6月の観察記録
カテゴリ : 2004年
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 梅雨時とは思えないような良い天気に恵まれました.集合時間には,まだ,雲が多かったのですが,すぐに快晴と言ってもよい程になりました.

 木陰は大変心地よい日和になりました.新池周辺はすっかり緑で覆われ,水面もスイレンで半分以上が覆われていました.集合場所近くの土手からから張り出している木の下の水面にカイツブリの巣がありました.久しぶりに営巣しているようです.親のカイツブリの他には,新池の周辺には,ヒヨドリ,ムクドリ,スズメ,カラス,ツバメといった標準種の鳥しか見あたりませんでした.参加者は,子供6名を含む46名でしたが,途中で参加した人もいますので,軽く50名は超えたようです.

カイツブリとその巣 キンシバイ(左)とビヨウヤナギ(右)

 いつもの集合場所で,まず,先週の報告があった後,参加者の持ってきたキンシバイ(金糸梅)とビヨウヤナギ(美容柳)の区別について話しました.キンシバイ(金糸梅)は,おしべが金の糸のように見え梅の花のようなので,この名がついたそうです.どちらの花も5弁の黄色い花ですが,ビヨウヤナギの花弁は離れており,花弁より雄しべが長いので派手な感じがしました.雄しべの数を数えたことがある参加者がいて,キンシバイは300本くらいで,ビヨウヤナギはその半分くらいだそうです.

 一見すると,雄しべが長いためビヨウヤナギの雄しべの数の方が多く見えました.花の様子は明らかに違うので間違うことはないですが,花の無いときにどう判別するかといういうことになりました.葉の裏の葉脈を見て,メッシュ状になっているのがビヨウヤナギで動脈状にしかないのがキンシバイだということでした.どちらもオトギリソウ科オトギリソウ属に属していて,花屋では英名のヒペリカム(Hypericum)として区別されずに売られている場合もあるそうです.園芸種として街路にも使われていますが,誤って名前が表示されていることもあるそうです.

 早く来て平和公園を一回りした参加者が,ミドリシジミを見てきたということで,今日は,あまり寄り道をしないでハンノキ湿地に直行することにして出発しました.

 ハンノキ湿地に行くまでに,ヒメジョオン,クロバナロウバイ,カノコガ,キリギリスを観察しました.ヒメジョオン(姫女苑)が出てくるといつものように,非常に似ているハルジオン(春紫苑)との違いが話題になりました.

 どちらも白い花弁を持ったひかえめで可憐な花ですが,ハルジオンは4月に咲いて,6月にはヒメジョオンが大半になるそうです.茎を折って,中が空洞であればハルジオンで,白い随があればヒメジョオンということです.ある参加者は,お嬢さんの名前がハルコで,頭がからだからというような覚え方をしていると説明がありましたが,今年日本で最も難しい大学に入ったということで,この覚え方はもう意味がないようです.別の行儀の良くない覚え方もあるようです.茎を折らない判別方法としては,ヒメジョオンの基部の葉は茎をだかないことでハルジオンと区別できるそうです.どちらも北米原産です.

【外部リンク】春夏秋冬おさんぽ雑記

 クロバナロウバイ(黒花蝋梅)は,アメリカロウバイとも言い,明治に北米から入ってきたということは,参加者の1人が図鑑を読んで説明しました.庭木としてよく植えられ,茶席の花としても用いられるようです.葉は,カキの葉に似ていました.花は紫色の個性的な形をしており,冬から春に黄色い花が咲く中国種のロウバイとは,全く似ていませんでした.花は,かすかな甘い香りがしました.

ヒメジョオン クロバナロウバイ カノコガ キリギリスの幼虫

 カノコガを子供が採ってきました.カノコガは,昼間に活動する蛾で,翅の鹿子模様から名前がついており,実際は蜂(フタオビドロバチ)に擬態しているといわれているという図鑑の解説ですが,蜂のようには見えないという子供の感想でした.キリギリスは,まだ,幼生で羽が十分はえていませんでした.捕虫網で子供が採ろうとしましたが,採れそうもなかったので,私が素手でぱっと採り渡しました.

