2月の観察記録
カテゴリ : 2005年
Untitled Page

 朝から曇りで,風はありませんでしたが寒い日でした.じっとしていると底冷えしました.新池には,コサギが25羽も来ていました.

 つがいのオシドリ,ハシビロガモ,ヨシガモ,ヒドリガモ,オナガガモ,カルガモ,バンなども来ていました.今シーズンは,多くの水鳥が新池に来ています.来シーズンからも続くと良いですが.集合時間の前に,多くの参加者が新池の野鳥を観察していました.子供達は元気良く木遊びなどをしていました.冬は寒いですが,落葉しているので,種々のものが観察しやすいため,集合場所での参加者は,子供7名を含む51名と大勢でした.

コサギ カモ キョウチクトウ

 まず,いつもの集合場所で,昨年一年間の平和公園の自然観察の本「なごや平和公園の自然(なごや自然観察会)」ができたとの報告があり,希望者には1,200 円で配られました.毎月の観察会の報告を,再編集して私が作ったものです.カラー印刷ですので,全て売れても赤字です.次に,参加者が持ってきたキョウチクトウ(夾竹桃,キョウチクトウ科)の実を観察しました.白やピンクの花は,夏によく見ますが,実はほとんど見たことがないということで持ってこられました.実の中の種には冠毛と毛がついていました.

【外部リンク】岡山理科大学 植物生態研究室

 新池に珍しくオシドリのつがいが来ているということで,オシドリが話題になりました.夏には,どこに行くかという問いに対して,シベリアや中部山岳と答える人もいましたが,オシドリは渡り鳥ではなく,里山鳥であり,稲武などで水辺の樹洞に巣をつくり繁殖するそうです.水掻きがあるのに,枝にとまれるのだろうかという疑問も出ました.雄の大きくきれいな銀杏羽(いちょうばね,第一三列風切り羽)は,飛ぶときは胴体にくっついて邪魔にならないそうです.8月には,全身換羽してメスと似た灰褐色の羽になるそうです(エクリプス).

 そのときは,くちばしの色によって雌雄を識別(雄は赤い)するそうです.毎年,つがう相手をかえるということで,決しておしどり夫婦ではないという話も出ました.「オシドリは浮気をしないのか(山岸哲,中公新書)」という本も出ています.

 ここまでで10時になってしまい,自己紹介は省略して,よく歩く観察にするということで出発しました.結局は,いつものように留まり留まりして,種々のものを観察して歩くことになりました.

 集合場所の公園出口近くの芝生に,背中の模様や色が異なる2羽のツグミが遊んでいました.また,元清風荘の松にカラスの巣があり,カラスは加害者の方が多いですが,野鳥の繁殖率は2割程度しかないという話が出ました.集合場所の公園を出て,道路端の土手に枯れたタカサゴユリ(高砂百合,ユリ科)がありました.既に種は飛んでいました.引き抜いて,球根の付いていない根を茎から離して観察しました.種の入っていた鞘のついた細長い茎は子供が喜んで持って遊んでいました.タカサゴユリについて,観察会の本「なごや平和公園の自然」を使って,種でも増えるという説明と花の写真を参考にしました.本の索引(336 項目)を使うことによって,タカサゴユリが載っているページがすぐに分かりました.

ツグミ タカサゴユリ

 先月と同じように,トウカエデ(唐楓,カエデ科)の枝に残っているヒヨドリの巣を観察しました.特徴としては,枝の根元にあり,お椀型の形状であることが再確認されました.このとき,参加者が5mm 程度の小さな虫を持って来ました.ミミズにしては小さく,何かの幼虫のようにも見えました.平和公園の駐車場横の水飲場で,洗って観察すると,一方の端が赤く切れており,結局,鳥などに食べられたミミズの残りということが分かりました.

 水飲場近くのケヤキ(欅,ニレ科)にあけられたコゲラの3cm 大の円形の巣穴とクスノキ(楠,クスノキ科)を観察しました.両方の樹木とも弱っていました.ケヤキは,一部の枝が枯れており,キノコもついていました.そのところにコゲラが巣穴を造っていました.巣穴の深さは,もう少しで枝を突き抜ける程でした.クスノキの葉は波打っていますが,ソヨゴとは波打方が違うという指摘がされました.害虫よけの樟脳を取った木ですが,防衛機能が弱っているため,案の定,一部の葉がハモグリバエ(俗にエカキムシまたはジカキムシとも言う)に食われ,葉に独特の白い線ができていました.

ミミズ クスノキの葉の中にハモグリバエの幼虫が動いた跡

 平和公園に入ってすぐのところでアシナガバチの巣を見つけました.葉がすべて落ちた木の枝についていました.

 冬は,隠れていた鳥の巣や蜂の巣なども観察でき,観察会にとってはうれしい季節です.畑の方へ行きソラマメ(空豆,マメ科)を見ました.このときに,周辺の樹木に小さな白いものがついており,なんだろうという問いがありました.結局,これは綿で,蛾に興味を持っている人が,綿に蜜などを含ませて,木につけて蛾を誘因しているということでした.何か新しい発見かと思った参加者はがっかりでした.

