寒かったですが快晴で風もほとんどなく,よく歩く1月の観察会にはもってこいの日よりでした.スイレン(睡蓮,スイレン科)のなくなった新池には,22羽のヒドリガモ(緋鳥鴨,カモ科)が気ままに水面を動き,逆立ちの状態で餌をとっていました.オオバン(大鷭,クイナ科)も1羽混じっていました.アオサギ(青鷺,サギ科)は,岸近くの捨てられたタイヤに乗ってじっとしていました.バン(鷭,クイナ科)も1羽岸に上がっていました.ムクドリ(椋鳥,ムクドリ科)の28羽の群れが土手のイチョウ(銀杏,イチョウ科)にとまっていました.また,コサギ(小鷺,サギ科)が1羽上空通過しました.新池のスイレン(睡蓮,スイレン科)の遮光膜の実験場は,日陰のため水面は氷っていました.土手のセンダン(栴檀,センダン科)には,まだ実がたくさん付いていました.参加者は,子供6名と大人19名でした.
里山の家の周辺では3羽のセグロセキレイ(背黒鶺鴒,セキレイ科)がいました.西側の水面が氷っていた大坂池には,つがいのヒドリガモが来ていました.男の子が氷の板を持ってきたので,厚さを測って7〜8mmであることを確認しました.名古屋も前夜は冷えていたようです.
参加者が持ってきた春の七草:『セリ(芹,セリ科),ゴギョウ(御形,キク科),ハコベラ(繁縷,ナデシコ科),ホトケノザ(仏の座,キク科,別名:小鬼田平子または田平子),スズナ(菘,アブラナ科,別名:蕪),スズシロ(蘿蔔または清白,別名:大根)』を順に並べました.ホトケノザ(タビラコ)は時期的になくて,水菜のようなものが代わりに入れてありました.また,ゴギョウ(ハハコグサ)の代わりはチチコグサモドキ(父子草擬,キク科)でした.スズナ(カブ)とスズシロ(ダイコン)の語源が話題になりました.スズナ(カブ)は,その根の形が鈴に似ているのでということになりました.文献によると,『鈴ではなく錫製の丸い容器に似ているから』というようなことが書いてあります.一方,『スズシロ(ダイコン)の「スズ」は涼しい,「シロ」は大根の白さで,清清しく白い根を表した「涼白」(すずしろ)を語源とする説があります.しかし,「涼白」よりも、「スズナ」(菘)に代わるものという意味で、「菘代」(すずなしろ)が語源と考える方が妥当なようです.』という記述がありました.
【外部リンク】スズナ(語源由来辞典)
猫ヶ洞池にシロハラクイナ(白腹水鶏,クイナ科)が来ていて,それを見に探鳥の人達がいっぱい来ているという報告がありました.シロハラクイナは沖縄の鳥で,ここでは迷鳥のたぐいです.クイナ(水鶏,クイナ科)に関連して,大江健三郎の知的障がいを持つ長男光君(現在,作曲家)が,6歳のときクイナの鳴き声を聞いて「クイナです」という言葉を初めて発したという話がでました.
次に,参加者が白山神社で買ってきたタチバナ(橘,ミカン科)の2つの実を見ました.食べると美人で賢くなるということで,皮をむいて女の子が食べました.このとき,おひな様の並び方が話題になり,昔は,左が偉いということで左(向かって右)に男びなが,男びなの右手側に女びなでしたが,その後,国際儀礼などに合わせて左右が逆になったと言われています.
【外部リンク】雛人形の並べ方(オールアバウト)
次に,テイカカズラ(定家葛,キョウチクトウ科)とガガイモ(蘿芋,ガガイモ科)の種を観察しました.どちらも長い冠毛がついていて,よく似ていました.子供に種を飛ばさせると,ふわふわと頭上へ上がっていきました. 先月の報告を見て,ヤブツバキ(藪椿,ツバキ科)には白の花はないという指摘がありましたが,シロヤブツバキ(白藪椿,ツバキ科)という園芸種はあります.芋煮会場の近くのツバキは同定できていないので白ツバキとでもしておくことになりました.
10:05に出発して,まず里山の家の前のケヤキ(欅,ニレ科)についた2種類の苔を観察しました.花が咲いたようにみえるという言葉に,苔に花はなく胞子嚢しかできないという指摘がありました.もう1つの苔は青カビのように阻止円の形になっていました.非維管束のコケ植物の分類は地味で,これらの分類を専門にする人は少なくなっているということでした.
水田に行き,レンゲソウ(蓮華草,マメ科)を観察しました.昨年度は2月に種を蒔いてもほとんど芽が出ず失敗して,今年度は稲刈りの後で蒔いたそうです.一面ではないですが所々にかたまって新芽が出ていました.一株引き抜いて見せながら,双葉がまず4日目くらいに出て,それからハート型の本葉が出るという説明がありました.この時,せせらぎから子供達がまた氷を取ってきて皆に見せていました.
