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2008年 > 2月度の観察記録
2月度の観察記録
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 前日の雪が積もり一面が真っ白の中での観察会になりました.こんなに積もった雪の中での観察会は記憶にありません.気温は比較的高く,日差しの中では非常に気持ちのよい日和でした.ただし,長靴を履いてきた参加者は問題なかったですが,大半の参加者はズック靴で,30分も歩くと靴だけでなく靴下もぬれて気持ちの悪い思いをしました.名古屋の降雪量は新聞では13cmでしたが,集合場所では,参加した女の子の目測で約8.5cmでした.新池は水面の端が凍っていて,周辺の雪景色と相まって静謐な空間を作っていました.新池の水面には数羽のカモ(鴨)がいました.水面高く大きな1羽のアオサギ(青鷺,サギ科)がゆっくりと東山公園の方へ飛んでいきました.また,新池の土手のセンダン(栴檀,センダン科)には,クリーム色の熟した実を食べるために数十羽のムクドリ(椋鳥,ムクドリ科)とヒヨドリ(鵯,ヒヨドリ科)が来ていました.集合場所の新池北の公園のイチョウ(銀杏,イチョウ科)の木の尖端にも20羽のムクドリがとまっていました.このムクドリが飛び去った後で,シジュウカラ(四十雀,シジュウカラ科)が1羽来て,大きな声でさえずっていました.
 参加者は,出発時に子供4名と大人22名でしたが,途中でさらに数名の参加がありました.

集合場所の公園 雪景色の平和公園入口 センダンの実を食べるヒヨドリとムクドリ

 まず,参加者が平和公園内で見つけて持って来た黄色いヤママユ(ガ)(山繭蛾または天蚕,ヤママユガ科)の繭を観察しました.普通は,もっと緑っぽいのではという感想が出ました.この種のものは,もはや貴重品になっています.

   【外部リンク】ヤママユ飼育(きのこの森)

 次に,ある参加者が牧野ヶ池で見つけて持ってきたイシガメ(石亀,イシガメ科)の背と腹の甲羅を観察しました.甲羅の後縁に切れ込みがあるのがイシガメの特徴だそうです.背の甲羅の裏側に,背骨が斜めの棒状の骨で立体屋根トラス形状になって一体化していました.甲羅の裏側は,初めて見た人が大半であったと思います.甲羅は,肋骨が変化して板状になり,その上を表皮が変化した硬いもので覆っている構造のようです.イシガメは,雑食性で,昆虫,エビ,小魚だけでなく草や果物も食べるようです.亀の年齢は,腹側の白い甲羅にある年輪のような筋を数えると分かるそうですが,このカメの甲羅はすり切れていて分かりませんでした.そこで,背の甲羅の1つの甲板の中の筋の数を数えて,20歳以上だと判定されました.自宅でイシガメを飼っている人によると,同じくらいの大きさで約30歳だそうです.イシガメは,歳をとってもそんなに大きくならないようですが,50年〜100年程度生きるので,飼い始める人は若い人の方がよいということになりました.

   【外部リンク】カメの甲羅も肋骨(JT生命誌研究館)

 参加者が持ってきたものの最後として,2つの3cm大のソテツ(蘇鉄,ソテツ科)の実を観察しました.表面の赤い果肉が取れていたので,果肉の取れた銀杏を大きくしたような形と色でした.普通は,あまり見かけないので持ってきたそうです.この説明を聞いているときに,新池の水面上を約60羽のムクドリが,説明の邪魔をするかのように鳴きながら横切って行きました.

ヤママユの繭 イシガメの甲羅 背の甲羅の裏側 ソテツの実

 次に,先月の記録を皆で見ました.先月,観察のために採取したヒラタケ(平茸,ヒラタケ科)はみそ汁に入れて食べたという報告がありました.ソシンロウバイ(素芯蝋梅,ロウバイ科)の花は,黄色一色で寂しいという感想も出ました.持ち帰ったドロバチ(泥蜂,ドロバチ科)の幼虫は,まだ変化はないそうです.乾燥しないように工夫しているそうです.
 ヒメカンアオイ(姫寒葵,ウマノスズクサ科)の花と葉を数えるのは,来月にして,今回は雪景色を楽しみ樹木の冬芽を観察することにして出発しました.葉を落とした樹木の名前を特定するために,葉痕の一覧をコピーしたものが配られました.

