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2006年 > 4月度の観察記録
4月度の観察記録
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 春が来て色彩の季節になりました.風は多少冷たかったですが,平和公園は至る所が春で気持ちのよい観察会になりました.集合場所の公園のサクラ(ソメイヨシノ)は満開でした.ヒヨドリがしきりにサクラの花の蜜を吸っていました.新池横では,親子3人連れが,朝からサクラの下でお弁当を広げていました.新池の水面には,いつものようにスイレンが増えてきました.新池の土手の木の枝にコサギが2羽留まっていました.下の枝についていた2つの黒いものは,カワウかと思って写真を撮りましたが,残念ながらゴミ袋でした.カワウは,対面の岸にいました.カイツブリも,いつもの場所に2羽いました.今年も営巣するとよいですが,きれいに木々が剪定されているので,うまく隠れて営巣できるか心配です.周辺のセンダン(栴檀,センダン科)の実はほとんど無くなっていましたが,わずかに残った実をヒヨドリがしきりに食べていました.参加者は,集合時間には少なかったですが,出発する時は,子供8名を含む63名と大勢になりました.

新池横のサクラ サクラの蜜を吸うヒヨドリ

 集合場所で, 参加者の持ってきた発芽したアベマキ(阿部槙,ブナ科)のドングリを観察しました.ドングリから芽を出して地中に根を張り,その途中から茎が上に出ていました.根と茎が分化していると言う説明がありました.茎の赤い色は,紫外線よけのポリフェノールだという説明もありました.次に,アケビ(木通,アケビ科)とその亜種を観察しました.花の付き方などが微妙に違っていました.
 今月は野草のテンプラをすると予告されていましたが,代わりにノビル(野蒜,ユリ科)のタマゴサンドイッチを作ることにして出発しました.今回は,ビーティングネットを持ってゾウムシの観察を目的に参加された研究者もいました.

発芽したアベマキのドングリ アケビとその亜種

 まず,平和公園入口の駐車場の「里山の家」で,紙コップに入れた孵化したトウキョウサンショウウオの幼体を子供達が優先して受け取りました.ハンノキ湿地に放流するためです.初めてトウキョウサンショウウオを見る人も多く,子供達はびっくりして観察していました.カエルは,後ろ脚が先で,その後で前脚が出てきますが,トウキョウサンショウウオは逆で前脚が先だそうです.しかし,渡されたコップの中のトウキョウサンショウウオは,まだ前脚はなく鰓がしっかりと観察できました.

トウキョウサンショウウオ 里山の家でのトウキョウサンショウウオの受領

 遠くを眺めると,5色の木々の花がかすんで見えて,一幅の絵のようでした.サクラ(桜),バラ科),ハナモモ(花桃,バラ科),モクレン(木蓮,モクレン科)などのようでした.まさに色彩の季節になりました.
 芝生広場前までにコバノミツバツツジ(小葉の三葉躑躅,ツツジ科)の薄紫色の美しい花を沢山見ながら歩きました.芝生広場前の畑でヒメオドリコソウ(姫踊子草,シソ科)とハコベ(繁縷,ナデシコ科)を観察しました.ピンクの小さな花を咲かせたヒメオドリコソウの群生は,まさに春の感じでした.ヒメオドリコソウの周辺に,小さな白い花を咲かせたハコベも沢山ありました.花弁が10枚のように見えましたが,2枚で1つになっているので5弁でした.茎の片側だけに,細い毛が縦1列に付いているのを観察しました.

平和公園の5色の木々の花 コバノミツバツツジ ヒメオドリコソウ ハコベ

 近くで小手玉を作るためのジュズダマ(数珠玉,イネ科)の実を集めました.既に大半の実は,下に落ちていましたので,採取というよりは拾うことになりました.その後,タマゴサンドをつくるためのノビル(野蒜,ユリ科)を皆で採取しました.球根の部分を採るために,大きなスコップも愛護会の倉庫から借りてきました.お土産に持って帰れる程の量がとれました.
 トウキョウサンショウウオを早く放流するために,芝生広場を突っ切って,急いでハンノキ湿地に向けて出発しました.芝生広場の角では,多少ボロのルリタテハを見つけました.翅を広げないと地味な蝶ですが,日向にとまって翅を広げると美しい青色が見えました.この冬を越冬した蝶かもしれません.
 ベニシジミを捕まえて観察した参加者もいました.また,大きなイオウイロハシリグモを捕まえて,観察ビンに入れて皆で回して観察しました.前にまどいを観察したクモでした.黄色のイオウ色というより茶色ではと言う参加者もいました.色の個体差が大きいようです.枯葉の上に逃がしてやると,枯葉の色とほとんど見分けがつかないくらいでした.
 芝生広場から雑木林に入るところでアメリカフウの穴のあいた3cm 径の丸い実が沢山落ちていました.子供達が喜ぶ木の実でした.
【外部リンク】フウの一年(ふわふわはぁと)

