家を出たときは曇っていましたが,観察会開始時は,すっかり晴れ,かなり強い陽差しがさしていました.ユキヤナギ(雪柳,
バラ科)やサクラ(桜,バラ科)の花はすっかりなくなり,新緑がまぶしい季節になっていました.新池には,カワウ(川鵜,ウ科)3羽,ヒドリガモ(緋鳥
鴨,カモ科)8羽,オオバン(大鷭,クイナ科)1羽,コガモ(小鴨,カモ科)9羽がいました.土手のトウカエデ(唐楓,カエデ科)は萌黄色の新葉を付け始
めていましたが,センダン(栴檀,センダン科)はまだ芽吹いていませんでした. 里山の家近くの大坂池にもコガモが4羽いましたが,近づくと直ぐ横のスモモ池に飛んで行ってしまいました.大坂池の土手に
はカワラヒワ(河原鶸,アトリ科)3羽とムクドリ(椋鳥,ムクドリ科)16羽がいて,しきりに何かをついばんでいました.里山の家の屋根の芝の中には,何
故かカラスノエンドウ(烏豌豆,マメ科)だけが繁茂していました.カエル池のキショウブ(黄菖蒲,アヤメ科)も葉の丈が伸びていました.近くのヤマブキ
(山吹,バラ科)は一重の黄色い花をつけていました.周辺では,キチョウ(黄蝶,シロチョウ科)やベニシジミ(紅小灰,シジミチョウ科)が飛んでいまし
た.遠くから見ると里山の家の前のケヤキ(欅,ニレ科)はまだ芽吹いていないように見えましたが,近づいてよく見ると茶褐色の小葉が付いていました.参加
者は,元気いっぱいの子供6名と大人22名でした.
集合場所の里山の家の前で,参加者が持って来たものを縁台に並べて順次観察しました.最初に,よく似た細長い葉をもつキャ
ラボク(伽羅木,イチイ科)とイ
チイ(一位,イチイ科)の小枝を見ました.イチイの変種であるキャラボクは低木で,香木として使うと説明がありましたが,
香木のキャラ(伽羅)とは全くの別物のようです.一方,イチイは20mにもなる高木で岐阜県の県木であり,葉が平面状に付いていました.イチイとキャラボ
クの赤い実の果肉は両方とも食べられますが,種子は有毒で飲み込まないようにする必要があります.さらに,それらと似たイヌガヤ(犬榧,イヌガヤ科)を
持って来た参加者がいました.葉の裏の葉脈に薄茶色の雌花が数個ついていました.赤っぽい色のオオバベニガシワ(大葉赤目柏,トウダイグサ科)の枝も観察
しました.元々ついていた葉は数cm大で下の方に10数センチ大の大きな葉が人工的にくっつけてありました.赤い色の葉ですが葉緑素があって光合成をして
いるという説明でした.
カマキリの大小2つの卵嚢を観察しました.オオカマキリ(大
蟷螂,カマキリ科)の4cm大の大きな卵嚢は
紡錘形で,下の蓋の面が柔らかく,ここから子供が
生まれ出るようです.2cm弱大のコカマキリ(小
蟷螂,カマキリ科)の卵嚢は
よく見ると横から子供が出た穴がありました.卵嚢の上下の向きについて,カマ
キリは逆立ちをして産卵することが以前の観察会の写真で確認されました.2つのカマキリの卵嚢の上下の方向に整合性がないのではないかということが話題に
なりました.
以前の観察会で話題となったフ
ジ(藤,マメ科)の実の鞘(さや)が乾燥するとねじれることが話題になりました.鞘には斜め
に繊維が入っており,乾燥して縮むとねじれるという説明がありました.また,半分に割ったフジの実を見せて,種子は両側の鞘に1つおきにできていることの
説明がありました.このねじれの様相がフィナボッチ数になるということでした.鞘の長さが約7.5cmでねじれの角度が45度になるそうです.他の植物の
葉の付き方などもフィナボッチ数と関連することがあるそうです.これは,光をより多く受け入れるための自然の知恵のようです.
