6月の観察記録
カテゴリ : 2005年
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 梅雨に入ったとは思われない晴天でした.雲はありましたが,日差しは強く,歩くと少しむし暑く感じました.樹木の緑が濃くなり,集合場所のイチョウ(銀杏,イチョウ科)も青い実を沢山つけていました.今年は昨年と違い,イチョウは豊作のようです.新池横のセンダン(栴檀,センダン科)も実をつけていましたが,かなり食べられた跡がありました.熟したクリーム色の実は,ヒヨドリなどが食べますが,青い(緑の)実を食べる鳥はいないでしょうから不思議でした.新池の水面の大半は,スイレン(睡蓮,スイレン科)に覆われ,わずかの隙間でカイツブリが潜って餌を採っていました.参加者は,非常に多くて,出発するときは子供12名を含む64名でした.

 まず,いつもの集合場所で,先月の報告を見ました.桜は,チェホフの「桜の園」という小説があるので,ロシアやウクライナにあっても不思議ではないということが話題になりました.

 ウクライナでもこの小説は小学校で習うそうです.観察会で,前にやったのと同じように,詳細な気温測定を8月7日(日)に行うということで,協力要請がありました.前回は興味深い結果が得られ,気象学会でも報告したとのことでした.

 この後で,参加者が持ってきたメダカとサクラの葉を使って説明がありました.メダカの入っている瓶にはミジンコも入っており,小さなメダカは見にくかったようです.サクラは,葉柄にある蜜線の位置によって,種類を判定できるという説明でした.子供の参加者が,瓶にいれたシジミチョウの一種を持ってきたので観察しました.図鑑のシジミチョウの所を開き,翅の先端のオレンジ色の斑点を目印にして,ツバメシジミチョウという名前を探し出しました.

イチョウの実 集合 ツバメシジミチョウ クワの実

 集合場所を出発して,まず,新池横のクワ(桑,クワ科,別名ヤマクワ)の実を食べに行きました.途中で,子供が非常に小さなショウジョウバッタを捕まえました.電線には,カワラヒワとムクドリがいました.クワの実は,まだ,緑色や赤色のものもありましたが,黒い実を食べるとほのかに甘い懐かしい味がしました.お年の参加者から,桑の枝の表皮を割いて,繊維をとり軍服を作ったという話がでました.表皮は,枝の根元の方から尖端に向かって割くのだそうです.製紙の原料になるコウゾ(楮,クワ科),ミツマタ(三又,ジンチョウゲ科)やカジノキ(梶の木,クワ科)と同じで,繊維が取れるそうです.

 養蚕はウクライナでもやられており,シルクをウクライナ語ではショブクというそうです.クワの根っこは,瓦を焼くときの燃料にもなったそうです.

 集合場所を出た所の道路中央の島に,20cm 大の大きな白い花を咲かせているタイサンボク(大盞木;泰山木;大山木,モクレン科)を見つけて,観察に行きました.日本固有種で最も大きな花を咲かせる樹木であると言う参加者もいましたが,残念ながら固有種ではなく,北アメリカ原産で,130年前くらいに日本に来たことが図鑑から分かりました.タイサンボクのすぐ横のモクレン(木蓮,モクレン科)に10cm 長の細長い緑色の実が沢山できていたので,観察しました.表面は,パイナップルの実のような感じでした.

 ここまでで,10時30分になってしまいました.急いで,道路を渡って,平和公園に向かいました.途中の石垣の下端にヤブジラミ(薮虱,セリ科)の小さな白い花が咲いていました.

タイサンボクの花 モクレンの実 ヤブジラミの花 ヒメジョオンとヤブジラミ

 平和公園に入ったらすぐに,このヤブジラミが一面に咲いていました.花屋さんでカスミソウの代わりに売ってもおかしくない程きれいでした.オヤブジラミ(雄薮虱,セリ科)ではないかという参加者もいましたが,実が紫でないのと,男性的なイメージではないということでヤブジラミということになりました.すぐ横では,ヒメジョオン(姫女苑,キク科)も一面に咲いていました.ハルジオン(春紫苑,キク科)との区別の話も出ましたが,この時期は,既に大半がヒメジョオンのようです.

 平和公園入口のビワ(枇杷,バラ科)の木の下で,オヤブジラミを発見しました.既に花はとっくに終わって,少し紫がかった実が沢山できていました.周辺にヤブジラミの白い花も咲いており,オヤブジラミの花期が,ヤブジラミよりずっと早いことが分かりました.ヤブジラミという名称は,どちらの実もひっつき虫になり,衣類に付く虱に模してという説が有力なようですが,実の形が虱に似ているからという説もあるようです.

 平和公園入口のトウシュロ(唐棕櫚,ヤシ科シュロ属)の木の前で,普通のシュロ(棕櫚,ヤシ科シュロ属)との違いの説明がありました.葉柄や葉の裂片が短く、古くなっても葉の裂片の先端が折れ曲がらないのがトウシュロで,折れ曲がるのがシュロということでした.見栄えがよいので,トウシュロが庭木としては好まれるようです.

トウシュロ カバキコマキグモ

 平和公園に少し入った所で,葉を三角オムスビのようにしたカバキコマチグモのすみかを観察しました.このクモは,毒グモで,刺されると1時間以上神経毒で痛いそうです.一人の子供の参加者に注意をするように言って,オムスビの葉を引っ張って開きました.中には,お腹の大きな母グモがいました.この中で産卵して,生まれた子供に自分の体を食べさせるそうです.クモのお母さんは偉いという話がでましたが,人間も肉体的にではないですが,子育ての時間も含めて子供に吸い取られている部分もあるでしょう.

