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2020年 10月 11日（日）9：30〜12：00 作成：田畑恭子 監修：瀧川正子 台風14号が遠ざかり、東山の森には快晴の秋の空が広がっていました。あまり天候に恵まれていない今年の自然観察会ですが、今回はこれ以上はないというほどの好天で、大勢の参加者が集まりました。
7月の自然観察会で、里山の家の前のケヤキの下のウンモンスズメの幼虫の糞を観察しましたが、今回は別のケヤキの樹上の幼虫の姿を確認することができました。同じように樹の下には大きな糞がたくさん落ちていました。幼虫は終齢のように見え、このあと地面に降りて来て土にもぐり蛹で越冬するそうです。クスノキの下ではアオスジアゲハの終齢幼虫が歩いていました。体が透き通るような色になっていました。チョウやガの幼虫は蛹になる前に体色が変化するものが多いようです。日高敏隆氏の論文には「老熟幼虫は消化管の糞も食物もすべて排出され」「かわりに消化管はのみこまれた多量の空気でみたされている」との記述があります。子どもたちが代わるがわる幼虫を触るのを見て大人は幼虫が弱ってしまわないかと心配していました。参加者の女の子が、持参の虫網を振ったらクモが入ったと言って見せてくれました。捕れていたのはマミジロハエトリのオスでした。
事前に炭焼き広場でシンジュキノカワガの繭を見つけたという参加者に案内されて行くと、シンジュの木の周辺ではカマキリの仲間が次々と見つかりました。オオカマキリやハラビロカマキリのほかにムネアカハラビロカマキリもいました。外来種のムネアカハラビロカマキリについてはこの自然観察会で過去に何度か紹介されていますが、今回もその来歴や生態に触れ、在来種の存続がが外来種によって脅かされていることが説明されました。また、ハラビロカマキリとムネアカハラビロカマキリを見分け方はいろいろありますが、虫を手に取らなくてもわかる外見上のポイントが紹介されました。胸と腹との長さのバランスに違いがあり、ムネアカハラビロカマキリは胸の部分が長いことで簡単に見分けることができます。この日は褐色型のハラビロカマキリも見つかりました。
お目当てのシンジュキノカワガの繭が見つかり、交代で観察しました。シンジュキノカワガの繭の中の蛹は、外部から刺激を与えると動いて音を出します。マラカスの音と表現され、この日も確認できた参加者がいました。シンジュキノカワガは今のところ名古屋では越冬できないと考えられています。周辺ではツチイナゴやコバネイナゴがたくさん捕らえられました。バッタとの見分けが難しいと思われがちですが、胸の部分にある突起がイナゴ類の特徴であると紹介されました。ヨシ原の周りには大きく成長したジョロウグモやナガコガネグモの網がたくさん張られていました。見ている前でヒナバッタがジョロウグモの網に飛び込み、捕らえられていました。
ジュズダマの実が熟していました。白い実と黒い実があり、一人の女性の参加者の声かけでその両方を同時に水に落としてみました。黒いものは沈み白いものは流されて行きます。実を割ってみると白いものは簡単に壊れ、中は空っぽでしたが、黒いものは固く歯で噛んでもなかなか壊れませんでした。
毎年10月に観察しているミゾソバの花がこの日もたくさん咲いていました。1週間後に稲刈りを控えた田んぼのイネは美しい黄金色の穂を垂れていました。水の抜かれた地面の中からアメリカザリガニが出て来ているのに気づいてよく見ると、イネの穂を食べているところでした。大きなカキノキにはハシボソガラスが来ていて、赤く実った実をつついていました。
道端のヘクソガズラには実がついていました。夏に可愛らしい花を咲かせて名前が悪いとよく言われますが、つぶれた実や葉の断面を嗅いでみると花と同じ強烈な匂いで、嗅いだ子どもが顔をしかめていました。中道沿いに進み、ニセアカシアの木が何本か生えているところへ出ると、一人の参加者からその木の根元のササや草本類があまり育たず元気がない様子が指摘されました。そしてその理由としてニセアカシアからアレロパシーという植物の生長を阻害する化学物質が発せられていることが説明されました。中道沿いにはオッタチカタバミの黄色い花が咲いていました。なぜそんな名前がついているのかとの質問に、実のつき方を見てみると分かる、と答えた人がありました。中に種がつまった�櫺未鮓�ると、みんな上を向いて立ち上がっていました。
ヤマノイモの茎についた大きな幼虫が見つかりました。スズメガの幼虫でしたが種まではすぐにわからずグーグルの画像検索でキイロスズメと突き止めた参加者がいました。便利なツールが開発されたものです。足元の花を咲かせたチヂミザサは穂の部分がベタベタしてズボンにくっつく厄介者です。チヂミザサの葉の手ざわりはフワフワで、その表面には多数の毛が生えていました。
もう少し歩いてウマノスズクサについたジャコウアゲハの幼虫を見に行きました。アゲハの仲間は蛹で越冬するそうです。ここで昆虫や植物が日照時間の変化によって季節の移り変わりを感じているという話を聞きました。ところでこの日は開始前の里山の家で「アケビが採りたい」と言った女の子がいたので、トウチク林の近くのアケビを目指して歩いてきました。採れたミツバアケビの実はまだ開いていませんでしたが、少し力を入れると簡単に割れ目ができて中身が顔を出しました。帰り道でカラタチの木にたくさん実がついているのを見て、一つもいで割ってみました。ぱっと柑橘系のさわやかな香りが広がりました。食べてみると酸っぱさにクセがなく、みんな思いのほか好ましいとの印象を口にしていました。それでもスダチやユズのように流通しないのは、カラタチのトゲが太くて鋭く収穫に手間がかかるからではないかとの意見が出ました。
最後に観察会に参加する子どもたちが採集する生きものについて考える時間が設けられました。自然の豊かな森に遊びに来れば、好きな虫を追いかけ次々と虫かごに入れ持ち帰りたくなるものですが、ここは自然観察会という名の通り、虫を捕るための会ではなく、今そこにある自然の姿をみんなで見て感じ取り、新しい発見をしたり共感したりすることを大切にする会でありたいということ、そして在来種であれ外来種であれ、「持ち込まない、持ち出さない」の原則が再度示されました。
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