7月の観察記録
カテゴリ : 2004年
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 昨日の荒れ模様の天気が嘘のような快晴になりました.日差しは相当強かったですが,風が少しあり,雨上がりということもあり,木陰は大変気持ちのよい日になりました.新池周辺はすっかり夏で,野鳥達の子育ても終わりという感じでした.カイツブリの巣も木立で全く見えなくなり,無事巣立ったものと思います.

 野鳥は,今月もヒヨドリ,ムクドリ,カラス,ツバメ,スズメの標準種ばかりでした.スイレンで半分以上が覆われている水面上には多くのトンボ(シオカラトンボ,ギンヤンマ,コシアキトンボ,チョウトンボ)が飛んでいました.遠くにクマゼミの鳴き声がしました.参加者は,子供8名を含む42名でした.今回初めて参加された方も5〜6名おられたようです.いつもの雑木林の中を歩くのとは違った観察会だったので多少とまどわれたのではないかと思います.

 いつもの集合場所で,先月の報告と「東山の森だより」の創刊号も配布されました.先月の報告の中でサクラバハンノキには?を付けておいてほしいということになりました.近々1年間の記録を冊子にまとめるという報告もありました.日差しが強かったので,熱中症にならないようにとの注意がありました.熱中症になると,頭がボーとして,反応がにぶくなるそうです.吐き気をもよおす人もいるそうです.最悪,死ぬ人もいますので,熱中症のときは,血液を冷やすため,水をかけ,濡れタオルなどで,首筋などを冷やすとよいそうです.砂糖や塩の入った水やスポーツ飲料を飲ませるとよいそうです.

 その後,参加者の持ってきたギョリュウ(御柳,ギョリュウ科)と羽化したカイコを観察しました.回覧して観察しましたが,先が長いということで,この観察会は子供優先でした.ギョリュウは,中国原産の木で,かの楊貴妃も愛したそうですが,18世紀に日本に入ってきたそうです.葉は鱗片葉を繋げた針状で,花は5月と9月に咲くそうですが,今回のものは既に色あせた花でした.小さなミノムシが,いくつかついていました.ミノムシの雌は,ミノの中で一生過ごすということでした.雄が羽化してミノガとして飛びますが,生活の長さからしたらそんなに変わらないのではという参加者がいました.今回は,幼虫が出てきてミノを作ろうとしており,今後,ミノもミノムシも大きくなるということでした.冬になって,ギョリュウの葉が落ちると,ミノムシが目立ち,ヒヨドリやスズメが,プチプチとミノをつぶして,肉汁を吸うそうです.肉汁に関連して,台湾のカブトムシから,メシチリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)にも効く成分を抽出できるというテレビ番組の話がでました.日本のカブトムシも,カビや雑菌のなかで立派に生きているので,その成分を持っていてもよいのではという反論もありました.ミノで財布を作ろうとしても,なかなかうまくミノムシはミノから出てきてくれないという参加者もいました.

ギョリュウ

 カイコは,先月の募集に応じて育てた結果の報告でした.黄色と白色の2種の繭とそれから羽化した雄のカイコガの観察をしました.雄のカイコガはまだ生きていて,手に繭と一緒に持つと興奮して羽をばたつかせていました.フェロモンに反応しているのだろうということでした.雌は,もっと鷹揚だそうです.黄色は,中国で皇帝の色であるため,イタリア原産の黄色の繭を作るカイコは大変珍重され,領土などと交換されたこともあるという話がありました.カイコガは飛べないので,逃がすわけにも行かないという人に対してベランダなどに出して,鳥に食べてもらっていう話がありました.なお,商品価値のある大きな繭を作らせるためには,人間は直接触ってはいけないそうです.人間の子供も手をかけすぎると自立した大人に成長しないのかもと変な連想をしてしまいました.

 さらに参加者が持ってきたイヌビワ(クワ科,イチジク属)を観察しました.名前はビワですがイチジクの仲間で,小さなイチジクのような実がなっていました.雌雄異株で,花は外からは見えない集合花となっており,受粉はイヌビワコバチ類が行うそうです.イヌビワとイヌビワコバチは共生関係で,なかなか複雑のようです.以下のHPに詳しい観察記録があります.

