このサイト内の検索   
SmartSection is developed by The SmartFactory (http://www.smartfactory.ca), a division of INBOX Solutions (http://inboxinternational.com)
2006年 > 7月度の観察記録
7月度の観察記録
Untitled Page

 沖縄に台風が来ており,梅雨前線がはりだしてきて雨という天気予報でしたが,何とか降らずにずっと曇りでした.ただし,蒸し暑く,歩くと汗が噴き出しました.新池のスイレンは,一斉に白い花を咲かせていました.水面ではコシアキトンボや真っ赤なアカトンボ(ナツアカネ)が飛んでいました.ツバメは,水面すれすれを飛びながら上手に口だけを水面につけて水を飲んでいました.それ以外の鳥はムクドリとドバトだけでした.センダン(栴檀,センダン科)は,緑の多くの実を付け始めていました.実を1つとり,断面を見ましたが,まだ,成熟していませんでした.剪定されてしまったイチョウ(銀杏,イチョウ科)にも,少しですが緑色の銀杏が付いていました.新池周辺と元清風荘では,ムクゲ(木槿,アオイ科)がきれいな花を咲かせていました.参加者は,子供8名を含む48名でした.ビーティングネットを持ってゾウムシの研究者が,今回も参加されました.子供達も使えるように複数のビーティングネットが用意されていました.

新池のスイレンの花 センダンの実の断面 ムクゲの花 ビーティングネット

 まず,集合場所の新池北の公園で,「なごや平和公園の自然?」の紹介がありました.2005年の観察会を記録した本で,2004年の「なごや平和公園の自然」の続編です.その後,先月の記録を見ました.記録に載っていたキンシバイ(金糸梅,オトギリソウ科)とビヨウヤナギ(未央柳または美容柳,オトギリソウ科)の違いについて,参加者の1人が持って来ていた葉を比較しました.葉脈がはっきりと見えるのがキンシバイの葉だそうです.2つを並べてみれば分かりますが,片方だけ見ても判定は難しいようです.

キンシバイとビヨウヤナギの比較

 外来種の植物ということで,オオキンケイギク(大金鶏菊,キク科)が,アレチウリ(荒地瓜,ウリ科)と同じように外来生物法で平成18年2月1日より特定外来生物に指定され,駆除の対象になったという報告がありました.どの基準で決めているのかという議論の中で,セイタカアワダチソウ(背高泡立草,キク科)はもう駆除できないだろうという発言が出ました. 
【外部リンク】環境省自然環境局 外来生物法
 先月のカメが話題になり,東京の飯田橋の外堀のカメが多分カラスにやられて死んでいたという報告がありました.その他に,近年,オトシブミの数が減っている事が話題になりました.また,新池のスイレンを一部除去する話が進んでいるという報告もありました.
 参加者が持ってきたナワシロイチゴ(苗代苺,バラ科)の実を皆で分けて食べました.田植の頃に熟すのでこの名前があるそうです.ほのかに甘い昔懐かしい味でした.子供の頃,近所の田圃の土手に沢山植えてあり,よく食べた記憶があります.黒く熟した実は,イチジク(無花果,クワ科)の実と同じように,甘さに飢えていた当時は非常に旨く感じたことを覚えています.集合場所の公園のフェンスの向こう側の雄木のアカメガシワ(赤芽柏,トウダイグサ科)の終わりかけの白い花を観察しました.アカメガシワは,春先に赤い葉芽が出ているときは判別しやすい木ですが,今回はすぐには樹木名が分かりませんでした.
 今回の観察会では,マツモムシを最後に観察するために,沢山歩くことにして出発しました.

ナワシロイチゴ アカメガシワの花

 平和公園へ行く道路脇の若木のアカメガシワとハリエンジュ(針槐,マメ科)にアオバハゴロモの白い幼虫が付いているのを観察しました.触ってみると確かに動きました.そこで,キマワリ(ゴミムシダマシ科)も捕まえて観察しました.木の上をよく歩き回るから,この名前がついたのだろうという説明がありました.
 駐車場の里山の家へ行き,麦藁で作ったホタルカゴを見ました.捻った形のもので初めて見ました.平和公園で取れた麦藁を材料にして,このカゴを作る教室が開かれます.ホームページに,このホタルカゴの写真は載っていますが,作り方は書いて無く,作り方を修得するまでに苦労をしたという担当者の話がありました.

