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2007年 > 1月度の観察記録
1月度の観察記録
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 ほとんど風もない晴天で,よく歩く観察会にとって最適な日となりました.例年と比べると非常に暖かい冬の一日でした.例年のように風があって寒いときは,平和公園の森林に入るありがたみがありましたが,今年はそのありがたみがないという参加者もいました.新池には,集合場所の公園横の木にじっととまっている13羽のコサギを始めとして,アオサギ,ヒドリガモ,バンが来ていました.新池周辺のセンダン(栴檀,センダン科)の実は,十分熟して,かなりの数の実が路上にも落ちていました.センダンには,ムクドリとヒヨドリが代わる代わる実を食べに来ていました.それ以外にも数十羽のムクドリとヒヨドリのそれぞれの群が,新池の上を飛び交っていました.先月まで紅葉を見せていた元清風荘の木々も葉を落とし,さすがに冬景色でした.参加者は,集合時間には20名以下でしたが,出発時には子供6名を含む40名になりました.

アオサギとコサギ アオサギ ムクドリとセンダン

 集合場所で,まず,参加者の持ってきたウバメガシ(姥目樫,ブナ科)とスダジイ(すだ椎,ブナ科)のドングリを食べました.素朴な味でしたが,十分食べられるものでした.スダジイの小さなドングリは軽く煎ってありましたが,硬くて歯で噛んで殻を割る必要がありました.殻の中が白い実の場合はよい味でしたが,茶色いものは,苦くてうまくありませんでした.マテバシイ(全手葉椎,ブナ科)の大きな葉とセンダンのクリーム色の実を持ってきた参加者もいました.1人の参加者が,シリブカガシ(尻深樫,ブナ科)のドングリをポケットに入れていたものを出したところ,非常につやつやした光沢がありました.
 モズが背の高い木のてっぺんに来たため,皆で観察しました.じっとしているだけで鳴きませんでした.荒池と寒狭川(豊川)のオシドリの話がでました.荒池には,今年,珍しく百羽以上のオシドリが来ているそうです.寒狭川のオシドリを見に行くときは,ドングリや雑穀を持っていくと,特別な場所から観察できる特典もあるそうです.人間が餌付けすることの是非に関する議論はありますが,人間が奪ってしまった環境の分だけは餌を与えてもよいのかもしれません.

ウバメガシとスダジイのドングリ モズ

 次に,先月の報告を見ました.焼き芋の写真を見ながら,ゴミになるアルミ箔を使わないで灰のオーブンで直に焼くやり方を今後もしたいということになりました.落葉にすっかり覆われた小径の写真も話題になりました.
 3年目になるくず餅作りの案内が昨年度の写真を見せながらありました.1)クズ(葛,マメ科)の根掘り,2)デンプンの作製,3)くず餅作りと3回に分けてやるそうです.2回以上の参加をしないとくず餅は食べられないそうです.
 今回の観察会は,配られた平和公園の地図に歩いたルートをマークしながら行うことになりました.地図の等高線を見ながら,できるだけ薮こぎをすることにしました.集合場所と昼食を取る折り返し地点である北東の谷をまず地図にマークしました.地図が読めることは,喜びの1つであるという参加者もいました.

 集合場所を出発して,道路脇の葉を落としたイロハモミジ(伊呂波槭樹,カエデ科)とニセアカシア(マメ科,別名ハリエンジュ:針槐)を観察しました.モミジの方の木の名前が分かるかという質問が出ましたが,木肌からだけでは簡単には分かりませんでした.モミジ葉がついているときは,誰でも分かりますが,葉が落ちてしまうと簡単ではありません.女の子が木の下に落葉を見つけてモミジだと言いました.冬季に樹木を判別するときに役立つ冬芽と葉痕を扱った本を持ってきた参加者から,その紹介がありました.
 イロハモミジの近くでアオジが1羽,きれいな羽根の緑の縞を見せながらちょろちょろと動き,ヂッと地鳴きしました.残念ながら,早く動き回るので写真は撮れませんでした.
 平和公園の農道入口の道に砕石が敷かれていました.1人の女の子が,歩きにくくて嫌いだと言いました.木片チップの方が歩きやすいようです.

イロハモミジとニセアカシアの木

 平和公園に入ってすぐの凍ったオタマジャクシ池の北の畑で,春の七草を探しました.セリ(芹,セリ科)は,オタマジャクシ池のすぐ近くの側溝でみつかり,スズナ(菘,アブラナ科,カブ:蕪)とスズシロ(蘿蔔,アブラナ科,ダイコン:大根)は,畑で栽培されていました.ただし,スズナは,抜いてみないとスズシロとの区別はできませんでした.ナズナ(薺,アブラナ科,別名ぺんぺん草)とハコベラ(繁縷,ナデシコ科)は,畑の中で見つけました.ゴギョウ(御形,キク科,ハハコグサ:母子草)とホトケノザ(仏の座,キク科,タビラコ:田平子)は見つかりませんでした.ホトケノザの代わりに近親のオニタビラコ(鬼田平子,キク科)を,ゴギョウの代わりに少し遠い親戚ですがチチコグサモドキ(父子草擬,キク科)を見つけて終わりにしました.

セリ スズシロ(ダイコン) スズナ(カブ) ハコベラ(ハコベ)
オニタビラコ チチコグサモドキ

 畑の奥に,黄色い花芽を沢山つけたミモザ(マメ科,別名ギンヨウアカシア:銀葉アカシア)と白い花を付けたビワ(枇杷,バラ科)がありました.ミモザは,ギンヨウアカシアではないかという参加者もいましたが,一般には同じものを指すようです.ミモザはギリシャ語の「棘のある,鋭い」が語源だそうです.

