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2006年 > 11月度の観察記録
11月度の観察記録
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 快晴でしたが,風が強く日陰にいると我慢できなくなる程寒く,冬はそこまで来ているという感じでした.トウカエデ(唐楓,カエデ科)は,個体差が激しいですが,一部の木は見事な紅葉を見せていました.街路樹の桜も黄葉していましたが,かなり落葉してしまった木も多く,昨年のようにはきれいではありませんでした.元清風荘のピラカンサス(別名:橘擬,バラ科)は,見る人もいないのに赤い実を沢山付けていました.センダン(栴檀,センダン科)も,葉をかなり落として実がよく見えるようになっていました.新池のスイレン(睡蓮,スイレン科)は,勢いをなくして,強い風が吹くと丸い葉が一斉に起きあがりウチワのように動いていました.そのスイレンの中を1羽のカルガモが動きにくそうにしていました.池の周辺では,ハトの大群にパン屑をやっている人がいました.また,2羽のカワウが羽を広げて乾かしていました.コサギも飛んできて,水門の鉄製の手すりの上で日向ぼっこをしていました.参加者は,集合時間には少なく,子供も1人もおらず心配しましたが,出発時には子供9名を含む54名と大勢となりました.

トウカエデ 元清風荘のピラカンサス センダンの実 カワウ
コサギ

 集合場所で,まず先月の報告を見ました.先月観察したナガサキアゲハの幼虫は,里山の家で蝶になって,先週放蝶したそうです.1頭は雌で大きな蝶になったそうです.暖かい里山の家の中で育て,今の時期に蝶になって大丈夫かという質問が出ました.冬は蛹で越すので,まだ大丈夫ではという希望的な観測が述べられました.アサギマダラは,平和公園においては今年はマーキングできなかったという報告がありました.平和公園以外で,フジバカマ(藤袴,キク科)に,毎日アサギマダラが来ていたという報告もありました.残念ながら,そこでもマーキングされたアサギマダラは見ていないそうです.
 先月観察した紫色の花の植物をヒメシャジン(姫沙参,キキョウ科)としましたが,セキヤノアキチョウジ(関屋の秋丁子,シソ科)ではないかという参加者がいました.現地で確認することになりました.
 ウラギンシジミを標本にして持ってこられた参加者がいました.両面がガラスになっていて,翅の表面と裏面がきれいに見えました.裏面の銀色が鮮やかでした.参加者が持ってきたスダジイ(すだ椎,ブナ科)の実を皆で食べました.毎年食べているマテバシイ(全手葉椎,ブナ科)のドングリよりは細長く小さなドングリでした.歯でドングリを割って,生食をしましたが,ほのかに甘みがあり,十分食べられるものでした.ビンの中に別種のドングリが混じっており,誰かが誤って食べて感想を言うのを待ちましたが,誰も違うドングリを食べませんでした.同じスダジイのドングリでも,大きさがかなり違うことを観察しました.

スダジイの実

 いつもとは違い,南側の斜面から平和公園に入りました.すぐに,びっしりと黒紫の実のなったシャシャンボ(小小ん坊,ツツジ科)を見つけました.実の周辺の枝には,葉はありませんでした.シャシャンボは常緑ですが,実が多くなると周辺の葉が落ちるということでした.皆で実を採って食べましたが,まだ酸っぱい味でした.シャシャンボとよく似ている近くのヒサカキ(姫榊または非榊,ツバキ科)と比較しました.ヒサカキの実は食べられないということが話題になったときに,あえて食べた参加者が複数いました.食べた子供の参加者から「まずい,苦い,死にそう」という感想が出ました.シャシャンボとヒサカキの違いは,実を食べてみればすぐに分かりますが,実の付き方が,シャシャンボは,枝の先の方に穂のように付き,ヒサカキは,葉と一緒に枝に付いていることが観察されました.実を採ると,ヒサカキはカキのようにへたが付いてとれましたが,シャシャンボはへたが付かずその部分が凹んだようになりました.葉だけでも区別でき,裏面の主脈をなでると,シャシャンボの場合はとげとげして,ヒサカキは比較的つるつるという感じでした.また,葉の先端が尖っているのがシャシャンボで,丸くなっているのがヒサカキでした.

