初夏を思わせる快晴でした.新緑も濃くなり,私にとっても花粉症がほぼ収束し,すがすがしい季節到来でした.新池のほとん
どの水面は,スイレン(睡蓮,スイレン科)にまた覆われていました.そのため,新池を南側から見たとき,水鳥は来ていないと思いましたが,北側の岸にアオ
サギ(青鷺,サギ科)と直ぐ横のわずかに残った水面にカイツブリ(鳰,カイツブリ科)が各1羽いました.両者とも独特の鳴き声を出していました.ツバメ
(燕,ツバメ科)とムクドリ(椋鳥,ウクドリ科)も,先月と同じように水面上を飛び交わっていました.土手のハリエンジュ(針槐,マメ科)は,白い花弁を
地面にたくさん落としていました.街路樹のトウカエデ(唐楓,カエデ科)は新緑にすっかり覆われ大変きれいでした.参加者は子供7名と大人28名でした. 集合場所で,できあがったばかりの昨年度の観察会の本が披露されました.表紙の各月ごとの写真が何かということが紹介され
ました.
次に,先月の報告を皆で見ました.関連して,持ち帰ったナ
ガサキアゲハ(長崎揚羽,アゲハチョウ科)の
さなぎが羽化に失敗したという報告がまずありまし
た.ハチなどに寄生されていることが多いそうです.里山の家の屋根の芝生の中のカ
ラスノエンドウ(烏豌豆,マメ科)は枯れ始めていましたが,どうしてこん
なにカラスノエンドウだけが繁茂したのかという疑問がでました.風で種が飛ばされてきたという人と,クロジ(黒鵐,ホオジロ科)やスズメ(雀,ススメ科)
が,カラスノエンドウの実を運んで来たのではないかという人もいました.なお,よく見ると,今月は屋根の上の方で別の野草が生え始めていました.
報告の中のツチイナゴ(土蝗または土稲子,イナゴ科)をトノサマバッタ(殿様飛蝗,イナゴ科)と見分けるのは,目の周辺の
模様から「涙目のツチイナゴ」というように覚えればよいという話が出ました.先月見た花瓶に入れたサツマイモ(薩摩芋,ヒルガオ科)をまた見ま
した.水し
か代えていないそうですが,花瓶の中では根が伸びて絡み合っていました.芽を摘んで,複数伸びてくる蔓を植えるとよいという意見が出ました.
水槽に入れた後足の出始めたオタマジャクシを観察しました.歌では「やがて手が出る足が出る」と歌われますが,実際は逆で,ごろが悪いのでこのようになっ
ているという説明がありました.
10時近くになり,里山の家を出発してオタマジャクシ池北の元畑に行きました.ク
ワ(桑,クワ科)のまだ緑色の実をまず観察しました.とても食べられる状
態ではありませんでした.誰かが植えたアヤメ(菖
蒲,アヤメ科)がきれいな紫色の花を咲かせていました.花弁の綾目模様を確認しました.また,ゴボウ(牛
蒡,キク科)の大きな葉を観察しました.奥のミモザ(Mimosa,
マメ科)が白っぽい花を付けているように見えましたが,実際に近寄ると花ではなく実で
した.実の鞘は表が紫がかった白っぽい色で,裏は緑色で,鞘の表の色が花のように見えたことが分かりました.
ツチイナゴもここで捕まえました.トンボも捕獲しましたが,種類が分からず,図鑑と照らし合わせて,複眼の緑色と胴体の黄色い横縞で,多分シオカラトンボ (塩辛蜻蛉,トンボ科)のメスだろうということになりました.シロテンハナムグリ(白点花潜,コガネムシ科)も草の上を這っているのを見つけました.ユズ (柚子,ミカン科)の木に白い花のつぼみがたくさん付いていました.東の外れにカスマグサ(かす間草,マメ科),スズメノエンドウ(雀豌豆,マメ科)およ びカラスノエンドウ(烏豌豆,マメ科)が群生して実を付けているのを見つけて写真に撮りました.豆果の中の種の数で種類を見分けますが,カスマグサは4 個,スズメノエンドウは2個,カラスノエンドウは5〜10個と普通言われています. 【外部リンク】カラスノエンドウ、スズメノエンドウ、カスマグサ(見頃の花
岡山県自然保護センター)
大坂池の土手へ行き,ウメモドキ(梅擬,モチノキ科)についたクワトゲエダシャク(桑棘枝尺,シャクガ科)
の緑色の幼虫を
観察しました.終齢に近いのか,丸まってじっとしていました.クワの害虫で愛知県の絶滅危惧種になっているそうですが,最近はあちこちで見かけるそうで
す.
アオスジアゲハ(青条揚羽,アゲハチョウ科)をつかまえて,容器に入れて子供達が観察しました.細長い4cm長ほどのチャエダシャク(茶枝尺,シャクガ
科)の幼虫を見つけて,足の数が10本であることを確認しました.