 ここから薮こぎをしてヒメカンアオイ(姫寒葵,ウマノスズクサ科)を観察に行きました.途中で,枯れ木にコゲラの巣穴がありました.また,倒木についていたキノコに子供が興味を持ちました.小さなサルノコシカケ(猿の腰掛け,サルノコシカケ科)でしたが,食べられるかどうかを知りたかったようです.漢方薬や抗ガン剤(?)としても売られていますので,毒ではないようです.ヒメカンアオイは,今回は葉や花の数は数えませんでした.

ソラマメ 平地の松の年輪

 薮こぎを終わって小径に出たところで,松の木の切り株を観察しました.松食い虫にやられた木を切ったあとです.斜面の切り株と小径の平地のところの切り株を比較しました.切り株の上に磁石を置いて,物理的な北と切り株の年輪の密な方向が一致するか試しました.斜面の切り株は一致せず,平地のものは一致しました.斜面の針葉樹は,重力の逆方向(垂直)に芽を出し,谷側に傾かないように,谷側の年輪が広くなって(リグニンが多い),傾こうとする幹を押し上げようとするそうです.そうやって斜面の松は,重力の逆方向にまっすぐ伸びるそうです.広葉樹の場合は,違うメカニズムだそうです.広葉樹は,斜面に垂直に芽を出し,弓なりになって重力の逆方向にまっすぐ伸びようとして,傾いた幹を引っ張り上げようとして山側の年輪が広くなる(太く長いセルロースをもった細胞)という解説を農学部の大学院生の参加者がしてくれました.結局,斜面の方向が違うと年輪の蜜な方向は違って来ますので,年輪の幅の粗密で南北を判定することはできないということでした.平地においても同様で,日の当たり方で年輪の幅が変わることはないそうです.今回の平地の松の年輪の幅の狭い方が北であったのは別の理由がありそうです.

【外部リンク】孫たちに贈る森の科学

堀 大才,岩谷美苗:図解 樹木の診断と手当て,農文協,2002 年,pp.49-50.

 斜面の松の切り株の年輪の数は46〜47でした.切り株の上縁が面取りをしてあるものがあり,その理由がとりざたされました.安全上の問題であるとか,単に切った業者が違うのではなどが出ましたがはっきりしませんでした.比較的,切り株の背の高いものが面取りされていましたが,針葉樹はヤニが出るので腰掛けとしては使わないという指摘もありました.切り株から発想してバームクーヘンの話が出ると,男の子が早速食べたいと言いました.なお,松は材としては,中心の赤くなっているところにリグニンが多く,固い材として価値が高いそうです.

 切り株のサイドに数mm の丸い穴が複数あいている切り株がありました.カミキリムシが入った跡のようでした.小枝や松の枯れた針葉を使って,深さを調べましたが9cm 以上も水平に入っていきました.

 少し歩いていくと,シロハラが前方の小径をゆっくりと歩いて,姿を見せていました.男の子が追いかけると,シロハラは急いで飛び立ちました.尾羽の先端の白色がよく見えました.ツグミの仲間ですが,腹が単色の灰白色ですのですぐに分かります.アカハラという鳥も平和公園にいますが,今回もそうでしたが,この鳥が話題になるとアカハラ(アカデミックハラスメント)のことがいつも話題になります.

 この後で,コケ(苔)が一面に敷き詰めたようになっている場所に行きました.コケ畑と言ってもよい場所です.

 コケの先端が白っぽくなっていましたが,これは乾燥によるものだそうです.トナカイは,このコケや地衣類を食べて,北極で生きており,驚きであるという感想が出ました.なお,コケと地衣類の違いは地衣類が菌類と藻類の共生体であるのに対して,コケは独立して光合成で生きていることだそうです.ただし,水分や栄養は茎や葉から直接吸収し,根は支えるためだけだそうです.一人の参加者からほうれん草などの普通の野菜と比較して,そんなにコケの方が栄養分は少ないのかという質問も出ました.

【外部リンク】水の話

 コケ畑の端で長さ4cm くらいの細長いヤママユガの繭が2つ発見されました.ヤママユガは卵で越冬するので,この時期の繭はあけてもよいという,この種のことに詳しい参加者の了解を得て,ハサミで中身を確認することにしました.少しへこんで,穴もあいている方の繭を先に切ってあけました.中にはカビた幼虫がぼろぼろになって入っていました.寄生バチなどにやられたのかもしれません.もうひとつの立派な形をした繭は,振るとカラカラという音がしました.あけるとやはりカビた幼虫が出てきましたが,その下に3つの5mm 長の細長い楕円型のハエの蛹が入っていました.3つの蛹のうち2つは空でした.最後の1つは中身がありましたが,やはりカビたものが入っているだけでした.寄生ハエに寄生する何かにやられたのかもしれません.ハエ(アブ)とハチの違いが話題になり,翅が4枚なのがハチでハエは2枚(2枚は退化)という指摘がありました.

