2020年 9月 13日(日)9:30〜12:00 作成:田畑恭子 監修:瀧川正子
またしても雨の中の観察会です。でも9月になっても続いていた厳しい残暑はようやく落ち着き、聞こえてくるセミの声もツクツクボウシだけになりました。途中から雨は上がり、たくさんの生きものに出会いました。 いつもと同じように中道を歩き始めました。左手のアベマキの大木の根元に最近よくスズメバチが来ているとの情報があり、用心しながら近づくとやはり1頭のオオスズメバチがいました。複数が出入りしているような様子はなかったので巣があるわけではないようでしたが、刺激しないようにと注意が促されました。草原のシマスズメノヒエの穂にはナナホシテントウが来ていました。テントウムシに詳しい参加者から麦芽を食べていると説明がありました。麦芽が発酵して甘くなるとのことで、舐めてみましたが甘さは感じられませんでした。その時1頭のキタテハがやってきて、参加者の洋服にとまったり帽子にとまったりと飛び回っていました。やがて一人の参加者の手のひらにとまったので、観察してみると口吻を伸ばして皮膚の汗を吸い取ろうとしているように見えました。
昆虫好きの少年がウスバキトンボを捕らえました。そこでトンボに詳しい少年からこのトンボの生態について説明がありました。ウスバキトンボは渡りをするトンボで、遠くは外国から渡って来ることもあり、産卵して世代交代もするけれども、寒さに弱くヤゴで越冬することができないため定着はしていないとのことでした。続いて捕らえたオオシオカラトンボについてはシオカラトンボとの違いが説明されました。オオシオカラトンボの方が体色の青味が強いことはこの観察会でもよく言われていますが、オオシオカラトンボは顔が黒いのが特徴と教えてくれました。足元の草むらにお腹の太いメスのヨモギエダシャクがとまっていました。初めは逃げられないよう慎重に写真を撮っていましたが、とまっている草を動かしてもほとんど移動しないので、お腹が重いせいで動きが悪いのではと予想しました。
つどいの丘ではコオロギを探しました。子どもたちに「コオロギを捕まえて」と声をかけると器用に次々と捕まえていました。エンマコオロギはほかのコオロギに比べると体が大きいのでわかりやすく、その他のコオロギは顔を見て同定されていました。小さめのコオロギはツヅレサセコオロギが最も多く捕らえられていました。
せせらぎ沿いにアメリカタカサブロウの花が咲いていました。その場では在来種のタカサブロウとの区別がわかりませんでしたが、あとで調べると実の特徴などから南米原産のアメリカタカサブロウとわかりました。またその近くにはミントが群生していて、葉をちぎって匂いを嗅ぎ、その一瞬のさわやかな香りを楽しみました。この日も盛んに鳴き声が聞こえて来ていたツクツクボウシですが、近くの木の幹で複数の抜け殻が見つかりました。
ここで少し時間をかけてツユクサを観察しました。ツユクサの茎についている半円状の袋のようなものは「苞(ほう)」と言って、ここから花が出て咲きます。苞を開いてみるとこれから咲くつぼみや終わった花や実が収納されていました。ツユクサは苞から花が伸び、咲き終わると再び苞に取り込まれるとのことでした。別の苞を観察すると花が2つ咲いているものもあり、その2つのうちの片方はめしべが見られるもの(両性花)、もう片方はめしべが見当たらないもの(雄花)でした。苞の中身にいろいろなパターンがあるのを観察しているうちに、苞の先に不思議な模様の卵がついたものが見つかりました。その場では何の卵かわかりませんでしたが、調べるとタケカレハの卵とわかりました。タケカレハは幼虫や繭に毒があり、残念ながら飼育には向かないようです。
水辺でヒメタイコウチが見つかりました。セミの仲間の昆虫であること、愛知県では準絶滅危惧種に指定されているが東山の森では普通に見られること、水生昆虫の仲間であるが水の中ではおぼれてしまうこと、などの説明を聞きました。田んぼに向かう道沿いのクズの葉の裏に大きなイオウイロハシリグモが隠れていました。葉を裏返してもあまり動かず、よく見ると卵嚢を抱いているのがわかりました。中道の南側にはシロバナマンジュシャゲが咲いていました。ヒガンバナの色違いかと思っていましたがそうではなく、ヒガンバナの雑種という見方が定説のようです。
さらに進んでナンバンギセルを見に行きました。くらしの森では長い間姿を消していたものが1年ほど前にたまたま見つかり、去年の9月の自然観察会で紹介されました。去年よりも株がたくさん見つかりましたが、もう少し風が通るようになるといいと言う人もいました。果樹園エリアのクリの木には実がたくさんついていました。男性の参加者が木を揺らすと青いイガがいくつか落ちました。落ちたイガはまだ開いていないものがほとんどで、開いてみると中の実は白い色をしていました。近くにはタヌキノカミソリが咲いていて、花びらに筋の入らないナツズイセンとの違いが確認されました。こちらもヒガンバナ科の植物で毒があり花のつき方はシロバナマンジュシャゲとよく似ています。
この日はバッタの仲間も多く見つかりました。おなじみのショウリョウバッタやオンブバッタのほかに背中にイボのあるイボバッタ、胸の両側にトゲのあるトゲヒシバッタなどが子どもたちによって捕らえられました。ササキリの仲間はその場ではオナガササキリと言われましたが、のちにホシササキリとわかりました。
今月はいつもより遠くまで歩いたので途中で正午となり、里山の家まで戻らず解散しました。その頃にはすっかり天候も回復して、帰り道でもみんな思い思いの観察を楽しんだようです。新型コロナの新規感染者数は少なめながらも一定数が続いており、今後も注意が必要です。
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9月度の観察記録
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