2022年 2月 13日(日)9:30〜12:00 作成:田畑恭子 監修:瀧川正子 愛知県のまん延防止等重点措置は3月6日までの延期が決まり、今月は自然観察会を中止することとなりました、以下を2022年2月の記録として残します。
冬を越す森の生きものの様子を確認しながら進みました。例年2月の観察会ではオタマジャクシ池でニホンアカガエルの卵を観察してきましたが、今年はまだ一つも卵塊が見当たりませんでした。その周辺の土手では、越冬中のキタキチョウが2頭とオオカマキリの卵鞘が見つかりました。
少し進んで中道の脇にたまった落ち葉をかき分けているとモリチャバネゴキブリが何頭も這い出してきました。そのそばにはヤマコウバシの木があり、茶色く枯れたまま枝についている葉を試しに引っ張ってみましたが、強い力を入れても枝から離れないほどしっかりとついていました。
同行の大学生が道具を使って倒木をさばいてみると、コガタスズメバチの越冬女王が出てきました。たまにネジレバネという昆虫に寄生されているメスが見つかるとのことでしたが、これは寄生されていませんでした。畑の脇のソシンロウバイは満開でした。ロウバイは花の中心部が濃く色づくのに対し、こちらは花が内部まで黄色いことで見分けるとのことでした。
同じ畑の近くにあるサクラを見ると、先月は固い花芽だったものが少しふくらみ始めていました。またつどいの丘のコウバイは、つぼみがようやくほころび始めたところでした。ウメは例年の2月の観察会では開花を確認していて、咲いている花が一つもないというのは記憶にありません。
先ほどの大学生が、今度はキシノウエトタテグモを見せてくれました。トタテグモは土の中にトンネル状の扉付きの巣を作り、獲物が近くを通りかかると穴の中に引き入れるという習性があるそうです。キシノウエトタテグモは環境省のレッドデータカテゴリでは準絶滅危惧、愛知県でも絶滅危惧種2類とされていますが、東山の森では見つけるのはそれほど難しくはないようです。この日はトンネルの中でたくさんの子グモと一緒にいるメスが確認できました。足元の落ち葉をかき分けると、ワカバグモが2頭出てきました。
キラニン道路を上がりました。展望広場へ向かう途中で、成虫で越冬するホホジロアシナガゾウムシが見つかりました。木の枝にしがみついていました。
展望広場の近くでは、スダジイの木が見られました。特徴的な殻斗をつけたドングリもたくさん落ちていました。少し前にその周辺の常緑樹を調べていた時に見つかった木で、樹液がたくさん出ていました。
キラニン道路沿いにはクリの木もあり、その樹皮には縦長の割れ目が目立ちました。
もう少し足を延ばして、これまでにも2月の観察会でよく訪れてきたヒメカンアオイのコロニーを見に行きました。毎年観察と記録を続けてきており、近年は元気がなくなっています。辺りを覆いつくすササを刈ると、小さな葉ばかりが見つかりました。また花がたくさん咲いている場所もありましたが、どういうわけかそこには葉が1枚もありませんでした。
花を見るために落ち葉をかき分けていると中サイズのトビズムカデが出てきました。またワラジムシの仲間も見つかりましたが、よく見るタイプのワラジムシと違ってその体には黒い光沢がありました。
頭上の枝にはムネアカハラビロカマキリの卵鞘がついていました。最近は毎月見つかるようになってしまいました。
今年度から東山の森の湿地を保全するプロジェクトが起動しており、調査が進められています。ハンノキ湿地の調査のために設置されている装置が紹介されました。土中の水位を測定する装置でした。
その横に大きな倒木が横たわっていて、3種類のキノコが生えていました。どれも柄のないタイプでしたが、色や傘のサイズはそれぞれ違い、傘の裏のヒダもあるものとないものがありました。
足元には落ち葉が積もり、フカフカしていました。その落ち葉の間からジャノヒゲの濃い緑色がたくさん見えていました。また葉の一部が赤く色づいたビナンカズラを見ましたが、赤い部分の面積は葉の裏側の方が大きいことに気付きました。
シデコブシを見に行く途中でよく手入れされた明るいエリアを通りました。赤い実をつけたマンリョウがあちこちで見られました。ヤブニッケイの葉を一枚採って匂いを嗅ぐとほんのりといい香りがしました。また林床を覆うフユイチゴはわずかに実が残っていました。
シデコブシは東海地方固有の湿地を好む植物です。これも環境省のレッドリストの準絶滅危惧、愛知県で絶滅危惧種2類とされています。花芽はフサフサの毛に覆われていて、スベスベとした手触りでした。周りを取り囲むハンノキを見上げると雄花がたくさん垂れ下がっていました。帰り道では赤い実のセンリョウを見ました。
北尾根を下りきったところのハクサンボクがなかなか大きくならないという話が出ました。 本来はもう少し樹高が高くなるはずだが、周囲のコナラなどの高木が邪魔をしているかもしれないとのことでした。続いて今年のシュンランがどんな状態か見に行きました。去年はこの時期にはもう花が咲いていましたが、この日はまだ小さいつぼみがようやく顔を出したところでした。最後に森の案内板に掲載されている写真を見ながら、くらしの森が整備されたばかりの頃を少し懐かしく思い出しました。
この冬はすでに何度も雪が降り、例年にない寒さを実感してきました。この日はいつもの2月の観察会で見られているニホンアカガエルの卵をはじめ、ウメやミモザやシュンランの花などもまだ姿を見せていませんでした。最高気温が10度を割る日も珍しくなく、森の生きものも活動開始が遅くなっているようです。春の訪れが待たれます。
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2月度の観察記録
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| 2022-3-13 | 127 | |
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