コケ畑の表面 ヤママユガの繭の中身(カビた幼虫と寄生ハエの蛹) ウメ

 ここからさらに薮こぎをしました.途中でナツミカン(夏蜜柑,ミカン科)の木もありありましたが,実はついていませんでした.薮こぎを終わって,ウメ(梅,バラ科)を観察しました.このウメは非常に弱っていて,幹に地衣類が付いていました.幹の最下端に盛ってある土を取り除いてやりました.土がついていると虫が付きやすくなるそうです.近くに他のウメの木が並んで2本ありましたが,花は1本は全くの蕾で,もう一本は3〜4分咲きでした.日当たりは,咲いていない方がよいくらいでしたが,個体差でしょうか.

 ウメを観察中に,横の大きなサクラ(桜,バラ科)にウソ(鷽)が3羽いるのが発見されました.5羽(雄1,雌4)を見たという人もいました.しきりにサクラの蕾をついばんでいました.雄の頬と喉のピンクがきれいでした.ピンクというより深紅色でサーモンピンクとでいうような感じでした.今回の観察会のハイライトでした.ウソに関連して,ウソ替え神事が話題になりました.太宰府天満宮では,1 月7 日に参詣者が互いに木彫りの鷽(ウソ)を持って集まり,暗がりで「かえましょうかえましょう」と言いながら交換しあうそうです.鷽(ウソ)は嘘に通じ,この神事で1 年間の嘘や不幸もすべて精算し,神前で天神様の誠心に取りかえて,吉事に変えるということのようです.場所によってやり方は違うようです.木の芽を丸坊主にすることもあり,嫌われている場合もある鳥ですが,語呂合わせで人の役にたっていることについて,ウソはどう思っているのでしょうか.

【外部リンク】Letter from Yochomachi

ウソ フジの枝

 11時半を過ぎて,これ以上は奥には行けないということで,芝生広場の方へ戻りました.途中で10羽以上のシジュウカラの群に会いました.ジョウビタキの独特な鳴き声も聞こえました.急ぎながらも,フジ(藤,マメ科)の大きくなった新芽を観察することになりました.ツタというより普通の木の枝が出ているような形なのに,フジと分かる参加者が複数名いました.花芽と葉芽を見分けようとしましたが,よくわかりませんでした.一般に,花芽は枝の基部について丸みをおびて大きいそうです.葉芽は枝の先端につき,細長い形で小さいそうです.

【外部リンク】鉢花百科

 フジを見分けた参加者がハクサンボク(白山木,スイカズラ科)の葉を持ってきました.

 トンボ池の横のキリ(桐,ゴマノハグサ科)の近くで感想会を行いました.薮こぎが楽しかったのと,ウソが好評だったようです.鳥,虫,草木などが,着々と春がくる準備をしているのを感じた観察会でした.

 3ヶ月前の宿題であった白い粉を吹いたようなネズミサシ(実はハイネズ)の白い粉のように見えたのは,やはり気孔腺ということでした.通常,気孔腺は葉の裏にありますが,ハイネズ(這杜松,ヒノキ科)は表面にあるそうです.カケスがうるさく鳴いたあとで,ハプニングがありました.山の方から煙があがり山火事だということで携帯で消防署に通報しました.感想会を中止して,消しに行きましたが,結局,ホームレスが寒いのでたき火をしていたというのが真相でした.

平成17年2月の観察項目:オシドリ(雄,雌),ハシビロガモ,ヨシガモ,ヒドリガモ,オナガガモ,カルガモ,バン,コサギ,ツグミ,キョウチクトウの実,カラスの巣,タカサゴユリ,ヒヨドリの巣,コゲラの巣穴,ミミズ,ケヤキ,クスノキ,ハモグリバエ,アシナガバチの巣,ソラマメ,サルノコシカケ,シュンラン,松の切り株,松の切り株のカミキリムシの進入穴,ソヨゴ,シロハラ,コケ畑,サザンカ,ヤママユガの繭,ヤママユガのカビた幼虫,ヤママユガの繭の中の寄生ハエの蛹,ウメ,ナツミカン,ウソ,エナガ,シジュウカラ,オオタカ,カラス,フジ,ハクサンボクの葉,ジョウビタキの鳴き声,カケスの鳴き声(概ね観察順)

平成16年3月の観察項目:テングチョウ,ハナキササゲ,コゲラ,シジュウカラ,コサギ,カワウ,コガモ,シホウチク,ミノムシ,モズ,イラガの繭,トックリバチの巣,カラスウリの実,クズ,キリ,コブシ,ウズキコモリグモ,ツクシ,シュンラン,マルバマンサク,ムラサキシジミ,シラカシ,カシ,キチョウ,ツマグロキョウモン(雌),ミモザ(フサアカシア),ヤシャブシ,パンパスグラス,ヒメカンアオイ,タカノツメ,モグラ塚(写真は,観察会の本「なごや平和公園の自然」をご覧ください.)

伊藤義人

監修 滝川正子