9月の観察記録
カテゴリ : 2004年
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 集合時間には曇っていましたが,次第に晴れて,観察会の途中では帽子をかぶらずにはおられないほど晴れて日差しが強くなりました.しかし,トウカエデの一部は既に紅葉を始めており,セミの鳴き声もツクツクボウシだけで,秋の気配が濃厚でした.新池周辺では,ヒヨドリ,ムクドリ,スズメ,ハト,メジロなどの標準種の鳥ばかりで,まだ,野鳥は渡ってきていないようでした.新池の水面上にはウスバキトンボ(薄羽黄蜻蛉)が多く飛んでいました.参加者は,子供11名,大人41名の52名でした.途中で参加した人もいましたので,最終的な延べ人数はもう少し多かったと思います.好奇心のかたまりのような子供達が多かったので楽しい観察会になりました.

 まず,いつもの集合場所で,先月の記録を見ました.写真のイヌビワコバチの大きさが実物の2倍くらいだという感想が出ました.この後,参加者の持ってきたキョウチクトウ(夾竹桃,キョウチクトウ科)の実とアレチヌスビトハギ(荒地盗人萩,マメ科)を観察しました.キョウチクトウの実は,大半の人が見たことがありませんでした.実の形はモロヘイヤに似ているという参加者がいました.中国共産党の主席が,役にたたない例として実のならない樹木としてキョウチクトウを引用したのを思い出しました.キョウチクトウは,有毒成分として強心配糖体を持っており,薬草としても使われるそうですが,この枝に肉を刺してバーベキューをして,死亡事故が外国であったそうです.

アレチヌスビトハギ キョウチクトウの実とアレチヌスビトハギ

 アレチヌスビトハギは,ミヤギノハギではないかという人もいました.これは,実の表面が比較的なめらかでひっつき虫になっていないのではということでしたが,今はまだ,花の時期で,実が大きくなれば鉤毛が伸びてひっつき虫になるであろうということになりました.なお,アレチヌスビトハギは外来種ですが,ヌスビトハギ(盗人萩,マメ科)は在来種で,その実(節果という)の形は,ちょうど真ん中に深いくびれがあり,この形が盗人の「忍び足の足跡」に似ているという所からこの名称がついたそうです.アレチヌスビトハギの実はヌスビトハギよりは浅いくびれがあり,1〜6の実にはそれぞれに種が入っていました.アレチヌスビトハギは平和公園の中にも沢山あり,可憐な紫の花を咲かせてきれいですが,秋になるとひっつき虫になって大変やっかいです.

 春の北上,秋の南下を繰り返す「渡り」をするアサギマダラ(マダラチョウ科)にマーキングするため,滝川先生が折りたたみ式の捕虫網を用意してこられ配布されました.残念ながらこの日は,アサギマダラは見つからず,その代わりにオニヤンマなどを捕らえました.30cm くらいの大きなアカミミガメが道路にいたということで,子供の参加者が持ってきました.縁日などで売っているミドリガメの1つで,最近は増えすぎて在来種のカメが駆逐されて困っているという話がでました.子供がカメを裏返しにしても,頭部を使って上手に起きあがりました.さすがに3〜4度と繰り返されると疲れてすぐには元に戻りませんでした.

オニヤンマ アカミミガメ ヌルデの花

 10月16日9:30から,平和公園で樹木調べをするので,参加要請がありました.今回も観察会の参加者は多かったですが,久しぶりに簡単な自己紹介をしてから,約10時に平和公園に向かって出発しました.出発の時,集合場所の樹上で,ヒヨドリが大きな声で鳴いたので,上を見ると別のヒヨドリが青虫をくわえていました.

 集合場所を出てすぐのアスファルトの歩道を歩いていると,道路脇のヌルデ(奴留手,ウルシ科)の花が咲いていて,小さな白い花が路上に一面に落ちていました.ヌルデは複葉の中軸に翼がついているので,ウルシと区別がつくという説明がありました.

 平和公園に入ってすぐのところで,ヤハズソウ(矢筈草,マメ科)を観察しました.マメ科特有の2mm程度の小さなピンク色の花が咲いていました.群生しているヤハズソウの中には,クビキリギスなどの多くのバッタがひそんでいました.ヤハズソウの小さな葉を両側から引っ張ると尖端がくさび状に切れて,葉柄の付いている側が矢筈(矢の矢羽のついている部分)の形状になるため,この名前があるそうです.別名ジャンケングサと言い,葉を別々の人が持って,矢筈の方を持った人がチョキで,逆側がグーという遊びだそうです.

【外部リンク】身近な野草 −やはずそう−

ヤハズソウの花 ヤハズソウの中のバッタ ヤハズソウの根粒 ヤハズソウの葉(左は先端をちぎったもの)

 根を掘って,マメ科特有の根粒菌の入っている根粒を観察しました.根粒菌が空気の80%を占める窒素N2 を固定してアンモニアNH3にし,その後,植物が栄養としてアンモニアを吸収してアミノ酸をつくり,さらにタンパク質をつくるということで,それを食べる人間の体の基にもなっているという説明がありました.

 すぐ近くで,ウスバキトンボ(薄羽黄蜻蛉)が沢山飛んでいたので,大人も子供も嬉々として捕虫網で捕らえて,雄雌の区別をしました.上手にトンボを捕るための捕虫網の使い方の説明もありました.トンボは複眼であり後ろも見えるので,前から網をさっと振って捕り,それから網を捻って逃げないようにするのがこつのようでした.最初,ウスバキトンボの尾(実際は腹)の先端が,2つに割れている(交尾のときにこれで雌の首を掴む)のが,雄としていたのですが,どれも,2つに割れているということで,図鑑を参考にして,先端がハの形で割れているのが雄で,すっとまっすぐになっているのが雌ということになりました.

