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2006年 > 6月度の観察記録
6月度の観察記録
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 梅雨に入りました.観察会の最初は,どんより雲っていて,途中,ぱらぱらと雨に降られ,最後は土砂降りになってしまいました.新池周辺の街路では,キンシバイ(金糸梅,オトギリソウ科)とビヨウヤナギ(未央柳または美容柳,オトギリソウ科)が,黄色い花を一杯咲かせていました.また,新池横のクワの木の実がかなり黒くなり,スズメやムクドリが食べに来ていました.この黒くなった実を食べてみるとほんのりと甘い味がしました.外来種のアカバナユウゲショウ(赤花夕化粧,アカバナ科)の小さな紫色の花が,先月と同様に咲いていました.白い花を咲かせているスイレン(睡蓮,スイレン科)に覆われた新池には,カイツブリとすっかり胴体が水の中に沈んでしまったカワウが1羽ずついました.元清風荘で,40羽を超えるムクドリが騒いでいました.カラスが,カイズカイブキ(貝塚息吹, ヒノキ科)の葉の中に入っていこうとしており,ムクドリの巣を襲っていたのではないかと思います.参加者は,子供9名を含む66名と大勢でした.

キンシバイの花 新池のスイレンの花

 まず,集合場所の新池北の公園で,参加者が持ってきた,フクロモチ(モクセイ科),蓑虫,斑入りのイチョウの葉および3種のカメを観察しました.白い小さな花のついたフクロモチは,コクタンノキとして売られ,ネズミモチの園芸種だそうです.なかなか大きくならず,花も滅多に咲かないそうです.オオミノガの蓑虫は,自宅の庭木で大量発生したものを持ってこられたそうです.「蓑虫を珍しがるようでは」という感想も出ました.斑入りのイチョウの葉は,普通のイチョウの葉と比べて観察しました.斑入りは何らかの原因で葉緑体のDNAに異常がおきているということでした.

フクロモチ(コクタンノキ) 斑入りのイチョウの葉

 カメは,小学生の学習に使うために川原神社で取ってきたものだそうです.イシガメ,クサガメ,ミシシッピアカミミガメの3種です.イシガメとクサガメは在来種で,おとなしいですが,ミシシッピアカミミガメは,活発に動いていました.ミシシッピアカミミガメは,お祭りなどでミドリガメとして売られていますが,雑食性で他のカメの卵を食べ,在来種のカメを危機に陥らせています.3種のカメを裏返して,裏側の甲羅の模様などの違いを観察しました.イシガメの黄色い線が目立ちました.どのカメもすぐに上手に独力で表向きになりました.イシガメは,上部の甲羅の中心だけが尖っており,クサガメは真中と左右の3本の尖った筋がありました.また,クサガメの頭は,イシガメのように尖っておらず,ずんぐりしていました.参加した子供達が集まってきて,大はしゃぎして触って観察していました.ただし,ミシシッピアカミミガメは,子供の指にかみつく可能性があるので,大人の参加者が持っていました.クサガメは脚の付け根に臭腺をもっていて,臭いカメということからその名前がついているそうです.ただし,今回のクサガメは臭いにおいはしないという発言も出ました.サルモネラ菌の心配があるので,カメを触った後はよく手洗いをするようにとの注意がありました.
 カメの観察をしていたときに,樹上でカワラヒワがしきりにさえずっていました.参加者が持って来たものを全て観察した後,先月の観察記録を見ました.ジンガサハムシは,観察記録の写真より本物の方がきれいであったという感想がありました.観察記録の中のオオスズメバチの話が出て,先月捕まえたオオスズメバチを標本にしたものを観察しました.先月の観察会の後,同じ場所でさらにもう1匹捕まえたため,2匹の標本を見ました.なお,先月までに観察したゾウムシのリストが配布されました.

イシガメ クサガメ ミシシッピアカミミガメ オオスズメバチ

 丁度,雨がぱらぱらと降って来た中を,平和公園に向かって出発しました.最初に,里山の家に行き,先月よりさらに大きくなったトウキョウサンショウウオを観察しました.後脚も大きくなっていました.先に大きくなったトウキョウサンショウウオは,後から孵化した小さな個体を食べてしまうそうです.キラー幼体として,生存率を上げるようです.なお,共食いをした個体は成長が早いそうです.必要な栄養を全てとれるからでしょう.

