐採したそうです.
蛾の中で最も綺麗(最美麗種)なサツマニシキ(薩摩錦,マダラガ科)の終齢幼虫を外から持ってきた参加者がいました.触ると毒ではないですが,にがい液を出すそうです.ヤマモガシ(山茂樫,ヤマモガシ科)の葉裏のみを食べていました.

【外部リンク】サツマニシキ(昆虫写真図鑑)

カスミサンショウウオ(霞山椒魚,サンショウウオ科)のキャラクターグッズとして30cm 大のカスミキンタロウの人形を持ってきた人がいました.前任の職場で造った非売品ということでした.「自然観察のポイント」という文一総合出版から出たばかりの本も紹介されました.

サツマニシキの終齢幼虫 カスミキンタロウの人形

今回は藪こぎもするよく歩く観察会にするとして出発しました.里山の家を出たときに,ムクドリ(椋鳥,ムクドリ科)8羽が飛び立ちました.
大阪池の西南側に植えられた紅梅にシジュウカラが来ていて,しきりに鳴いていました.大坂池南側の畑で,イボタノキ(疣取木,モクセイ科)を密集して植えたので,間引く必要があるようでした.イボタガ(水?蛾,イボタガ科)が飛んできてくれたらという参加者がいました.人間による公園への持ち込みは,もちろん厳禁です.ハラビロカマキリ(腹広蟷螂,カマキリ科)の卵鞘を見つけたときに,昆虫大好き少年が,卵鞘の見つけ方の説明をしてくれました.ハラビロカマキリは樹上性で,草地性のオオカマキリ(大蟷螂,カマキリ科)やコカマキリ(小蟷螂,カマキリ科)などは,草むらや樹木の下の方に卵鞘を作るということでした.

【外部リンク】カマキリの卵鞘を探してみよう(日本自然保護協会)

紅梅 イボタノキ ハラビロカマキリの卵鞘

登りの藪こぎをして,森の中へ入ったときに,コゲラが2羽盛んに幹を回り込んで虫を取っていました.木の根元に落ちていたアベマキ(阿部槇,ブナ科)のどんぐりから根が出ていました.モリチャバネゴキブリの幼体が,枯葉の中に数匹いました.1m 丈のヤマコウバシ(山香し,クスノキ科)には,枯葉がついたままになっていました.葉柄に離層がうまくできず,新しい葉芽が出てくるときになって,落葉するという説明でした.落ないということで受験生の合格祈願のお守りに使われます.薮こぎを終えた所で,アブラゼミ(油蝉,セミ科)の2種の大きさの違う抜け殻を見つけました.お腹にこぶがないので,クマゼミ(熊蝉,セミ科)ではないという判定をしました.

根の出たアベマキのドングリ ヤマコウバシ アブラゼミの抜け殻

緑色のアオスジアゲハ(青条揚羽,アゲハチョウ科)の3cm 長くらいのさなぎを葉裏に見つけましたが,2つの黒点があり,蜂などに寄生されており,多分羽化しないという説明でした.ヤツデ(八手,ウコギ科)の葉裏に黒色のカタビロトゲハムシ(肩広刺葉虫,ハムシ科,通称:トゲトゲ)を見つけた人がいました.そのすぐ横に,小さなチャタテムシ(茶立虫,チャタテムシ科)の幼生もいました.ハモグリ(葉潜り,ハモグリムシ科,通称:ジカキムシ(字書虫))に食べられた葉を見つけて,複雑な模様を観察しました.

アオスジアゲハの蛹 カタビロトゲハムシとチャタテムシの

かなり急な斜面の下りの藪こぎをして,湿地まで行きました.途中で,アベマキ(阿部槇,ブナ科)の幹の小さな洞にクヌギカメムシ(欅亀虫,カメムシ科)の卵を見つけて写真に撮りました.携帯などで光を当てないと見えないような位置にあり,観察に苦労しました.高い位置から里山の家の背景となっている名古屋市の高層ビル群を遠望しました.

クヌギカメムシの卵 名古屋市の高層ビル群

水田の西側の湿地で,15mm 長くらいの非常に小さなニホンアカガエルのオタマジャクシが中で動いている卵塊を捕虫網ですくって透明容器に入れて観察しました.既にすべてが孵化していました.