 ハンノキ湿地の水位は非常に深くなっていました.周辺は保護のために,トラロープで一部進入規制がしてありました.まず,池の端にあるハンノキについて,研究者(元教授)の方から説明がありました.ハンノキは,湿地に植生する日本の標準の樹木ですが,この木は通常のハンノキでなく環境省の準絶滅危惧種になっている,サクラバハンノキの可能性が高いということでした.葉の葉柄(葉脚)が,普通のハンノキは細長く(くさびのよう),サクラバハンノキは丸いという説明でした.ただし,成長するごとに変わるので,今後明確にしたいということでした.樹皮の様子で分からないかという質問も出ましたが難しいということでした.サクラバハンノキであってほしいという願望が,このハンノキ湿地を大事にしている人たちにあるようです.

サクラバハンノキ サクラバハンノキの葉

 ハンノキ湿地を少し入ったところで,早速,ミドリシジミが発見されました.もう時間帯としては遅いと思っていましたが,昨年に続いて今年も見ることができました.非常にせわしく飛んでいるので,良い写真はとれませんでした.1頭だけでなく,数頭が観察されました.雄の表面の輝くような緑を見た人は少なかったようです.9月に産卵して,春に幼虫になり,ハンノキの新芽などを食べて,5月にさなぎになり,この6月に蝶として出てくるという説明がありました.

 同じ場所で,ホタルガとキマダラセセリも観察しました.キマダラセセリは,参加者の青い帽子に留まって,帽子を取ってもまた留まりました.蝶に詳しい参加者から,汗に含まれるミネラルをとろうとしていたのだろうという指摘がありました.

ミドリシジミ ホタルガ キマダラセセリ

 また,このとき大きなスズメバチが1匹飛んできました.皆,動かないようにして避けましたが,このスズメバチが草むらに入っていったので,そっと観察するとこぶし大の巣ができていました.ゆっくりとこの場所を退散しました.

 少し離れて,捕虫網で採ってきたミドリシジミとキリギリスを皆で観察しました.ミドリシジミは観察ビンに入れても,なかなか羽を広げてくれないので,緑の表面が見ることができませんでした.ビンをたたいてやると驚いて飛ぶ事を発見しましたが,早く飛ぶので,大半の人は表面の緑は見ることができなかったようです.

 キリギリスに関連して,平和公園で夜に鳴く虫として,ジージージーと鳴くのは,ケラとクビキリギスであり,リリーンと鳴くのはキンヒバリという説明がありました.クビキリギスは,キリギリスの一種ですが,頭頂が著しく尖った大きなキリギリスで口の周囲が赤く,名前の由来は,指に噛みつくと離さず,無理に引っ張ると首が抜けるということでした.今回観察したのは,普通のキリギリスでまだ羽の生えていない幼生のものということになりました.ミドリシジミとキリギリスは,もちろん観察後に放してやりました.

【外部リンク】昆虫エクスプローラ

 キラニン広場に行くまでに,日本固有のユリであるササユリを観察しました.葉が笹に似ているので,この名があるようです.既に花の季節は終わって葉だけでした.説明をした参加者は,毎年,楽しみにしているそうですが,淡いピンク色の花が咲くとすぐに折られて採られてしまうということでした.花が咲くには7年かかるということでした.2年目で葉が1枚のササユリが,倒木の下方に隠れていました.

ササユリ(2年目)

 キラニン広場では,ビーティングネット(叩き網)を使ってゾウムシやカミキリムシを採取しました.ビーティングネットは,白い帆状の布にX字型の木枠を当てたもので,これを樹木の下にあてがって,樹木を棒で叩いてムシを落として採取するものです.アカメガシワの花についている昆虫を,この方法で捕りました.ハナノミ,カメムシ,タマムシ,ゾウムシなどが捕虫できました.白布の上なので,ハナノミのような小さな昆虫も観察できました.

