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2006年 > 3月度の観察記録
3月度の観察記録
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 始めは小雨で,途中で大降りの雨の観察会になりました.生き物にとっては恵みの雨でした.すでに,多くの春が平和公園に来ていましたが,まだまだ小寒い感じでした.きれいな写真が撮れないのが残念でした.集合場所の公園の整備が終了してベンチも追加で設置されました.ベビーゴルフは撤去され,砂で表面が覆われていました.雑草が全くない状態で少し異様でした.周辺の樹木もひどく剪定されていました.いつも沢山の実をつけていた幹が傾いたイチョウ(銀杏,イチョウ科)は,支障木として哀れな程剪定されており,今年の銀杏は期待できそうもありませんでした.新池には,キュルルルルと独特な鳴き声のカイツブリと胴体がほとんど沈んでいるカワウがいました.周辺のセンダン(栴檀,センダン科)には,たくさんのヒヨドリが来ていて,薄黄色くなった実を丸呑みにしていました.ムクドリも多く来ていました.参加者は,子供3名を含む22名でした.

センダンの実をくわえたヒヨドリ 整備された集合場所

 集合場所で,まず先月の報告を見ました.クズ(葛,マメ科)の根の年輪の写真を見ながら,クズの根からクズ餅を作ったとの報告がありました.全体重量の4.1%しかクズ粉はとれなかったそうです.それも2週間ほどさらしても市販のクズ粉のようには,純白にはならなかったそうです.でも食べてみると,黒いものが混じったクズのほうが美味しかったそうです.来年は,どの部分にもっともデンプン質が多いか研究してみることになりました.
 報告に載っている早春賦の詩を,一人の参加者に声を出して読んでもらいましたが,結局最後は皆で声を出して歌いました.春はまだの安曇野の様子がよくわかる詩でした.
 昨年に実施した名古屋の気温調査の報告書ができ,1冊1000円で里山の家で売っているというアナウンスがありました.小雨が降り出してきたので,自己紹介は感想会のときにすることにして傘をさして出発しました.

 まず,平和公園の入り口にある里山の家へ行き,トウキョウサンショウウオの小さな卵塊を観察しました.勾玉の形ですが,先日の中日新聞ではバナナ形として紹介されたそうです.発想の貧困でしょうか.参加者からの形状の比喩としては,「ハート形」,「ドーナツ形」,「クロワッサン形」というのが出ました.里山の家では,自然のもので作ったおもちやも展示されており,このときは草で作ったキリギリスを見せてもらいました.大変よくできており,子供達であればきっと欲しがると思いました.

トウキョウサンショウウオの卵塊

 早足で芝生広場前のアシ原に行きました.ここにミヤマホオジロが先週までいたので,野鳥の写真を撮る人たちが,コケや枝を持ってきて人工的に舞台を作っていたところを見ました.野鳥の写真には,このようにやらせのものも結構あるそうです.最近は,デジタルですので,背景なども変えてしまう合成写真もあるようです.
 田んぼやトンボ池には,ヒキガエルとアカガエルの卵塊が沢山ありました.周辺にカラスに襲われて死んだと思われるヒキガエルの死骸もありました.早速,ヒキガエルの卵の数を数えようとしましたが,雨が本降りになってきたので,2塊の卵塊をタモですくって,芝生広場の愛護会の作業場まで持って行って数えることにしました.作業場には,青のビニールシートで屋根を作ってありました.ひも状のヒキガエルの卵塊を,2ケ所で並べて中の卵の数を数えました.約10cmの長さのゼリー状の卵塊の中の卵を数えて,全体の長さ(5.2m)に換算しました.位置によって卵の密度が違うので,3ヶ所で計って平均をしました.4680個と3328個ということで,平均は4004個ということになりました.昨年は,1950個でしたので,今年は随分多い結果になりました.あるヒキガエルの飼育ホームページでは8000個程度という記述もありました.来年度も是非とも数えることになりました.ゼリー状の物質が何からできているかという疑問が出ました.なお,ガマガエルは,ヒキガ工ルと同じだという説明もありました.

並べたヒキガエルの卵塊 網ですくったアカガエルの卵塊 ヒキガエルの卵塊の中の卵を数える

 ヒメカンアオイ(姫寒葵,ウマノスズクサ科)の葉と花を数えに行くのは,雨が降っているのでいやがった参加者もいました.薮こぎを少しだけにするために遠回りをして,ヒメカンアオイの葉と花を数えに行きました.途中でコバノミツバツツジ(小葉の三葉躑躅,ツツジ科)とモチツツジ(餅躑躅,ツツジ科)のまだ堅いつぼみを観察しました.名古屋市が施工した土留めエも見ました.
 ヒメカンアオイは,2つの小さなコロニーと1つの大きなコロニーでしたが,合計で葉が494で花が123でした.昨年は538と156でしたので,数は少し減っていました.数える時期によって変わりますので大きな変化はないという結論になりました.実際に,小さな数えていない葉が100枚以上ありました.どちらにしても,ギフチョウは,1頭で300枚程度の葉が必要だそうですので,まだまだギフチョウが戻ってくるのには時間がかかりそうです.周辺にはウスノキ(臼の木,ツツジ科),ヒサカキ(姫榊,ツバキ科)やモチツツジがありました.

