11月の観察記録
カテゴリ : 2004年
Untitled Page

 秋冷といった感じで気温がだいぶ下がってきましたが,まだ,寒いというほどではありませんでした.小雨が降りそうな曇りでしたが,歩くのが気持ちの良い観察会になりました.新池周辺のトウカエデは,個々の木によって大きな差はありましたが,見事な色づきを見せていました.センダンは,ほとんど葉を落としており,黄色の2cm くらいの楕円形の実だけが目立つようになりました.新池には,ダイサギ,コサギ,シジュウカラ,ヨシガモ,ヒドリガモ,カワセミ,モズ,ヒヨドリなど多くの鳥が来ていました.集合場所に集まる前に,多くの参加者が新池の鳥たちを観察しました.参加者は,子供4名を含む49名でした.

 まず,いつもの集合場所で,先月の報告を見ました.最初に,2日間自宅をあけてツマグロヒョウモンの幼虫に餌をやらなかったら死んでしまったという話がありました.サナギになる前は沢山食べるので,その時期であれば死ぬことも当然と蝶に詳しい参加者からコメントがありました.10月16日にマーキングしたアサギマダラが田原町や三ヶ根山で再捕獲されたとの報告がありました.先月に我々がマーキングしたアサギマダラが沖縄などで見つかるとよいという話もありました.

ダイサギ コナラシギゾウムシの産卵穴と幼虫の出てきた穴

 次に参加者が持ってきたドングリとコナラシギゾウムシの幼虫を観察しました.2つのドングリは,よく観察するとコナラシギゾウムシが産卵した非常に小さな穴と,その幼虫が出てきた大きな穴がありました.産卵した穴は,ドングリの殻斗(かくと,帽子のように見える部分)があった場所にありました.その部分の方が柔らかいからという発言もありました.ドングリをナイフで割って中を見ましたが,周辺から幼虫に食べられており,ぼろぼろでした.コナラシギゾウムシの幼虫はドングリから出て土中でサナギになるそうです.

【外部リンク】ドングリ虫観察日記

竜泉寺に自生していた大きな金平糖のような実をもった草を観察しました.アレチウリ(荒れ地瓜,ウリ科)という外来種で,繁殖力が強い蔓性の一年草で駆除するのに苦労するそうです.果実を分解して中を見ました.嫌われている草であり,金平糖というより機雷のイメージです.集合場所の近くに自生していたキンゴジカ(金午時花,アオイ科)も観察しました.やはり,帰化植物だそうです.

 次にカロライナジャスミン(マチン科)が紹介されました.ジャスミンの香りがする黄色いラッパ型の花が付いていました.蔓性の常緑であるためフェンスなどに絡ませるそうです.この植物は全体に毒があり,このような毒草を花屋が鉢植えなどで売るのはおかしいという投書が本山の生協の掲示板に載っていたそうです.当面,販売自粛というような動きだそうです.

アレチウリとその実 カロライナジャスミン リンボク,シラカシ,キャラボク

 リンボク,シラカシ,キャラボクの3つの枝に,名札を付けて持ってこられた参加者がいました.リンボク(別名ヒイラギガシ,バラ科)の別名であるヒイラギカシは,葉がヒイラギほどではないですが尖っている(鋸歯)ことからついた名前だそうです.比較のため持ってこられたシラカシ(白樫,ブナ科)には,もちろん鋸歯はありませんでした.大学院で森林を研究している女性の参加者から,シラカシとスダジイ(すだ椎,ブナ科)及びウラジロカシ(裏白樫,ブナ科)との区別の仕方について説明がありました.カシの英語はoak ですが学名はクエルカスで,「トヨタの森」計画では,この学名を使っているそうです.日本語で表記すればよいのにという感想がでました.

【外部リンク】トヨタの森 フォレスタヒルズ・モデル森

 最後に,キャラボク(伽羅木,イチイ科)の真っ赤な実を観察しました.果肉は食べられるそうですが,種は有毒だそうです.

 ここで,やっと集合場所の公園を出ようとしましたが,桜の木のくぼみに,春に観察したサシガメ(カメムシの一種)が集まっているのを発見しました.イラガの繭の抜け殻にも入っており,越冬のためために集まっているのだろうという事でした.

サシガメ

 来月の観察会で本当に越冬しているか観察することになりました.このサシガメの種類は,図鑑からヨコズナサシガメと確認されました.ここで,1人の子供がエンマコオロギを持ってきました.閻魔大王をイメージして名前が付けられていますが,閻魔大王はどこにいるかという話題が出ました.地獄という人もいましたが,閻魔大王は閻魔庁にいて,一種の裁判官であったいうのが正解のようです.お地蔵さまと同一人物で,お地蔵さまの憤怒の形相が閻魔様だそうです.閻魔大王は,死後の世界(黄泉の国)の支配者で亡者の生前の行いによって地獄行と極楽行(天国ではない)を決める役割です.古代インドではヤマと呼ばれ,仏教では,閻魔大王は不動明王や釈迦入来などとともに十王の1人ということです.三途の川を渡るという臨死体験についても話がありました.

