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2月度の観察記録
2017年2月度の観察記録です

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風は少し冷たかったですが,前日の寒さとは違って,晴天で気持ちの良い日でした.スイレン(睡蓮,スイレン科)の葉がすっかりなくなった新池ではたくさんの水鳥が水面にいました.数えてみると,オオバン(大鷭,クイナ科)5羽,ヒドリガモ(緋鳥鴨,カモ科)12羽,コガモ(小鴨,カモ科)20羽でした.これ以外にも,水面に張り出した樹木の下に隠れている水鳥もいるようでした.新池土手の2本の大きなセンダン(栴檀,センダン科)は,片方は実をすっかり落としてしまっており,もう1方はまだ先端に15mm大の実を多くつけていました.東星ふれあい広場では,ドバト(土鳩,ハト科)12羽,ムクドリ(椋鳥,ムクドリ科)8羽,スズメ(雀,スズメ科)36羽がそれぞれ場所を違えて,地面から何かをついばんでいました.
参加者は,今年の4月に高校に進学する昆虫大好き少年を入れて大人20名でした.
大坂池のアシ(葦,イネ科)には,シジュウカラ(四十雀,シジュウカラ科)が4羽来ていて,しきりに鳴いていました.コサギ(小鷺,サギ科)も1羽岸にいました.大坂池横の畑あとに植えられた紅梅は花をつけていましたが,白梅はまだ大きなつぼみでした.

コサギ 紅梅

里山の家の中で集合して観察会を始めました.まず,先月の報告を皆で見ました.アサギマダラ(浅葱斑,タテハチョウ科)の幼虫の写真に関連して,アサギマダラが山に多いということと,アサギネット(大阪市立自然史博物館)がマーキングによる移動調査の結果を載せていることの紹介がありました.チッチゼミ(ちっち蝉,セミ科)の抜け殻の写真を見て,名古屋市の絶滅危惧種に指定されていても,本山の桃巌寺や平和公園にはまだ生息しているという報告がありました.ツクツクボウシ(寒蝉,セミ科)より小さく,聞きなれない声で秋遅くに鳴くので,セミと気づかない人が多いのではということでした.
木喰虫が入った穴のある幹の写真を見て,カシノナガキクイムシ(樫長木喰虫,ナガキクイムシ科)によるナラ枯れが話題となり,大きなコナラ(小楢,ブナ科)を中心に発生し,それらが枯れると次第に収束するということでした.
無縁仏近くのイスノキ(柞,マンサク科)の種々の虫こぶ(英:gall)を持ってきた参加者から,それらの説明を聞きました.イスノキの葉にポツポツと半球形のヤノイスアブラムシ(やの柞油虫,アブラムシ科)によってできるイスノハタマフシ(柞葉五倍子)の紹介がまずありました.モンゼンイスアブラムシ(もんぜん柞油虫,アブラムシ科)の刺激によってできるイスノチャイロオオタマフシ(柞茶色大五倍子)は,5cm大の大きい虫こぶで,1〜2つの5mm大の穴があいており,その穴に収まる蓋も紹介されました.成虫になったモンゼンイスアブラムシが,どのように虫こぶに穴を開けるか不思議でした.また,この虫こぶの中で1000〜2000匹のアブラムシが発生するといわれており,虫こぶの中に糞がないということでした.イスノキに糞は吸収され,共生関係になっているという説明でした.この穴のあいた虫こぶは,ヒョンの木の笛として昔から親しまれたものです.イスノキには,種々の虫によって10種類くらいの虫こぶができ,虫こぶのないイスノキを探すのは難しいようです.イスノキの実にもイスノキモンオナガコバチ(柞紋尾長小蜂,オナガコバチ科)による小さな穴があいていました.このコバチはヤツデ(八手,ウコギ科)の葉の裏で越冬するという説明がありました.イヌツゲタマバエ(犬黄楊玉蠅,タマバエ科)による虫こぶも手に持って説明がありました.蜂に擬態しているヒメアトスカシバ(姫後透翅蛾,スカシバガ科)によってヘクソカヅラ(屁糞蔓,アカネ科)の茎にできた虫こぶの紹介もありました.

