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2006年 > 2月度の観察記録
2月度の観察記録
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 早春賦で歌われているように,春を待ち望む状況でした.それでも,ウグイスはさえずりはしませんでしたが,チチチという地鳴きはしていました.ほとんどの葉を落とした落葉樹が多い中,一部のアベマキ(阿部槙,ブナ科)は枯れたままの葉をまだつけていました.晴天でしたが,寒さはまだ厳しいものがありました.新池には,シジュウカラ,ツグミ,ムクドリ,バン,カイツブリ,ヨシガモ,カルガモ,コガモ,カワウが来ていました.ヨシガモの頭部のナポレオンハットがきれいに観察できました.シジュウカラは,ピチュピチュとさえずっていました.「ピカチュウ」と聞こえる人もいるようです.センダン(栴檀,センダン科)の実は,すっかり薄い黄色になり,表面はシワシワで,中には,既に黒くなっている実もありました.今年は,鳥が少ないので,センダンだけでなくナンキンハゼの白い実も,まだ多く残っていました.集合場所の公園は,立ち入り禁止になり整備中でした.参加者は,子供3名を含む33名でした.
 最初は,新池横の歩道で集合しましたが,通行の邪魔になるということで,元清風荘の横に移動しました.まず,ここで先月の報告を見ました.先月は,私が仕事で参加できませんでしたので,複数の方々が協力して,いつものようなA3表裏の報告を作られたそうです.

シジュウカラ ムクドリ センダン

 クズ(葛,マメ科)の根からクズもちを3日かけて作るという報告がありました.今回,参加者が持ってこられたクズの根に年輪があるという話があったため,ハサミで切断して観察しました.かすかに年輪は見えましたが,においをかぐと,まさにゴボウの感じでした.ゴボウのようなら,何故そのまま,食用にしないかという疑問もでましたが,苦みがあってそのままでは食べないようです.クズの葉は,馬がよく食べるそうです.
 寒いこともあり,今回は薮こぎもしてよく歩く観察会にすることにして出発しました.
 平和公園に入ってすぐのところで,南尾根と北尾根に挟まれた,元大阪池で,地下鉄の残土を捨てたところを眺めました.また,山崎川へ水を流していた近くの排水溝を見に行きました.星ヶ丘・東山・唐山等の丘陵地から水を集め,この大阪池からの流れを合わせて,山崎川の源流となっていたそうです.濃尾平野は,数百万年かけて西側に傾斜沈降しており,3大河川(揖斐川,長良川,木曽川)が西側にあるという説明もありました.

クズの根の断面 排水溝

 シャシャンボ(小小ん坊,ツツジ科)の濃紫の小さい実がたくさんついた枝を持ってきた参加者の方がいて,皆で1粒ずつ食べました.今年は寒さが厳しかったので甘いという説明がありました.何故寒くなると甘くなるかという疑問が出ました.柿は皮をむいて干すことで渋抜きをしますが,これは水溶性のタンニンを不溶性にするのだそうです.そうすると舌の上で溶けず,渋みを感じないことになるそうです.冬野菜が寒くなると甘くなるのは,内部に糖分を多く蓄積するからと言われています.寒くなると分子を大きくして,不凍液のようにして細胞が凍るのを避けるという話もありました.シャシャンボが甘くなる理由が,どれかは分かりませんでした.

シャシャンボ

 早足で歩いて,芝生広場まで行きました.途中で,ベニマシコとミヤマホオジロの写真を撮るために望遠レンズをつけたカメラを設置していた2組の人達を見ました.芝生広場で,愛護会の人達が作っている平和公園の紹介の看板を見ました.すぐ後ろには,すくっと青空に向かってたつ,美しいアベマキの木々がありました.芝生広場から南に入ってすぐのところで,ヤマナラシ(山鳴らし,ヤマギ科)を観察しました.日本のポプラと呼ばれている落葉高木です.長い葉柄を持っており,風が吹くと葉がパタパタとたなびいて音を出すのでこの名前があるそうです.樹肌にそろばん玉のような小さく割れた傷がたくさんありました.そろばん玉は,ウクライナでは横に並んでいるという話がでました.たしかに,ビリヤードの得点は,横型のそろばんで数えますが,計算のため早く横型のそろばんを動かせるかという疑問が出されました.

