快晴で風もなく,1月の観察会としては非常に暖かい日になりました.よく歩く藪こぎが中心の観察会としてはもう少し寒い方がよかったかもしれません.新池のスイレン(睡蓮,スイレン科)は,水面からすっかりなくなっていました.樹木の枝が張り出した水面にカイツブリ(鳰,カイツブリ科)3羽とコガモ(小鴨,カモ科)16羽が浮き寝状態でした.バン(鷭,クイナ科)が1羽,すぐ横の土手に上がって何かをついばんでいました.ヒヨドリ(鵯,ヒヨドリ科)とムクドリ(椋鳥,ムクドリ科)が周辺の樹木を飛び回っていました.土手のセンダン(栴檀,センダン科)には,まだ多くの実がついていました.ヒヨドリは,この実を丸飲みしますが,かなり苦労していて,飲み込もうとして何度も喉からくちばしに実を戻していました.参加者は,男の子と女の子の子供2名と大人23名でした.
最初に,先月の芋煮会の前に観察したアベマキ(阿部槇,ブナ科)の枯葉についたクヌギハケツボタマフシ(櫟葉毛壺玉附子)を持ってきて,壺の形のタマフシの中のクヌギハケツボタマバチ(櫟葉毛壺玉蜂,タマバチ科)を育てているという報告がありました.昆虫起源の虫こぶの6〜7割が蜂だという話もありました.クヌギハケツボタマバチは,2〜3mmの小さなハチで,羽化したら持ってこられるそうです.よく観察すると必ずしも葉脈の上だけに虫こぶがあるわけではないことが分かりました.いつ卵を産むのかが議論になりました.親蜂が植物を刺激して,虫こぶが大きくなってから卵を産むという意見と,それでは虫こぶが大きくなるのには時間がかかり,他のハチが卵を産む可能性もあり,ありえないという意見でした.どうやら,親バチが卵を産んで,それが幼虫になり,さなぎになる間,化学物質を出して,それが刺激となって,順次,虫こぶが虫に都合のよい形になるようです.住み家と餌の両方が植物によって供給されて大きくなるようです.
名古屋市の元職員(当時課長で,その後副市長で退職し,現在は中部大学教授)の方が来られて,平和公園を,ブローニュの森と同じ大きさなので,都市内の森として残す提案を受け入れたという話をされました.
里山の家を出発して,大坂池南の枯れたイタドリ(虎杖,タデ科)を観察に行きました.周辺のアメリカセンダングサ(亜米利加栴檀草,キク科)の引っ付き虫をかき分けて観察しました.コウモリガ(蝙蝠蛾,コウモリガ科)の侵入穴のあいた茎がたくさんありました.コウモリガの幼虫は,ここである程度大きくなって,その後樹木に入って大きくなって蛾になるという説明がありました.
斜面を登りきって道に出て,道端のソヨゴ(冬青,モチノキ科)についていた1cm大のソヨゴメタマフシ(冬青芽玉附子)を観察しました.カッターナイフで切断すると,虫こぶの中は多室で柿色のものが見えましたが,何かよくわかりませんでした.ナイフを使わずに手で虫こぶを割って,2〜3mmの柿色のものを取り出してルーペで動くことを確認しました.ソヨゴタマバエ(冬青玉蠅,タマバエ科)の幼虫でした.
さらに藪こぎして大乗寺の上に着きました.枝についた白いルビーロウカイガラムシ(紅玉蝋貝殻虫,カタカイガラムシ科)を見つけました.このカイガラムシの色素を染色に使うという説明がありました.今は,輸入したものを使っているそうです.
フェンス際を藪こぎしてから道に出るときに,ふくらみ始めたアセビ(馬酔木,ツツジ科)の花芽を見つけました.その後,同じく道端でコバノミツバツツジ(小葉三葉躑躅,ツツジ科)の前年の実と新しい葉芽と花芽が混在しているのを観察しました.ネジキ(捩木,ツツジ科)の赤い新枝も観察しました.
下りの藪こぎをして,いつも観察するカラタチ(枸橘,ミカン科)のあるところに到着しました.カラタチの棘は,葉が変化したものか枝が変化したものかが話題になりました.その鋭い棘に多足類のハヤニエ(速贄)がありました.カラタチの棘は非常にとがっており,ハヤニエにはもってこいですが,かなり奥まった枝の棘に多足類は刺さっており,モズ(百舌鳥,モズ科)もやりにくかったのではという感想がでました.また,5mm大の球形のナガコガネグモ?(長黄金蜘蛛,コガネグモ科)の卵嚢も1つぶら下がっていました.
終了時間が迫り,里山の家に急いで戻りました.途中で,木に巻きついた枯れたヤマノイモ(山芋,ヤマノイモ科)を観察しました.薄い板状の実とムカゴを見つけました.樹皮についたハラビロカマキリ(腹広蟷螂,カマキリ科)の卵嚢も見つけました.カマキリが逆立ちして産卵するところを先日見ました.1羽のコサギ(小鷺,サギ科)が飛んできて田んぼの横にとまりました.この田んぼの日当たりをよくするため山側のクスノキ(楠,クスノキ科)などを切り倒すという説明がありました.
12:10に里山の家に着き,中に別の人たちがおり,また,多くの参加者が早く帰りたがったので,里山の家の外で感想会をしました.よく歩いて藪こぎができてよかったという感想がまず出ました.メスのフユシャクガを観察できたことに関する感想も出ました.新年の快適な観察会になりました.
観察項目:
クヌギハケツボタマフシ,ボンテンツバキの葉,キンギョバツバキの葉,ギンナン,コウモリガの侵入穴のあるイタドリ,セイタカアワダチソウの種,ススキ,ソヨゴメタマフシ,ソヨゴタマバエの幼虫,雌のフユシャクガ,ルビーロウカイガラムシ,コバノミツバツツジ,カラタチ,ハヤニエ,クモの卵嚢,ハラビロカマキリの卵嚢,ヤマノイモの実とムカゴ,レンゲ,セイヨウタンポポ |
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2013年1月度の観察記録
2013年1月度の印刷用観察記録です。
| 2013-4-11 | 300 | |
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