シャシャンボの実 ヒサカキの実

 シャシャンボの木の近くに,カマツカ(鎌柄,バラ科)がありました.別名をウシ殺しという,硬い木でした.鎌の柄を作るのでこの名前が付いたということです.赤い実を1つだけ付けていました.ある参加者が誤って採ってしまいました.リンゴの系統なので,この実は食べられるという話に乗って,食べた参加者がいました.味はしないという感想でした.すぐあとで,上の方にもう1つの実を見つけました.この木は陽当たりが悪いので,実の付き方がよくないようです.近くにツルウメモドキ(蔓梅擬,ニシキギ科)があり,黄色い実を沢山つけていました.葉が梅に似ていて,蔓状なので,この名前がついているそうです.ミツバアケビ(三葉木通,アケビ科)の実を,3mくらいの高さの樹上で見つけて,観察しました.周辺にはもっと沢山,ミツバアケビはあったはずですが,稔った実を皆が持って帰ってしまったようでした.カワラヒワが鳴いて羽の模様を見せて飛んで行きました.

カマツカの赤い実 ツルウメモドキの実

 少し先に進んだ所で,子供が直径3cm 程の真円に近い穴のあいた桜の枝を拾ってきました.枝の中心部はスカスカでした.虫に食われたというより,自然に腐ったもので,丸い穴はコゲラなどの鳥があけたのではということになりました.
 木片チップをまいた小径のあちこちに,10cm 大のかたまりとなって細長い黒茶色の幼虫が沢山うごめいていました.ケバエの幼虫の集団でした.うごめいているのを見て,吐きそうという女の子がいました.数匹を透明な容器に入れて観察しました.大事な所をかまれた人がいるという話が出て,顎があるかどうか,また,脚があるかどうかも観察しました.顎はありましたが,脚はないことが分かりました.虫眼鏡で観察すると長い体毛がありました.ハエにしては,体長が長すぎる(15mm 程度)という指摘に対して,ケバエの成虫も細長いという回答がありました.どうしてかたまっているのかという問いに,親戚で団居しているという以外は,誰も答えられませんでした.
 小径の谷側に,数cm 大の球形のホコリタケ(埃茸,別名:チャブクロ,ホコリタケ科)が沢山ありました.木の枝でつつくと,名前の通りほこりのような胞子が煙のように出てきて,子供達は喜んで次々とつついていました.喘息にならないかと心配する参加者もいました.まだ,硬いときに食用にするようです.マッシュルームと思えばよいですが,煙のような胞子が出てくるのを見ると,とても食べたい気分にはなりませんでした.

ケバエの幼虫

 近くのアベマキ(阿部槇または?,ブナ科)の木の根元に,カシノナガキクイムシ(?)の入った木の穴が見つかりました.根元には木くずがありました.最近,全国の里山で,この虫に入られたカシ,シイ,ナラなどの木が枯れることが問題になっているそうです.この虫は,木に穴をあけて入り込みますが,一緒に付いて入るナラ菌が悪さをして,幹が水を通さなくなり枯れてしまうそうです.里山が管理されず老齢の樹木が増えて,抵抗力が小さくなったことも1つの原因だそうです.