 元清風荘横の雪に覆われた歩道の上に細長いハンノキ(榛の木,カバノキ科)の雄花が沢山落ちていました.そこで,その上に枝を張り出しているハンノキの雄花と雌花をじっくりと観察しました.既に受粉しているということでした.

ハンノキの雄花と雌花

 坂を登って平和公園に入りました.赤土が見える斜面の所で,霜柱を求めて子供達が中心になって登りましたが,残念ながら霜柱はみつかりませんでした.
 小径脇の小さなネジキ(捩木,ツツジ科)の木の冬芽を観察しました.一般に,ネジキの新枝はもっと赤いという感想がでました.近くのヌルデ(白膠木,ウルシ科)の新芽も観察しました. 
 雪の上に小さな円形の足跡が直線状にありました.男の子に,何の足跡かを尋ねると,ウサギやシロクマ(?)という回答がでました.大きさからすると犬の足跡でした.どちら向きに進んだかということで,円筒形の足跡の端が蹴られて削れたようになっている方向に向かっているということでした.ウサギの足跡の特徴について話す参加者もいました.その後で,男の子は落ちていた枝を使って小さな穴を点々と雪につけて,おもしろがって「何の足跡でしょう?」と大人の参加者に質問をしていました.
 次に,ヤマハゼ(山黄櫨,ウルシ科)を見つけて,残っている実を食べて,冬芽も観察しました.ヤマハゼの実は,塩をふきますが,今回のヤマハゼは,既に塩は取れてしまっていて,そんなにしょっぱくなかったようです.

ネジキの新芽 ヌルデの新芽 ヤマハゼの実 ヤマハゼの新芽

 小径脇に背の低いユズリハ(譲り葉,ユズリハ科)の木がありました.葉の数が少なく,譲り葉の様相をしていませんでした.アラカシ(粗樫,ブナ科)の枝に,約1mm径の蛾の卵が5つ並んでいるのを見つけた参加者がいました.そのすぐ後で,近くの別のアラカシの冬芽を観察しました.新芽は硬くて密度が大きいので水分の蒸発を止めるという説明に対して,密度と水分蒸発は関係ないのではという反論が出ました.米粒大の冬芽の芽鱗を一枚ずつはがして,19枚まで数えた参加者がいました.また,ナイフで新芽を縦に切断して,断面を観察しました.芽鱗を何枚も重ね着をするのは,北方系の植物の特徴だそうです.
 枝の先が赤いネジキを見つけて,再度冬芽を観察しているときに,樹上の雪が落ちて,背中に入り大きな声を出した参加者がいました.その近くのイロハモミジ(伊呂波椛,カエデ科)の赤い細い新枝を観察しました.枯葉が落ちていたのですぐにイロハモミジだと分かりました.イロハモミジの枝は,下向きには出ないと言う話がありました.コナラの新枝の尖端の5角垂形の卵形の冬芽も観察しました.褐色の芽鱗は5列に並び断面は5角形であること分かりました.

   【外部リンク】コナラ(木のぬくもり・森のぬくもり)

アラカシについていたガの卵 イロハモミジの新芽

 NTT横の平和公園西端まで行き,御嶽山を見ようとしましたが,けむっていて見えませんでした.日本人の美意識は,雲に隠れた名月を受け入れるように,見えない御嶽山も愛でればよいという話もでました.すぐ横の斜面は,私有地で樹木がすっかり切られ,西方の町並みは見やすくなっていましたが,また自然が少なくなったように感じました.
 小径を歩いて行くと,両側に青いしみが雪の上に点々とありました.最初は,人間がインクでも付けたのかということでしたが,最終的には鳥のフンだろうということになりました.サワフタギ(沢蓋木,ハイノキ科)などの青い実を食べたヤマガラ(山雀,シュジュウカラ科)などの野鳥のフンだろうということでした.周辺でコゲラ(小啄木鳥,キツツキ科)がさかんに鳴いていました.