 キマダラカミキリとヒゲコメツキは観察ビンに入れて観察しました.ヒゲコメツキは,最初,クシヒゲコメツキと紹介されましたが,その方が櫛歯状の触角(オス特有)の特徴を捉えているように思いました.この触覚はフェロモンの感知装置だという参加者がいました.ビーティングネットを持ってきて,子供の頃からゾウムシの研究をしている参加者に対する,どうしてそのように目立たないものを対象にしたかという質問に,種類が多くて図鑑などにも載っていないものが採取できるからという回答がありました.日本では,246属647種が確認されていますが,名称のついていないもの(未記載種)を入れると実際は2000種くらいだろうということでした.報告書によると名古屋大学構内では41属62種が確認されているそうです.できれば,80?100種にしたいそうです.確かに,WWW でも,写真付きできちんとした記述のあるゾウムシのページは少ないようです.

ビーティングネットで採取した昆虫 コフキゾウムシ キマダラカミキリ ヒゲコメツキ

 クズについているゾウムシを捕るために,平和公園の入り口近くまで行こうとしました.途中で,秋に咲くハギの紫の花を見つけました.芝生広場をすぐに過ぎたところでクズが見つかったのでここで昆虫を採取しました.茎がおれているようなところにゾウムシがいるそうです.コフキゾウムシを見つけて観察しましたが,交尾中のようで,参加者の手の甲に乗せても離れませんでした.ゾウムシの名前の由来は,大型の種類は口吻が長く伸びた種類が多く,象の鼻のようであることによるようですが,そのような姿態でないゾウムシもいるということでした.

【外部リンク】ウィキペディア −ゾウムシ−

ハギの花

 最後に,この場所で腰をおろして感想会を行いました.子供達は,昆虫やザリガニを持ってきて,参加者に見せていました.大きなクモの抜け殻も見つけてきました.この時期は,生き物が豊富なことが分かります.途中参加の人も含めて40名くらいの参加者が残り,昼食を取りながら,感想を述べました.気持ちのよい観察会であったというのが共通の感想でした.クモやアブラムシなどが,荷物や体に頻繁につきました.クロアゲハもちょうど,参加者の上を飛びました.

クモの抜け殻 ザリガニや昆虫を持つ子供たち

 2人の女の子を連れた参加者から,ツバメについての話がありました.台風の後で,ツバメの巣が壊れてしまい,ツバメの雛を1羽,子供が拾ってきて,育て上げたということでした.東山動物園などにも相談した結果,雛が口を開けないときは,ドッグフードを柔らかくして,口に押し込み,口をあけるようになったら小鳥店などで売っているミルワーム(ゴミムシダマシの幼虫)をやったそうです.普通のツバメは,飛べるようになると,親から虫の取り方を習うそうですが,今回はその代わり,口の近くでチョウやガガンボなどを離してやり,自分で食べるように訓練したそうです.無事に育って,涙の別離(放鳥)をしたそうです.

 今回の例は,問題ありませんが,通常の森などの場合は,日本野鳥の会は,「落ちたヒナを拾わないで」というキャンペーンをやっています.これは,「近くには見えなくても,親鳥は必ずヒナの元へ帰り.世話をする.人がそばにいると,逆に親鳥はヒナに近づけなくなる.大半は拾う必要のない元気なヒナであり,少し高い木の枝などに移すか,そのままそっとしておいて.」ということです.ヒナが自然に育つ確率は1割とも言われていますが,他の動物の餌食になるのも,自然の摂理という考え方もあるようです.

 なお,最後にカイコを飼いたい人の募集もありました.それ程,難しくないとのことでした.

観察項目:キンシバイ,ビヨウヤナギ,クロバナロウバイ,カノコガ,ヒメジョオン,サクラバハンノキ,ミドリシジミ,スズメバチ,スズメバチの巣,ホタルガ,オオシオカラトンボ,キマダラセセリ,キリギリス,ササユリ,アカメガシワ,ヒメヒラタマムシ,キマダラカミキリ,ウスアオクチブトゾウムシ,ヒゲコメツキ,コフキゾウムシ,ハナノミ,クロアゲハ(概ね観察順)

伊藤義人

監修 滝川正子