5月の観察記録
カテゴリ : 2004年
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 参加者にはあいにくの雨となりました.これまで,この自然観察会は晴れの日が多かったので久しぶりの雨でした.動植物には恵みの雨だったかもしれません.写真のできは悪いですが,緑は大変きれいでした.新池では,スイレンの白い花とキショウブの黄色い花が咲き誇っていました.
 集合場所では,ツバメがホバリングしているように見えるくらいに非常にゆっくり低く飛び,虫を捕っていました.尾の白い筋がきれいに見えるくらいでした.参加者は18名でした.雨天でしたので子供の参加はありませんでした.
 まず,いつもの集合場所で,参加者の持ってきたギフチョウとカマキリの卵嚢の写真を見ました.ギフチョウの雄は交尾後,他の雄と交尾できないように交尾栓で雌の交尾器を塞ぐという話がありました.また,カマキリの卵嚢を持ち帰ったら,寄生ハチが羽化したという話もありました.まだ固まりきらない泡状のカマキリの卵に寄生バチが卵を,すばやく産みつけたのであろうということでした.綿にくるまれたワタ(棉,アオイ科)の実とヤママユガの繭を持ってきた参加者があり,回覧しました.ワタの実は,ほしい人に配布されました.ちょうど今ごろ植えるとよいということでした.
 次に,先月の観察記録を見て誤植を修正しました.第3回ヒメボタルサミットin愛知(6月20日)の案内も,参加者の1人からありました.その後,傘をさしているのでやりにくかったのですが,自己紹介をしました.

キショウブとスイレン ヤママユガの繭

 先月は,イチョウ(銀杏,イチョウ科)の雄花だけが観察できましたが,今回は雌花を観察することになりました.今年は,集合場所のイチョウの雌木には少しの雌花(ギンナン)しかついていませんでした.緑色の雌花は,サクランボを小さくしたような形で,2つの若いギンナンが対になっていました.既に花粉はこの若いギンナンに取り込まれていて,卵が成熟するまで4ヶ月程待って,ギンナンの中の「海」を精子が泳いで受精するそうです.陸上植物は水中に生きていた一種類の緑色藻類から進化したと考えられており,このときの受精の方法を,裸子植物であるイチョウとソテツは残しているという説明がありました.このイチョウの精子は,東大の平瀬作五郎が1896(明治29)年に発見したそうです.
【外部リンク】東京シネマ新社:種子の中の海

 集合場所を離れて,平和公園に向かいましたが,歩道横で茎のひょろ長いタンポポのような黄色い花を観察しました.帰化植物のブタナ(豚菜,別名タンポポモドキ,キク科)でした.花茎が途中で枝分かれして複数の花が咲いているので,花自体はタンポポに似ていますが区別は容易でした.可哀想な名前を付けられたブタナの由来は,豚が食べるからかというような質問が出ました.後でHPで調べるとフランスの俗名(Salade de pole:豚のサラダ)を訳してブタナとしたとありましたが,豚が食べるかどうかは分かりませんでした.昭和になってからヨーロッパから入ってきたそうです.花茎は,タンポポと同じように空洞でした.

イチョウ ブタナ

 平和公園に入る直前の歩道横では,大きなニセアカシア(針楓,マメ科)が白い花を咲かせていました.
 平和公園に入ってすぐにヒメウラナミジャノメ(姫裏波蛇目,タテハチョウ科)が,草の中で雨宿りをしていました.まず,コナラ(小楢、ブナ科)とモンゴリナラ(ブナ科)を比較しました.モンゴリナラについては独立種,ミズナラの低地型、ミズナラの原種などの諸説があり、専門家の間でも定説はないそうです.愛知万博の工事で,この木が切られており問題になっています.

