8月度の観察記録
カテゴリ : 2008年
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 真夏の晴天でしたが,先月ほどの蒸し暑さは感じませんでした.集合場所では,クマゼミ(熊蝉,セミ科)のなきしぐれの中で,ツクツクボウシ(つくつく法師,セミ科)が早くも1匹だけ鳴いていました.アブラゼミ(油蝉,セミ科)は,木々の低い位置に多くいましたが,鳴いてはいませんでした.新池の水面は,3/4以上がスイレン(睡蓮,スイレン科)で覆われ,水鳥は全くいませんでした.残された水面上には,先月と同じようにチョウトンボ(蝶蜻蛉,トンボ科)とコシアキトンボ(腰空蜻蛉,トンボ科)が飛んでいました.新池の土手のクズ(葛,マメ科)は,強い光のため葉がくたっとなっていました(調位運動).今回は,蝶の好きな人が久しぶりに参加して,蝶の観察が多くできました.暑いので子供とお年寄りの方の参加は望めないと,早く来た参加者達が言っていましたが,最終的な参加者数は子供6人と大人35と,この時期の観察会としては非常に多くなりました.

アブラゼミ
アブラゼミ

 先月の報告を見て,ヒバカリ(日計,ナミヘビ科)やコミズムシ(小水虫,ミズムシ科,別名:フウセンムシ)がまず話題になりました.ヒバカリの骨格標本は,「里山の家」の宝となって,訪問者に真っ先に見せているという報告がありました.コミズムシは草食ですが,どうして水中で生活して浮かんだり沈んだりするのかという質問がありました.これらの話をしているときに1頭のウラギンシジミ(裏銀小灰蝶,シジミチョウ科)が,参加者全員にずっとまとわりついていました.1人の参加者の首に直接とまることもありました.これは,ミネラル補給をしているという説明がありました.ヒメベッコウバチ(姫鼈甲蜂,ベッコウバチ科)の泥の巣の中には,麻酔をされたクモが脚を取られて入れられており,これが卵からかえった幼虫のエサになるということでした.
 周辺のチガヤ(茅萱,イネ科)を取ってきて縄造りの実演をした参加者がいました.通常は藁(わら)で縄を造りますが,チガヤでも実演できるということで,よくもんでから,両手を使って上手に縄を編むのを見せてくれました.

チガヤで編んだ縄
チガヤで編んだ縄

 集合場所の背の高いイチョウ(銀杏,イチョウ科)の木の先端で,チョウトンボが8匹群れているのを見つけました.どうしてあのようなところで群れているのかは分かりませんでした.
 周辺の街路樹のサクラ(桜,バラ科)の木の根元から成虫のカブトムシ(兜虫または甲虫,コガネムシ科)と2cm長のコクワガタ(小鍬形,クワガタムシ科)の死骸をもって来た人がおり,皆で観察しました.自宅から4cm大のボケ(木瓜,バラ科)の青い実の付いた枝を持ってきた人もいました.ナイフで実を切断して断面を観察しました.まだ熟れていなくてよい匂いはしませんでした.普通,ボケの実は生食はせず,酒に漬けて香りを楽しむかジャムにするそうです.スズメバチ(雀蜂,ススメバチ科)の死骸も観察して,アシナガバチ(脚長蜂,スズメバチ科)との違いを話しました.アブラゼミの死骸を使って,お腹の中には発音筋と発音膜があり,この発音筋が発音膜を引張して,音を出し共鳴室で音を大きくしているという説明がありました.大砲がなっても鳴くのをやめないと言いますが,セミは鼓膜を持っていて音を聞くことができますが,大きな自分の鳴き声を聞き難くする仕組みがあるという説明がHPにありました.

【外部リンク】セミが鳴く仕組みと昆虫の筋肉

 4枚の翅が同じようにしか動かず,セミは飛び方がへただという話に,窓や木にぶつかる光景を見たことがあるという子供達の反応がありました.最後に,ケカマツカ(毛鎌柄,バラ科)とカマツカ(鎌柄,バラ科)の小枝を持って来た人が,その違いを説明しました.

