ほとんど風もない晴天で,よく歩く観察会にとって最適な日となりました.例年と比べると非常に暖かい冬の一日でした.例年のように風があって寒いときは,平和公園の森林に入るありがたみがありましたが,今年はそのありがたみがないという参加者もいました.新池には,集合場所の公園横の木にじっととまっている13羽のコサギを始めとして,アオサギ,ヒドリガモ,バンが来ていました.新池周辺のセンダン(栴檀,センダン科)の実は,十分熟して,かなりの数の実が路上にも落ちていました.センダンには,ムクドリとヒヨドリが代わる代わる実を食べに来ていました.それ以外にも数十羽のムクドリとヒヨドリのそれぞれの群が,新池の上を飛び交っていました.先月まで紅葉を見せていた元清風荘の木々も葉を落とし,さすがに冬景色でした.参加者は,集合時間には20名以下でしたが,出発時には子供6名を含む40名になりました.
集合場所で,まず,参加者の持ってきたウバメガシ(姥目樫,ブナ科)とスダジイ(すだ椎,ブナ科)のドングリを食べました.素朴な味でしたが,十分食べられるものでした.スダジイの小さなドングリは軽く煎ってありましたが,硬くて歯で噛んで殻を割る必要がありました.殻の中が白い実の場合はよい味でしたが,茶色いものは,苦くてうまくありませんでした.マテバシイ(全手葉椎,ブナ科)の大きな葉とセンダンのクリーム色の実を持ってきた参加者もいました.1人の参加者が,シリブカガシ(尻深樫,ブナ科)のドングリをポケットに入れていたものを出したところ,非常につやつやした光沢がありました.
次に,先月の報告を見ました.焼き芋の写真を見ながら,ゴミになるアルミ箔を使わないで灰のオーブンで直に焼くやり方を今後もしたいということになりました.落葉にすっかり覆われた小径の写真も話題になりました.
平和公園に入ってすぐの凍ったオタマジャクシ池の北の畑で,春の七草を探しました.セリ(芹,セリ科)は,オタマジャクシ池のすぐ近くの側溝でみつかり,スズナ(菘,アブラナ科,カブ:蕪)とスズシロ(蘿蔔,アブラナ科,ダイコン:大根)は,畑で栽培されていました.ただし,スズナは,抜いてみないとスズシロとの区別はできませんでした.ナズナ(薺,アブラナ科,別名ぺんぺん草)とハコベラ(繁縷,ナデシコ科)は,畑の中で見つけました.ゴギョウ(御形,キク科,ハハコグサ:母子草)とホトケノザ(仏の座,キク科,タビラコ:田平子)は見つかりませんでした.ホトケノザの代わりに近親のオニタビラコ(鬼田平子,キク科)を,ゴギョウの代わりに少し遠い親戚ですがチチコグサモドキ(父子草擬,キク科)を見つけて終わりにしました.
畑の奥に,黄色い花芽を沢山つけたミモザ(マメ科,別名ギンヨウアカシア:銀葉アカシア)と白い花を付けたビワ(枇杷,バラ科)がありました.ミモザは,ギンヨウアカシアではないかという参加者もいましたが,一般には同じものを指すようです.ミモザはギリシャ語の「棘のある,鋭い」が語源だそうです.
畑の横の石段を登って尾根に出ました.途中の斜面には,カクレミノ(隠蓑,ウコギ科)の幼木などがありました.地図を見て,この地点をプロットしました.そこから下り斜面を薮こぎして,木材チップ製造の場所まで行きました.大きなチップ製造機械や,テレビなどの電化製品の廃棄物置き場もありました.不法投棄されたものを保管しているのだろうということになりました.木材チップやパルプの山は,自然発火する場合があるという話が,火災の専門家である参加者からありました.近くの水たまりの氷を子供達が,一生懸命に割っていました.水たまりの氷を見つけると割りたくなるのは,昔の子供達と変わらないようです.
そこから藪こぎして,平和公園会館の南の道路まで出ました.道路脇に高さ1mくらいの群生したしおれたカミヤツデ(紙八手,ウコギ科)がありました.カミヤツデの茎の白い髄から書画用紙などにする通草紙を作るそうです.普通のヤツデのように小さな白い玉をたくさんつけた花房もありました.
ハンノキ湿地の手前のユーカリ畑の端で,霜柱を見つけました.霜柱を初めて見たという親子もいました.子供の頃に,しもやけやあかぎれのある足で,霜柱を踏んで通学した頃を思い出しました.しもやけやあかぎれは,栄養状態や環境が良い今の子供達にとっては死語になっているでしょうが,霜柱を見る機会もない環境は,寂しい気もします.
谷筋をずっと薮こぎをしながら進み,昼食をする予定の平和公園の北東端の谷へ到着しました.急に開けた広い場所になっており,青い空がよく見えました.ここは,元は鬱蒼とした竹藪で,人も入れないような場所でしたが,森づくりの会の方々が3年かけて伐採をした場所でした.まだ腐っていない竹の切り株が多く残っていました.周辺の斜面には,竹を残してありました.これは,尾根の道から丸見えにならないように鳥の隠れ場所として残したものだそうです.平坦な場所では所々に,アオキ(青木,アオキ科)の幼木が生えてきていました.シュロ(棕櫚,ヤシ科)も小さな芽を出していましたが,参加者が引き抜きました.最初の年に竹を切ったあたりには,フユイチゴが自生し,多くの赤い実を付けていました.周辺にひもを張り巡らし,中に入れないようにしてありました.赤い実は,ほのかに甘かったですが,まだ酸味が強いものでした.早速,子供達は張ったひもの中に入りフユイチゴを摘み,食べ始めました.取り尽くさずに,鳥たちにも残しておくように伝えた人がいましたが,赤い実は非常に多く,多少食べても十分鳥たちにも余る程でした.
群生しているフユイチゴの横で感想会をしました.周辺は,葉を落としたコナラと竹に囲まれていました.真っ青な空に葉を落とした枝が突き刺さるような冬の景色でした.メジロ,カラスおよびカケスの鳴き声が樹上から降ってきました.子供達は,早速,倒れている竹で遊び始めました.子供達の大きな遊び声を聞きながらの感想会になりました.最近の子供達は,自宅でテレビゲームなどをして,外で集まって遊ぶことが少ないようです.このような機会によって,自然を大事にする心がはぐくまれれば良いと思いました. 観察項目:ウバメガシのドングリ,スダジイのドングリ,モズ,モミジ,ニセアカシア,アオジ,春の七草(セリ,ナズナ,ゴギョウの代用のチチコグサモドキ,ハコベラ(ハコベ),ホトケノザの代用のオニタビラコ,スズナ,スズシロ),ミモザ,ビワ,カクレミノ,カミヤツデ,フユイチゴ,ハシブトガラス,メジロ(概ね観察順) 伊藤義人 監修 滝川正子 |
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2月度の観察記録 |