【外部リンク】モンゼンイスアブラムシ(森林総合研究所九州支所)

【外部リンク】穴がない虫こぶの謎解明(産総研)

イスノキの虫こぶ イスノチャイロオオタマフシ 穴のあいたイスノキの実 ヒメアトスカジバによる虫こぶ

先月アベマキの幹で観察したクヌギカメムシ(欅亀虫,クヌギカメムシ科)の卵はゼリーで覆われており,これはガラクタン(galactan)という多糖類であり,幼虫が三齢になるまでの餌になるという説明がありました.
この後,今回の冬越しの虫の観察の講師をする昆虫の研究者である参加者から,133種の昆虫等のリストとそれぞれの発見しにくさから与えられた1〜100点の得点一覧表の紙が配布されました.
10時を大幅に超えて里山の家を出発しました.丁度,カエル池の近くに雌のカワセミ(翡翠,カワセミ科)が1羽来ていて,写真を撮りました.里山の家に隣接しているケヤキ(欅,ニレ科)の樹皮をめくって,蜘蛛類の巣をまず見つけました.白い蜘蛛の糸で作られた4部屋の巣でした.ケヤキの樹皮は角質なので,とってもよいという参加者がいました.越冬している虫にとっては大迷惑だという指摘もありました.

カワセミ 蜘蛛類の巣

次に,ヤナギにぶら下がったオオミノガ(大蓑蛾,ミノガ科)の蓑を見つけました.最近,またよく見るようになったという感想が出ました.コメツキムシ(米搗き虫,コメツキムシ科)のような昆虫も近くで見つけました.
オタマジャクシ池の水中のアカガエル(赤蛙,アカガエル科)の3つの卵塊を観察しました.もう春はそこまで来ているようでした.次に,樹木の幹の上を移動している小さな蟻を見つけました.これもリストに載っており得点がありました.ハンノキ(榛の木,カバノキ科)についたミドリシジミ(緑小灰蝶,シジミチョウ科)の小さな卵を観察しました.今回の講師が,あらかじめマジックで見つけやすいように幹に○が描いてありました.ミドリシジミは,若木の人の目線の高さ近くに卵を産むという説明がありました.他のハンノキの幹に縦に並んだ2つのミドリシジミの卵も見つけて写真を撮りました.

オオミノガの蓑 アカガエルの卵塊 ミドリシジミの卵

チョウセンカマキリ(朝鮮蟷螂,カマキリ科)とオオカマキリ(大蟷螂,カマキリ科)の卵鞘も見つけました.イボタノキ(疣取木,モクセイ科)には,たくさんの黒い実がついていました.ハラビロカマキリ(腹広蟷螂,カマキリ科)の卵鞘も近くで見つけました.ゴマダラカミキリ(胡麻斑天牛,カミキリムシ科)が幹に入った柳の木を観察しました.ここで,カエル池にいたカワセミが,また姿を現しました.

チョウセンカマキリの卵鞘 オオカマキリの卵鞘 ハラビロカマキリの卵鞘

先月観察したアベマキ(阿部槇,ブナ科)の樹皮のひだの間のクヌギカメムシの卵から幼虫が出ているのを観察しました.近くのアベマキの幹で,クヌギカメムシの死骸も見つけました.産卵後に死んだのだろうということになりました.このときに,樹間からコゲラの鳴き声が聞こえました.林の中のヤツデの2枚の葉の裏にヒメナガサシガメ(姫長刺亀,サシガメ科)の細長い3cm長くらいの幼虫を見つけて写真を撮りました.近くでエナガ(柄長,エナガ科)3羽が枝を渡っていきました.足下の落葉の上で数匹のモリチャバネゴキブリ(森茶翅蜚?,チャバネゴキブリ科)が活発に動いていました.

ヒメナガサシガメの幼虫 モリチャバネゴキブリ

道端のトウネズミモチ(唐鼠黐,モクセイ科)を観察しました.葉が透けて葉脈が見えるので「透(とう)鼠黐」と覚えると良いと言う参加者がいました.特定外来種の指定を受けていますが,これだけ広がっているので駆除はほとんど不可能だと思います.トウネズミモチの先端の葉が丸まっており,開いてみると蛾の幼虫がいました.多分,毒蛾だろうということになりました.リストの102番のヒロヘリアオイラガ(広縁青毒棘蛾,イラガ科)の幼虫ではという参加者がいました.別の樹木の洞に小さな蝸牛(かたつむり)が集まって越冬しているのを見つけました.これもリストの中にありました.
1本の紅梅の枝にアカボシテントウ(赤星天道,テントウムシ科)の抜け殻が密集しているのを見つけました.抜け殻の端に1匹の成虫のアカボシテントウがいました.他の枝で2匹の越冬中のアカボシテントウも見つけました.