その後,先月の記録を順番に見ました.コモリグモ(子守蜘蛛,コモリグモ科)が,大坂池の土手の盛土の上に多くいるのは,
餌のダニなどが多いからという説明がありました.蜘蛛の巣をつくらず,徘徊するという説明のなかで,「徘徊」は差別用語で最近は使わないということが話題
になりました.
前に同じ事をした男の子が,ムクノキ(椋木,ニレ科)にひもを引っかけてとれなくなってしまいました.木に登ったりして
やっと取りました.
「せせらぎ」の水路の端でオニタビラコ(鬼
田平子,キク科)を見つけました.背の高さは30cmくらいでした.春の七草のコオニタビタコ(小鬼田平子,キ
ク科)はもっと背が低いですが,平和公園では見つからないので代わりにこのオニタビラコを七草の1つとして扱っています.近くでハルジオン(春紫苑,キク
科)を見つけて,茎の中が空洞であることを確認しました.ヒメジョオン(姫女苑,キク科)は,形状が似ていますが,茎の中には髄が入っていて区別できま
す.漢字で名称を書くとヒメジオンでなくヒメジョオンであるということがよく分かるという話もでました.
白い花を付けたガマズミ(莢迷,スイカズラ科)を見つけました.葉の大きさからコバノガマズミ(小葉莢迷,スイカズラ科)
かミヤマガマズミ(深山莢
迷,スイカズラ科)だろうということになりました.葉柄が長いので,ミヤマガマズミではという人が葉をかんで,確かにミヤマガマ
ズミの苦い味がすると言いました. 【外部リンク】キチョウ属類似3種の翅裏比較図(蝶鳥ウォッチング)
ツクツクボウシ(つ つく法師,セミ科)の抜け殻を 見つけた男の子がいました.周辺でヤマトシジミ(大和小灰,シジミチョウ 科),ツマキチョウ(褄黄蝶,シロチョウ科),ベニシジミ(紅小灰,シジミチョウ科)などを捕獲して観察しました.ルリタテハ(瑠璃立羽,タテハチョウ 科)も飛んでいましたが,飛び方が早く捕獲は出来ませんでした. カラタチ(枳,イカン科)の白い花を観察しました.長年,参加してきた1人の参加者が初めてこの花を見たと言いました.毎年,報告にも載りますので,忘れ ているだけという意見も出ました.水田では,レンゲソウ(蓮花草,マメ科)の花を咲かせるため,水をプラスチックの給油機を使って抜いていました. 急いで里山の家に戻る途中で,ミツバアケビ(三 葉木通,アケビ科)の黒っぽい花と, それとはかなり違う形のアケビ(木 通,アケビ科)の花を観察し ました.
感想会は里山の家の倉庫横で行いました.最初,陽当たりの良い場所で石に座りましたが,陽差しが強かったので半分以上の人が倉庫の陰に移動しました.蝶が
たくさん舞う快適な春の感想会になりました.
観察項目:
イチイ,キャラボク,ダイオウショウの松かさ,イヌガヤ,オオベニガシワ,ヤエザクラ,オオカマキリとコカマキリの卵嚢,オオタカ,フンモンスズメ,ナガ
サキアゲハのさなぎ,アオスジアゲハのさなぎ,フジの実,セイヨウタンポポ,トウカイタンポポ,ヘビイチゴ,コリヤナギ,ツチイナゴ,ヤマトシジミ,ツバ
メシジミ,ベニシジミ,ルリタテハ,ツマキチョウ,キチョウ,ムラサキタテハ,カブトムシの幼虫と糞,ダンゴムシ,ミヤマガマズミ,ツクツクボウシの抜け
殻,カラタチの花,ハルジオン,オニタビラコ,レンゲ,ミツバアケビ,アケビ |
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2013年4月度の観察記録
2013年4月度の印刷用観察記録です。
| 2013-7-15 | 260 | |
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