土留め工 ヒメカンアオイ ヒメカンアオイの観察 ウスノキ
ヒサカキ モチツツジ

 パンパスグラス(イネ科,和名白銀華)の近くで,ヤシャブシ(夜叉五倍子,カバノキ科)の雌花と雄花を観察しました.まだ,昨年の実を付けている木もありました.エノコログサの穂のような大きな雄花と,小さな堅い感じの雌花ですが,雄花は非常にきれいな黄緑色でした.春がすでに来ていました.かすかですがニッキのような良い香りがしました.雌花は触るとネバネバがありました.ヤシャブシやハンノキ(榛の木,カバノキ科)は湿地に植生しますが,貴重な湿地の植物を観察会の人が見に行くと,開発をしたい住民とトラブルになるという話も出ました.ヤシャブシの木の根もとにロゼット状のタンポポがありました.来月には花が咲いているかもしれません.

ヤシャブシの雌花と雄花 ロゼット状のタンポポ

 キイーというオオタカの鳴き声がしました.見ると多くのカラスがしきりにオオタカを追いかけているようでした.近くの水溜りにもヒキガエルの卵塊がありました.まだ,卵割していないので,昨夜産まれた卵であるとの説明がありました.周辺はかなり開けたところでしたので,水たまりを求めて,ヒキガエルはずいぶん遠いところから来たようでした.周りのアべマキ(阿部槇,ブナ科)やコナラ(小楢,ブナ科)は,枯れた葉がついたままのものもありました.昨年度の気温変化が異常だったせいでしょう.
 近くの日当たりの良い場所で,複数のツクシ(土筆,トクサ科)を見つけました.オオイヌノフグリ(大犬の陰嚢,ゴマノハグサ科)もありましたが,雨が降っているので花はつぼまっていました.ウメ(梅,バラ科)の花を見ながら芝生広場の方に戻りました.

ツクシ オオイヌノフグリ ウメの花

 途中で,コブシ(辛夷,モクレン科)を観察しました.幹と枝だけのコブシの木の下に多くの実が落ちていました.実の塊を拾って,中の種を観察しました.1つの種は5mm大のハート形をしていました.種の形に対して「赤ちやんのお尻」,「モモ」という人もいました.実の塊から,糸を引いて種がたれ下がることを発見して,おもしろい写真が撮れました.
 さらに,カラタチ(枸橘,ミカン科)とシンジュ(神樹,ニガキ科,別名ニワウルシ,英名tree of heaven)を観察しました.カラタチの木に先月あったクロアゲハのさなぎは既にありませんでした.シンジュの大きなハート形の葉痕を観察しました.なお,シンジュ(神樹)は,英名の直訳だそうです.

コブシの種 コブシの実 コブシの花芽 シンジュの葉痕

 雨がやまないので里山の家まで戻って,中で感想会と昼食にしました.ヒキガエルの卵塊を初めて見たという感想も出ました.信州の一農村の写真を戦前から60年間も撮り続けたアマチュア写真家の熊谷元一の話しも出ました.

【外部リンク】熊谷元一(日本の写真家17)

 私も含めて花粉症の人が多く,ツクシやヨーグルトを食べると症状が出ないという話題も出ました.個人差もあるでしょうが体験的にはヨーグルトは効果がありません.
 東京から帰省して,お父さんと参加した女子学生が,子供の頃に観察会に参加したときに,感想を言うのが嫌だったそうです.今回の2人の女の子はどう感じていたでしょう.嫌なことを避けるだけでは子供の成長は期待できません.今回のように立派に成長した人が帰省時に懐かしんで参加してもらえる状況を考えると,感想を強制はしていませんので,今のままでよいのかもしれません.どちらにしても自然観察が好きになるような観察会に今後もしたいと思います.
 来月は,昨年と同じように野草の天ぷらをする希望が出ましたが,できるだけ簡単にすることにしました.

里山の家での感想会

観察項目:カイツブリ,カワウ,ヒヨドリ,ムクドリ,センダン,イチョウ,トウキョウサンショウウオの卵塊,ヒキガエルの卵塊,アカガエルの卵塊,ネジキ,ヒサカキ,コバノミツバツツジ,モチツツジ,ヒメカンアオイ,ウスノキ,オオタカ,ヤシャブシ,ロゼット状のタンポポ,ツクシ,オオイヌノフグリ,カラタチ,コブシ,シンジュ(概ね観察順)

伊藤義人
監修 滝川正子
『なごや平和公園の自然』は,観察会のときに入手できます(1,200円).

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