歩いている途中でクマザサ(隈笹,イネ科)が揺れているのを見て,風で鳴る笹の音は,山で迷子になったときに,笑らわれているようで怖い思いをした経験を話した人がいました.
元は畑で子供たちが森づくりをしている場所で,春の七草を探しました.背の低い新芽がたくさん出ていました.七草ではないですがアメリカフウロ(亜米利加風露,フロウソウ科),オオイヌノフグリ(大犬の陰嚢,ゴマノハグサ科)およびヤエムグラ(八重葎,アカネ科)は直ぐに分かりました.ホトケノザ(タビラコまたはコオニタビラコ)を探しましたが,見つけたのはどうやらナズナ(薺,アブラナ科)でした.ヘクソカズラ(屁糞葛,アカネ科)の実を見つけて,つぶしてにおいをかぎました.におわないという人とくさいという両方の人がいました.
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アメリカフウロ |
オオイヌノフグリ |
ヤエムグラ |
ヘクソカズラの実 |
子供達によって植えられたアベマキ(阿部槇または??,ブナ科)の苗木にはまだ枯葉が付いていました.その葉に5〜6mm径くらいの球形のいくつかの虫こぶ(クヌギハマルタマフシ(椚葉丸玉五倍子))がついていました.冬には幼虫は虫こぶの中にいないという説明でしたが,注意深く観察しても抜け出た穴は見つからず,実際にナイフで虫こぶを切断してみると,中に2〜3mm長の白いクヌギハマルタマバチ(椚葉丸玉蜂,タマバチ科)の幼虫が中に1匹いました.見にくいので.手のひらに幼虫を出して観察しました.他の虫こぶも同様でした.これらの虫こぶは,葉の表面の葉脈の上に出来ていました.養分を吸うためという説明でした.クヌギハマルタマバチの単性生殖のときに葉に虫こぶを作らせるそうです.
この場所から北に向かって登りの藪こぎをしてキラニン広場まで行きました.キラニン広場でソヨゴ(冬青,モチノキ科)の赤い実についている虫の黒い侵入穴を観察しました.そのとき,ソヨゴの枝の付け根に,7〜8mm大の紫色の3つのソヨゴメタマフシ(冬青芽球五倍子)を見つけて観察しました.ナイフでこの虫こぶを切断したところ,中に柿色のソヨゴメタマバエ(冬青芽球蠅,タマバエ科)の幼虫5匹がそれぞれの虫室に分かれていました.幼虫達は這って外に出ようとしました.ハエの幼虫には足がないという説明がありました.虫こぶの他の断面を切ればこの虫こぶにはもっと幼虫がいそうでした.
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ヒサカキの虫こぶ(ソヨゴメタマフシ) |
ソヨゴメタマバエの幼虫 |
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さらに今度は急な下りの藪こぎをしてハンノキ湿地を目指しました.途中では,センリョウ(千両,センリョウ科)が赤色と黄色の実を付けていました.途中で,オオカマキリ(大蟷螂,カマキリ科)の卵嚢のかけらを見つけました.また,鳥の羽が散乱した場所も見つけました.オオタカ(大鷹,タカ科)のキッチンのようでした.多分,ドバト(土鳩,ハト科)が食べられた跡ではということでしたが,同定のため羽を持って帰った人がいました.フユイチゴ(冬苺,バラ科)もありましたが,すでに時期が遅く実は少ししか付いていませんでした.
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藪こぎ |
センリョウ(赤色の実) |
センリョウ(黄色の実) |
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ハンノキ池の近くで,湿地にはまってしまった人もいました.また,ジネンジョ(自然薯,ヤマノイモ科)の掘削穴と思われるところで,男の子が穴に落ち込んでしまいました.ジャノヒゲ(蛇の髭,ユリ科,別名:リュウノヒゲ)には瑠璃色の5mm径の球形の実が細長い葉の根元に複数ついていました.スーパーボールのようによく弾むということで,コンクリートの上からこの実を落としてみました.確かに実としてはよく弾みましたが,反発係数はせいぜい0.3程度でした.
大坂池に戻っても,まだつがいのヒドリガモがいました.土手の日当たりのよいところでロゼット状のタビラコ(?)を見つけました.
里山の家で感想会をしました.森の中の枯葉の上を歩くのは楽しいという感想がでました.新年の快適な観察会になりました.
観察項目:テイカカズラの実,ガガイモの実,春の七草,タチバナの実,アメリカフウロ,ヤエムグラ,オオイヌノフグリ,ナズナ,クヌギハマルタマバチの幼虫,クヌギハマルタマフシ,ソヨゴメタマバエの幼虫,ソヨゴメタマフシ,シャシャンボ,ウメモドキの実,センリョウ,マンリョウ,ノイバラ,ジャノヒゲ,アメリカフウの実.ジネンジョの掘削穴,ヘクソカズラの実,シジュウカラ,セグロセキレイ,ハシブトガラス,ハシボソガラス,フユイチゴ,鳥の羽
文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子
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