ボケの実の切断面 ケカマツカとカマツカ
ボケの実の切断面 ケカマツカとカマツカ

 ここまでで,先月と同様に10:10になってしまい,ある参加者に促されてやっと出発しました.
 平和公園に入ってすぐのオタマジャクシ池の上の畑で,ミソハギ(禊萩,ミソハギ科)の紫色の花とセリ(芹,セリ科)の白い花を観察しました,キタテハ(黄立羽,タテハチョウ科)が周辺に飛んでいました.畑の奥に入って,ゴボウ(牛蒡,キク科)を観察しました.アザミ(薊,キク科)のような紫の花は,既にありませんでした.実の中の種を観察しましたが,プロペラみたいなものは付いておらず,そのまま落ちるだけで,どこかに飛んでいく様子はありませんでした.ゴボウの横にスズメウリ(雀瓜,ウリ科)の蔓があり,観察しました.小さな白い花が咲いていました.

ミソハギ セリの花 キタテハ ゴボウの実の中身
ミソハギ セリの花 キタテハ ゴボウの実の中身

 オタマジャクシ池の向かいの場所を湿地に戻すため,名古屋市が井戸を掘るという説明がありました.ここで,キボシカミキリ(黄星天牛,カミキリムシ科)を観察しました.イチジク(無花果,クワ科)などによくついて,農業をしている人にとっては全くの害虫のようです.
 このとき,キチョウ(黄蝶,シロチョウ科)が飛んできたので,蝶に詳しい参加者から,最近,キチョウはキタキチョウ(北黄蝶)とミナミキチョウ(南黄蝶)に分けられたそうで,その違いの説明を聞きました.通常の図鑑にはその説明はないそうです.ついでに,サトキマダラヒカゲ(里黄斑日陰,タテハチョウ科)とヤマキマダラヒカゲ(山黄斑日陰,タテハチョウ科)の違いの説明もありました.平和公園にはサトキマダラヒカゲしかいないという説明がありました.
 クズの葉についた交尾中のマメコガネ(豆黄金,コガネムシ科)を複数見つけました.ベニシジミ(紅小灰,シジミチョウ科)もいました.柵の近くの幼木のサルトリイバラ(猿捕茨,サルトリイバラ科)が別の植物だという人がいましたが,2〜3年後にならないと分からないようです.サルトリイバラを食草にしているルリタテハ(瑠璃立羽,タテハチョウ科)の幼虫でもついていればすぐに分かるのにという感想もでました.近くのヤブガラシ(薮枯らし,ブドウ科)にとまって蜜を吸っていたオオスズメバチ(大雀蜂,スズメバチ科)が飛んできたので刺されないように注意がありました.

キボシカミキリ 交尾中のマメコガネ ベニシジミ
キボシカミキリ 交尾中のマメコガネ ベニシジミ

 トンボ池の水が非常に少なくなっていました.マツモムシ(松藻虫,マツモムシ科)は,少ないですが見つけた人がいました.周辺には,紫色の花を付けたミソハギがありました.水田には,オオシオカラ(大塩辛蜻蛉,トンボ科)やシオカラ(塩辛蜻蛉,トンボ科)がいました.飛んできたチョウトンボは,オオシオカラに威嚇されて逃げて行きました.頭上をオニヤンマ(鬼蜻蜒,オニヤンマ科)が悠然と飛んでいました.
 子供が捕まえたコフキゾウムシ(粉吹象虫,ゾウムシ科)を観察しました.名前の通りに粉が吹きだしているように見えました.サギソウ(鷺草,ラン科)を見に行く途中で,ザリガニ(喇蛄)の殻を見つけた人に対して,殻の赤さを見て茹でたのかという質問をした参加者もいました.鷺が飛んでいるように見える白いサギソウの花は42個まで数えた参加者がいました.ここで,別の場所で説明のあったサトキマダラヒカゲが飛んでいるのを見つけました.

オオシオカラ コフキゾウムシ
オオシオカラ コフキゾウムシ

 ショウリョウバッタ(精霊蝗虫,オンブバッタ科)の透けた抜け殻を見つけた人がいました.脚の形もきちんと残っており,脚がきれいに抜けることに対して感嘆の声があがりました.生きているアブラゼミの腹に,セミヤドリガ(蝉寄生蛾,セミヤドリガ科)の1匹の幼虫が付いているのを観察しました.かわいそうという声があがりましたが,セミは死なないですし,セミヤドリガにとっては大変幸せな状態であるいう見方もあるという感想も出ました.サナギになるときは,セミからはなれるという説明が図鑑にありました.孵化する寸前の卵が,セミの翅が作る風を感じて,孵化して取り付くという研究成果は,以前の観察記録(なごや平和公園の自然2006,p.59)に書きました.