ニセアカシア ヒメウラナミジャノメ コナラとモンゴリナラの葉の比較 モンゴリナラ

 ここで,周辺に咲いているはずのニワゼキショウ(庭石菖、アヤメ科)の小さな花が全て閉じていることが指摘されました.タンポポの花は,日が照ると開き,夜は閉じるそうです.ニワゼキショウの花も同じだそうですが,雨の中でもタンポポの花は開いており,ニワゼキショウは,雨か寒さのどちらかで花が閉じているのであろうということになりました.雨の日に花が閉じるということはHPでも指摘されていました.
【外部リンク】妙典.net:河原の自然・野草・野鳥情報

 ハハコグサ(母子草,キク科)の黄色の花を観察してから,オオムギ(大麦,イネ科)畑に行きました.穂を1つとり,皆で1つぶずつ分けて,もみを開いて中の白いオオムギをかみました.小麦であれば,ガム状のグルテンになるという説明がありました.

ニワゼキショウ ハハコグサ オオムギ

 畑の横を歩いて,コバンソウ(小判草,タワラムギ)とゴミグモ(コガネグモ科)を観察しました.コバンソウは,穂を小判に見立てて命名されたようですが,別名の俵の形に近いと思いました.穂は,非常に細い花柄にぶら下がっていました.その形のおもしろさから,ドライフラワーにされるそうです.明治時代に入ってきた帰化植物だそうです.ゴミグモは,その名前のように丸い蜘蛛の巣に縦にゴミや食べかすを付けて(ゴミリボン),その中で足を縮めて隠れているので,どこにいるか非常に分かりにくいものでした.蜘蛛の巣をたたいてやると,驚いてゴミリボンから出てきて下へ落ちてしまいました,背中に突起が2つあり,全体にごつごつした感じのクモでした.

コバンソウ ゴミグモ カルガモ オオバコ

 芝生広場前の湿地帯へショウブ(菖蒲,サトイモ科),キショウブ(黄菖蒲,アヤメ科),カキツバタ(杜若,アヤメ科)を見にいきました.トンボ池には,2羽のカルガモが泳いでいました.近くでオオバコの花が咲いていました.まず,菖蒲湯に使うショウブ(サトイモ科)の花を観察しました.ショウブは両性花で,地味な細長い黄緑色の棒状のものが雄花で,雌花はその根元に隠れているそうです.次にキショウブを観察しました.きれいな黄色の花が咲き誇っていました.細長い葉をさわると,中心に中脈が隆起しているのが分かりました.近くの紫色の花のカキツバタの葉には,このような隆起した中脈はありませんでした.後で,観察に行ったアヤメと違って,花にあやめ模様はないという説明がありました.ショウブ,キショウブ,カキツバタは水辺に咲きますが,アヤメは山野に咲くということでした.これらは毎年観察しますが,1年たつと忘れてしまうという参加者もいました.
【外部リンク】植物園へようこそ!:いずれがアヤメ?カキツバタ?

ショウブの花 キショウブ カキツバタ

 アヤメを観察に行く途中で,マルバアオダモ(丸葉青だも,モクセイ科),オトシブミ(オトシブミ科)およびタブノキ(木府の木、クスノキ科)を観察しました.マルバアオダモは,葉が丸いのではなく,実の周辺のギザギザ(鋸歯)が浅いのでこの名前が付いたという参加者の説明がありました.軽くて堅いので,アオダモと同じように野球のバットの材になるそうです.
 オトシブミは,葉をまいた形で木にぶら下がっていました.オトシブミは,中で幼虫が成長し成虫になるまでの食料兼シェルターだそうです.ゆりかごともいうそうです.明治村などでは,下に落ちて本来の落とし文となるそうです.参加の中には,落とし文の意味自体を説明しないと若い人には分からないと言う人もいました.HPによると「直接手渡すのがはばかられるような内容の手紙(恋文,密告,政治批判)をわざと気が付くように落としておいたそうですが,これを「落とし文」とか「落書」「落首」といいました.当時の手紙は巻紙に書かれており,ちょうどこんな形だったのでしょう」というような的確な説明がありました.
【外部リンク】オトシブミの国

