昨年末には57年ぶりの大雪が降り,前日も積雪があったため天気が心配されましたが,当日は朝から快晴.集合場所から見る新池は半分くらい氷に覆われていましたが,寒い中にも気持ちの良い観察会となりました. 集合場所で前月の記録が配布され,記載されていたヒイラギの科名についてヒイラギ科ではなくモクセイ科であるとの訂正がありました.また,来月行なわれる東山の森づくりの会の催し「クズ餅づくり」と「子ども東山の森づくり隊」の案内がありました. 参加者は子供3名を含む26名.中には山形県から里帰り中の参加者や,2歳の頃から参加していたという大学生が久しぶりに顔を見せてくれていました. 例年どおり1月は“しっかり歩く”ということで,足のストレッチングをしてから観察会に出発しました.
1万歩コース入り口から尾根を登ると,歩道に雪が残っている所がありました.そこには木チップが敷き詰められおり,その保温効果と木陰により前日の雪が残っていたようです. 近年,剪定した樹木の枝をチップ化し,公園の歩道などに敷き詰めてあるのをよく目にするようになりました.公園整備のため剪定した枝は焼却したり,チップにして,お金を払って製紙会社に引き取ってもらったりしていますが,国際的にはその場で処理する=枝を切った木の根元にチップを撒く.ということがスタンダードになって来ているという説明がありました. 木チップを敷き詰めた歩道は柔らかく足に優しい感じがします.しかし,観察会でもいつも観察しているコモウセンゴケ(モウセンゴケ科)の生育場所が数センチの木チップに埋もれているのを目にし,「その場所に固有の生物から見ると,突如過剰な栄養分が押し付けられた訳で,環境破壊でしかない」という意見を耳にすると,改めて是非を考えさせられました.
大乗寺の墓地入り口で女の子が霜柱を見つけ,皆で観察したり,踏んだ感触を楽しんだりしました.霜柱は地面から上へ伸びて形づくられるのだそうですが,その際に下から水分が供給されるメカニズムや、横や斜めではなく垂直に伸びる理由などが話題になりました. 星ヶ丘口のマンション脇でアオジ(ホウジロ科)を見つけました.アオジはシベリア,北海道など寒冷な場所で繁殖し,冬に南下して来るのだそうです.比較的近くでは乗鞍岳にも生息しており春にはきれいなさえずりを聞くことができるそうです.
星ヶ丘口から林の中を下り中道へ出ました.ちょうど降りたところに地面を掘り返したような痕がありましたが,それはモグラが地中に空気を取り入れるため掘った痕で,モグラ塚と呼ぶそうです. また,ここではカラタチ(ミカン科)を観察しました.枝にはナミアゲハの蛹とコカマキリの卵のうがついていました.カラタチは枝に鋭いトゲがあることから,防犯用の生け垣として植えられ、手入れされるのが通常だそうですが,ここのは伸び放題でした.しかし毎年枝を一部切り取って持ち帰る人がいるそうで「何に使うのだろう?生け花やリースにはしないよねぇ?」と疑問が出されました.
再び林の中に入り,展望の丘=キラニン広場まで登りました.キラニンとは名古屋市がオリンピックに立候補した頃のIOC委員長で,会場予定地であった平和公園を視察したことからそう呼んでいるそうです. そこから林の中を下ってハンノキ湿地に向かいました.途中の斜面で葉がトゲトゲしたヒイラギ(モクセイ科)の幼木,マンリョウ(ヤブコウジ科),センリョウ(センリョウ科),カクレミノ(ウコギ科)を観察しました.マンリョウとセンリョウはともに赤い実が鮮やかで,正月の飾りなどに用いられますが,科が違い,葉の形や実のつき方が異なります.参加者から「万両は千両より価値が重いので下向き,センリョウは上向きに実がつく」という見分け方が紹介されました.
ハンノキ湿地の上流に当たる場所でカンアオイを観察しました.まだ花は咲いておらず,蕾も固い状態でした.昨年末は例年になく寒かったため遅れているのではという説明がありました. さらに林の中を進み,ハンノキ湿地に出ました.途中カキの実を見つけ,数人が口にしましたが「ひどい渋柿」〜「いや甘い」と意見が分かれました. ハンノキ湿地では,フユイチゴ(バラ科)が群生している所がテープで囲んで保護されていました.竹薮を伐採したことで日が当たるようになり,フユイチゴの群落ができたのだそうです.もう実のピークは過ぎたということですが,いくつか残っているのを見つけることができました.食べた人の感想は,「ほんのり甘くてツブツブ感が印象的」とのことでした. 参加者から「12の月の物語」(「12の月のおくりもの」「マルーシカと12の月たち」とも.スロバキア民話?)で,主人公が継母に季節はずれで,あるはずのないイチゴを探すよう言いつけられ,12の月の精の手助けで見つけたのがこのフユイチゴであるという話がありました.
竹林の土手を登って東邦高校の横に出て,展望台をめざす途中,三角点(104.92m)の所で休憩しました.清風荘跡地(集合場所の横)に実っていたという夏みかんを皆で分けて食べました.古い地図によると東山丘陵一帯はかつて果樹園で,名古屋大学の中にもその名残と思われるみかんの木があるそうです.素朴なすっぱさが懐かしい味でした. ちょうど12時近かったので,影が南北を示すことを確かめました.三角点の役割やGPSの精度から発展して,日米関係の問題にも話が及びました. 遠く御岳を望むため,少し移動してNTT東山無線ビル(旧ネットワークセンター)の前に出ました.遠くにかすんで見える山々のどれが御岳なのか,見えているのかいないのか,喧々諤々の議論がありましたが,結論としてはよくわかりませんでした. NTT旧ネットワークセンターは,かつてはテレビ電波(VHF)の中継所として常勤の人も多く,夏には盆踊りが行なわれるなど,市民にも身近な存在だったそうですが,光ケーブル網の敷設により中継所としての役目を終え,最近はさびしい状態のようです.
少し下りどん詰まりの畑跡で感想会を行ないました.この場所のウメの花はまだつぼみでした.周りではいろいろな鳥が鳴いており,早く到着した人はカシラダカ(ホオジロ科)の姿を見ることができたようです. 「たくさん歩いて気持ち良かった」「道なき道を歩いたのが楽しかった」「霜柱を踏んだのは久しぶり」「三角点での話がおもしろかった」などの感想が聞かれました.
平成18年1月の観察項目: ヒイラギ,ヒイラギモクセイ,木チップ,霜柱,アオジ,モグラ塚,カラタチ,ナミアゲハ(蛹),コカマキリ(卵のう),ヒイラギ,マンリョウ,センリョウ,ソヨゴ,クスノキ,カクレミノ,カンアオイ,カキ,フユイチゴ,リュウノヒゲ,カシラダカ,ウグイス(概ね観察順) 昨年度の観察会の記録は『なごや平和公園の自然』(平和公園自然観察会発行)をご覧ください 写真 リューシャ,山中 伸 文 山中 伸 監修 滝川 正子 |
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ファイル名 | 掲載日 | ヒット | |
印刷用観察記録No31(060108)
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| 2008-7-19 | 976 | |
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2月度の観察記録 |