ショウリョウバッタの脱皮殻 セミヤドリガの幼虫の付いたアブラゼミ
ショウリョウバッタの脱皮殻 セミヤドリガの幼虫の付いたアブラゼミ

 ツマグロヒョウモン(褄黒豹紋,タテハチョウ科)の幼虫を見つけて皆で観察しました.手に幼虫をはわせている小さな男の子に,何故ツマグロヒョウモンと分かるか質問したところ,オレンジ色の線と黒いとげとげがあるからいう返事がありました.棘に毒はないことは分かっていますが,このように怖がらない子供も珍しいという感想がでました.毒を持っているチャドクガ(茶毒蛾,ドクガ科)の幼虫であれば大変なことになるので,普通の親は嫌がるのではないかと思います.食草はスミレ(菫,スミレ科)だそうです.
 ニホンアカガエル(日本赤蛙,アカガエル科)を2匹見つけて,観察ビンの中に入れて観察しました.生まれて1年目と2年目のもののようでした.目の回りが金色でした.

ツマグロヒョウモンの幼虫 ニホンアカガエル
ツマグロヒョウモンの幼虫 ニホンアカガエル

 両側を削ってある鉛筆を拾って,これを「泥棒削り」と言うのは,昔は鉛筆1本1本に名前を書いていましたが,これを消すために逆側も削って使ったのが由来という説明がありました.最近の子供達は「貧乏削り」という言い方をすると女の子に教えてもらいました.

 感想会を先月と同じ場所で行いました.カナヘビ(金蛇または蛇舅母,カナヘビ科)が,十数匹谷筋にいました.1匹捕まえて,子供達に触らせました.男の子からは,「ふわふわだね」という感想がでました.小さな女の子は,嫌がって触りませんでした.オオカマキリ(大蟷螂,カマキリ科)を見つけた大きな女の子が,写真コンテストに出すために威嚇姿勢をとらせようとしましたが.逃げるのに一生懸命で,その姿勢をとってくれませんでした.スズメガ(雀蛾,スズメガ科)の可愛い幼虫を見つけた参加者もいました.

カナヘビ スズメガの幼虫
カナヘビ スズメガの幼虫

 感想会では,水田近くでオニヤンマが葉の上の虫を,さっと飛んできて捕ったのを見たというのがでました.また.今年も平和公園でミドリシジミ(緑小灰蝶,ミドリシジミ科)が6月17日以後に出たという報告もありました.お歳の参加者からは,夏の盛りの観察会で,今回も無事歩けたという感想もありました.ショウリョウバッタの脱皮殻にからんでイモリ(井守,イモリ科)も脱皮するという話がでました.ケラチン質の皮膚を脱ぎ捨てて(新陳代謝),すぐに食べてしまうようです.

【外部リンク】イモリの脱皮

 感想会の間,小さな女の子は網を持ってバッタやトンボを捕っていて,何か捕れるたびに何度も父親を呼びにきていました.今回も子供達の観察眼が鋭いことを再認識させられた楽しい観察会になりました.

虫捕りの子供達
虫捕りの子供達

観察項目:チガヤによる縄造り,ケカマツカ,カマツカ,カブトムシの死骸,コクワガタの死骸,ボケの青い実,アブラゼミ,アメリカキンゴジカ,ヒマワリ,セリの花,ミソハギ,ゴボウ,ママコノシリヌグイ,サルトリイバラ,マツモムシ,ヒメタイコウチ,シオカラ,オオシオカラ,オニヤンマ,チョウトンボ,マメコガネ,コフキゾウムシ,ベッコウハゴロモ,アオバハゴロモ,サギソウ,アブラゼミ,セミヤドリガの幼虫,ウスノキの実,ニホンアカガエル,オオカマキリ,ナナフシ,ツマグロヒョウモンの幼虫,イオウイロハシリグモ,ナガコガネグモ,コシアキトンボ,ショウリョウバッタの抜け殻,カナヘビ,スズメガの幼虫(概ね観察順)

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子