アオバハゴロモの幼虫 ムギワラで作った蛍かご

 平和公園に入ってすぐの所で,ハシボソガラスが草原の中にいました.ハシブトガラスは,森や市街地に棲み,ハシボソガラスは里山や農耕地に多く棲むという説明がありました.ハシブトガラスにとっては,ビルは森と同じに感じているということでした.里山を大事にするということで,ハシブトガラスよりハシボソガラスを大事にしたいという説明でした.近くでウグイスがしきりに鳴いていました.
【外部リンク】東京都自然環境情報
 公園入口の水飲み場近くにあるナンキンハゼ(南京黄櫨,トウダイグサ科)が,雄花を咲かせていました.小さい黄緑色の花が穂のように集まって咲いていました.時期をずらして雌花が,同じ木に咲くそうです.
 オタマジャクシ池の近くで,ヤブガラシ(薮枯らし,ブドウ科)とミゾハギ(溝萩,ミゾハギ科)の花が咲いていました.少し歩いていくと,セイタカアワダチソウが沢山ありました.まだ,花は咲いていませんでした.キク科なので,多分葉は食べられるという話になりましたが,誰も試そうとはしませんでした.周辺にアシナガバチが複数いて,肉団子を盛んに作っていました.
 小径に枝が飛び出しているムクノキ(椋の木・僕樹,ニレ科)の葉を観察しました.裏面を触ってざらざらしていることを確認しました.

ナンキンハゼの花 ヤブガラシ ミゾハギ

 芝生広場を過ぎて,キリ(桐,ノウセンカズラ科)を観察しました.根元には,ヤブカンゾウ(薮萱草,ユリ科)の黄色い花が咲いていました,もう,盛りは過ぎていましたが,ムシが多く付いていました.キスゲ(黄菅,ユリ科)も少し離れたところに咲いていました.キリは,今年の新しい実と昨年の茶色くなった実が一緒に枝についていました.学生の参加者が木登りをして,今年の実を採ってきました.ナイフで切って,縦断面と横断面を見ました.切ったときの断面は,白っぽいですが,すぐにリンゴを切った時のように薄い茶色に変色しました.実は2房に分かれていることが分かっただけでした.まだ,これから成熟するようです.5cm長の紡錘形の実は,表面がぬるぬるしていて,手にべとつきが残り,なかなかとれませんでした.特別なにおいはありませんでした.キリの成木の近くに2本のキリの幼木がありました.まだ,幹は木質化していませんでした.幼木の葉の大きさは成木の葉より少し大きくて厚肉で,触ると非常にやわらかいものでした.前に,農学部の学生がキリの幼木を見て,ヤツデ(八手,ウコギ科)というとんでもない紹介をしていたのを思い出しました.近くにヒメクグ(姫莎草,カヤツリグサ科)もありました.
 この近くでチビゾウムシを捕まえ,観察ビンに入れて見ました.かろうじて,ゾウムシの特徴である長い鼻を見ることができました.

ヤブカンゾウ キリの実

 カナヘビ(カナヘビ科)を子供が捕まえてきて,皆で観察しました.カナヘビとトカゲ(トカゲ科(スキンク科))の違いについて,カナヘビはトカゲに比べ尾が長く(全長の約2/3),表面がカサカサしている(トカゲはつやつや)という説明がありました.尾を触ってウロコが取れることを確認しました.皆で触って,背中がごつごつして,腹がつるつるしていることを確認しました.ゾウムシの研究者が,カナヘビの腹をなでると眠ったように,じっとすることを見せると,男の子達は,きそって取り合いをして,お腹をなでていました.参加者の女性は,お年寄りの方も含めて,この現象を知りませんでした.私たちの年代では,男の子は皆やった経験があると思います.
 ママコノシリヌグイ(継子の尻拭,タデ科)の可憐なピンクと白色の小さな花が咲いていました.茎の棘とこの可憐な花は不釣り合いですが,バラと同じと思えばよいのかもしれません.ネジバナ(捩花,ラン科)の螺旋状に捻って咲いている淡紅色の花も観察しました.ネジバナはラン科なので,ラン菌にエネルギーを与えて,栄養を作らせ,それで大きくなるという話が出ました.小さなタネには栄養分が付いておらず,地中のラン菌というカビの仲間を呼び寄せて,自分に寄生させ,入り込んできたカビの菌糸を逆に利用して,栄養分を補給し,最後にはカビ菌もろとも分解吸収してしまうそうです.ネジバナは,万葉時代から「もじずり」として親しまれた野草で,次の百人一首の歌が有名です.

