2020年 12月 13日(日)9:30〜12:00 作成:田畑恭子 監修:瀧川正子 上空にこの冬最大の寒気が近づき、東山の森は数日内の降雪を予感させる冷たい空気に包まれていました。20年以上続いていた芋煮会は中止という形で、新型コロナウイルスに振り回された1年の終わりを迎えました。
最初に新池から除去したスイレンの根を観察しました。スイレンは1年で1mを超える根を張り、そこから新たな芽を出してあっという間に池一面に葉を茂らせるので、池を利用するカワセミやカイツブリ、イトトンボなどの生きものにとっては迷惑な存在です。生物多様性を維持するため、新池では以前からスイレンの抜去をおこなってきました。中道を歩き始めてすぐ目に入った白いサギは、立ち枯れた木の上でしばらくじっとしていましたが、飛び立ったその姿を見てチュウサギであることが指摘されました。よく似ているコサギの足の指が黄色いのに対しチュウサギの指は黒いので識別できるそうです。中道沿いのツバキでは、越冬中のウラギンシジミを観察しました。去年も同じ木でウラギンシジミが越冬しているのをこの自然観察会で観察しました。チョウにとって冬越しの好条件がよほど揃っているのでしょう。
中道を少し進んだところでコナラの樹皮にたかっているクリオオアブラムシを子どもが見つけました。翅のないのはメスで、無数の卵も確認できました。メスはつやのない黒色、卵はつやのある暗褐色をしていました。近くには翅を持ったオスも見られました。そのすぐ近くで小さなミノムシを見つけた子どももいました。
収穫の終わった畑では、土の中に混ざった小石をふるいで取り除いて柔らかい土を作る作業をしている人がいました。近くのU字溝では虫好きの参加者たちが積もった落ち葉をひっくり返してその中に潜むゴミムシの仲間を次々と捕らえていました。ゴミムシにはたくさんの種類があり、その場では種まではなかなか同定できないとのことでした。落ち葉の山からはゲジも出てきて、あまり動かないので足の数を数えてみました。14対までは数えることができました。
畑の堆肥を作っている場所の近くで、カブトムシの幼虫の死骸がみつかりました。死んだ理由はわかりませんでしたが、土の上にフンがある場所を掘るのが探す時の目印と教えられた子どもたちがほかにもいないか熱心に探しました。しかし残念ながら見つけることはできませんでした。畑では小さな花をつけた植物が紹介されました。その名もハキダメギクといい、そんな名前を付けられてかわいそうという声があがりました。参加者の一人が落ちていた朽木を割ってコクワガタの幼虫を探し出したのを見て、子どもたちは興味津々でのぞきこんでいました。
ソシンロウバイの木を観察すると、つぼみはすでに黄色く色づき、少し膨らみ始めているようにも見えました。今年の偽果は風化が進み中が透けて見えました。手に取って振るとカラカラと音がして、中を開けるとたくさんの種が入っていました。何かに食べられている種もあり、よく見ると小さなイモムシがくっついていました。
シキミの木を観察しました。図鑑によれば花の時期は3〜4月とのことですが、高い位置の枝にいくつかの花が咲いていました。そして果実には毒があることが紹介されました。目の高さの葉の裏には5mmほどの大きさのシキミグンバイの成虫が見られました。シキミグンバイはカメムシの仲間で、成虫も幼虫もシキミの葉の汁を吸って生活するそうです。道端のイロハモミジは美しく色づいた葉がまだまだ残っていて参加者の目を愉しませてくれました。
冬越しをする昆虫を探して雑木林の中に入ると、センリョウやマンリョウの赤い実が目立ちました。センリョウの仲間には黄色い実をつけるキミノセンリョウがあり、数は少なめながらところどころで見られました。またタカノツメの黄葉もあちらこちらで目に入りました。倒木を動かすと湿った土の上でヒメタイコウチが越冬していました。同じ木の下に何頭も見つかり、越冬に適した条件が整っているのだろうと参加者が話していました。
この日は前日に見つけた越冬中のタテジマカミキリを紹介しようとした参加者がいたのですが、朝方の雨のせいか、いなくなっていました。そのためみんなで探してみようということになり、まずタテジマカミキリの食草であり越冬の場所にも選ばれるカクレミノの特徴を覚えました。そして森の中でカクレミノを探し、そこにタテジマカミキリがついていないか次々と見て回りました。探すときの目印である食痕はいくつか見られたものの、なかなかカミキリを見つけることができず諦めムードが漂い始めた頃、別の場所で探していた参加者から連絡が入り、みんなで移動しました。しかし見つかったのは残念ながらボーベリア菌に侵されて絶命したタテジマカミキリでした。
今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、3月から5月までと8月の観察会は中止となりました。まだまだ先の見えない状況が続いていますが、来年も感染予防に注意を払いながらできる範囲で活動を続け、平和公園の生きものたちの息吹を感じたいと思います。
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| 2021-1-5 | 181 | |
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