10月の観察記録
カテゴリ : 2004年
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 台風(22号)一過でしたが快晴とまではいかず,集合時は曇りでした.しかし,最初から青空も少し見え,解散時には日差しが強くなり,秋風が吹く気持ちの良い観察会になりました.新池周辺の桜は,既にかなりの葉が落ちていましたが,残った葉は紅葉を始めていました.センダンの実も大きくなり,まだ大半が緑色でしたが,一部は色づき始めました.セミの鳴き声はもう聞こえず,代わりにコオロギの鳴き声がうるさいほどでした.エナガやシジュウカラの鳴き声も聞こえました.新池の水面上にはウスバキトンボ(薄羽黄蜻蛉),キチョウ,モンシロチョウなどが多く飛んでいました.アサギマダラ(浅葱斑)も集合場所から新池に向かって飛んでいきました.また,ツマグロヒョウモン(褄黒豹紋蝶)は,セイタカアワダチソウで吸蜜していました.参加者は,子供8名,大人41名の49名でした.自己主張の強い男の子もいて大変楽しい観察会になりました.

センダンの実

 まず,いつもの集合場所で,スズメバチ(雀蜂)に刺されない方法について複数の参加者から説明がありました.観察会で死なない方法というドキッとするような言い方をする参加者もいました.スズメバチは,黒いものに向かってくるので,刺されないようにするためには,体の露出部を少なくして,白い服と帽子をつけ,万一,出会ったら,むやみに動かないで低い姿勢になるとよいそうです.スズメバチは下方の視認が鈍いそうです.実際に,観察会終了後の帰り道で,1人の参加者の肩に大きなスズメバチが留まりましたが,騒がず低い姿勢をとると,逃げていきました.

 もし,刺されたら,手で毒を絞り出すとよいそうです.口で吸うと歯ぐきなどから毒が回るそうです.種々の毒素が混ざっている蜂毒は水溶性であるので,水で洗い流したり,濡れたタオルで拭くのもよいそうです.その後で患部を冷やすそうです.アンモニアもよいという参加者もいて,おしっこをぬればよいとも言いました.抗ヒスタミン軟膏はよいそうですが,インタネットのHPではアンモニアは役にたたないという記述もあり,真偽は不明です.同系統の蜂(スズメバチとアシナガバチなど)に2度目に刺されたときにアナフィラキシー(Anaphylaxie,無防御)反応をおこして死亡するのが最も怖いそうです.これは,『一度何らかの「抗原(アレルギーを引き起こす物質)」にさらされ,「抗体」が出来た人が,再び同じ「抗原」に接触した時に起きる急性で,全身性のアレルギー反応』だそうですが,この場合は救急車を呼んで医者に対処してもらうしか方法はないようです.ハチに刺されて日本では年間30〜40名程度死亡するそうですが,この人数が多いと思うかどうかは考え方の問題でしょう.

【外部リンク】健康とからだ −蜂刺傷

【外部リンク】部屋にスズメバチが・・・

 つぎに,先月の記録を見た後で,参加者の持ってきたツマグロヒョウモン(褄黒豹紋蝶,タテハチョウ科)の幼虫,ツリバナ(吊花,ニシキギ科)の赤い実,サルスベリ(百日紅,ミソハギ科)の実およびゲッケイジュ(月桂樹,クスノキ科)の黒い実を観察しました.ツマグロヒョウモンの幼虫は,スミレやパンジーを餌にするので,蝶になるまで飼いたい人は,持ってかえるように誘いがありました.ただし,買ってきたパンジーなどは,消毒されている可能性があるので水洗いしてからでないと死んでしまうこともあるそうです.

ツマグロヒョウモンの幼虫 ツリバナの実 ゲッケイジュの実とサルスベリの実

 自己紹介は感想会のときにすることにして,9時50分くらいに集合場所を出発しました.すぐには,平和公園に行かず,新池の西側のノアズキ(野小豆,マメ科)を見に行きました.今年,非常に目立つようになったということで,フェンスの向こう側に,ノアズキの実が多くみのっていました.蝶が留まったような変わった形の黄色い花も1つだけ残っていました.野小豆と和名は書きますが,まずくて食用にはされないそうです.狭い通路に50名近い参加者が群れて観察していたので,ジョッギングをしている高校生の邪魔になってしまいました.

 フェンス近くのセンダンの木の葉が,幼木と成木で,形が違うことが見つけられました.幼木の葉には大きな切れ込みがたくさんありました.前に観察したアカシア・メラノキシロンやカイズカイブキのように,遺伝子が不安定で,先祖帰りであろうということになりました.

