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2006年 > 10月度の観察記録
10月度の観察記録
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 すっかり秋らしくなり,先月の蒸し暑さがうそのようでした.風が強く,木々が大きく揺れて鳥や蝶はうまく飛べないのではと思われる程でした.ただし,風の通り道になっていて,両側の樹木によって木陰となっている小径の気持ちよさは何ともいえないものがありました.新池では,スイレンだけでなく,水面が見えた部分にも藻がありました.残念ながら水鳥はいませんでした.セミの鳴き声は,もう聞こえませんでしたが,かわりに新池横の樹上で,シジュウカラとヒヨドリがしきりに鳴いていました.平和公園入口のクロガネモチ(黒鉄黐,モチノキ科)の実が赤と黄の混じった色になっていました.センダン(栴檀,センダン科)の実の大半は,まだ,つやつやした緑色でしたが,昨日の強風で道に落ちた実の中を見てみると,既に立派な硬い種が出来ていました.アレチヌスビトハギ(荒地盗人萩,マメ科)は,まだ,紫の小さな花を付けているものもありましたが,多くは既に実ができてひっつき虫になっていました.参加者は,子供8名を含む42名でした.子供達が走り回るすがすがしい観察会になりました.

新池のシジュウカラ

 集合場所で,参加者が持ってきた2匹のナガサキアゲハの幼虫を観察しました.ナミアゲハの幼虫ではと言った参加者がいましたが,表面に白いものがあり,ぬめぬめした感じがありナミアゲハの幼虫とは違うことが分かりました.子供が手に容器を持つと,ナガサキアゲハの幼虫は怒って強い臭いを出しました.蜜柑の木の天敵で,趣味で蜜柑を作っている参加者がつぶしたいという希望も出ました.つぶすと柑橘類のにおいがするそうです.もちろんつぶさずに,里山の家で蝶にするため置いておくことにしました.

【外部リンク】アゲハの幼虫の見分け方

 次に,同じく参加者が持ってきたアズチグモ(カニグモ科)とゴンズイ(権萃,ミツバウツギ科)を観察しました.アズチグモは,以前に観察した,緑色で足先にマニキュアをしたようなカニグモと違って,今回のものは,縞の入ったかわいいクモでした.ゴンズイは,昨日の強風で折れた枝を拾ってきたものでした.赤い実が付いており,熟したものは赤い実が割れて黒い種が見えました.薪以外に役にたたないから,毒魚のゴンズイと同じ名称がついたということが話題になりました.鳥はこの赤い実を好んで食べるという話も出ましたが,人間に役に立たないからこの名称だろうということになりました.
 この後で,先月の報告を見ました.ノアズキや写真に撮れた小さなシロガネイソウロウグモなどが話題になりました.イオウイロハシリグモの団居(まどい)とそれを見守る雌の親蜘蛛についても話題になりました.このときに,樹上でヒヨドリとモズが大きな声で鳴き始めました.
 昨日の中日新聞に載った平和公園のことが話題になりました.段々畑や棚田を作って里山を復元するということでした.
 今回は,昨年と同様に可能ならアサギマダラのマーキングをする事にして出発しました.

ナガサキアゲハの幼虫 アズチグモ ゴンズイ

 元清風荘の横を通ったときに,黄色がかかった橙色の花を咲かせた大きなキンモクセイ(金木犀,モクセイ科)の木を見て,中国から江戸時代に来たというキンモクセイのセイの文字に動物の「犀」という文字をどうしてあてているかという話になりました.樹肌が犀の肌に似ているからということでした.ケニアの自然公園で私は,犀に触ってきましたが,このことを意識したことはありませんでした.本当かどうか平和公園の中でキンモクセイを見つけて確認してみることになりました.キンモクセイの薫る頃は,松茸の季節でもあり,松茸は里山のような手入れが出来て傘のさせる山がよいそうですので,平和公園も里山化することによって,アカマツもあるので松茸が採れるようになるのかなとふと思いました.