ミモザ

 畑の横の石段を登って尾根に出ました.途中の斜面には,カクレミノ(隠蓑,ウコギ科)の幼木などがありました.地図を見て,この地点をプロットしました.そこから下り斜面を薮こぎして,木材チップ製造の場所まで行きました.大きなチップ製造機械や,テレビなどの電化製品の廃棄物置き場もありました.不法投棄されたものを保管しているのだろうということになりました.木材チップやパルプの山は,自然発火する場合があるという話が,火災の専門家である参加者からありました.近くの水たまりの氷を子供達が,一生懸命に割っていました.水たまりの氷を見つけると割りたくなるのは,昔の子供達と変わらないようです.

カクレミノ チップ製造機械 氷を割る子供達

 そこから藪こぎして,平和公園会館の南の道路まで出ました.道路脇に高さ1mくらいの群生したしおれたカミヤツデ(紙八手,ウコギ科)がありました.カミヤツデの茎の白い髄から書画用紙などにする通草紙を作るそうです.普通のヤツデのように小さな白い玉をたくさんつけた花房もありました.

カミヤツデ

 ハンノキ湿地の手前のユーカリ畑の端で,霜柱を見つけました.霜柱を初めて見たという親子もいました.子供の頃に,しもやけやあかぎれのある足で,霜柱を踏んで通学した頃を思い出しました.しもやけやあかぎれは,栄養状態や環境が良い今の子供達にとっては死語になっているでしょうが,霜柱を見る機会もない環境は,寂しい気もします.
 先月までは,完全に干上がっていたハンノキ湿地の池は,水で満杯でした.ハンノキ湿地の奥に入り,鳥の水飲み場になっている場所まで行きました.さすがに,先月沢山いたヤマガラはいませんでした.この場所にソウシチョウが来たという話がありました.外国から持ち込まれた派手な小鳥で,野鳥の会の人達から嫌われている鳥であり,繁殖しないように願うばかりです.

鳥の水飲み場の観察

 谷筋をずっと薮こぎをしながら進み,昼食をする予定の平和公園の北東端の谷へ到着しました.急に開けた広い場所になっており,青い空がよく見えました.ここは,元は鬱蒼とした竹藪で,人も入れないような場所でしたが,森づくりの会の方々が3年かけて伐採をした場所でした.まだ腐っていない竹の切り株が多く残っていました.周辺の斜面には,竹を残してありました.これは,尾根の道から丸見えにならないように鳥の隠れ場所として残したものだそうです.平坦な場所では所々に,アオキ(青木,アオキ科)の幼木が生えてきていました.シュロ(棕櫚,ヤシ科)も小さな芽を出していましたが,参加者が引き抜きました.最初の年に竹を切ったあたりには,フユイチゴが自生し,多くの赤い実を付けていました.周辺にひもを張り巡らし,中に入れないようにしてありました.赤い実は,ほのかに甘かったですが,まだ酸味が強いものでした.早速,子供達は張ったひもの中に入りフユイチゴを摘み,食べ始めました.取り尽くさずに,鳥たちにも残しておくように伝えた人がいましたが,赤い実は非常に多く,多少食べても十分鳥たちにも余る程でした.

残してある竹薮 竹で遊ぶ子供達 フユイチゴ

 群生しているフユイチゴの横で感想会をしました.周辺は,葉を落としたコナラと竹に囲まれていました.真っ青な空に葉を落とした枝が突き刺さるような冬の景色でした.メジロ,カラスおよびカケスの鳴き声が樹上から降ってきました.子供達は,早速,倒れている竹で遊び始めました.子供達の大きな遊び声を聞きながらの感想会になりました.最近の子供達は,自宅でテレビゲームなどをして,外で集まって遊ぶことが少ないようです.このような機会によって,自然を大事にする心がはぐくまれれば良いと思いました.
 春の七草は,鳥が悪い病気を唐土から運んでくる前に,免疫力をつけるために食べるという話が出ました.「君がため春の野に出でて若菜つむわが衣手に雪は降りつつ」(古今集,光孝天皇)の「若菜つむ」は,君が若菜(春の七草)を食べ長寿になることを祈って摘むという話も出ました.

【外部リンク】やまとうた 千人万首

 感想では,霜柱を初めてみた親子から感激したということや薮こぎが楽しかったというものが多く出ました.自由に飛び回って遊ぶ子供達の大きな声を聞きながら,子供達の親だけでなく,参加者全員が幸せな気分で感想会を終えました.

 その後,上り斜面を薮こぎして,キラニン広場に通じるアスファルト舗装された道にでました.斜面最後の防護柵の所が非常に急な斜面でした.キラニン広場へ行き,そこから下り斜面を薮こぎして,元は畑で,子供森づくり隊が森に復元しようとしている場所に着きました.子供達が,コナラとアベマキのドングリを持って帰り,苗をつくり,植林しようとしている場所でした.説明を聞いた後,芝生広場まで戻り,そこで解散しました.

観察項目:ウバメガシのドングリ,スダジイのドングリ,モズ,モミジ,ニセアカシア,アオジ,春の七草(セリ,ナズナ,ゴギョウの代用のチチコグサモドキ,ハコベラ(ハコベ),ホトケノザの代用のオニタビラコ,スズナ,スズシロ),ミモザ,ビワ,カクレミノ,カミヤツデ,フユイチゴ,ハシブトガラス,メジロ(概ね観察順)

伊藤義人

監修 滝川正子

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