センダンの成木と幼木の葉の違い

 新池を掻い堀り(かいぼり)する計画があるそうです.300万円程度かかるそうですが,ヘドロの中にどんな生物がいるか見てみたいものです.

 平和公園の入り口の歩道に水があふれていました.昨日の台風による雨が雑木林からしみ出してきて側溝からあふれていました.平和公園に入ってすぐのところで白い花を咲かせている植物がクジャクソウ(孔雀草,キク科)かユウセンギクかということが話題になり,結局クジャクソウということになりました.このあたりにはニホンミツバチが多くいました.ニホンミツバチの蜂蜜は,セイヨウミツバチの蜂蜜と違って種々の花の蜜が混ざっているので百花蜜として珍重されているというような事を雑談している参加者がいました.ニホンミツバチの大きさは,セイヨウミツバチに比べかなり小さいので,蜜も集めにくいのかもしれません.

 コガネグモ(黄金蜘蛛,コガネグモ科)が蜘蛛の巣の真ん中にいたので,手でさわると蜘蛛の巣全体が前後に揺すられました.これは威嚇のためだろうということになりました.どうやって揺らしているかという質問に,ブランコのように体重移動によっているという回答がありました.コガネグモの体重は,蜘蛛の巣全体の重量の中で大きな割合を占めているので,体重移動によって容易に蜘蛛の巣を揺らすことができるということです.蜘蛛の巣にある白いかくれ帯は,体を隠すためという説と花に見せかけて昆虫を捕食するためという説があるようです.

 すぐ近くに三面の網を張った大きな雌のジョロウグモ(女郎蜘蛛,アシナガグモ科)もいました.蜘蛛の巣には雌よりはるかに小さな複数の雄と米粒より小さな(足の長さを入れても数mm)銀色のシロカネイソウロウグモ(白銀居候蜘蛛,ヒメグモ科)がたくさんいました.シロカネイソウロウグモは,ジョロウグモの巣に寄生して,ジョロウグモの食べかすやジョロウグモが小さすぎて食べない虫および蜘蛛の巣の網を食べているということです.

 9月になって,ジョロウグモが弱ってくると寄生するそうです.さらに,近くでゴミリボンの中に隠れているゴミグモ(塵蜘蛛,コガネグモ科)も見つけて観察しました.

コガネグモ ジョロウグモ

 外国人(ウクライナ人)の女性参加者が大黒ミミズ(フトミミズの俗称?)を素手で持ってきました.ミミズは環形動物門貧毛綱に属し,ちょっと見た目には分かりませんが,触ると周辺に毛があるという説明がありました.頭に酢をかけると七転八倒するというので,参加者が持っていた紙パックの飲み物(黒酢入り)をかけましたが,ほとんど反応を示さず,もっとほしいというような感じでした.多分,酸性度が低かったのだろうということになりました.

 男の子がキチョウ(黄蝶,シロチョウ科)をほしがって,捕虫網で捕って観察ビンに入れて観察しました.本当は自分のビニール袋に入れたがりましたが,なだめて男の子に持たせて回覧しました.自慢げな様子はほほえましいものでした.赤い花を咲かせているミズヒキ(水引,タデ科)やカラスウリ(烏瓜,ウリ科)などを観察しました.カラスウリの実は,まだ,緑のものとだいだい色になっているものが混在していました.カラスウリの観察中にカケスが独特の声で鳴きました.

ダイコクミミズ キチョウ サツマイモ掘り

 畑でサツマイモ(薩摩芋,ヒルガオ科,種類はベニコマチ)掘りをしました.子供達がよろこんで芋を掘りだしていました.昨年度も同じ場所で芋掘りをしましたが,もう1年が過ぎてしまったのかというのが実感でした.

 トンボ池近くでミゾソバ(溝蕎,タデ科)が群生していました.めだたない小さなピンクの花も群生するときれいに見えました.種がソバの種に似ており,水田の溝などに咲くためにこの名前がついたそうです.サワフタギ(沢蓋木,ハイノキ科)の青い実やスイラン(水蘭,キク科)の黄色い花もここで観察しました.ナンキンハゼ(南京黄櫨,トウダイグサ科)の紅葉を見ているときに,心地よい涼しい風がさっと吹きました.

