夕方から雨が降るという天気予報で,集合前の雲行は怪しかったですが,次第に晴れ,観察会の途中からは陽が照って,帽子無しではおられませんでした.蒸し暑くなり,歩いていると目の周辺から汗が噴き出し,タオルで何度も汗を拭きながら写真を撮りました.新池の表面は,ほとんどスイレンに覆われ,全体がむっとする雰囲気でした.わずかな東側の水面で6羽のカルガモが浮かんでいました.カルガモの近くで大きな鯉がモゾモゾと動いていました.その上でアカトンボがゆったりと飛んでいました.周辺は,ツクツクボウシの鳴き声の合唱でした.そのツクツクボウシを,ヒヨドリが上手にくちばしで捉え,枝に打ち付けてから,頭から丸飲みしていました.新池のフェンスに,ノアズキ(野小豆,マメ科)がからみつき,黄色い小さな花を沢山咲かせていました.また,新池の北側のクズ(葛,マメ科)が紫の花を咲かせ,独特の香りを放っていました.アレチヌスビトハギ(荒地盗人萩,マメ科)も小さな紫の花を沢山咲かせていました.参加者は,集合時間を過ぎてからも集まり,結局子供12名を含む64名と大勢でした.子供達が多い楽しい観察会になりました.
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ノアズキの花 |
クズの花 |
アレチヌスビトハギ |
ツクツクボウシをくわえたヒヨドリ |
集合場所で,9月30日に行われる虫の灯火採集についてアナウンスがあった後,先月の報告を見ました.セミヤドリガが卵から孵り,セミにどのように取り付くかいう最近の研究成果の記述が読み上げられました.また,カエルの胸をさすると,死んだふりをするという先月の観察記録に対して,ヘビでもそのようになるという補足がありました.ヘビのどこが胸かという疑問に対して,さすって死んだふりをした所が胸だという発言があり笑いがおこりました.
ゾウムシの標本を,今回も持ってきたゾウムシの研究者から,ドングリに付くゾウムシの成虫を,高い木の枝から捕まえるために,柄の長い網を持って来たとの報告がありました.長野県で捕ったミヤマカラスアゲハなどの標本を持ってこられた参加者もいました.また,参加者が持ってきたイチイ(一位,イチイ科)の枯れ枝とサンゴジュ(珊瑚樹,スイカズラ科)の赤い実も観察しました.旅行に行って,きれいなアサギマダラの写真が撮れたので,持ってこられた参加者もいました.
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ミヤマカラスアゲハとゾウムシの標本 |
イチイ |
サンゴジュ |
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お孫さんと一緒に飼っているスッポンをバケツに入れて持ってこられた参加者がいました.バケツから出すと,スッポンはかなり早く歩き,写真を撮るのが難しい状況になりました.バケツに戻すと,長い首を出して逃げようとしました.指を出すと,食いちぎられるという人もいましたが,それ程でもないという説明がありました.甲羅に触ってみると,他の種類の亀と違って軟らかいことが分かりました.亀によくついているサルモネラ菌の話題もでましたが,サルモネラ菌は,どこにでもおり,亀に触った後は手洗いをする程度でよいということでした.なお,スッポンの餌は,竹輪や売っている「亀の餌」を与えているそうです.
今回の観察会は,クモを中心にするということで,中部蜘蛛懇談会の人からお話を聞きました.クモは,生きた虫の体液しか吸わないことや,母親が嫌がると,その子供もクモを嫌いになるので,刺したりしないので,出来れば掌の上にのせて観察してほしいとの要望がありました.
説明の前に希望者に,116種のクモのリストが載った資料が配布されました.標本は,アルコール漬けにするということで,見本を見せていただきました.アルコールの中のクモの色などは,時間とともに変色してしまうそうです.雄雌の区別は,触角の先端が丸くなっているのが雄で,そうでないのが雌だそうです.雄は,これを使って精のうを雌に受け渡す(交接)そうです.
子供達の一部は,話を聞かずに木登りやバッタ捕りをしていました.1人の男の子がショウリョウバッタを見つけ,手で捕ろうとしましたが,少し年上の女の子に帽子で捕るように言われ,上手に草の上に帽子をかぶせて捕りました.随分誇らしげな顔でした.バッタを捕ったのは,初めてだったかもしれません.
集合場所を出発してすぐの道路脇の看板についていたジョロウグモとナナフシを観察しました.看板の下の草原には,ナガコガネグモもいました.周辺にはツユクサ(露草,ツユクサ科)が青い花を沢山咲かせていました.
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帽子でバッタを捕まえた子供 |
ジョロウグモ |
ナナフシ |
ナガコガネグモ |
平和公園に入ってすぐに,スホウチク(蘇枋竹,イネ科)に花が咲いているのを発見しました.スホウチクの花は,イネの花に似ていますが,先端が5mm長の薄紫色の花でした.開花周期は60年とも120年とも言われており,皆でメシベなども観察しました.周辺にはジョロウグモが沢山網を張っていました.雌と一緒に小ぶりの雄と,米粒より小さなシロガネイソウロウグモもいました.今年は,マニアルフォーカスでかろうじてシロガネイソウロウグモの写真を撮りました.写真の真ん中で小さく白く光るものが,シロガネイソウロウグモです.