【外部リンク】アマナの里を守る会 −イヌビワとイヌビワコバチ−

 雌花の花嚢は熟れて黒紫色になれば食べられるそうですが,雄花の花嚢は固くて食べられないそうです.

カイコガ(雄)と繭 イヌビワ アップルミントの花

 ここまでで45分かかってしまいました.今月も人数が多いので,自己紹介をせずに出発しました.アクワタワー近くのオオウラジロノキの実を観察に行くということで,いつものルートとは違って,平和公園周辺道路の歩道を歩きました.案の定,途中で多くの時間をとって,いろいろなものを観察することになりました.

 まず,通常は平和公園へ入っていく入口の近くで,アップルミント(シソ科)を観察しました.葉をとってにおいをかぎました.スペアミント(オランダハッカ)ではないかという参加者もいましたが,リンゴのにおいがするのでアップルミントが優勢でした.何科かということで,茎の断面が四角ということでシソ科の多年草だということでした.勝手にどんどん増えるそうで,挿し木でもよいそうです.スペアミントの方がハーブティーには向いているそうです.ミントは日本語で薄荷(ハッカ)であるということを学生の参加者に教えていたのに対して,それを言うのであれば,野依良治先生のノーベル賞にふれないのはおかしいということになりました.薄荷やペパーミントの主成分であり,すっきりした清涼感のあるのは,左手型メントールであり,野依先生が発明された触媒による不斉合成で初めて人工合成が可能になったというものです.タバコ,のど飴,歯磨き粉などに使われる世界的な香料であり,産学連携の雛形とも言われています.なお,右手型メントールはほこりっぽく、消毒薬臭いそうです.

 子供達が,ショウリョウバッタ,クビキリギスを捕まえてきました.ショウリョウバッタの雄は,雌に比べて小柄でスマートですが「キチキチ」と音をたてながら飛ぶのでキチキチバッタと呼ばれることを男の子が説明してくれました.雌はハタオリバッタと行っていたのを思い出しました.緑色だけでなく枯葉色のものもいたのを思い出しました.今も昔も,トノサマバッタとともに最もポピュラーなバッタでしょう.

 昔の遊びをよく知っている男性の参加者が,ネザサの尖端を折って,三角アメのようにする草遊びを参加者に教えて,アベマキとコナラの木陰で子供達だけでなく大人も一斉に作りました.本当は,葉の大きいヨシでやるともっとよいそうです.懐かしいものでした.皆が作り終えて,少し道路に沿って歩くと,今度は女性の参加者が,オニヤンマを捕まえて皆に回覧しました.子供の頃,ギンヤンマは多かったですが,さすがにトンボの王様(日本で一番大きく立派)であるオニヤンマは,少ないのと非常に早く飛ぶので簡単にはとれませんでした.オニヤンマを捕虫網などで取ると,大変自慢ができたことを思い出しました.素手で捕まえるというのは信じられなかったのですが,どうやら羽化して間もないか,何か異常があって十分飛べずに停まっていたようです.

草遊び オニヤンマ

 黒色に黄色のストライプ(9本)が入っており,大変きれいなものでした.頭の後ろの毛を触るとイヤイヤをしました.これが,姿勢を感じる器官だそうです.雄か雌かということで,図鑑を見ながら,尻尾の尖端の下側に長い産卵管があるので雌であるということになりました.雄は交尾のときに雌の首をつかむために尖端が割れているという指摘もありました.