みちのくの しのぶもじずり 誰ゆえに  乱れむと思ふ 我ならなくに
                    古今集 河原左大臣

【外部リンク】公園おさんぽ日記

クワの木からビーティングネットを使ってクワカミキリを捕まえました.しましまの長い触角がきれいでした.このクワの枝にもアオバハゴロモの白い幼虫が付いていました.
 雑草が茂った苔原の水瓶の中のマツモムシを探しましたが,残念ながら今年はいませんでした.近くのウメの木に2つだけ薄緑色の3cm大の実がなっていました.

ネジバナ

 いそいでハンノキ湿地に向かいました.途中で,ハツタケのようなキノコやヤマモモ(山桃,ヤマモモ科)を観察しました.ヤマモモの実は,既に枝にはついていませんでした.下の草原を探すと,落ちた深紫色の実がありました.近くにある2本のシマトネリコ(島トネリコ,別名タイワンシオジ,モクセイ科)が小さな白い花を咲かせて,木全体の表面が白く見えました.
 ハンノキ湿地の水かさは.一杯でした.水辺にアメンボが多くいました.狭い渡し板の上に,4名の子供達がこわごわ乗り,池を見ていました.池には,コシアキトンボと真っ赤なアカトンボ(ナツアカネ)がいました.コシアキトンボは,子供の頃デンキトンボと言っていたのを思い出しました.チョウトンボを網で捕まえた参加者がいて,じっくりと観察しました.チョウトンボは,蝶のように翅を動かすという説明がありました.チョウトンボは,飛び方はゆっくりですが,比較的高い所を飛び容易には網で捕まえることが出来なかった記憶があります.

 ニジゴミムシダマシとシロコブゾウムシを観察した後で,ユーカリ林の端で,赤土が重機で削られた跡を見ました.東山動物園のゾウが,ミネラル補給のためにこの土を食べるそうです.石が入っていると,ゾウは赤土を食べた後で,中の石を周辺に投げつけるので,この場所のように石が混じっていない土がよいそうです.ミネラルであれば,錠剤を与えた方が効果的ではという発言もありました.

 ユーカリ林の南の開けたところで感想会を行いました.周辺にはヘビイチゴ(蛇苺,バラ科)が赤い実をつけていました.ゾウムシの研究者は,今年は30種のゾウムシを平和公園で捕獲したそうです.先々月に持って帰ったルリタテハの幼虫は,無事,蝶として飛びたったという報告がありました.キリギリスの鳴き声が「ギーチョン」か「チョンギー」のどちらに聞こえるかという話も出ました.

【外部リンク】虫の音ワールド

最後に7月20日夜に行われるセミの脱皮の観察会の案内がありました.暑かったですが,よく歩き,気持ちの良い観察会になりました.

シマトネリコ チョウトンボ

観察項目:スイレン,センダン,ムクゲ,コシアキトンボ,ツバメ,ナワシロイチゴ,アカメガシワの花,キンシバイ,ビヨウヤナギ,アオバハゴロモの幼虫,ハリエンジュ,ハシボソガラス,ナンキンハゼの花,ヤブガラシ,ミゾハギ,ムクノキ,セイタカアワダチソウ,アシナガバチ,コフキゾウムシ,ヒメクグ,チビゾウムシ,カナヘビ,ママコノシリヌグイ,キリ,キリの幼木,キマワリ,ヤブカンゾウ,キスゲ,クワカミキリ,ゴマダラカミキリ,チョウトンボ,ウメ,シマトネリコ,ネジバナ,ヤマモモ,アメンボ,コシアキトンボ,ナツアカネ,ニジゴミムシダマシ,シロコブゾウムシ,ヘビイチゴ(概ね観察順)

伊藤義人 
監修 滝川正子

  この記事を PDF フォーマットで見る 記事を印刷する 記事をメールで送信

ページ移動
良く読まれた記事 6月度の観察記録 8月度の観察記録 次の記事