ノビル ルリタテハ イオウイロハシリグモ アメリカフウの実(集合果)

 馬の背の近くでは,マキノスミレ(牧野菫,スミレ科)の紫色の花がひそかに咲いていました.細長い葉が特徴的でした.
 ハンノキ湿地では,2つの小さな水たまりに,トウキョウサンショウウオを放流しました.すぐに放流すると水温が違って弱ってしまうので,紙コップを水の上に浮かべて,時間がたってから放流しました.近くの湿地には,コモウセンゴケ(小毛氈苔,タヌキモ科)もありました.ホバリングするビロードツリアブも数匹見つけて,1匹を捕獲して,観察ビンに入れて皆で観察しました.三角翼のような形状の翅と長い口吻を持っていました.
 ハンノキ湿地のハンノキ(榛の木,ニレ科)の新芽にミドリシジミの幼虫がいないか探しましたが,残念ながら見つかりませんでした.昨年は涸れてしまったハンノキ湿地の池の水量は多く,今年はよい環境になっていました.
【外部リンク】ミドリシジミ(大阪市とその周辺の蝶)

マキノスミレ トウキョウサンショウウオの放流 コモウセンゴケ ビロードツリアブ

 芝生広場に戻ったときに,2羽のツグミがアベマキの枝で鳴いていました.感想会をする前に,ノビル入りのタマゴサンドイッチを作りました.まず,ノビルの皮むきをしました.子供達は最初どうしたらよい分かりませんでしたが,大胆に皮をむくことを教えられ,喜んで作業をしていました.球根の部分だけでなく,茎の部分も刻んでゆで卵に混ぜ込みました.食べてみると,ノビルの食感が気持ちよく,春の味覚でした.ソヨゴの蜂蜜もパンにつけて食べましたが,感想はあっさりしておいしいと言う人と,味がなく旨くないという人に分かれました.宇宙アイスクリームと称して,米国の宇宙飛行士が宇宙に持っていった−40℃でフリーズドライした食べ物を持ってきた参加者がいました.食感はスカスカで,うま味も少なく,すぐにとけて頼りない食べ物でした.
 ウクライナの女子学生が,ウクライナ風のメリケン焼き(アラジー)を持ってきました.砂糖の代わりにバナナを入れてナツメグなどを加えてあるそうです.十分甘く懐かしい味がしました.

ツグミ ノビルの皮むき ノビル入りタマゴサンドイッチ

 感想会ではトウキョウサンショウウオに関するものが多く出ました.採取したゾウムシの種類を説明した研究者から,ゾウムシの標本を見せてもらい,これにも多くの感想が出ました.
 花粉症だけは問題ですが,種々の花が咲く中で,おいしいものを外で食べて,満足した観察会になりました.

感想会

観察項目:コサギ,カワウ,ヒヨドリ,カイツブリ,センダン,アケビ,発芽したアベマキのドングリ,トウキョウサンショウウオ,ハコベ,ヒメオドリコソウ,ナナホシテントウムシ,カニグモ,ジュズダメ,モンシロチョウ,モンキチョウ,キチョウ,ノビル,セリ,ウスノキ,フユノハナワラビ,イオウイロハシリグモ,ハンノキ,マキノスミレ,ビロードツリアブ,ベニシジミ,ルリタテハ,ウバタマコメツキ,ゾウムシの標本,フユイチゴ,ツクシ,モズ,ツグミ,コゲラ,ハシブトガラス,ダイコンサルゾウムシ(2),イチゴハナゾウムシ(2),アルファルファタコゾウムシ(1),ツツジトゲムネサルゾウムシ( 1) ,クロオビトゲムネサルゾウムシ(37),オジロアシナガゾウムシ(1),ツンプトクチブトゾウムシ(1),ジュウジチビシギゾウムシ(1),クチブトチョッキリ(1)(概ね観察順,カッコ内は個体数)

【外部リンク】アルファルファタコゾウムシ(岐阜大学応用生物科学部 昆虫生態学研究室)
【外部リンク】イチゴハナゾウムシ(ゾウムシの小部屋)
【外部リンク】ツツジトゲムネサルゾウムシ(ゾウムシの小部屋)

伊藤義人
監修 滝川正子
『なごや平和公園の自然』は,観察会のときに入手できます(1,200円).

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