 畑を後にしてから,2頭のアサギマダラ(浅葱斑,タテハチョウ科)を捕獲しそこないました.一度失敗すると,アサギマダラは高く舞い上がってしまい,2度目のトライはできませんでした.芝生広場の近くでやっと雄のアサギマダラを捕獲しました.近くで写真を撮っていた人から,かなりの剣幕で早く逃がすように言われました.前の方に行っていた参加者も雌のアサギマダラを捕獲していて,皆で比較しながら,マーキングをしました.翅の白い部分は鱗粉がなく透き通っているので,油性ペンで,捕獲場所や捕獲者名などを書いて放しました.アサギマダラは,南は台湾や沖縄まで渡っており,これらの調査ネットができあがっているそうです.

アサギマダラ(雄)のマーキング

 今回のアサギマダラもどこか南国で確認されるかもしれません.1人の参加者が,4ヶ国後で書かれたアサギマダラの調査ネットワークのパンフレットを回覧しました.このパンフレットから,アサギマダラは英語でChestnut tiger ということが分かりました.1000km 以上も旅した記録があるそうです.日本でも幼虫が観察されており繁殖しているそうです.なお,雄は後ろ翅の表に黒い性斑があることを図鑑と比較して確認しました.

【外部リンク】アサギマダラ情報

【外部リンク】アサギマダラを調べる会

 なぜ世代を越えて1000km 以上も危険な渡りをするのかということが話題になりました.適温の地へ移動するわけですが,基本的には勢力範囲を増やすためということになりました.キジョランなどのアルカロイド系の毒を持った植物を食べることにより,他の動物に捕食されるのを防いでいるという話もありました.

 このあと急いで,湧き水が出ているところまで行きました.男の子が,湧き水のきれいな水で,靴下が濡れるのもかまわず靴の泥を洗っていました.近くの木の葉の裏にナガコガネグモ(長黄金蜘蛛,コガネグモ科)の卵のうが見つかりました.結構たくさんありました.観察会の場では,トリノフンダマシ(鳥の糞擬態,コガネグモ科)の卵のうだということでしたが,後で調べたらナガコガネグモの卵のうだったという連絡がありました.

【外部リンク】大分発のホタル情報 −ナガコガネグモ−

【外部リンク】みんなの森 −トリノフンダマシ−

 周辺にはツマグロヒョウモン(褄黒豹紋蝶,タテハチョウ科)が5〜6頭いました.雌の翅の先端は紫黒色で,雄にはこれがありません.また,ルリタテハがクズの葉の上でじっと留まってひなたぼっこをしており,皆で観察しました.最初は,翅を閉じており,茶色の樹皮のような裏面しか見ることができませんでしたが,皆が観察しているとゆっくりと翅を開き,きれいな瑠璃色の筋のはいった表面を見せてくれました.

 湧き水が出ているあたりは,地面はまだ水が浮いていたので,乾いている土手の方へ行き,コゲラのギィーという特徴的な鳴き声を背景にして,ウラギンシジミが周辺を飛んでいる中で,感想会をしました.感想会では,実際に蜂に刺された経験のある参加者が2人もおり,刺された後の応急処置について詳しい話が出ました.

 また,今回蝶などが多くいた理由なども話し合われ,昨日の台風で食事ができなくて,今日はその分までがんばっているのだろうということになりました.都会のカラスの糞は何故白いか(高タンパク質を摂取する結果)という問題提起をする人,また,コウモリは哺乳類の中で唯一飛べるようになった動物ですが,後足か前足(手)のどちらが変化したかの議論もありました.結局,前足(手)が変化したのが正しいだろうということになりました.

 アサギマダラの観察が最も印象的であったという参加者が多かったようでした.

観察項目:ツマグロヒョウモンの幼虫,ツリバナの実,サルスベリの実,ゲッケイジュの実,ノアズキの実と花,センダン,クジャクソウ,ニホンミツバチ,ジョロウグモ(雌,雄),シロカネイソウロウグモ,ゴミグモ,コガネグモ,カマキリ,ダイコクミミズ,ミゾソバ,キクイモ,キチョウ,モンシロチョウ,ヤマトシジミ,キタテハ,アオスジアゲハ,ミズヒキ,カラスウリ,アカマンマ(イヌタデ),サツマイモ(ベニコマチ),ワタ,ラッキョウ,ニラ,ガマズミ,ナンキンハゼ,イネ,アサギマダラ(雌,雄),サワフタギの実,スイラン,ヒヨドリバナ,ワレモコウ,イヌハッカ,シマヘビ,ツマグロヒョウモン(雌,雄),ナガコガネグモの卵のう,ルリタテハ,ウラナミシジミ,ウラギンシジミ(概ね観察順)

伊藤義人

監修 滝川正子