快晴で風もなく,日当たりのよい場所は大変心地よい環境でした.水面にスイレン(睡蓮,スイレン科)がなくなった新池で は,オオバン(大鷭,クイナ 科)2羽,ヒドリガモ(緋鳥 鴨,カモ科)10羽とコガモ(小鴨,カモ科)が16羽(?)いました.オオバンは頻繁に潜って餌をとっていましたが,ヒドリガモを追いかけて水しぶきをあ げることもありました.土手の日当たりのない場所では白い霜が残っていました.センダン(栴檀,センダン科)には実がまだたくさんついていましが,ムクド リ(椋鳥,ムクドリ科)やヒヨドリ(鵯,ヒヨドリ科)は周辺にいませんでした.モ ズ(百舌鳥,モズ科)が1羽,低木に止まってじっとしていました.新池周辺は静かに春を待つ感じでした.参加者は大人23名と 子供4名でした.子供の1人はお母さんに抱っこされてずっと藪こぎをしました.
集合場所で,まず今年の予定表が配布されました.次に,ナミアゲハ(並揚羽,アゲハチョウ科),ギフチョウ(岐阜蝶,アゲ ハチョウ科),アオスジアゲハ(青條揚翅,アゲハチョウ科),ウスバシロチョウ(淡翅白蝶,シロチョウ科)の4種の蝶について,卵から成虫までの絵柄のトランプを並べて皆で見ました.エースは卵 で,キングは蝶でした.ジョーカーは寄生蜂の絵柄でした.寄生蜂は,アゲハヒメバチ(揚羽姫蜂,ヒメバチ科)やアオムシコバチ(青虫小蜂,コガネコバチ 科)が有名で,ウスバシロチョウとギフチョウは一化性(1年に1回だけ羽化)だという説明がありました.また,ウスバシロチョウは卵で越冬するという説明 もありました.
いつも1人で平和公園を散策している男性が黄色く熟した約10cm大のカリン(榠樝,バラ科)を集合場所に置いてい きました.皆で回して良い香り(トリテルペン化合物)を嗅ぎました.生食はできませんが,カリン酒などにするものです.
女の子が出目の実として,マ
サキ(柾または正木,ニシキギ科)の小さな実を持ってきました.ベロ出しという人もいましたが,対になったはじけた実から出て
いるオレンジ色の種は確かに目に見えました.カエル池横のマサキを実際に観察する予定でしたが,出発したときにすっかり忘れてしまいました.
次に,日本が植民地時代に栽培を始めた台湾の農園跡のゴムノキの果皮を観察しました.2mm程度の
厚さの堅いものでした.アオギリ(青桐,アオギリ科)の種がついている果皮と同じ性質のものということでした.
10:10になり,まず里山の家の倉庫の壁などについたアオスジアゲハの蛹(さなぎ)を見に行きまし た.緑色のアオスジアゲハの蛹と死んだ茶色の蛹もありました.軒下の天井根太に白っぽい塊が複数ありました.脚立を倉庫から出してきて,1つだけ観察のた めに取りました.ヒメベッコウバチ(姫鼈甲蜂,ベッコウバチ科)などのド ロバチ(泥蜂)の巣で した.数mmの比較的大きな穴が3つと小さな穴が1つあいていました.
巣を壊すと4室に分かれていて,1)穴があいて空っぽ(何かが巣立った),2)死んだ飴色の蛹殻,3)5匹のクモの乾燥死
骸,4)小さい穴があいている室で,小さな8つの寄生バエの蛹殻,がありました.8つの寄生バエの蛹殻の内,7つは小さな穴があいた抜け殻で,残りの1つ
は穴がなく小さな白い丸いものが付いていました.クモの死骸には脚がついており,ヒメベッコウバチは蜘蛛を狩るときに麻酔をして運びやすいように脚を取る
と言われており,かつ1匹の大きな蜘蛛を室に入れるようですので,この巣はヒメベッコウバチの巣ではないのかもしれません.4つの室の中では,劇的なドラ
マが進行したようです.ダニが寄生蜂の幼虫の用心棒になる例もホームページにはありました.
10:35になってしまい,急いで出発しました.大坂池の土手のアンズ(杏,バラ科)をまず観察しました.徒長枝に花芽は
なく,2年目の枝に花芽がつ
いているのを確認しました.次に,地面に張り付くように葉を伸ばしたロ
ゼット状のタンポポ(蒲公英,キク科)を観察しました.