ニホンアカガエルの卵塊とオタマジャクシ オタマジャクシ    

周辺のあぜには背の低い土筆が数本あり,子供たちが取りました.一緒に,ヒメオドリコソウ(姫踊子草,シソ科),オオイヌノフグリ(大犬陰嚢,オオバコ科),タネツケバナ(種浸花,アブラナ科)などが花を咲かせていました.

ヒメオドリコソウ オオイヌノフグリ タネツケバナ

日あたりのよい水田北側の土手で,ギシギシ(羊蹄,タデ科)の葉裏を探しました.密集した黄色い卵をいくつかの葉裏で見つけました.これまで何度か観察したコガタルリハムシ(小型瑠璃葉虫,ハムシ科)の卵でした.黒い幼体も2匹見つけましたが,成虫は見つかりませんでした.テントウムシ(天道虫,テントウムシ科)がこの卵などを捕食しているという説明がありました.近くにカラスノエンドウ(烏豌豆,マメ科)が群生しており,これについた油虫を食べているテントウムシの成虫がいました.また,枯葉の裏に密集してテントウムシの黄色い卵を見つけました.ざっと見て,50個くらいという人がいましたが,写真を撮って,数を数えた人もいて,正確には37個ということでした.

コガタルリハムシの卵 テントウムシの卵

赤い口を持ったクビキリギス(首螽斯,キリギリス科)と水中を泳いでいたトゲヒシバッタ(棘菱飛蝗,ヒシバッタ科)を男の子が捕獲して皆で観察しました.ケキツネノボタン(毛狐牡丹,キンポウゲ科)の黄色い花も数株ありました.土手の一部は,湧水でぬかるんでいましたが,そこでヒメタイコウチ(姫太鼓打,タイコウチ科)を男の子が見つけました.ヒメタイコウチは水の中では溺れるので,水際に生息しているという説明がありました.
すぐ近くの土手に,花芽がたくさん付いたヒサカキ(姫榊,ツバキ科)がありました.

クビキリギス ケキツネノボタン ヒメタイコウチ

大坂池の土手に戻って,先月観察したハンノキ(榛の木,カバノキ科)の幹についたミドリシジミ(緑小灰,シジミチョウ科)の卵とハラビロカマキリの卵鞘を観察しました.白梅の木にスズバチ(鈴蜂,スズメバチ科)の泥でできた巣も観察しました.その白梅の花には,たくさんのハナアブ(花虻,ハナアブ科)が来ていました.キタテハ(黄立羽,タテハチョウ科)を昆虫大好き少年が網で捕獲しました.

スズバチの泥でできた巣

里山の家のなかの机を移動させて対面ができるようにして,お弁当を食べながら感想会をしました.甘夏のチョコピールが,いつもの女性参加者から提供され,大変おいしく食べました.甘夏の皮は,ピールを作りやすいそうです.
今年は春の訪れが遅く蝶は少なかったという感想がでました.代わりに,地面に近いところで生息する虫たちが多く見られました.当初のよく歩くという目的は達成できませんでした.地面からの放射熱で木の花も下から咲くという説明もありました.
「虫をみるひと」というブログを始めたと報告した男性参加者がいました.

【外部リンク】スズメバチまとめⅡ(虫をみるひと)

写真を撮った場所や時間を示すかということで活発な議論が出ました.特に,貴重種の扱いが問題で,持って行ってしまう人がいて,貴重種の絶滅につながることもあるようです.
多くの子供が参加して活気のある初春の楽しい観察会になりました.

観察項目:サツマニシキ,ヤマモガシ,イボタノキ,ハラビロカマキリの卵鞘,コゲラ,発芽したアベマキのドングリ,モリチャバネゴキブリ,ヤマコウバシ,アブラゼミの抜け殻,アオスジアゲハのさなぎ,ヤツデ,カタビロトゲハムシ,チャタテムシ,クヌギカメムシの卵,ニホンアカガエルのオタマジャクシ,ヒメオドリコソウ,オオイヌノフグリ,タネツケバナ,ギシギシ,コガタルリハムシの卵と幼虫,カラスノエンドウ,ナミテントウの卵と成虫,クビキリギス,トゲヒシバッタ,ケキツネノボタン,ヒメタイコウチ,ヒサカキ,テントウムシの卵,ミドリシジミの卵,スズバチの巣,ハナアブ,キタテハ

文・写真:伊藤義人 監修:瀧川正子