2021年 1月 10日(日)9:30~12:10 作成:田畑恭子 監修:瀧川正子 新型コロナウイルスの感染状況が再び悪化して、今年最初の自然観察会は残念ながら中止せざるを得なくなりました。これは2021年1月の記録を残すことを目的として自然観察指導員と有識者数名で歩いて取った記録です。 この冬3度目の寒波が到来していました。朝の最低気温は-2℃で底冷えの感がありましたが、里山の家が開く頃にはすでに何組かの家族連れが公園を訪れていました。出発してすぐのところにセンダンの木が2本あり、つけている実の色が木によって違うのが目につきました。センダンの実の皮を指で剥くと、ベタベタした果肉が現れました。その近くのスホウチクを観察すると1本の竹に穴が4つも開いていました。タイワンタケクマバチがあけた穴でした。そのほかには2つ以上の穴があいた竹は見当たらず、なぜその1本が選ばれたのかが不思議でした。
オタマジャクシ池には氷が張っていて、氷の厚さは8mmほどでした。毎年この季節の自然観察会で氷を観察しますが、今までの中で一番の厚さでした。池の端では霜柱も見ることができました。少し進むと実をたわわにつけたヌルデの木が見つかりました。
先月の観察会で観察した越冬中のウラギンシジミとクリオオアブラムシの卵を確認してから森の中に入ると、コゲラの巣穴があいた倒木がころがっていました。林床にはマンリョウやヤブコウジが赤い実をつけていました。ガマズミもわずかながら実を残していました。
畑にさしかかるとソシンロウバイの花がちょうど咲き始めたところでした。その甘い香りはマスク越しでも確認することができました。先月の自然観察会では発見できなかったタテジマカミキリですが、畑の近くのカクレミノで越冬している姿を見ることができました。そして同じ木の別の枝にはタテジマカミキリが出てきたときにあけたと思われる穴が見つかりました。
タマカタカイガラムシがたくさんついているウメの木でアカホシテントウが越冬していました。樹皮の割れ目に7頭集まっているところもありました。注意していないと見過ごしてしまうシンジュキノカワガの繭ですが、今回見つかったのは成虫が出たあとの繭で、中を調べると空になった蛹と幼虫の抜け殻が入っていました。
カキノキの幹にしがみついたまま死んでいるナガゴマフカミキリがいました。先月の自然観察会でもタテジマカミキリが同じような状態で見つかりましたが、ボーベリア菌に侵されて命を落としたものでした。このあとこの日2頭目のタテジマカミキリを観察しました。この日の1頭目も2頭目も頭部を下に向けてカクレミノにしがみついていました。
最近の自然観察会では時間が足りなくて滅多に行くことのないエリアまで足を延ばしました。トウチク林を抜けるとカンチクがたくさん生えていました。細い竹で独特の暗褐色をしています。その先のコブシのつぼみを観察すると、毛深い萼片で覆われてスベスベした手触りでした。
弱った木の樹皮を地衣類が隙間なく覆っていました。また同じ木にノキシノブも数多く生えていました。ノキシノブの葉を裏返すと薄茶色の胞子嚢が2列になって並んでいました。
アラカシの木ではいろいろな昆虫の冬越しを確認することができました。重なった葉の間にできた古いクモの巣の中にはナミテントウが潜んでいました。また枯れ葉の塊が枝にひっかかった場所をのぞき込むとムラサキシジミが見つかりました。
枯れ葉が重なっているところをそっとはがすとキモグリバエの仲間がいました。頭から翅の先までの大きさが3mmほどしかありませんでした。
倒木には2種類のキノコがびっしりと生えていました。少し似ていますが傘の裏を見るとひだ状のものとスポンジ状のものというはっきりした違いがありました。
樹皮がコケで覆われているところをよく見ると胞子嚢が何本も伸びて赤く色づいているのがわかりました。スギの枝にはクモの卵嚢がついていました。大きさは2㎝ほどで、上部は円錐状、下の方は半球状になっていました。そのスギはもう雄花をつけていてつぼみは少し膨らんで見えました。花粉症の季節はすぐそこまで迫ってきているようです。
中道はどこもアベマキやコナラの落ち葉がたくさん積もっていました。アベマキの落ち葉を観察すると表と裏では色が違い、裏は表より白っぽいのがわかります。アベマキの葉は表には毛がなく、裏側は細かい毛で覆われているため色が違って見えるのです。またところどころで見られたイロハモミジは枝も冬芽も美しい赤色で、冬芽は陽の光で照らされツヤツヤと光っていました。スイカズラは初夏に可愛らしい花を咲かせて目を引きますが、常緑植物で冬は葉が残り、姿は目立たないものの中道沿いにたくさん生えていました。
ツバキの木がつぼみをつけていました。中には咲き始めている木もあり、中道沿いの斑入りのピンクのツバキはすでに咲き終わったものもありました。アオキは雌雄異株の植物で、この日花を観察したのは雌株でした。その近くではヤマノイモの実がつる状に連なっていました。
つどいの丘のキリの木を見上げると高い枝にレモン型の果実が残っていました。手が届く場所にはムクノキの実が少し残っていました。里の道を通って戻る途中、スズコナリヒラの斑入りの葉の美しさを改めて見直しました。またニシキギは赤い実をまだたくさんつけていました。
ジャノヒゲの実が熟していました。光沢のある青で、実の形は整った球形です。すぐそばで見られたノシランの実は楕円形で、色は緑でしたが、やがて熟すとこれもまた青くなるようです。また確認に行きたいと思います。
最後にコウバイの木を観察しました。幹の割れ目でヨコヅナサシガメの幼虫が集団で越冬していました。コウバイの花はまだほとんどがつぼみでしたが、わずかながら咲いているものもありました。
愛知県ではこの記録会の4日後に2度目の緊急事態宣言が発出されました。医療現場の逼迫した状況も連日報道され、コロナ禍はなかなか終息しそうにありません。でもこの日平和公園を歩き、これから先の私たちの暮らしがどう変化するにせよ、森の自然はいつもの姿でそこにあることを確認することができました。この豊かな自然の中での発見や感動を参加者のみなさんと笑顔で共有できる日が戻って来ることを願うばかりです。
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