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2006年 > 5月度の観察記録
5月度の観察記録
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 天気予報では,午前中は雨が残るということでしたが,朝から晴れて,緑薫る5月のすがすがしい観察会になりました.集合場所の公園では,ニセアカシア(別名ハリエンジュ,針槐,マメ科)が白い花を咲かせていました.2羽のカワラヒワが周辺でしきりに鳴いていました.新池では,カワウとカイツブリが,水面を覆ったスイレンから,頭を出したり潜ったりしたりしていました.ハクセキレイ,ツバメ,ムクドリなども飛んでいました.周辺のセンダン(栴檀,センダン科)は,新緑になっているのに,まだ昨年度の薄黄色の実が少し残っていました.クワ(桑,クワ科)の木は,トゲトゲのついた緑の実がたくさんついていました.もう少ししたら黒くなって食べられるようになりそうでした.参加者は,子供9名を含む61名でした.昨年まで常連で,沖縄に住所を変えた蝶の好きな人も来名して久しぶりに参加されました.

ハリエンジュの花 カワラヒワ 昨年度の実と新芽のセンダン クワの緑の実

 集合場所の公園で,愛知万博のリサイクルのベンチ3つが,最初の話題になりました.また,公園の改修時に新池との間の鉄のフェンスは,撤去することも考えられましたが,段差になっているので危険ということでそのままになったことも話されました.撤去に費用がかかることも考慮されたようです.
 先月の報告を見て,平和公園のトウキョウサンショウウオはカスミサンショウウオの名古屋型だという人がいることが紹介されました.マキノスミレ(牧野菫,スミレ科)やゾウムシについても話題になりました.今回もビーティングネットを持ったゾウムシの研究者が参加されました.
 参加者が持ってきたハクサンボク(白山木,スイカズラ科),オカウコギ(岡五加,ウコギ科),コメツブウマゴヤシ(米粒馬肥やし,マメ科)が紹介されました.また,ツバメが低く飛ぶと雨になるという話題で,餌の昆虫が何故,天気が悪くなると地上近くを飛ぶのかという疑問がでました.昔から言われているように翅が湿度で重くなるという人もいましたが,それに対する疑問も出されました.湿度くらいで虫が高く飛べないのはおかしいのではということです.最近は,天気が悪くなると気温が下がり,虫の活動が不活発になり,かつ,日差しがないと上昇気流がなくなり,上にあがりにくくなるというような説明がされるようです.また,気圧が低くなると虫は地上近くを飛ぶということも言われますが,上空は風が強くなり,小さな虫は飛べなくなり地上近くを飛ぶという説明もされるようです.
【外部リンク】FMゆきぐに ネイチャースクール
 シロコブゾウムシをシャーレの上に置いて皆で観察して,たしかにこぶがあることを確認しました.

集合 参加者が持ち寄った植物 シロコブゾウムシ

 平和公園入口の里山の家に行き,先月に続きトウキョウサンショウウオを観察しました.既に前脚と後脚も出ていました.エラもまだ見えていましたが,その内に小さくなると水面に出てきて呼吸をするそうです.数百万年の変化を幼生のときに再現していることに対する驚きの感想が出ました.餌のイトミミズが余ったときにどう生きながらえさせるかということで,冷蔵庫に入れてという方法とカナダモを水槽に入れて酸素を供給するという方法の説明がありました.後者は,昔から普通にやられている方法で,当たり前という感想も出ました.
  平和公園に入ってすぐの所で,恒例になっているクロバナロウバイ(黒花蝋梅,ロウバイ科)を観察しました.「なごや平和公園の自然」を見て,ロウバイ科であることを確認しました.近くには,ヤマナラシ(山鳴らし,ヤナギ科)が新緑の葉をつけていました.
 少し歩いた小径で,気温が低いためかじっとしているツマグロヒョウモンの雄を見つけて,皆で観察しました.翅の先端が紫黒色でないので雄ということでした.

トウキョウサンショウウオ クロバナロウバイ ヤマナラシ ツマグロヒョウモン(オス)

 畑の縁のニシキギ(錦木,ニシキギ科)の黄緑色の目立たない花を観察しました.秋の紅葉のときは,その見事な赤い葉と実ですぐに分かりますが,この時期はめだたない木でした.古い枝には,コルク状の翼が付いていましたが,新しい枝には,それが付いていませんでした.黄緑色の花は,枝から細長い茎が出て,その先に咲いていました.
 ジャノメチョウの幼虫に似た虫やシャクトリムシなども観察しました.女の子は嫌がり男の子は興味津々という感じでした.ヒルガオ(昼顔,ヒルガオ科)についた7〜8mm大の金色に輝くジンガサハムシも観察しました.造形の不思議さを感じさせる虫でした.