愛護会の看板 アベマキ ヤマナラシの樹肌 アベマキ

 急な斜面を薮こぎをして移動しました.葉を落としたサワフタギ(沢蓋木,ハイノキ科)が,枝を水平にして沢を塞ぐように伸びていました.近くで,ニイニイゼミの抜け殻を見つけました.長い間,土の中で幼虫で育ち,ひと夏の間だけ成虫として外に出てくるということに関連して,ギンヤンマとオニヤンマを飼っている人から,ヤゴの餌にメダカをやってもギンヤンマはたくさん食べるが,オニヤンマは少ししか食べないと言う話がでました.餌の少ないところでじっくりと育つのと,たくさん食べてすぐに大きくなるのとどちらの戦略が優れているかということが話題になりました.また,貴重な種類のメダカは別の水槽で飼って,普通種のメダカをヤゴの餌にしているという話も,人間の勝手ではないかという話も出ました.

サワフタギ ニイニイゼミの抜け殻

 すぐ近くの朽ちた木から,茶褐色の細長い虫を見つけて観察しました.このときは,カミキリの幼虫としていたのですが,後で,キマワリの幼虫であることが分かりました.カミキリの幼虫は,普通白いので,別物でした.

【外部リンク】昆虫エクスプローラ

【外部リンク】おうごにくんち

 近くの木にはドロバチの球形の5cm大の巣がありました.泥でできた巣には,既に穴があいていましたので,巣立ったあとだと思います.種々のものが次から次に出てくるので,森は大騒ぎという状態になりました.このとき,コゲラが樹上でジージーと独特な鳴き声で鳴いていました.

ドロバチの巣 馬の背

 馬の背から,今回の観察会の中で最も急な斜面を下って薮こぎをしました.老人や小さな子供を連れた参加者もいましたが,1組の親子を除いて全員が逆の側から馬の背に一緒に戻ってきました.1組の親子は,男の子がもう歩けないということで,父親が背負って歩いている内に迷子になったようです.最終的には,馬の背で合流できました.

 この後,さらに薮こぎをして,ヒメカンアオイの群生を観察に行きました.既に多くの花が咲いていましたが,来月数をかぞえることにして,今回は観察だけしました.

斜面の藪こぎ 落ち葉の絨毯 ヒメカンアオイ ヒメカンアオイの花

 平和公園の入口近くまで戻って,クロバナロウバイの木がある除草された場所で感想会をしました.
春が近いということで,早春賦を思い出した人がいました.残念ながらきちんと歌える人はいませんでした.ある参加者がウクライナの学生に教えるために自分の手に,歌の題目を漢字を書いて教えましたが,「賦」の字を最初は「譜」と書きました.譜は音譜を書いたものですので誤りでした.「賦」は賦課のように,課税の意味が第1義ですが,漢詩・漢文の一体であり,詩や歌の意味もあるようです.

早春賦
作詞:吉丸 一昌
作曲:中田 章
1.春は名のみの 風の寒さや
  谷の鶯(うぐいす) 歌は思えど
  時にあらずと 声も立てず
  時にあらずと 声も立てず
2.氷解け去り 葦(あし)は角(つの)ぐむ
  さては時ぞと 思うあやにく
  今日もきのうも 雪の空
  今日もきのうも 雪の空
3.春と聞かねば 知らでありしを
  聞けば急かるる(せかるる)
  胸の思(おもい)を
  いかにせよとの この頃か
  いかにせよとの この頃か

【外部リンク】クラシックMIDIラインムジーク


作詞者の吉丸一昌が大正時代に安曇野の地を歩きながら,遅い安曇野の春を待ちわびる思いを詩にしたと言われています.

 感想会では,今回の観察会はたくさん歩いて気持ち良かったという人が多かったようです.ネコの骸骨の紹介もありました.
平和公園では珍しいトビが頭上を舞っていました.来月は,春を見つける観察会になりそうです.

感想会 ネコの骸骨 サザンカの花 クロガネモチの実

観察項目:ヨシガモ,マガモ,カルガモ,バン,カイツブリ,ムクドリ,カワウ,シジュウカラ,ハシボソガラス,ドバト,クズの根,ベニマシコとミヤマホオジロの写真を撮ろうとする人達,シャシャンボ,ヤマナラシ,サワフタギ,ニイニイゼミの抜け殻,キマワリ,ドロバチの巣,ヒメカンアオイ,ヤマツツジの芽,クロバナロウバイ,ネコの骸骨,トビ(概ね観察順)

伊藤義人
監修 滝川正子

『なごや平和公園の自然』は,観察会のときに入手できます(1,200円).

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