【外部リンク】ハーバルライフ(PLANT A TREE PLANT LOVE)

 平和公園駐車場の中の里山の家に寄り,アサギマダラを捕獲してマーキングするため,里山の家に保管してある補虫網を参加者に配布しました.すぐ近くで,クスノキの樹皮を少し剥いで,樟脳のにおいがするかどうかを試した参加者がいました.木によってにおかどうかの個体差があるようです.
 先月観察した紫色のスホウチク(蘇枋竹,イネ科)の花は既にありませんでしたが,スホウチクの実(笹米)ができ始めていました.すぐ横の畑では,ナノハナが小さな芽を沢山出していました.この形で冬を越すそうですが,間引く必要があるそうです.ナノハナ畑の横に「耕作禁止(名古屋市)」と「ナノハナを植付けました(なごや東山森づくりの会,名古屋市)」の立て札が並んで立っており,おかしいという参加者がいました.

元清風荘のキンモクセイ スホウチクの実

 道端に沢山実を付けているエノコログサ(狗尾草,イネ科)を観察しました.緑色で穂が重くてたれているものと,金色でまっすぐな穂のエノコログサがあり,普通のエノコログサとキンエノコログサ(金狗尾草,イネ科),およびアキノエノコログサ(秋の狗尾草,イネ科)のどれかということでした.観察した2種が同じだと言う人もいましたが,根っこから引き抜くと,明らかに別の株から出ており,別種だということになりました.

【外部リンク】エノコログサとアキノエノコログサの区別点(岡山理科大学 植物生態研究室)

 後で調べてみると,緑色のたれた長い穂をもっているのがアキノエノコログサで,直立して金色の穂を持っているのが,キンエノコログサでした.小さな直立した穂を持った普通のエノコログサもあったように思います.いくつかのエノコログサの穂の中の種は,鳥に食べられた跡がありました.エノコログサの実を採って小麦粉と混ぜてエノコログサクッキーを作った人がいるという話がでました.おいしくはなかったようですが,今回もエノコログサの小さな実の皮を剥いて食べて,デンプンの味がすると言う参加者がいました.
 次にカゼグサ(風草,イネ科)を観察しました.大変可憐なので,最近はドライフラワーにして花屋で売っているそうです.細長い葉を下から指の間で挟んで,引っ張るようにして何か感じないかという問いかけがありました.最初に伸びるような感じがするという参加者もいましたが,途中で折り曲げたような跡があることが分かりました.昔は,風で折れた跡だと思われたようですが,全ての葉にあり,形態としてこのような特徴を持っているということでした.ダーウィンが見つけた人間の耳のいちばん外のひだの内側に,かつて耳がとがっていた頃のなごり(ダーウィンのポイント)と同じような感じだそうです.カゼグサなどの葉を結んで罠を作って,走って逃げて追いかけてきた友達を転ばせるような遊びがあったことを思い出しました.私は,どちらかといえば転んだ方ですが,大人にはひどく叱られる遊びであることを思い出しました.今ならいじめと言われ,肉体的にも体力のない子供達にとっては大変なことになるでしょうが,その当時は,子供達は草原で転んでも,膝をすりむく程度で怪我はほとんどしなかったように思います.近くにチカラシバ(力芝,イネ科)も沢山あり,名前が分からずこれはエノコログサとは違うと言う参加者もいました.

アキノエノコログサとキンエノコログサ カゼグサの花 カゼグサのへそ

 芝生広場前の水田の糯米のイネを観察しました.山側の水田は,いつも日陰になっており,稲穂に実がそんなに入っていない様子でした.来月,稲刈りだそうです.周辺には,まだ,ミゾソバの花が沢山咲いていました.白とピンクのかわいい花で,多くの参加者が写真を撮りました.周辺のガマの穂を触ると沢山の綿状のものが周辺に飛んで行きました.
 水田から山すその道を戻って畑地に行って,ワタ(綿,アオイ科)を見に行きました.薄茶色の綿(ブラウンコットン)が出来ていました.まだ,一部には黄色い花も残っていました.
 薮こぎをして斜面を登って,星ヶ丘側の小径に出ることにしました.途中で,可憐なラッパ状の青い花を咲かせているヒメシャジン(姫沙参,キキョウ科)を一株見つけました.このあたりの横が10段の段々畑を予定している場所で,名古屋駅方面のビルがよく見えました.

