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2013年 > 1月度の観察記録
1月度の観察記録
2013年1月度の観察記録です。

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快晴で風もなく,1月の観察会としては非常に暖かい日になりました.よく歩く藪こぎが中心の観察会としてはもう少し寒い方がよかったかもしれません.新池のスイレン(睡蓮,スイレン科)は,水面からすっかりなくなっていました.樹木の枝が張り出した水面にカイツブリ(鳰,カイツブリ科)3羽とコガモ(小鴨,カモ科)16羽が浮き寝状態でした.バン(鷭,クイナ科)が1羽,すぐ横の土手に上がって何かをついばんでいました.ヒヨドリ(鵯,ヒヨドリ科)とムクドリ(椋鳥,ムクドリ科)が周辺の樹木を飛び回っていました.土手のセンダン(栴檀,センダン科)には,まだ多くの実がついていました.ヒヨドリは,この実を丸飲みしますが,かなり苦労していて,飲み込もうとして何度も喉からくちばしに実を戻していました.参加者は,男の子と女の子の子供2名と大人23名でした.

最初に,先月の芋煮会の前に観察したアベマキ(阿部槇,ブナ科)の枯葉についたクヌギハケツボタマフシ(櫟葉毛壺玉附子)を持ってきて,壺の形のタマフシの中のクヌギハケツボタマバチ(櫟葉毛壺玉蜂,タマバチ科)を育てているという報告がありました.昆虫起源の虫こぶの6〜7割が蜂だという話もありました.クヌギハケツボタマバチは,2〜3mmの小さなハチで,羽化したら持ってこられるそうです.よく観察すると必ずしも葉脈の上だけに虫こぶがあるわけではないことが分かりました.いつ卵を産むのかが議論になりました.親蜂が植物を刺激して,虫こぶが大きくなってから卵を産むという意見と,それでは虫こぶが大きくなるのには時間がかかり,他のハチが卵を産む可能性もあり,ありえないという意見でした.どうやら,親バチが卵を産んで,それが幼虫になり,さなぎになる間,化学物質を出して,それが刺激となって,順次,虫こぶが虫に都合のよい形になるようです.住み家と餌の両方が植物によって供給されて大きくなるようです.

センダンの実をくわえたムクドリ クヌギハケツボタマフシ

名古屋市の元職員(当時課長で,その後副市長で退職し,現在は中部大学教授)の方が来られて,平和公園を,ブローニュの森と同じ大きさなので,都市内の森として残す提案を受け入れたという話をされました.
次に,透明なビンに入れた2枚の奇妙な形の葉を観察しました.東山植物園でもらってきた,葉の先端が金魚の尾びれの形をしたキンギョバツバキ(金魚葉椿,ツバキ科)と葉の途中からまた葉が出ているボンテンツバキ(梵天椿,ツバキ科)の葉でした.異様な形で,福島の放射能汚染による奇形だというデマがインタネットで出回っていて,昔からあるツバキの一種だということが聞き入れられない状況があるという報告がありました.

【外部リンク】椿の奇形と不安の種と

ボンテンツバキの葉 キンギョツバキの葉

里山の家を出発して,大坂池南の枯れたイタドリ(虎杖,タデ科)を観察に行きました.周辺のアメリカセンダングサ(亜米利加栴檀草,キク科)の引っ付き虫をかき分けて観察しました.コウモリガ(蝙蝠蛾,コウモリガ科)の侵入穴のあいた茎がたくさんありました.コウモリガの幼虫は,ここである程度大きくなって,その後樹木に入って大きくなって蛾になるという説明がありました.
そのまま大坂池南の斜面を登って藪こぎをしました.斜面に入ってすぐに,枯れたセイタカアワダチソウ(背高泡立草,キク科)の綿毛の中の小さな種を観察しました.ベニマシコ(紅猿子,アトリ科)やホオジロ(頬白,ホオジロ科)が好んでこの種を食べますが,こんな小さな種はいくら食べても腹のたしになるのかという感想がでました.野鳥の大きさによるという冷静な意見もでました.