ニシキギの花 コメツブウマゴヤシ シャクトリムシ ジンガサハムシ

 アベマキ(阿部槇,ブナ科)の林からホトトギスのさえずりがしてきました.ホトトギスの初めての鳴き声は初音として昔から珍重されてきましたが,宅卵されるウグイスなどにすれば悪魔の鳴き声であるという指摘もありました.湿地の泥の中からヒメタイコウチを女の子が見つけて,皆で観察しました.このような泥水の中にいることに驚きがありました.周辺に生えていたイヌガラシ(犬芥,アブラナ科)とスカシタゴボウ(透し田牛蒡,アブラナ科)の違いについての説明もありました.
 ツマグロヒョウモンをまた見つけて観察しようとしましたが,小さな男の子が,思わず手で触ろうとしたり,足で地面を踏んで驚かせて飛ばそうとして,大人から注意を受けていました.
 参加者の1人が,サルトリイバラ(猿捕茨,ユリ科)の葉が虫に食われているのを見て,葉の裏についたルリタテハの幼虫を見つけました.蝶になるまで飼うため,別の参加者が持って帰りました.周辺のコナラ(小檪,ブナ科)の林からコゲラのジジジという鳴き声がして,爽やかな風がふいていました.

 湿地の畦のすぐ横でカキツバタ(燕子花または杜若,アヤメ科)が紫色の花を沢山咲かせていました.カキツバタ街道として,愛護会の人達が整備したものでした.近くのキショウブ(黄菖蒲,アヤメ科)とともに5月を感じさせる花でした.
 ヒョウモンカミキリを見つけて皆で回して観察しました.1人の男の子が怖がって受け取ろうとしませんでした.少し大きめの虫であったため怖かったようでした.初めて見た虫を前に,泣きそうな顔でしたが,慣れればすぐに平気になると思います.

 参加者の1人が,樹液を多く出している樹木の近くで,網を使ってオオスズメバチの女王蜂を捕まえました.網の中にいるので安心して観察しましたが,大きくて非常に獰猛な感じでした. 観察ビンに入れて,酢酸エチルで麻痺させ観察しました.最終的には,標本として里山の家に保管することになりました.キマダラカミキリも見つけて観察しました.
 サワフタギ(沢蓋木,ハイノキ科)の葉に沢山ついたシロシタホタルガの幼虫を,感想会をした近くで観察しました.このままでは,このサワフタギの葉は全て食べられてしまうのではないかと思うほど,沢山ついていました.幼虫の表面の模様は見事な色と形でした.
 感想会では,ウクライナの美しい自然の話も出ました.感想会をした周辺には,コメツブウマゴヤシ(米粒馬肥やし,マメ科),コバンソウ(小判草,イネ科),ヒメコバンソウ(姫小判草,イネ科),アメリカフウロ(亜米利加風露,フウロソウ科)などがあり,ヒメウラナミジャノメも多くいました.一部の子供達は,感想会とは無関係に虫取りを堪能していました.5月のわき出るような多くの生き物に接した観察会になりました.

オオスズメバチ シロホタルガの幼虫 感想会

観察項目:カワウ,カイツブリ,シジュウカラ,コゲラ,ムクドリ,ハクセキレイ,ツバメ,コメツブウマゴヤシ,ニセアカシア,オカウコギ,シロコブゾウムシ,トウキョウサンショウウオ,イトミミズ,スグリゾウムシ,クロバナロウバイ,ヤマナラシ,ニシキギ,ジンガサハムシ,ホトトギスの鳴き声,ヒゲナガガ,オオスズメバチの女王蜂,ルリタテハの幼虫,ヒメタイコウチ,ツマグロヒョウモン,キマダラカミキリ,イヌガラシ,スカシタゴボウ,ヤブガラシ,ヒラタハナムグラ,カラスビシャク,ナツハゼ,コバンソウ,ヒメコバンソウ,アメリカフウロ,ヒメウラナミジャノメ(概ね観察順)

伊藤義人
監修 滝川正子
『なごや平和公園の自然』は,観察会のときに入手できます(1,200円).

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