1月の観察記録
カテゴリ : 2004年
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 やっと寒さが厳しくなり日陰で風が吹くと手袋なしではおられない状況でしたが,晴天に恵まれ,よく歩く自然観察会になりました.新池ではカイツブリが特徴のある声で鳴き,カワウもきていました.清風荘には,メジロの群がきていました.集合場所のイチョウの木には,30羽を超えるムクドリがとまっていました.参加者は,子供10名を含む55名以上になりました.寒くてどうしようかなと迷った参加者もいたようですが,非常に多い参加者になりました.最年少参加者は,お父さんにおぶわれた1歳程度の子供でした.

 まず,いつもの集合場所で,各参加者の家の方向と距離を考えて,テーブルを中心として,位置関係が分かるように立ちました.公園近くの名古屋市内の参加者が多かったですが,中には30km を超える参加者もいて,たつ場所がないのではという話もありました.その後,そのままぎゅっと詰めて,先週の報告から始まりました.残念ながら先週の細胞質突然変異の樹木名は不明のままでした.

清風荘のメジロ イチョウにとまるムクドリ 集合

 次に,「なごや東山の森つくりの会(仮称)」の設立総会が,2月1日(日)13:00から名古屋大学環境総合館1Fレクチャーホールで行われるというアナウンスがありました.参加費(入会費)は1000円ということでした.

 先週,ムクドリの剥製を持ってきた参加者が,また,ムクドリの死体を見つけたので,ほしい方がおられればという案内がありました.剥製料は1万5千円程度ということでした.落鳥した野鳥を拾得した場合、行政(愛知県)の拾得許可書がないと剥製にはできないそうです.今後,落鳥を取得し剥製を作るときなどは,胃や腸を冷蔵して持ってきて,何を食べているかを調べて,今後の平和公園の自然の保護に役立てたいという話も出ました.

 なお,最近メジロを密猟する人が出ていますが,すぐに警察に通報するという対応をすることにして,直接喧嘩をしないようにとの注意もありました.

 早速,平和公園に向かいましたが,入口の坂で,角度の目測をしました.傾斜計を持っていないので,坂の目の高さの位置を見定めておいて,そこまでの距離を歩測(約70cmx歩数で約20m)して,目の高さを160cm として,sinθの値が0.08 ということで,θが小さいので,θ=0.08 として,角度は15度程度ということになりました.正確かどうかは分かりません.一般に,傾斜角度は,ぱっと見た目測よりずっと小さいのが普通です.

 この坂道で,シャシャンボの実を食べました.また,少し進んで,コモウセンを観察しました.後で調べると「コモウセンゴケは冬にも葉を維持している常緑であり,葉はしゃもじ型であり,地面に広がる.夏は緑色が濃いが、冬には赤色に紅葉」と書かれていますが,名残がかすかにあるだけで撮った写真をみてもよく分かりません.

【外部リンク】岡山理科大学 植物生態研究室-コモウセンゴケ-

コモウセンゴケ ソヨゴ(普通の葉) ソヨゴ(雌木) ソヨゴ(雄木)

 コモウセンゴケのある場所で落ちているソヨゴの赤い実を発見したため,周辺のソヨゴ(冬青,モチノキ科)を観察しました.ソヨゴの和名は風に吹かれた葉がソヨソヨとそよぐ音から来ているそうです.実の色は,今回は赤でしたが,かなり違うものもあるそうです.雌雄異株で,確かに近くに雄株の木がありました.5月頃に花が咲くということで,雄株と雌株の花のちがいを観察するという課題が残りました.緑の葉は,端が波打っているのが普通ですが,すぐ隣のソヨゴの葉はほとんど波打っていませんでした.まだ,若木だからという人もいましたが,不明です.ソヨゴらしくないソヨゴでした.

【外部リンク】岡山理科大学 植物生態研究室-ソヨゴ-

 愛護会が手入れをしている水田近くに行き,陸軍と書いた標柱の説明がありました.平和公園は,戦前は陸軍の演習場でした.水田に行き,稲をうまく生育させるために,日陰なので,近くの木を切るという案に対して,参加者の1人から話を聞きました.水田は,日当たりのよい所に移転すればよく,近くの大事にしたい木としてウスノキ(臼の木,ツツジ科)が挙げられました,ネザサに隠れるようにして植生していました,低木ですが,臼のかたちの花を咲かせ,赤い実は食べられるそうです.昔多かったのが最近少なくなったということで,大事にしたいということです.日差しを受けるようにネザサを刈ると,実の付き方がよくなり,モチノキが喜んでいるのが分かるという話もありました.