道端でオオカマキリがナガコガネグモを食べているのを目撃しました.食うか食われるかの死闘を観察したことになりました.すぐ近くで,サツマノミダマシを観察しました,脇が黒くないので,ワキグロサツマノミダマシではないということになりました.名前の由来は,薩摩の実に似ているからという参加者の発言がありました.ホームページで調べると,「薩摩・蚤騙し」で,薩摩縁の人が怒っているものもありました.実際は「薩摩の実・騙し」で,薩摩の実(ハゼ)の実に似ているからということのようでした.
【外部リンク】さといもの自然写真館
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スホウチクの花 |
シロガネイソウロウグモ |
サツマノミダマシ |
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湿地の木道横の草に付いていた球状で茶色のトリノフンダマシの卵のうを観察しました.卵のうは1つだけで,親グモも周辺にはいませんでした.
水田横の湿地に行き,久しぶりにシラタマホシクサ(白玉星草,ホシクサ科)を観察しました.昨年も観察会以外の日に,わずかに咲いていたシラタマホシクサを見た人もいたようですが,こんなに多くのシラタマホシクサを観察会で見たのは,数年ぶりでした.その他に,ヒヨドリバナ(鵯花,キク科),サワギキョウ(沢桔梗,キキョウ科),サワシロギク(沢白菊,キク科),ミズギボシ(水擬宝珠,ユリ科),カキツバタ(杜若,アヤメ科)など多くの花が咲いていました.また,ワレモコウ(吾木香,バラ科)の紫色の細長い花穂がきれいでした.
芝生広場前の湿地で,イオウイロハシリグモの子グモの団居(まどい)と親を観察しました.近くにいたもう1匹のイオウイロハシリグモは,お腹に卵のうを抱えていました.
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シラタマホシクサ |
サワギキョウ |
ワレモコウ |
卵のうを持ったイオウイロハシリグモ |
芝生広場の端には,フスベタケやイグチのような大きなキノコが沢山ありました.今年は雨が多かったので,平和公園では,キノコは非常に多く観察できました.アシナガイグチの大きな赤いキノコを採ってきた参加者もいました.周辺に落ちているドングリの8割は,ゾウムシが卵を産んだ小さな穴がありました.いくつかを割って小さな卵を観察しました.虫眼鏡ごしでピンボケですが,ドングリの中のゾウムシの卵の写真を撮りました.
最後に,芝生広場の日陰で感想会をしました.実際は,クモに関する話と質疑応答が主で,各個人の感想自体は,人数が多いのと時間が遅くなったので省略しました.
クモの網は枠糸,放射糸(縦糸),粘着糸(横糸)と「こしき」と呼ばれる中央の部分によって成り立っており,粘りのあるのは螺旋状に張る横糸だけという説明がありました.種類の異なるクモの糸は,別の糸腺で作り,異なる出糸管から出して使い分けているそうです.縦糸を仮に固定する足場糸も張りますが,途中で大半は巻き取ってしまうという説明がありました.ただし,オニグモの場合は,この足場糸を撤去しないので,きれいな光の五線譜になるということでした.
1匹のメスの網に,最大7匹のオスがいたのを観察した経験があるそうです.昨年の平和公園自然観察会では,最大4匹だったのを思い出しました.感想会の最中に,林の中でヤリグモが見つけられ,葉の中に隠れていたヤリグモが出て来たところをシャーレの中で観察しました.
以下のような質疑応答が行われました.
Q:越冬はどのようにするのか? A:原則卵で越す.子供や親で越すものもいる.
Q:クモの寿命は? A:ジグモは10年,ジョロウグモは1年と色々である.
Q:飛行グモはどのような種類? A:幼体で一生に1回糸を出して飛ぶが,ハエトリグモのように成体になっても飛ぶものもいる.
Q:脱皮は何回くらいするか? A:ジョロウグモは,8回脱皮する.タランチェラは,親になっても年1回脱皮する.タランチェラの脱皮殻をコレクションにしている人もいる.
他にも多くの質疑応答があり,クモ談義で大変盛り上がった感想会になりました.今回は,昨年に比べれば見つけたクモの種類は少なかったですが,来年を楽しみにしてお開きになりました.
観察項目:サンゴジュ,イチイ,ゾウムシの標本,ミヤマカラスアゲハなどの標本,アサギマダラの写真,スッポン,ジョロウグモ,ナナフシ,ナガコガネグモ,オオカマキリに食べられているナガコガネグモ,スホウチクの花,シロガネイソウロウグモ,トリノフンダマシ,サツマノミダマシ,イオウイロハシリグモ,ハツリグモ,オニグモ,ツユクサ,イネの花,ガマ,シロバナサクラタデ,ミゾソバ,ミズギボシ,ヒヨドリバナ,ミゾハギ,ワレモコウ,サワシロギク,シラタマホシクサ,ジュズダマ,サワギキョウ,カキツバタ,アキノエノコログサ,エノコログサ,クヌギシギゾウムシ,アシナガイグチ,フスベタケ,ヤリグモ(概ね観察順)
伊藤義人
監修 滝川正子
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