 さらにアスファルト歩道を歩き,交差点角のコフクザクラのあるところで,カタバミ(カタバミ科)の実を使って10円玉を磨きました(銭磨き).何故きれいになるのかという質問に,少しかじってみて酸っぱいので,多分,カタバミにシュウ酸が多く含まれているのであろうということになりました.調べて見るとシュウ酸カリウムが10%も含まれていて有毒ということでした.このカタバミを食草(host plant)としているヤマトシジミを参加者の1人がちょうど捕虫網で捕まえ観察容器に入れて皆で観察しました.ここで,アゲハチョウの図柄のトランプが紹介されました.種類の違う蝶の卵から成虫までを数字の順に図柄になっていました.ジョーカーは,天敵の寄生蜂であるアオムシコバチ(蛹から沢山出てくる)とアゲハヒメバチ(1頭のみ)でした.小さな子が観察すると青虫が子供を生んだと誤解するそうです.
カタバミによる銭磨き ヤマトシジミ チョウのトランプ

 さらにずっと歩いて,レモンバームを観察してから,アクアタワー近くの道路端のオオウラジロノキ(バラ科リンゴ属)の所に到着しました.今年初めて実がなったそうです.6本の木がありました.沢山の小さな実が落ちていましたが,木についているのは3cm くらいの実1つだけが観察されました.採らないように注意がありました.子供達は,早速,周辺を歩いて多くの実を集めてきました.平和公園のシンボルになり得る木であるとの紹介がありました.リンゴの野生種であるそうです.落ちていた実を食べた参加者からは,渋いというよりえぐいという感想がありました.食べられないようです.すぐ横の大きなコナラが,日陰を作っているので,できれば切ってくれるように名古屋市に頼んであるそうです.

レモンバーム オオウラジロノキの実

 やっとここで,平和公園の中に入りました.北側のこの地域には,観察会はほとんど入ったことはありませんでした.ナワシログミやカツラの木を観察しました.すぐに,マロニエとハナノキのある木陰に来ました.マロニエ(トチノキ科)は,別名セイヨウトチノキと言われ,ヨーロッパ原産で,ヨーロッパや北米では街路樹としてよく植えられており,最も優雅な並木道として映画などでパリのマロニエ通りは有名です.トチノキに似ていますが,葉はやや小型ということです.葉の数を観察すると5?8枚で,バラバラでした.すぐ横のハナノキ(カエデ科)が愛知県の木(昭和41年)として紹介されました.雌雄異株の落葉高木だそうです.4 月ころ,葉が出る前に真紅色の花が咲き,特に雄花は美しいので花の木という名前がついたそうです.

 樹皮がつるつるのものと,はがれているものがあり,樹齢による違いであろうという話がありました.

 このマロニエとハナノキの木陰で感想会になりました.少し風が吹いて,快適な状況で,昼食を食べながら感想を述べました.子供達は,虫取りに熱中していました.今も昔も,子供達が虫取りに熱中するのは,変わらないようです.

 平和公園周辺道路の横のアスファルト歩道をたくさん歩いて観察するという異例の観察会になりました.平和公園の樹木の横なので,比較的日陰が多かったですが,通常の土の上を歩いた方が快適であると思いました.7月20日19:00からのセミの脱皮を見る会の案内もありました.

ナワシログミ マロニエとハナノキの木陰 マロニエの葉裏

 なお,観察会終了後に帰り道であるということで,平和公園を南北に縦断しました.天理教の墓地のすぐ北の分水嶺(標高76m,猫ヶ洞池(山崎川),植田川,香流川の3つ流域)にまず行きました.お墓の横は土留めされていますが,本来はこの地域の地層観察の最適地で,元に戻すような運動もあるということでした.この分水嶺では,ツマグロヒョウモンとネジキを観察しました.南の方へ行く間に,マンネンタケ(霊芝,れいし),エドヒガン,ヤマコウバシおよびカタバミの黄色い花を見ました.ハンノキ湿地では,カワセミ,エナガなどの野鳥も観察しました.

ツマグロヒョウモン エドヒガン

観察項目:ギョリュウ,ミノムシ,カイコ,カイコガ(雄),カイコの繭(黄,白),イヌビワ,アップルミント,ネザサでの草遊び,オニヤンマ,ショウリョウバッタ,クビキリギス,レモンバーム,カタバミ,ヤマトシジミ,オオウラジロノキ,ナワシログミ,カツラ,セミの抜け殻,マロニエ,ハナノキ,(概ね観察順)

観察会終了後の追加:ツマグロヒョウモン,ネジキ,マンネンタケ,エドヒガン,ヤマコウバシ,カタバミの花,エナガ,カワセミ

伊藤義人

監修 滝川正子