 芝生広場前のレンゲ畑の横で,季節はずれのニホンタンポポが2輪咲いていました.通常,ニホンタンポポは3?5月が花期ですので,この場所が日当たりの良いのと,暖冬が続いたせいでしょうか.愛護会の人たちが行ったレンゲ畑の周辺の溝は,水はけをよくして根付きをよくする目的だそうです.

愛護会の水田 陸軍の標柱 ウスノキ(ネザサに隠れている) 季節はずれのニホンタンポポ

 この後,御嶽山を見るために東に向かいました.途中で,アベマキとスギを観察しました.アベマキの太さは直径30cm少しでしたが,10年と少し,スギも若木で20年くらいだろうということになりました.まだ,スギが実をつけていないのは成長の方に栄養を使っているということです.パンパスグラスの生えている近くの成長したスギは実をつけていました.

 パンパスグラス横の梅を観察しました.子供達は,梅には関心がなく,パンパスグラスの穂で早速遊びはじめました.梅の観察ではまず,どの枝に固い赤いつぼみがついているかといういう問いかけがありました.去年の新枝にたくさんつぼみが付いていることが分かりました.「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」というように,梅は剪定することにより,よい花を咲かせることができるそうです.7月頃に1 度、徒長枝(周囲の枝よりも長く飛び出した枝)を切りつめ,内部の混み合った部分の枝を1~2本切るとよいそうです.梅の枝には,カイガラムシが,非常に多くついていました.樹勢が弱っているようでした.ナミテントウも枝で越冬しているのが観察されました.ナナホシテントウとの違いは,背の文様に非常にバリエーションがあることだとの説明がありました.

アベマキ スギ(若木) パンパスグラス ウメ(ナミテントウの越冬とカイガラムシ)

 また,ハラビロカマキリの卵のうも一つついていました.白梅と紅梅のつぼみの付き方が違うということで,この梅は白梅だということでした.紅梅は枝の先端に蕾がつくそうです.

 NTT 横の展望台まで行き,雪化粧した御嶽山,中央アルプスを見ました.晴天の青い空に雪化粧した山々は映えて,大変きれいでした,写真ではかすんでしまって,肉眼で見た姿を残せないのが残念です.平和公園に持ってくるという話もあった昨年完成した瀬戸デジタルタワー(地上高245m,標高108m)も展望しました.

 ここから,早足で歩いて,藪漕ぎもして,カンアオイ(ウマノスズクサ科)の植生地に行きました.3月に,葉と花の数を毎年数えるものです.常緑ですので,枯葉の下に緑の葉が隠れていました.蕾と花も1つずつ観察されました.何度見ても地味な花です.同じ科のフタバカンアオイが,徳川家の三つ葉葵の紋のモデルだそうです.岡崎の校長室には,大概この草の鉢植えがあるという話もでました.

御岳山 日本アルプス カンアオイの花

 この後に,さらに早足で進み,開けた雑木林の中で感想会をしました.足下には,フユイチゴ(カンイチゴ,バラ科)の緑葉がありました.アベマキの樹上でコゲラ,ヒヨドリ,エナガなどが背景音を奏でていました.今日は,たくさん歩いたという感想など,参加者一同,今回の観察会を楽しんだようでした.

 初めての人は,ここで解散しては,帰れないという人が多く,皆でハンノキ湿地の横を通って,ユーカリ林へ行きました.ここで,枯れたトチノキに,コゲラの丸い巣穴と見事なヒラタケ(カンシメジ,寒茸)があるのが発見されました.非常においしいということで,どのみち誰かが持っていくということで,ヒラタケは希望者が採って持っていくことになりました.すぐ横のトチノキを観察して,枝の先端の蜜を塗ったような芽を観察しました.昔は薬として,この粘液をたむしなどの治療薬として塗ったそうです.

コゲラの巣穴 トチノキの新芽 ヒラタケ(カンシメジ)

観察項目:ムクドリ,メジロ,カワウ,コモウセン,シャシャンボ,ソヨゴ,ウスノキ,ニホンタンポポ,アベマキ,スギ,パンパスグラス,ウメ,カイガラムシ,ナミテントウ,ハラビロカマキリの卵のう,カンアオイ,フユイチゴ,ヒラタケ(カンシメジ),トチノキ

伊藤義人

監修 滝川正子