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2006年 > 8月度の観察記録
8月度の観察記録
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 蒸し暑く,じっとしていても汗が噴き出しました.しかし,曇りで日差しはほとんどなく,8月の名古屋としては,例年に比べればそれ程厳しいものではありませんでした.新池のスイレン(睡蓮,スイレン科)は,先月と同様に白い花を沢山咲かせていました.残り少ない水面にチョウトンボが飛んでいました.鳥は,ハトやスズメだけでした.集合場所の剪定されてしまったイチョウ(銀杏,イチョウ科)の緑色の銀杏が目立つようになりました.参加者は,お盆にも関わらず,子供2名を含む35名でした.

銀杏

 まず,セミ時雨の集合場所の新池北の公園で,参加者が持ってこられたゾウムシの標本を見ました.名古屋大学と平和公園で採取した,米粒より小さなチビゾウムシから20mm大のオオゾウムシまで,97種が並んだ立派なものでした.同じゾウムシが2匹ずつペアーに並んでおり,雌雄だと思った参加者もいましたが,ゾウムシの雌雄はほとんどが判定できないそうで,この標本は,名古屋大学と平和公園で採取したものをそれぞれ並べるようにしたものだそうでした.大きなゾウムシは,直接虫ピンで刺してありましたが,大半は紙の先端にタラカントゴムで接着してあるそうです.簡単に剥がせて,標本を痛めないので,昆虫の裏側を観察するときに便利だそうです.
 女の子の参加者が,熱心に標本を見ながら,「ママは虫が怖い」と言っているよと,一緒に来たパパに言っていました.この子が母親になったときには,虫などの自然の不思議さを子供に伝えられるのではと思いました.
 コクゾウムシであれば,昔はどこの米櫃にも居て,歓迎されなかったという話がでました.子供の頃のある夏に,米櫃の米に,コクゾウムシが沢山わいたことを思い出しました.米をかき回すと小さなかたまりとなって沢山の幼虫を発見できました.茶碗の中のご飯を注意しながら食べた記憶があります.父は,虫も栄養の内と言っていましたが,母は嫌がっていました.ドングリにもゾウムシはよくつくので,観察しやすいそうです.九州大学のホームページで,ゾウムシの標本写真が公開されているそうです.これまでに約800種に名称が付けられ,さらに同数くらいの未知のゾウムシがいると言われているそうです.

ゾウムシの標本の観察 千種区の標本

 先月の記録を見た後で,セミの羽化観察について報告がありました.当日は雨であったのと,例年にくらべ羽化が2週間ほど遅れていたため,定例会では羽化の観察はできなかったそうです.最後に,8/25と9/22に行われる虫の灯火採集の案内がありました.

 新池北の公園を出発したときに,公園の中で尾部に5〜7mm長の白い虫が4匹もついたアブラゼミを見つけた参加者がいました.白い虫は,アブラゼミに寄生して体液を吸うセミヤドリガ(蝉寄生蛾,セミヤドリ科)の幼虫でした.このような大きな幼虫を振り払うことが出来ないアブラゼミを見て,自然の過酷さを感じました.ホームページで調べると,どのようにセミに寄生するかは最近分かってきたようです.成熟してセミから離れると,すぐに蛹を作り,その後羽化(雌になる)して,単性生殖して卵を産むようです.短い寿命のセミの成虫に寄生して,早くセミが死んでも,そのときに離れ,小さな成虫になりすぐに産卵を始めると言われています.種々のところに産卵された卵は,孵る寸前で待ち,セミの羽ばたきを感じて,幼虫になり寄生するという研究の成果には,びっくりするばかりです.

【外部リンク】みんなで作る日本産蛾類図鑑
【外部リンク】みやび通信

 同じときに子供の参加者が捕獲したセスジイトトンボも観察しました.
 元清風荘の側溝の近くと,石垣の上にサルスベリ(百日紅,ミソハギ科)の幼木がありました.元清風荘の中の親木から種が飛んできたようでした.

クマゼミ アブラゼミについたセミヤドリガの幼虫 セスジイトトンボ

 平和公園には,いつもの農地沿いではなく,新池寄りの斜面を登って入りました.斜面のところで,ヨモギ(蓬,キク科)の虫こぶ(虫えい)を観察しました.ヨモギワタタマバエが寄生したことによって作られたヨモギの虫こぶでした.普通の虫こぶと違って,ヨモギの茎にカマキリの卵のような白いかたまりが出来ており,表面は糸状になっていました.それをぐっと引っ張っても簡単には引きちぎれませんでした.植物の遺伝子の中には,刺激を受ければこのような綿状のものを作る能力があり,本物のワタもこのような遺伝子によって作られているかもということが話題になりました.
 ヒメサビキコリ(コメツキムシ科)を捕まえて,裏返しにして掌の上に載せて観察しました.最初は,死んだふりをしていましたが,すぐに脚を動かして表面に向き直りました.表面はさびた鉄のような茶色をしていました.