 タブノキ(クスノキ科)は,どこかから移植されたように数本が並んでいましたが,木の様子はバラバラで,生き生きとしたものから葉が枯れかけたものまでありました.
 生き生きとしたタブノキの新芽は,タラの芽のような感じで食べられそうな感じがしました.木のにおいが良くないと言う参加者もいました.葉を揉んでみても,クスノキのような香りはしませんでした.この場所のタブノキが特別なのかもしれません.日本の森林において,人の手が入らず遷移が進んで平衡状態の極相林(300年から500年)では,タブ,シイ,カシ,クスノキの4種になるという説明がありました.

オトシブミ タブノキ タブノキの新芽

 アヤメの観察では,花の綾目(文目)模様の説明から始まりました.市松模様やかごめ模様など同じ織物の模様の1つで斜めメッシュ状を指すということでした.キショウブやカキツバタに比べて,背丈が小さいものでした.水と関係ない山野に植生するということですが,ここでは,溝に沿って植生しており,おかしいのではという感想も出ました.また,葉の中脈は目立たないということでしたが,触ると葉の根元では少し隆起しているような感じでした.
 アヤメの咲いている周辺に,黄色の小さな花が咲いたコメツブウマゴヤシ(マメ科)がたくさんありました.江戸時代に入ってきたという説明がありました.レンゲがあるのにどうしてこれが必要かという質問がありました.
 スイバ(酢葉,タデ科)とギシギシ(タデ科)が近接してさいていたので,違いを観察しました.スイバは,葉が直接茎から出ているように見えるので,ギシギシと区別できるそうです.スイバの葉を食べましたが,非常に酸っぱいものでした.このとき,1人の参加者のズボンにセアカヒラタゴミムシが付いているのが見つかりました,コガネムシと違って,胸部がぎゅっと締まった形をしています.へコキムシとして,子供のころ遊んだ虫でした.
 この後で,ゴミグモの巣がまた見つかり,今度は参加者が皆じっくりと観察しました.

アヤメ コメツブウマゴヤシ スイバとギシギシ セアカヒラタゴミムシ

 最後に新池横のセンダン(栴檀,センダン科)の花を観察するため,急いで戻りました.途中で,カラタチ(根殻,ミカン科),マテバシイ(全手葉椎,ブナ科),ヤマウルシ(山漆,ウルシ科),カマツカ(鎌柄,バラ科)を観察しました.ウルシとカマツカは,小さな白い花が咲いていました.ウルシでかぶれた時は,蟹を食べるとよいという俄かには信じられない話もでました.センダンは,紫の小さな花を沢山付けていました.「栴檀は双葉より芳し」の栴檀はこのセンダンではなく,白檀のことを指すという説明がありました.新池のセンダンの木の横で観察項目を確認しました.連絡事項もありましたが,雨でしたので各自の感想は省略されました.お弁当を持ってきた人はスポーツセンターへ行って昼食をとりました.

カラタチ ヤマウルシ カマツカの花 センダンの花

観察項目:ギフチョウの写真,カマキリの卵嚢の写真,ワタの実,ヤママユガの繭,イチョウの雌花,ブタナ,ヒメウラナミジャノメ,モンゴリナラ,コナラ,ニワゼキショウ,オオムギ,ゴミグモ,コバンソウ,ヒメコバンソウ,ショウブ,キショウブ,カキツバタ,アヤメ,オトシブミ,イヌハツカ,タブノキ,マルバアオダモ,コメツブウマゴヤシ,シロツメグサ,マテバシイ,スイバ,ギシギシ,セアカヒラタゴミムシ,カマツカ,ヤマウルシ,ヤマハゼ,センダン,スイレン,カワラヒワ,ツバメ,コゲラ(概ね観察順)
伊藤義人
監修 滝川正子