【外部リンク】埼玉県立自然史博物館 自然史だより 第3号

トウキョウサンショウウオ

 里山の家から,少し戻るようにして,平和公園入口の坂の所で,若木のハリエンジュ(針槐,別名:ニセアカシア,マメ科)に付いているオトシブミを観察しました.葉を巻いた3つのオトシブミが,枝についていました.完全に,葉を巻いて下に落ちてしまうオトシブミもあるそうです.巻いた葉は,卵からかえった幼虫にとって,家と同時に餌にもなります.
 近くに,ヤブガラシ(薮枯らし,ブドウ科)の白い小さな花にニホンミツバチがとまっていました.さらに,少し歩いたところで,虫に葉を食われたヤマウルシ(山漆,ウルシ科)がありました.トゲトゲのついた緑色の実が沢山ついていました.春先は,ヌルデ(白膠木,ウルシ科)でもよくかぶれるので,ウルシには触らないように注意がありました.人間は触ることも出来ませんが,それでも葉を食べる虫がいることに驚きの声があがりました.ヤマウルシの葉を取って,葉柄から出てきた汁を紙の上につけました.観察会が終わる頃には,この部分は黒くなっており,確かに漆器の上塗りに使えることを確認しました.ただし,防水性はありませんでした.

オトシブミ ヤマウルシの実

 いつものコモウセンゴケ(小毛氈苔,モウセンゴケ科)を観察に行きました.まだ,花は咲いていませんでした.近くに,背の低いウスノキ(臼の木,ツツジ科)が,1cm大の臼形の真っ赤なつやつやした可憐な実を2つつけていました.コモウセンゴケの近くは,じめじめしており,ヒキガエルの子ガエルが沢山いて,子供達が捕まえて観察しました.さらに,アワフキムシの泡が草に付いていたので,手に取って中のアワフキムシを観察しました.普通は,泡の中は1匹だけですが,今回は2匹出てきました.兄弟姉妹だろうかという疑問が出ました.泡なので,石鹸替わりに使えるかという質問も出ました.ベトベトはしますが,洗浄力はないそうです.この泡は幼虫が口からはいたもので,多少の雨ではなくならないそうです.アワフキムシは,この泡によって乾燥と外敵から身を守っているようです.近くのネジキ(捩木,ツツジ科)のしぼみ始めた白い小さな花も観察しました.

ウスノキの実 コモウセンゴケ アワフキ アワフキムシ

 多少きつい坂をずっと歩いて,水田を越えて広い場所まで行きました.子供達は汗が出たと言っていました.ツバメが低く飛んで虫を捕まえていました.ここで,ドクダミ(毒痛み,別名:十薬,ドクダミ科)を観察しました.花のように見える4弁の白いものはガクで,中心の筒状の花穂に黄色い小さな花がついていました.一人の参加者はバラのように八重の花のドクダミを見たことがあるそうです.独特のにおいが周辺にありました.乾燥させると,このにおいはなくなるので,煎じ薬のような味ですが,ドクダミ茶として飲むそうです.くさい葉の汁は毒や痛みに薬効があり,そのため虫さされのときの応急薬にもなるそうです.

【外部リンク】花@かぎけん ドクダミ

 コウゾ(楮,クワ科),モモ(桃,バラ科)およびハクサンボク(白山木,スイカズラ科)などの樹木を観察しました.コウゾはミツマタ(三又,ジンチョウゲ科)と同様に和紙を作る原料の木ですが,棘のついた実を沢山付けていました.この実は赤くなると食べられるそうです.ハクサンボクは,ガマズミ(莢迷,スイカズラ科)と同じような葉でしたが,常緑だそうです.ハクサンボクは,カクレミノ(隠蓑,ウコギ科)と同じように日本庭園に使う代表的な樹木の1つだそうです.植木屋で買うと非常に高いそうです.

ドクダミの花 モモの実 コウゾの実 ハクサンボク

 ここで大雨となり,芝生広場まで急いで戻り,愛護会の屋根代わりのシートの下で感想会を行いました.スペースが狭いので,半分以上の参加者は,感想会に参加せずに帰ってしまいました.立ったままお弁当を食べる人もいましたが,大半の人は感想会の終了後に,里山の家で座って昼食を取りました.全員の感想を言う時間はありませんでしたが,ウクライナの留学生が,ホームページに,観察したもののアップ写真を大量に投稿したことと,その中のモミジの漢字が「紅葉」でなく「椛」と書くことが紹介されました.昼食後は,水田で田植えを行うことになりました.最後は,大雨に降られましたが,草木や虫たちにとっては恵みの雨であり,梅雨時らしい楽しい観察会になりました.

雨の中での観察 雨宿りしながらの感想会

観察項目:キンシバイ,ビヨウヤナギ,アカバナユウゲショウ,クワ,カワウ,カイツブリ,ムクドリ,カワラヒワ,クサガメ,イシガメ,ミシシッピアカミミガメ,フクロモチ,オオミノガの蓑虫,オオスズメバチの標本,斑入りのイチョウの葉,トウキョウサンショウウオ,オトシブミ,ハリエンジュ,ヤマウルシ,ウスノキ,ドクダミ,コモウセンゴケ,アケビ,ヒキガエルの子ガエル,アワフキムシ,カノコガ,モモの実,ソヨゴの花,ツバメ,ハクサンボク,コウゾの実,カキの実(概ね観察順)

伊藤義人
監修 滝川正子

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2008-7-19 1201

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