「野草のロゼットハンドブック (亀田龍吉 著,文一総合出版)」が出ていることが紹介されました.
次に,ウメモドキ(梅擬,モチノキ科)とタ ラヨウ(多羅葉,モチノキ科)を観察しました.タラヨウには赤い実もついていました.痩せ地で,根が深くはれないので,樹形が 異様であるという説明がありました.説明中に,カワセミ(翡 翠,カワセミ科)が大坂池の杭にじっと止まっているのを見つけて観察しました.
大坂池から農道を少し東に進んで,上り斜面を北に向かって藪こぎを始めました.下草などを刈って整備を
した日当たりを良く
した場所で,新芽を付けたコバノミツバツツジ(小葉三葉躑躅,ツツジ科)を観察しました.日当たりがよくなったので,この春には綺麗な花が咲くと思いま
す.メジロ(目白,メジロ科)の作りかけの巣
が落ちているのを見つけて観察しました.周辺の低木に松の落葉が枝にたくさん引っかかっていました.登りきっ
た所で,陸軍の石柱を見つけ
ました.周辺は以前より,木々に囲まれており石柱は見つけにくくなっていました.ここで,木の幹に止まったクサカゲロウ(草蜻
蛉,クサカゲロウ科)を大きくしたような成虫を見つけて,フィルムケースに入れて観察しました.クサカゲロウにしては大きく,真ん中がくびれた胴体(頭,
胸,腹)は定規で測ると19mm長で,大きな羽を入れると28mm長でした.羽にメッシュが入り,黒い点もありました.成虫越冬しており,ホシウスバカゲ
ロウ(星薄羽蜉蝣,ウスバカゲロウ科)かミドリヒメカゲロウ(緑姫蜻蛉,ヒメカゲロウ科)ではという意見が出ましたが,大きさが違うので,写真を撮り,後
で昆虫に詳しい女性参加者に同定してもらうことにしました.その結果,ア
ミメクサカゲロウ(網目草蜻蛉,クサカゲロウ科)だろうということを後で知らせて
頂きました.
ここで,アルコール棒温度計で気温を測りました.参加者に気温が何度かという問があり,8℃や10℃という回答がでまし
た.測定値は6℃でした.フランスから来ている女性参加者に,フランスでの気温の測り方を聞きましたが,はっきりした回答はありませんでした.日本では,
以前は1.5mの高さの百葉箱(スティーブンソン型)で測定していました.WMO(世界気象機関)での取り決めによると,地上気象観測では,気温は地表面
上1.25〜2.0mの高さで観測することを基準としており,気象庁で測定される気温は,地上1.5mの高さを基準にしています.気象庁のホームページに
よると百葉箱は,イギリスで開発され,日本では1874年にイギリスから導入したそうです.1993年1月,気象庁は自動観測機器の普及に伴い百葉箱での
観測を廃止しました.現在,気象台・アメダス観測点では,地上高1.5mのファン付きの通風筒に入れられた電気式温度計(白金抵抗温度計)により測定して
いるそうです.
感想会は里山の家で行いました.使われた地図が,古いという指摘が地図の製作者からありました.黒糖ときなこのクッキーや
台湾土産の竹とタロイモ(Taro,サトイモ科)の2種のクッキーが供されました.久しぶりに参加して気持ち良く,特に落ち葉のふわふわした感覚がよかっ
たという感想が最初に出ました.皆で回ると,観察したものの名前がすぐに分かってよいという感想も出ました.ドロバチの巣に寄生したハエは,泥でできた巣
は鍵のかかった部屋のようであり,どうやって侵入して産卵したのかという疑問がでました.ホームページなどで調べると,蜂が泥の巣を1室ずつ造り,餌の蜘
蛛を麻痺させて中に入れてから産卵して,蓋用の泥を取りに行くわずかの隙間を狙って,寄生バエは卵を産みつけるようです.寄生バエの卵は,寄生蜂の卵より
早く孵化して,餌の蜘蛛だけでなく寄生蜂の卵も食べてしまうようです.蜘蛛の乾燥死骸しかなかった室は,産卵を忘れたのではという意見もでましたが,巣の
製作は1室ずつ行うので,そのようなことは考えられなく,何らかの理由で卵から幼虫が孵化しなかったのではないかと思います.春を待つ冬の快適な観察会に
なりました. |
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ファイル名 | 掲載日 | ヒット | |
14年1月度の観察記録
14年1月度の印刷用観察記録です。
| 2014-6-14 | 299 | |
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