ミゾソバの花 ワタの花と綿 ヒメシャジン

 小径に出て,岩積みの所でイタドリ(虎杖,タデ科)が白っぽい実を沢山つけているのを観察しました.イタドリがこんなに大きくなっているのに驚きがありました.周辺には,紫の花を付けたハギ(萩,マメ科)も沢山ありました.ススキ(薄,イネ科)の花や積み石の下部に咲いていたフユノハナワラビ(冬の花蕨,ハナワラビ科)も観察しました.小径の脇に実を付けたシャシャンボ(小小ん坊,ツツジ科)もありました.今年は,昨年より実が多いようです.まだ,緑色の実を付けた木と既に黒い実を付けた木がありました.黒い実を食べた参加者もいましたが,まだ,そんなに甘くなかったようです.今年は,シャシャンボのジャムを作ることにしているそうです.小径の脇にあるウルシ(漆,ウルシ科)とヌルデ(白膠木,ウルシ科)の実を比較して観察しました.赤い実の付いたゴンズイ(権萃,ミツバウツギ科)も1本ありました.
 フジバカマ(藤袴,キク科)を育てている人で,昨年は数十頭きたアサギマダラが,今年は1頭も来ておらず,アサギマダラは今年は少ないか,通り道を変えたかもしれないという話が出ました.4ヶ所も虫に産卵された跡を持つコナラ(小楢,ブナ科)のドングリを見つけた参加者がいました.ゾウムシは,産卵すると周辺に
臭いのある物質を塗り,他のゾウムシが産卵しないようにするそうですが,このドングリはどうなっているかという疑問が出ました.

イタドリの実 ハギの花 フユノハナワラビ

 平和公園の北駐車場の近くで,背の低いキンモクセイ(金木犀,モクセイ科)を見つけて,樹肌を観察しました.確かに淡灰色の幹の紋斑が動物の犀の表皮に似ていました.触って見ましたが,肌触りは犀と一緒ではないように感じました.アサギマダラを周辺で見つけた参加者がいましたが,逃げられてしまいました.近くのクリ(栗,ブナ科)の木の下に,栗のイガだけがたくさん落ちていました.子供達は栗の実を探しましたが,残念ながら誰かが持って行ってしまったようでした.実の入った小ぶりのイガグリを1つだけ見つけて子供に渡しました.靴で踏んで,中の実を出しましたが,ごく小さな実(植物的には種)で,成熟しなかったものでした.子供達は,「栗の赤ちゃんだ.大きくなるといいね.」と言っていました.

キンモクセイの樹肌 クリのイガの中身の観察

 パンパスグラス(イネ科,別名:白銀葦)が近くにある広い草原で,ミツバアケビ(木通,アケビ科)の実,ヒメクグ(姫くぐ,カヤツリグサ科)及びカタバミ(片喰,カタバミ科)を観察しました.カタバミを食草としているヤマトシジミもいました.屈んで子供目線で,この草原を見てみました.草の丈は高くかなり歩きにくい様子が写真に撮れました.
 この草原の端の日陰で昼食を食べながら長い長い感想会をしました.日陰では,少し小寒い感じで,背中を陽にあてて,体を日陰におくと気持ちがよいという参加者もいました.周辺ではエンマコオロギとマツムシがしきりに鳴いていました.いつものように,初めて参加した人達は,名古屋市内にこんなによい所があることを知らなかったという感想がでました.平和公園をさらに里山化して,野鳥の渡りの場とするとともに,日本人の原風景を残したいということが話題になりました.すがすがしい楽しい観察会になりました.

ヒメクグ

観察項目:ナガサキアゲハの幼虫,アズチグモ,ゴンズイ,キンモクセイ,クスノキ,スホウチクの笹米,ミゾソバ,シロバナサクラタデ,エノコログサ,キンエノコログサ,アキノエノコログサ,糯米のイネ,ナンキンハゼ,ガマの穂,ヒョウタン,ワタ,イタドリ,ハギの花,ススキの花,フユノハナワラビ,シャシャンボ,ヒメシャジン,ミツバアケビ,アサギマダラ,ヤマトシジミ,カタバミ,ヒメクグ,クリ,シロガネイソウロウグモ,ヒロオビノメイガ,アカメガシワ,ウルシ,ヌルデ,オオタカ(概ね観察順)

伊藤義人 監修 滝川正子

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2008-7-19 618

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