【外部リンク】信玄塚の閻魔大王

 集合場所から平和公園に行く途中で,秋の恒例になっているマテバシイ(全手葉椎,ブナ科)のドングリを平和公園沿いの道路分離帯の島に観察に行きました.観察というより食べに行ったというべきでしょう.今年も沢山の大きなマテバシイのドングリが落ちていました.2年に渡ってこのドングリは大きくなるということですが,マテバシイの木には1年目のドングリがほとんど見あたりませんでした.来年は不作かもしれません.熊になったつもりで生食とキャンプ用のブタンコンロで煎っても食べました.渋みはなく十分食べられますが,栗のようにうまいという参加者はいなかったようです.いつもうまいものを食べ過ぎという批判もありました.デンプンには,α-デンプンとβ-デンプンがあり,95度以上の熱でβ-デンプンはα-デンプンに変化するそうです.α-デンプンはうまくて食用に向きますが保存には向かないそうです.冷えるとβ-デンプンに戻るのでうまくないそうです.煎って食べるとおいしい理由がここにあるようです.マテバシイは,最初に紹介のあったコナラシギゾウムシになぜやられないのかという質問が出ました.虫にやられにくいだけで,今回も虫にやられていて食べることができないドングリもありました.虫にやられにくい理由は難しく,虫とマテバシイのどちらが先にその地域に来たか,あるいは,マテバシイの防御機構が何かあるのかもしれません.ドングリの味は,昨年の方がおいしかったような気がしました.なお,ブタンコンロはブタンが気化するときに気化熱を奪うのでボンベが冷たいことを確認しました.

マテバシイのドングリを煎る

 マテバシイと同じ場所にあるシナヒイラギ(支那柊,コナラ科)とヤツデ(八手,ウコギ科)も観察しました.シナヒイラギには,かろうじて少しだけ実がなっていました.昨年は沢山実っていたのに不思議です.ヤツデは,白い花が咲いていましたが,雄花か両性花かが問題になりました.ヤツデの葉の数は,観察すると奇数(9が多い)が多いのに,何故ヤツ(八)かという疑問が出されました.八は,多いという日本語の意味があるということになりました.

 この後,道路沿いのムク(椋,ニレ科)の実を食べに行きました.今年はあまり実りがよくなく,高い枝の所に紫黒色の熟した実とまだ緑色の実が少しあるだけでした.杖をつかって,枝を引っ張って実を取りました.

ムクの実

 紫黒色の実は,ほんのりと甘い味がしました.ムクの葉の裏はざらざらで,十円玉を磨いて見せる参加者もいました.ムクの葉は,すぐ近くのケアキ(欅,ニレ科)の葉とよく似ていました.エノキ(榎,ニレ科)などと同じニレ科だそうです.ここまでで10時55分になってしまいました.

 やっと平和公園内に入りました.入ってすぐの所のビワ(枇杷,バラ科)の白い花を観察しました.地味な花ですが,香りは非常に上品だという感想が出ました.「ビワの木を庭に植えると病人が出る」あるいは「大病の人が出た家のビワは実がなるという」という話が出ました.ビワの木が,大きくなって実をつけるようになると日陰ができ,それが健康によくなく,病人が出るのではという反対の話も出ました.そういえばビワは,名古屋でも比較的大きな屋敷に植えられており,このような屋敷から採ってきたビワは果肉が少なく,やたらに種が大きかったのを覚えています.

 近くの木の枝の付け根などに,多くの小さなカタツムリが越冬しているのが観察されました.後で街路のトウカエデ(唐楓,カエデ科)のはがれそうな樹皮の下にも多くのカタツムリが,気をつけてみるといました.もう,冬支度という感じでした.

 ナナホシテントウ(テントウムシ科)のさなぎと幼虫が沢山いるのを見つけた参加者が手にとって観察しました.1人の子供が,抜け殻もあるよと指摘をしました.大人の参加者から,やはり子供の目は違うという感想がでました.うらやましいという感じでした.

 ビワの木のすぐ近くで,花と黒い実をつけたオシロイバナ(白粉花,オシロイバナ科)を見つけました.5mm 大の黒い実をつぶして,昔,顔に塗って白粉(おしろい)遊びをした話がでました.今回も,お稚児さんのように鼻に塗った参加者がいました.実の中の細かいデンプンは,確かに白粉そのものです.本物の白粉は,今は何を使っているのだろうという宿題がでました.インタネットのHP で調べると,「古くは米の粉などを用いていたが,6世紀ごろには鉛白(塩基性の炭酸鉛)が中国からわたってきた.しかし,鉛中毒にかかる人がたくさん現れ明治時代に製造販売が禁止され,現在は毒性がなく,被覆力,付着力の優れた酸化チタンや酸化亜鉛が用いられている.」ことが分かりました.