 芝生広場近くまで行き,前日に仕掛けた昆虫のトラップをあけて,集まった昆虫を観察しました.トラップは,ペットボトルの両端を切ってつないだようなものでした.トラップの中には,餌として,ししゃも,ブドウやバナナなどの果物,蜂蜜やヨーグルトなどを入れてあったそうです.最初のトラップの中身を青いポリバケツにあけると,ミイデラゴミムシ,ヒメタイコウチ,ダンゴムシおよび沢山のアリが入っていました.5mm 大のヒメタイコウチは2匹入っていましたが,1匹は死んでいました.ミイデラゴミムシは,俗にヘッピリムシと呼ばれ,ヘコキムシの1つで,触ると肛門から霧状の刺激臭の液体を任意の方向に飛ばすという説明があり,写真が紹介されました.しかし,誰も試してみようとはしませんでした.ゴミムシは,動物の死体処理の役目を果たしているという説明もありました.

ヒメタイコウチ ダンゴムシ マルクビゴミムシ サトウムシ

 2つ目のトラップには,マルクビゴミムシと2匹のザトウムシがかかっていました.真っ黒なマルクビゴミムシのどこがマルクビかという質問が出ました.上から見て胸にあたる所が丸いのでこの名前があるようです.

 ザトウムシは,細くて長い脚の数を数えると,7本と8本でした.片方のザトウムシは,脚が1本とれていたようです.どちらにしても,8本脚であると,脚が1本とれても安定系であるという指摘もありました.ザトウムシは,真性クモ目ではなく,それに近い仲間だそうです.節足動物は主に4つの大きなグループがあり,昆虫(Insecta:インセクタ),甲殻類(Crustacea:クルスタキア),多足類(Myriopoda:ミリオポーダ),鋏角類(Chelicerata:ケリケラータ)に分けられ,最後の鋏角類の中に,クモやザトウムシは入っています.

【外部リンク】あっと驚くクモの事実あれこれ

 ザトウムシの英語名は「Daddy-long-legs であり,小説の「足長おじさん(Daddy-Long Legs の訳)」で知られており,欧米では親しみを持たれているそうです.肉食で,日本ではとても親しみを持たれているとは言えないと思います.なお,胴体や脚についている赤いものは,ダニだろうということになりました.なお,名称のザトウムシ(座頭虫)は,目がない(一対の小さな眼はある)か脚でさぐって歩く姿から名付けられたのだろうという事になりました.

 子供達が,雄のクモの脱皮殻を見つけてきたので.拡大鏡で脚などを観察しました.目や口の跡もあるということを,子供達はきちんと観察していました.きれいに脱皮していることに驚きがありました.子供達の観察眼に感心するとともに,このような体験は,子供達が,今後,自然の大切さを考える上で,非常に大事だと思いました.

クモの抜け殻

 次のトラップは,はずれで肉眼で確認できる虫は入っていませんでした.近くで,紫の可憐な花を咲かせているニワゼキショウ(庭石菖,アヤメ科)とキキョウソウ(桔梗草,キキョウ科)を観察しました.キキョウソウの下の方の花は「閉鎖花」で,自家受粉をしてつぼみのまま種になっているそうです.花は,上の方でしか咲かず,ここで遺伝子の交換をするということだそうです.

 葉についていたオトシブミのゆりかごも観察しました.穴があいていて,既に中は空でした.

 斜面の薮こぎをしてたどり着いた最後のトラップには,オオヒラタエンマムシとザトウムシが入っていました.オオヒラタエンマムシは,たいそうな名前がついていますが,確かに怖そうな表情をしていました.

 最後に,感想会をコシアキトンボが飛んでいた小径で開こうとしましたが,通行の邪魔になるかもしれないので,少し西へ移動して,花が蕾の状態のコモウセンゴケを観察してから,日陰の少し広い場所で感想会をしました.ヒメタイコウチは,水の中にいると思っていたのが,斜面のトラップにかかっていたのが不思議だというような感想が出ました.少し,暑かったですが快適な観察会になりました.

コモウセンゴケ 感想会

平成17年6月の観察項目:カイツブリ,メダカ,ミジンコ,ツバメシジミ,ヤマクワ,タイサンボク,モクレン,ゴミグモ,ヒメジョオン,ヤブジラミ,オヤブジラミ,トウシュロ,シュロ,ビワの実,カバキコマチグモ,ドクダミ,ミイデラゴミムシ,ヒメタイコウチ,アリ,ダンゴムシ,ニワゼキショウ,キキョウソウ,ハハコグサ,マルクビゴミムシ,ザトウムシ,オトシブミ,オオヒラタエンマムシ,コシアキトンボ,コモウセンゴケ,モンシロチョウ,ウスノキの実(概ね観察順)

平成16年7月の観察項目:ギョリュウ,ミノムシ,カイコ,カイコガ(雄),カイコの繭(黄,白),イヌビワ,アップルミント,ネザサでの草遊び,オニヤンマ,ショウリョウバッタ,クビキリギス,レモンバーム,カタバミ,ヤマトシジミ,オオウラジロノキ,ナワシログミ,カツラ,セミの抜け殻,マロニエ,ハナノキ,ツマグロヒョウモン,ネジキ,マンネンタケ,エドヒガン,ヤマコウバン,カタバミの花,エナガ,カワセミ(写真は,観察会の本「なごや平和公園の自然」をご覧ください.)

伊藤義人

監修 滝川正子