11時になっても,里山の家から100mも離れておらず,急いで進むことにしました.途中で5〜6mm大のオオワラジカイガラムシ(大草鞋介殻虫,ワタ
フ
キカイガラムシ科)のメスを見つけて観察しました.メスとオスの形態は全く違い,メスは飛べないようです.
アベマキ(阿部槇,ブナ科)の林の樹上からセンダイムシクイ(仙台虫喰,ウグイス科)の鳴き声が聞こえました.図鑑には
「ショーチュー イッパイ
グイ」という聞きなしが書いてありました.植樹された幼木のアベマキの葉がなくなるほど喰われていました.葉を調べると幼虫が繭を作ろうとしていました.
このとき,上空の上昇気流に乗ったタカを発見しました.羽ばたきを全くせず上昇気流にのってらせん状に上空に昇っていきました.多分,オオタカ(大鷹,タ
カ科)でしたが,急いで双眼鏡を出して見ても小さすぎてハイタカ(杯鷹,タカ科)との区別がつきませんでした.
日陰を探して,背の高いキリ(桐,ゴマノハグサ科)とマルバヤナギ(円葉柳,ヤナギ科)とシンジュ(神樹,ニガキ科)が集まっている所に行きました.樹木
の下にはキリの紫色の花がたくさん落ちていました.ここで,ヒ
ロオビトンボエダシャク(広帯蜻蛉枝尺蛾,シャクガ科)の幼虫や脱皮中のカナヘビを観察しま
した.カナヘビの頭と胴体の一部に古い皮がついており,カナヘビを卵から飼育した経験のある参加者の親子から,どのように脱皮するかの説明がありました.
水路(せせらぎ)からトビケラ(飛螻蛄,トビケラ目)の幼虫を捕ってきてペットボトルに入れて観察しました.
湿地近くの樹木で,オオシマカラスヨトウ(大
縞鴉夜盗,ヤガ科)の幼虫も見つけました.湿地では,カ
キツバタ(杜若,アヤメ科)が紫色の花をたくさん咲か
せていました.アヤメと花の形は似ていますが,綾目模様がないことを確認しました.水路の近くでは,キショ
ウブ(黄菖蒲,アヤメ科)も黄色い花を
咲かせて
いました.
湿地の山際のサワフタギ(沢蓋木,ハイノキ科)にたくさんのシ
ロシタホタルガ(白下蛍蛾,マダラガ科)の幼虫がいました.サワフタギの葉をすべ
て食べつくしてしまうのではという感想がでました.
水田の山側のミヤマヨメナ(深山嫁菜,キク科)の群生地で薄紫色の花を観察しました.ここで子供の姉弟が大きな声で何度も「お腹減った」と叫びました.す
でに11:50になっていました.子供達の母親がはらはらとしていました.急いで里山の家に戻りました.途中のスモモ池には,ダイサギ(大鷺,サギ科)と
コガモ(小鴨,カモ科)が各1羽来ていました.
感想会は里山の家の倉庫のたたきで行いました.子供達は,黙ってゆで卵などを大きな口をあけて食べていました.感想としてカナヘビの脱皮が見られてよかっ
たということなどが出ました.紙芝居を持ってきた女性の参加者がいました.「はじめまして」という題目で,アゲハチョウの幼虫とオタマジャクシの,そして
それらが大きくなったカエルとアゲハチョウの交友の話で,出合った最初に「はじめまして」と言う内容でした.子供たちは目を輝かせて見ていました.多くの
虫たちやその幼虫を観察できた楽しい観察会になりました. 観察項目:
ナガサキアゲハのさなぎ殻,サツマイモ,後足の出はじめたオタマジャクシ,ウグイスの鳴き声,クワ,アヤメ,ミモザの鞘,ゴボウ,カナヘビ,ヤマトシジ
ミ,ツバメシジミ,ツチイナゴ,メスのシオカラトンボ,シロテンハナムグリ,ユズの花,カスマグサ,スズメノエンドウ,カラスノエンドウ,ウメモドキ,ク
ワトゲエダシャクの幼虫,アオスジアゲハ,オオワラジカイガラムシ,モチツツジ,ホウネンタワラチビアメバチのさなぎ,ヤブヘビイチゴ,センダイムシクイ
の声,キリの花,タカ,チャエダシャクの幼虫,ヒロオビトンボエダシャクの幼虫,トビケラ,オオシマカラスヨトウの幼虫,キショウブ,シロシタホタルガの
幼虫,サワフタギ,ミヤマヨメナ,カキツバタ,ゴマダラチョウ,ダイサギ,コガモ. |
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2013年5月度の観察記録
2013年5月度の印刷用観察記録です。
| 2013-8-3 | 281 | |
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