【外部リンク】化粧の化学

 少し先に進み,ヨモギ(蓬,キク科)の虫こぶを見た後,キクイモ(菊芋,キク科)を観察しました.背丈の高いキクイモは既に枯れており,引き抜くと根っこに芋ができていました.ウクライナからの留学生の参加者が,キクイモはウクライナにもあり,タピナムブルといい,サラダに入れて生のまま食べるというので,皆で生のまま食べてみました.ゴボウの食感と味でした.主成分はイヌリンという多糖体で人間の消化酵素では,ブドウ糖にならず栄養にならないそうです.さらに,ビタミン,ミネラル,食物繊維を多く含むので,ダイエット食として最適のようです.ウクライナでのように,サラダにして食べることを推奨すれば,はやるのではないかと思いました.

【外部リンク】キクイモ・ドット・ネット

キクイモ

 同じ場所で,アベマキ(阿部槇,ブナ科)のドングリから芽が出ているのを見つけ,回覧されました.ここまでは,よく見ますが,これから大きくなるのは稀であるという話がありました.

 西尾根まで歩いて行く時に,ヒサカキ,シャシャンボ,ソヨゴを見ました.シャシャンボは,黒い小さな実をつけていました.西尾根の頂上でネズミサシ(鼠刺,ネズミサシ科,別名ネズ(杜松))を観察しました.

 非常に日当たりのよい場所で,平たく伸びているネズミサシの葉は,白い粉をふいたような銀色を帯びた青緑色になっていました.このような状態になるのは,よほど日当たりのよい生育環境のよい場合だという説明がありました.この粉をふいたような銀白色の正体は,粉なのか気孔腺(通常は葉の裏にある)かという課題が出ました.爪で引っかくと取れますが,葉の裏にある気孔腺の場合も取れるそうです.結局,これは宿題になってしまいました.

ネズミサシ 倒木(ソヨゴ)

 大きなソヨゴが,この前の台風で倒れているのを観察しました.斜面にあったソヨゴですが,周辺の樹木は倒れていないのにこの木だけが完全に倒れていました.根を観察すると,深さはわずか10cm 程度しか伸びておらず,円形に外側に伸びていました.通常,木の根は,葉が茂っている範囲の下の地面まで伸びているそうです.この斜面は粘土質で,鉛直に根を張れずに,風で倒れてしまったのだろうということになりました.早く太陽の光を得るために,根を張る余裕もなく上に伸びたとのではという意見も出ました.倒れた側の根はまだ土中に入っていました.この木が,生き残るかどうかの議論がありましたが,主幹は多分枯れて,新たな芽が出てくるであろうということになりました.

 さらに歩いていき,桜の園へ出る道路まで藪漕ぎをして行きました.そこで,道路端のカキ(柿,カキノキ科)の実を食べました.カキが渋柿か甘柿かは,外見からは判断しようがありません.硬い実は,渋かったですが,完熟した実は非常に甘いものでした.種を鳥などに運んでもらうためには,まだ,種が十分できていないときは渋く(タンニン)て,完熟したときには甘くなるというのは,非常によくできた仕組みといえます.

 カキの木のすぐ横のコブクザクラ(子福桜,バラ科)の花を観察しました.春と秋の2回咲く桜ですが,ソメイヨシノのような満開という感じではないですが,すぐ横のトウカエデの紅葉とコブクザクラの八重の白花がきれいな対比を見せていました.子福の意味として,1つの花に雌しべが1〜5本あり,小果柄に複数の果実をつけることから命名されたという説明がありました.しかし,ここのコブクザクラは実際にはさくらんぼは,実らないそうです.春と秋に花が咲くメカニズムについて,ホルモンが関係しているという程度で明確な回答はでませんでした.この周辺には,ジョロウグモが多く巣をかけており,シロガネイソウロウグモも一緒にいました.

コブクザクラとトウカエデ

 感想会は,会館前の池の横で行いました.藪漕ぎのときにズボンの裾に,アレチヌスビトハギのくっつき虫をつけた参加者が多くいましたが,テレホンカードやキャッシュカードでそぐようにすると簡単にとれることが披露されました.感想会の途中で,池にカワセミが来て,興味のある人が見に行きました.また,ネコハギ(猫萩,マメ科)が回覧されました.来月は,恒例の芋煮会ということで,材料などの準備の相談もありました.全員,お椀と箸は持参するようにとのアナウンスがありました.秋深しという感じで,爽やかな観察会でした.

観察項目:ヨシガモ,ヒドリガモ,ダイサギ,コサギ,セグロセキレイ,カワセミ,オオバン,モズ,カロライナジャスミン,アレチウリ,コナラシギゾウムシの幼虫,幼虫に食べられたドングリ,リンボク,シラカシ,キャラボクの実,サシガメ,エンマコオロギ,マテバシイ,シナヒイラギ,ヤツデの花,ムクの実,ケヤキ,ビワの花,カタツムリ,ナナホシテントウ,オシロイバナ,ヨモギの虫こぶ,キクイモ,アベマキの芽,ヒサカキ,シャシャンボ,アオハダ,ネズミサシ,ソヨゴの倒木,カキ,ジョロウグモ,シロガネイソウロウグモ,コブクザクラ,ネコハギ(概ね観察順)

伊藤義人

監修 滝川正子