イタドリへのコウモリガの侵入穴 藪こぎ セイタカアワダチソウの説明

斜面を登りきって道に出て,道端のソヨゴ(冬青,モチノキ科)についていた1cm大のソヨゴメタマフシ(冬青芽玉附子)を観察しました.カッターナイフで切断すると,虫こぶの中は多室で柿色のものが見えましたが,何かよくわかりませんでした.ナイフを使わずに手で虫こぶを割って,2〜3mmの柿色のものを取り出してルーペで動くことを確認しました.ソヨゴタマバエ(冬青玉蠅,タマバエ科)の幼虫でした.
男の子がイタドリのところで拾ったきたゴルフクラブを投げて松かさを取ろうとして,ゴルフクラブが道に張り出した松の枝に引っかかってしまいました.落ちると危ないので,ゴルフクラブを落とそうとして枯れ木を投げましたが,それもまた引っかかってしまいました.竿をどこかから持ってくるより仕方ないと話し合いましたが,結局,カラーコーンの重しを投げてやっと落としました

ソヨゴメタマフシ ソヨゴメタマフシの切断面 ソヨゴタマバエの幼虫 ゴルフクラブが引っ掛かった松

さらに藪こぎして大乗寺の上に着きました.枝についた白いルビーロウカイガラムシ(紅玉蝋貝殻虫,カタカイガラムシ科)を見つけました.このカイガラムシの色素を染色に使うという説明がありました.今は,輸入したものを使っているそうです.
列の後ろの方からメスのフユシャクガ(冬尺蛾(総称),シャクガ科)を見つけたという報告が伝わってきました.羽が退化して飛べず,飛ぶことができる雄をフェロモンで誘うそうです.落葉の下にいるのが普通ですが,今回は樹皮にとまっていたそうです.ビンに入れたものを観察しましたが,ビンから出すと日に当たって暖かくなったのか活発に動き回りました.

大乗寺 ルビーロウカイガラムシ フユシャクガのメス

フェンス際を藪こぎしてから道に出るときに,ふくらみ始めたアセビ(馬酔木,ツツジ科)の花芽を見つけました.その後,同じく道端でコバノミツバツツジ(小葉三葉躑躅,ツツジ科)の前年の実と新しい葉芽と花芽が混在しているのを観察しました.ネジキ(捩木,ツツジ科)の赤い新枝も観察しました.

アセビの花芽 コバノミツバツツジジの花芽と葉芽と実 ネジキの赤い新枝

下りの藪こぎをして,いつも観察するカラタチ(枸橘,ミカン科)のあるところに到着しました.カラタチの棘は,葉が変化したものか枝が変化したものかが話題になりました.その鋭い棘に多足類のハヤニエ(速贄)がありました.カラタチの棘は非常にとがっており,ハヤニエにはもってこいですが,かなり奥まった枝の棘に多足類は刺さっており,モズ(百舌鳥,モズ科)もやりにくかったのではという感想がでました.また,5mm大の球形のナガコガネグモ?(長黄金蜘蛛,コガネグモ科)の卵嚢も1つぶら下がっていました.

【外部リンク】卵のうクモ検定

カラタチについた多足類のハヤニエ

終了時間が迫り,里山の家に急いで戻りました.途中で,木に巻きついた枯れたヤマノイモ(山芋,ヤマノイモ科)を観察しました.薄い板状の実とムカゴを見つけました.樹皮についたハラビロカマキリ(腹広蟷螂,カマキリ科)の卵嚢も見つけました.カマキリが逆立ちして産卵するところを先日見ました.1羽のコサギ(小鷺,サギ科)が飛んできて田んぼの横にとまりました.この田んぼの日当たりをよくするため山側のクスノキ(楠,クスノキ科)などを切り倒すという説明がありました.

ヤマノイモの実 カマキリの卵嚢 コサギ 切られる樹木

12:10に里山の家に着き,中に別の人たちがおり,また,多くの参加者が早く帰りたがったので,里山の家の外で感想会をしました.よく歩いて藪こぎができてよかったという感想がまず出ました.メスのフユシャクガを観察できたことに関する感想も出ました.新年の快適な観察会になりました.

感想会 坂道の登坂

観察項目: クヌギハケツボタマフシ,ボンテンツバキの葉,キンギョバツバキの葉,ギンナン,コウモリガの侵入穴のあるイタドリ,セイタカアワダチソウの種,ススキ,ソヨゴメタマフシ,ソヨゴタマバエの幼虫,雌のフユシャクガ,ルビーロウカイガラムシ,コバノミツバツツジ,カラタチ,ハヤニエ,クモの卵嚢,ハラビロカマキリの卵嚢,ヤマノイモの実とムカゴ,レンゲ,セイヨウタンポポ

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子

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2013-4-11 300

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