   【外部リンク】鳥・撮り・トリミング

 パンパスグラスのある場所の向への林で,オオバヤシャブシ(大葉夜叉五倍子,カバノキ科)の雄花と雌花を観察しました.雄花はすぐに分かりましたが,小さな雌花と葉芽は,非常に似ていて区別が非常に難しく,図鑑などを参考にして,尖端が尖っていないのが雌花ということになりました.近くの枯れた切り株についたカワラタケ(瓦茸,タコウキン科)も観察しました.
 芝生広場に向かう道で,クリ(栗,ブナ科),カキ(柿,カキノキ科)およびコブシ(辛夷,モクレン科)の冬芽も観察しました.クリの新芽は,栗の実に似ていました.コブシの4cm長くらいの花芽は,産毛のようなものを表面にまとっていました.葉芽の方は,ずっと小さくまだ硬い感じでした.

オオバヤシャブシの雄花と雌花 クリの新芽と葉痕 コブシの花芽

 雪の重みで倒れていたカンチク(寒竹,イネ科)を観察しました.名前は竹ですが,皮(稈鞘,かんしょう)がついているので,笹だということになりました.尖端は食べられるため,既に取られたものも多くありました.
 フジ(藤,マメ科)の枯れ枝が樹上にまとわりついているキンモクセイ(金木犀,モクセイ科)の冬芽を観察しましが,特に変わった特徴はありませんでした.
 最後に,白い花を付けたツバキ(椿,ツバキ科)の上のクズ(葛,マメ科)の葉痕を観察しました.ハサミでクズの枝を切って,昨年と同じように美人に見える葉痕を捜しました.種々の葉痕の中で,クズの葉痕は最も人気のあるものですが,人間や猿の顔など種々のものに見えることが理由のようです.

雪の重みで倒れたカンチク クズの葉痕

 座って弁当を食べる場所がなかったので,立ったまま,そのツバキの横で感想会を行いました.積もった雪の中でしたが,日差しがあり,ぽかぽかと暖かい場所でした.我々がすぐ近くにいるのに,1羽の鮮やかな黄緑色のメジロ(目白,メジロ科)がツバキの白い花の蜜を吸いに来ました.メジロは,ツバキの花から蜜を吸うため,体をくるくると回転させたので,特徴のある白地につぶらな黒目と背中や腹などもじっくりと観察できました.

椿の蜜を吸うメジロ 感想会

 靴だけでなく靴下までぬれましたが,雪だるま造りなどの遊びができて良かったというのが子供達の感想でした.雪を楽しむかどうかで,子供と大人は別れるという話になりましたが,それでは観察会の参加者は皆子供ということになってしまうと言う人もいました.春が近いことを実感したという感想も多く出ました.カサカサと新雪を踏んで歩くのは心地よく,雪の降った後の森は大変楽しいという感想もありました.ただし,私も含めて大人達は,転ばないように力を入れて歩いたため脚が疲れました.
 子供達が雪と遊び,雪の中ならではの発見もあり,春の間近なのを感じた楽しい観察会になりました.

雪だるまを造る子供達 雪で遊ぶ子供達

観察項目:ムクドリ,ヒヨドリ,シジュウカラ,イシガメの甲羅,ヤママユの繭,ソテツの実,ハンノキの雄花と雌花,ネジキの冬芽,ヌルデの冬芽,ヤマハゼの冬芽,ユズリハ,アラカシ,モミジの冬芽,コナラの冬芽,オオバヤシャブシ,鳥の青いフン,クリの葉痕と冬芽,コブシの花芽と葉芽,カンチク,カキ,キンモクセイ,フジ,クズの冬芽,ツバキ,メジロ(概ね観察順)

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子

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2008-7-19 970

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