5月度の観察記録
カテゴリ : 2008年
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 前日強い雨を降らせた低気圧は通り抜けたものの,曇が多く残る肌寒い朝でした.集合場所の公園では数羽のツバメ(燕,ツバメ科)が地面近くを飛び交っていました.「燕が低く飛ぶと雨」ということわざがありますが,雨上がりにも低く飛ぶようです.
 本日の参加者は子供3名を含む32名でした.参加者の多くは防寒のため長袖の上着を着込んで来ていました.

 集合場所では,まず,参加者が持参したウシガエル(牛蛙,アカガエル科)の骨格標本を観察しました.体長16cmと大きく,カエルの形そのままの骨格が箱から取り出された時には,周りの皆が思わず「ワッ」と驚きの声を上げました.明徳公園の池で死んでいたのを持ち帰り,肉を取り除き,洗浄して骨格標本にしたものだそうです.胃の中から小さいカエルがほぼ消化された状態で出てきたそうで,その骨も見ることができました.
 また,ヒミズ(日不見,モグラ科)の骨と毛皮も紹介されました.ヒミズは小型のモグラで日中は地上に出てこないことからこの名がついたそうです.昆虫類,クモ,ミミズなどの小型土壌動物を捕食するため,小さいながら鋭い歯を持っていました.

ウシガエルの骨格標本 胃の中から出たカエルの骨 ヒミズの骨と毛皮

 次にクサフジ(草藤,マメ科)を観察しました.フジに似た紫色のきれいな花をつけますが,フジ属ではなくソラマメ属だそうです.最近各所で目立つことから外来種ではないかという話もありました.
 続いてヤママユガ(山繭蛾,ヤママユガ科)の繭を観察しました.この繭は2月の観察会で見たものですが,その後,気づかぬうちに中から何かが出たような穴が空いていたそうです.ヤママユガが出たとは思えぬ小さな穴なので,繭を切り開いて中身を観察することにしました.繭の中いっぱいに丸々とした蛹が入っていましたが,やはり正常に羽化したのではなく,寄生バエなどにやられていたようです.
 その後,先月の観察記録を見ました.スジグロシロチョウ(条黒白蝶,シロチョウ科)の話題で,蝶について詳しい参加者からシロチョウの仲間の雄が発する香りの話がありました.特にスジグロシロチョウはレモンに似た強い香りを発し,その香りには交尾拒否する雌の気持ちをマイルドにする働きがあるそうです.

クサフジ ヤママユガの蛹

 10時を過ぎたので,平和公園に向かって歩き出しました.平和公園に入ってすぐのマサキ(柾,ニシキギ科)の所で,参加者の小学生が捕まえたユウマダラエダシャク(夕斑枝尺蛾,シャクガ科)を観察しました.墨を流したような羽の斑文が「あまりにも美しい」と言うファンがいるそうです.マサキはユウマダラエダシャクの食草で,葉には多数の食痕がありましたが,もう幼虫はおらず,カタツムリと,同じくマサキの葉を食草とするミノウスバ(蓑薄翅蛾,マダラガ科)の幼虫が葉を食べていました.

ユウマダラエダシャク マサキの葉を食べるミノウスバの幼虫

 続いて近くの路傍に生えていたノゲイヌムギ(芒犬麦,イネ科)とイチゴツナギ(苺繋,イネ科)を観察しました.ノゲイヌムギのノゲとはノギ(芒=稲,麦などの先端の細いトゲ)が転じたもので,先端に4〜5ミリのノギがあるのが特徴だそうです.イチゴツナギの名前の由来について質問があり,野苺を通してつないだという説が紹介されました.
 また,毎年恒例になっているクロバナロウバイ(黒花蝋梅,ロウバイ科)を観察しました.

ノゲイヌムギ イチゴツナギ クロバナロウバイ

おたまじゃくし池で,ヒキガエル(蟾蜍,ヒキガエル科)のオタマジャクシに足が出ていることを確認しました.
 池のそばのクワ(桑,クワ科)の木に正体不明の蛹と幼虫が見つかり,それぞれ持ち帰り育てることになりました.後で幼虫はクワゴ(桑子,カイコガ科)だということが判りました.このクワゴを大昔に中国で品種改良して作られたのがカイコ(蚕,カイコガ科)だそうです.