ヨモギワタタマバエによって作られた虫えい ヒメサビキコリ

 ゾウムシの研究者が,自製の吸虫管の説明をしてくれました.ビーティングネット上の小さな虫を観察ビンの中に入れるもので,口の中に虫が入らないように吸い口の途中に網がついているそうです.最初に,これを見た子供から「虫を食べているの?」という質問を受けたそうです.このときに試したビーティングネットに先月幼虫を観察したアオバハゴロモの成虫が4匹採れました.
 斜面の溝端にコブシ(辛夷,モクレン科)の幼木がありました.鳥が種を運んできたのだろうということになりました.タカサゴユリ(高砂百合,ユリ科)とノギラン(芒蘭,ユリ科)が,斜面の両側に数株ずつありました.タカサゴユリの花はまだ蕾でした.このユリは台湾原産の帰化植物で,球根だけでなく種でも増えるため,よく見かけるという説明がありました.オオキンケイギク(大錦鶏菊,キク科)やアレチウリ(荒地瓜,ウリ科)のように駆除植物に指定されないのは,花がきれいなのと,他の植物を駆逐するほど繁茂しないのが理由だろうという話が出ました.ノギランの花期は既に過ぎているようでしたが,白い花がわずかに残っているものもありました.

吸虫管 アオバハゴロモ コブシの幼木 タカサゴユリ

 斜面を歩いていると,斜面にまかれた木片チップから,ひょろ長いトフンダケ(兎糞茸)が沢山出ていました.トウカイコモウセンゴケ(東海小毛氈苔,モウセンゴケ科)の花期も終わっていましたが,1つだけ白い小さな花をまだ咲かせていました.
 薮こぎをして,水田まで出ることにしました.途中の切り株についていたマンネンダケ(万年茸,サルノコシカケ科)を観察しました.

トフンダケ マンネンダケ

 水田近くの湿地では,サギソウ(鷺草,ラン科)が白い花を咲かせていました.咲いている花だけを数えると60程ありました.サギが飛んでいるような形の花であるという説明がありました.残念ながら今年もシラタマホシクサ(白玉星草,ホシクサ科)はありませんでした.紫の花をつけたミゾハギ(溝萩,ミソハギ科)も沢山ありました.ヒメギボシ(姫擬宝珠,ユリ科)の花は,1株だけ花が蕾のものがありました.
 湿地の中に作ってある水飲み場の湧水のイオン濃度(pH)を測ってみました.6.0から6.5の間でした.飲んだ参加者から,冷たくておいしい水という感想が出ました.

サギソウ ミゾハギ 湧き水のpH測定

 小さなヒキガエルを捕まえて,腹をさすってみると,先月のカナヘビのように死んだふりをしました.近くにナガコガネグモが巣を作っていました.隠れ帯のついた網を触ると前後に揺れました.この後,ウシカメムシ(カメムシ目カメムシ科)が,ビーティングネットで捕獲されたため,皆で観察しました.両側に張り出した突起を,牛の角に見立てると,姿が牛の顔に似ていることを確認しました.小さくよく動くので,写真には,撮りずらい被写体でした.
 水田の上には数匹のチョウトンボが,ひらりひらりと飛んでいました.シオカラトンボも飛んでいました.トンボ池の中のマツモムシ(カメムシ目マツモムシ科)を捕まえて観察しました.手で捕ると,体液を吸われて痛いそうです.一番後ろの脚が,オールのように大きくなっているのを観察しました.水面を背泳のかたちで,水面に落ちて来る虫を捕獲しているそうです.シャーレに入れて,表面も観察しました.

アズマヒキガエル 死んだふりのヒキガエル マツモムシ

 ここまでで,12時近くになってしまい,急いで里山の家に戻って感想会を行いました.途中の畑で,ラッカセイ(落花生,マメ科)が小さな黄色い花を咲かせていました.また,カラスウリ(烏瓜,ウリ科)の実も既に沢山なっていました.

 里山の家では,まず5cm大の大きく育てたタガメを観察しました.感想会では,サギソウの花の数え方が話題になり,「一輪」,「一本」,「一個」などが出ました.一輪というと茎に1つの花であればよいですが,複数の花が咲いているときには抵抗があるようでした.チョウは,「頭」で数えますが,他の昆虫は,「匹」と「頭」が混在しているようです.
【外部リンク】福島中央テレビ ちょっと便利帳
 最後に当日の夜のカラスウリの花の観察会の案内がありました.暑い中をよく歩き,多少疲労感がありましたが,虫や草花の勢いを感じた観察会になりました.

ラッカセイ カラスウリの実 タガメ 里山の家の中での感想会

観察項目:スイレン,センダン,ゾウムシの標本,ヒゲボソゾウムシ,セスジイトトンボ,アブラゼミに付いたセミヤドリガの幼虫,サルスベリ,ヨモギの虫こぶ,タカサゴユリ,ノギラン,アオバハゴロモ,ヒメサビキコリ,トフンダケ,トウカイコモウセンゴケ,マンネンダケ,サギソウ,シロバナサクラタデ,ヤハズソウ,オオキノコムシの仲間,アゼムシロ,ミゾカクシ,ウスノキの実,ヒメギボシ,ミゾハギ,アズマヒキガエル,ナガコガネグモ,チビゾウムシ,ウシカメムシの幼体,シオカラトンボ,セリの花,アズキナシの実,チョウトンボ,マツモムシ,ラッカセイ,カラスウリ,タガメ(概ね観察順)

伊藤義人
監修 滝川正子

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