トウネズミモチ アカボシテントウの抜け殻 アカボシテントウ

ヒサカキ(姫榊,ツバキ科)にシンジュサン(神樹蚕,ヤママユガ科)のまゆが2つ付いていました.食草はクロガネモチ(黒鉄黐,モチノキ科)なので,近くのクロガネモチを観察して,ここでもシンジュサンのまゆを見つけました.別の木の幹で,シンジュキノカワガ(神樹木皮蛾,コブガ科)のまゆ殻を見つけました.また,マルバヤナギ(丸葉柳,ヤナギ科)でコムラサキ(小紫,タテハチョウ科)の越冬中の幼虫を2匹見つけました.じっと見ていても全く動きませんでした.

ヒサカキについたシンジュサンのまゆ クロガネモチについたシンジュサンのまゆ

小さな蜂のような蠅が木の幹にとまっていました.風が吹いた時に,翅が2枚であることを確認して,蠅と断定しました.近くで,3種の椿の花を観察しました.ヤブツバキ(藪椿,ツバキ科)の花は,筒状をしており,オトメツバキ(乙女椿,ツバキ科)は,ピンクの八重の花を咲かせていました.もう1つは花は平開しており,サザンカ(山茶花,ツバキ科)の可能性が高いものでした.
葉をすべて落として枝だけになったコムラサキ(小紫,クマツヅラ科)についたオオカマキリの卵鞘を見つけました.雌のジョウビタキ(尉鶲,ヒタキ科)が周辺の枝から枝に飛んで行きました.

ヤブツバキの花 オトメツバキの花

カラタチ(枳,ミカン科)を観察しましたが,越冬中の虫はいませんでした.刺があるので,蝶は奥の方には産卵しないという説明がありました.最近,クロアゲハ(黒揚羽蝶,アゲハチョウ科)は少なく,ナガサキアゲハ(長崎揚羽蝶,アゲハチョウ科)が多くなったという感想が出ました.キアゲハ(黄揚羽蝶,アゲハチョウ科)はミツバ(三葉,セリ科)などの幼虫の食草があるので,減っていないということでした.昆虫大好き少年がクダマキモドキ(管巻擬,キリギリス科)の蝕痕を見つけました.帰り道で,春を告げる青い花をつけたオオイヌノフグリ(大犬の陰嚢,オオバコ科)を見つけました.

オオイヌノフグリ

数株の大きなススキ(芒,イネ科)の中のキリギリス(螽斯,キリギリス科)や天道虫などの越冬中の虫を皆で探しましたが,何も見つかりませんでした.ここで,12時になってしまい,別件があったので,私はここで別れました.後で,E-mailでマテバシイ(全手葉椎,ブナ科)の重なった葉をそっとめくると葉裏にとまっていたハイイロリンガ(灰色実蛾,コブガ科)を見つけたということで,写真を送ってもらいました.
すでに,春がそこまで来ていることを実感した観察会になりました.

観察項目: シジュウカラ,コサギ,イスノキの虫こぶ(イスノハタマフシ,イスノチャイロオオタマフシ),カワセミ,ケヤキ,クモ類の巣,オオミノガ,コメツキムシ?,アカガエルの卵塊,ハンノキ,ミドリシジミの卵,チョウセンカマキリの卵鞘,オオカマキリの卵鞘,イボタノキ,ハラビロカマキリの卵鞘,アベマキ,クヌギカメムシの幼虫,死んだクヌギカメムシ,ヤツデ,ヒメナガサシガメの幼虫,モリチャバネゴキブリ,トウネズミモチ,ヒロヘリアオイラガ,アカボシテントウ,ヒサカキ,シンジュサンのまゆ,クロガネモチ,シンジュキノカワガのまゆ殻,マルバヤナギ,コムラサキ(タテハチョウ科),ヤブツバキ,オトメツバキ,サザンカ,コムラサキ(クマツヅラ科),ジョウビタキ,カラタチ,オオイヌノフグリ,ススキ,マテバシイ,ハイイロリンガ

文・写真:伊藤義人 監修:瀧川正子

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2017-3-5 233

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