足の生えたオタマジャクシ 枝に擬態するクワゴの幼虫 何かの蛹

 そこから芝生広場の入り口までの短い距離を歩く間にも参加者の見つけたいろいろな昆虫を見ることができました.
 まず,集団でギシギシ(羊蹄,タデ科)を食べていたコガタルリハムシ(小型瑠璃葉虫,ハムシ科)を見ました.先月には同じ場所に幼虫がおり,幼虫,成虫とも同じものを食べるのかが話題になりました.
 セリの葉の上にはキアゲハ(黄揚羽,アゲハチョウ科)の若齢幼虫がいました.終齢の頃の緑地に黒の横縞という姿とは,ずいぶん感じが違っていました.この後,飛翔する成虫も見ることができましたが,平和公園では珍しく貴重だとのことです.
 また,マイマイガ(舞々蛾,ドクガ科)やナシケンモン(梨剣紋蛾,ヤガ科)などの毛虫を捕まえた人もいました.マイマイガは,これぞ毛虫といった感じの外観をした,ドクガの仲間ですが,毒は無いそうです.しかし,剛毛で刺されると痛いので触らない方が良いとのことでした.

コガタルリハムシ キアゲハの幼虫 ナシケンモン(上)とマイマイガ

 参加者の人気を集めたのは,コナラの枝で見つかったヤママユガ(山繭蛾,ヤママユガ科)の幼虫でした.体全体が半透明の黄緑色で,見た人々から「綺麗!」と歓声が上がりました.中には「おいしそう」「ゼリーみたい」という人もいました.近寄って見ると体側に飾りのように黄色と水色の斑点が並んでいました.
 オトシブミの揺籃,カメムシの卵も見つかりました.

ヤママユガの幼虫 カメムシの卵 オトシブミの揺籃

 植物では,モチツツジ(黐躑躅,ツツジ科)を観察しました.萼や葉にある腺毛から出る分泌液により,鳥もちのように粘着性を持つことからこの名前がついたそうです.試しに葉を二つに折り曲げるとくっついたままになっていました.何のために粘るのか?という疑問が出されましたが,下から上がってくる害虫を防ぐためではないかとの説明がありました.

モチツツジ

 芝生広場の入り口の所から中道を離れ,湿地に入りました.湿地にはキショウブ(黄菖蒲,アヤメ科),カキツバタ(杜若,アヤメ科)などが咲いていました.このあたりは以前は乾燥化してノイバラ(野茨,バラ科)が繁茂していたそうですが,土手を造り水を溜めたことで葦原が再生したという説明がありました.
 そこからトンボ池に向かう途中で,大きく育ったサワフタギ(沢蓋木,ハイノキ科)やケカマツカ(毛鎌柄,バラ科)を見ました.カマツカは材が硬いので鎌の柄に用いたというのが名の由来だそうです.白い花がきれいに咲いていました.

キショウブ カキツバタ ケカマツカ

 中道に戻りしばらく歩いていくと,ニセアカシア(贋アカシア,マメ科)の葉の上にシロコブゾウムシ(白瘤象虫,ゾウムシ科) がいるのを見つけました.体長15mmほどと大きめで,上翅にコブ状の隆起を持つ灰褐色のゾウムシです.皆で見ているうちに葉からぽとりと落ちて死んだように動かなくなりました.ゾウムシなど小型の昆虫は危険を察知した際に同様の行動をするそうですが,その場からすばやく逃れる知恵なのだそうです.
 道端の切り株の樹皮をはがしてクロアリの巣を観察しました.木の根元をきれいにしておかないと湿気が多くなりアリが入り込むそうで,各地で貴重な木が手入れ不足から被害に遭っているそうです.巣を壊されたので,働きアリがあわてて卵を退避させ始めました.卵は案外大きく,中華料理の食材にもなっているという話がありました.

シロコブゾウムシ 死んだフリをするシロコブゾウムシ クロアリとその卵

 昼頃には朝の曇り空が嘘のように気持ちよい青空になっていました.カラタチ(枸橘,ミカン科)の木のそばで感想会を行ないました.
 「カエルの骨がきれいで感動!」「皆で歩くといろいろな生き物が見つかって楽しかった」「平和公園にもキアゲハがいることがわかりうれしい」などの感想が聞かれました.
 今日は歩いた距離は短かったものの,多くの植物,昆虫を見ることができ,充実した観察会となりました.

カラタチの実 感想会

平成20年5月の観察項目:ウシガエルの骨,ヒミズの骨,クサフジ,ヤママユガの蛹,ユウマダラエダシャク,ミノウスバの幼虫,ノゲイヌムギ,イチゴツナギ,オヤブジラミ,ヤブヘビイチゴ,クワゴの幼虫,クロバナロウバイ,コガタルリハムシ,キアゲハの幼虫,モチツツジ,マイマイガの幼虫,ヤママユガの幼虫,カメムシの卵,オトシブミの揺籃,キショウブ,カキツバタ,サワフタギ,ケカマツカ,オタマジャクシ(ニホンアカガエル,アズマヒキガエル),オオフサモ,シロコブゾウムシ,クロアリとその卵,キリの花,マユミの花,カラタチの実,ヘラオオバコ(概ね観察順)

文・写真 山中 伸  監修 滝川 正子