【外部リンク】神戸のトンボ

ウスバキトンボ

 さらに平和公園の中に入って,ヒメムカシヨモギ(姫昔蓬,キク科)に付いていたジョロウグモを観察した後,紫色のクズの花の香りをかぎました.ファンタグレープの香りという人もいました.ブドウの香りであることは確かでした.カタバミ(片喰,別名ゼニミガキ,カタバミ科),ムラサキシキブ(紫式部,クマツヅラ科),クモの子などを観察した後で,イシミカワ(石見川,タデ科)とママコノシリヌグイ(継子の尻拭い,タデ科)の区別についての説明がありました.三角形の葉の形状は同じですが,棘のある葉柄が付いている位置が違い,葉の端についているのがママコノシリヌグイで,傘のように葉の中についているのがイシミカワということでした.

【外部リンク】デジタルイラスト工房「あかまんま」観察日記

ヒメムカシヨモギとジョロウグモ クズの花 ムラサキシキブの実 イシミカワとママコノシリヌグイ

 さらに進んで,ガマズミ( ,スイカズラ科)を観察しました.ガマズミの赤い実は,おいしいという参加がいました.ただし,周辺のガマズミの実の多くは,虫えい(虫こぶ)またはカビが生えたように綿帽子状で色も赤ではなくカビのような緑色でした.木によっては,赤い実と混在しているものもありましたが,全てこのような状態になっている木もありました.近くでアオマツムシが木の葉にとまっているのを,皆で観察しました.

 トンボ池に到着すると,かなりのフサモが水から上げられていました.増えすぎて困って,愛護会の人たちが処分したということでした.金魚鉢に入れるために複数の参加者が持ち帰りました.

 近くにシロバナサクラタデ(白花桜蓼,タデ科)の盛りの過ぎた花がありました.昔よく遊んだジュズダマ(数珠球,イネ科)や愛護会の人たちが育てているソバを観察しました.ソバは,白い花を付けているものと,既に黒い実をつけているものが混在していました.ここで,ソバは5色という説明がありました.花は白、茎は赤、葉は緑、根は黄、そして実が黒ということです.

【外部リンク】そばの豆事典 −そばのはな−

ガマズミ(赤い実と虫えい) ジュズダマ

 芝生広場からさらに進んで,シロバナマンジュサゲ(白花曼珠沙華,別名シロバナヒガンバナ(白花彼岸花),ヒガンバナ科)を見にいきました.赤いヒガンバナは,お彼岸のときにお墓によく咲いているため知られていますが,白い花のものは初めてという参加者も結構いました.ヒガンバナと似て,花茎がすくっと伸びて10cm くらいの花が満開のものが群生していました.花はヒガンバナより反り返っていないように見えました.シロバナヒガンバナは,ヒガンバナとショウキズイセンの自然交配種と考えられているようです.ヒガンバナと同じように3倍体なので,実はならず,球根で増えるそうです.

 ナミアゲハ,ヒヨドリバナ,ボケの実を観察した後,カラタチに付いていた沢山のクロアゲハの幼虫(5齢)を観察しました.触ると臭い赤い角を出しました.

【外部リンク】夏型クロアゲハの観察記録

シロバナヒガンバナ(シロバナマンジュサゲ) ヒガンバナ(マンジュサゲ) クロアゲハの幼虫

 最後に,感想会を見晴らしのよい場所で行いました.すぐ横の溝の上をオニヤンマが飛んでおり,捕虫網で捕らえて観察しました.黄色のきれいなストライプは見事なものでした.このオニヤンマは,参加者のお母さんが捕ったと聞き,子供の頃のあこがれのトンボが簡単に捕えられて少しショックでした.皆で持ち回して観察したため,手を離しても飛べなかったので,木の葉にとめて逃がしてやりました.さらに子供が2匹のオニヤンマを捕虫網で捕らえましたが,残念なことに1匹は尻尾(腹)がとれてしまいました.もう,生きてはいけないので,接着剤で付けて標本にするように助言されていました.

 今回は何が最も印象に残ったかという形で感想を言いました.最後に,先月観察したミソハギに関する金子みすゞの詩を順番に朗読しました.さみしいミソハギとは何を指しているのでしょうか.

「みそはぎ」 金子みすゞ作

ながれの岸のみそはぎは、誰も知らない花でした。

ながれの水ははるばると、とおくの海へゆきました。

大きな、大きな、大海で、小さな、小さな、一しずく、

誰も、知らないみそはぎを、いつも想って居(お)りました。

されは、さみしいみそはぎの、花からこぼれた露(つゆ)でした。

観察項目:キョウチクトウの実,アレチヌスビトハギ,アカミミガメ,ヌルデ,ヤハズソウ,ウスバキトンボ,クズ,ウメモドキ,カタバミ(ゼニミガキ),ムラサキシキブ,イシミカワ,ママコノシリヌグイ,マメガキ,クモの子,ガマズミ,アオマツムシ,フサモ,シロバナサクラタデ,ジュズダマ,ソバ,シロバナヒガンバナ(シロバナマンジュサゲ),ナミアゲハ,ヒヨドリバナ,ボケ,カラタチ,クロアゲハの幼虫,ヒガンバナ(マンジュサゲ),カナヘビ,オニヤンマ(概ね観察順)

伊藤義人

監修 滝川正子