【外部リンク】森林総合研究所関西支所 研究情報No.80
【外部リンク】和歌山県情報館「広葉樹が枯れる!!」

 陽当たりの良い場所の低い樹木の葉に,大きなキイロスズメバチがとまっていました.気温が低いので弱っている様子で,近寄っても飛び立たず,じっくりと観察できました.近くでシジュウカラの甲高い声も聞こえました.
 先月,ヒメシャジン(姫沙参,キキョウ科)とした花が咲いていたあたりに行きましたが,残念ながらその花は見あたりませんでした.誰かが持っていってしまったのかもしれません.先月の観察会の次の日も見に来た参加者から説明がありました.ヒメシャジンの花は,ラッパ状で,先月観察したのは花の先端がチョウジ(丁子)のようであったので,アキチョウジ(秋丁子,シソ科)かセキヤノアキチョウジ(関屋の秋丁子,シソ科)であるということでした.
 岐阜県を境に,西はアキチョウジで,東はセキヤノアキチョウジで,愛知県には両方あるようです.セキヤ(関屋)は箱根の関の意だそうです.ハンノキ湿地でも,この花は咲いていたそうです.日陰に地味に咲く花のようです.途中の農道の脇にウメモドキ(梅擬,モチノキ科)がありました.赤い小さな実をつけていました.

キイロスズメバチ

 芝生広場前の水田に着いて,稲刈りを子供優先で行いました.広報用のビデオカメラを持ったクルーも来ており,子供達が泥だらけになって稲刈りをしている所を撮影していました.普通の水田は,稲刈り時には水を落として乾いているはずですが,平和公園の水田は水を落としていなくて泥だらけでした.足が凍るほど冷たいという子供もいました.稲刈りの後で,芝生広場横の陽当たりのよい場所で,はざかけを行いました.はざ(稲架)には,今回は竹を使っていましたが,子供の頃に見たのは木材を使っていたことを思い出しました.使わないときは,家の壁の横につって保管されていたと思います.今は,大半の稲がコンバインで刈られ,穂を同時に採って人工乾燥させるので,名古屋近郊では田圃があってもはざかけを見なくなりました.自然乾燥させると,米は旨くなることが分かり,はざかけした米は,最近高く売れるそうです.はざかけの場所まで子供の背丈ほどの段差がありましたが,子供達は大人に助けてもらって,上手に登っていました.稲刈りを心底楽しんでいる様子でした.

【外部リンク】おもしろ昆虫記

稲刈り 稲穂のはざかけ

 ビデオクルーから,観察会が毎年ジュズダマ(数珠玉,イネ科)の実を使ってお手玉を作るということで,ジュズダマの実の収集風景も撮りたいという要請があり,若手を中心にジュズダマの実を収集しました.
 近くで,イナゴを捕った参加者がいました.イナゴは,漢字で「稲子」と書くのではという問いに,「蝗」という字を思い出した人がいました.正解は,両方とも使うようです.農薬をあまり使わなかった時代には,イナゴと水田は対であったと思います.その当時は,イナゴも貴重な蛋白源として佃煮で食べていたと思います.イナゴは,稲の何を食べるかが議論になりました.葉だけでなく成虫はモミもかじるようです.

【外部リンク】やまがたアグリネット 病害虫図鑑

 水田横のナンキンハゼ(南京黄櫨,トウダイグサ科)が非常にきれいに紅葉していました.芝生広場前の3本のシンジュ(神樹,ニガキ科)は,葉をすっかり落とし,花びらのような実が沢山ついて,風でひらひらしていました.秋が深まったのを実感しました.
 はざかけを行った陽当たり良好の場所で,感想会をしました.相変わらず風は強く,遠くのカラスやヒヨドリも風にあおられて,うまく飛べない状況でした.背の高い木々の先端がざわざわと鳴っていましたが,感想会の場所は,風もほとんどなく,快適な日向でした.

紅葉したナンキンハゼ

 モチ米を植えた筈なのに,ウルチ米に近いものもできたということで,稲刈りをした米がモチ米かウルチ米かを比較しました.ビニール袋に入ったモチ米の玄米とウルチ米の玄米および白米と,収穫した米を食べ比べました.収穫した米の形からは,モチ米とウルチ米が混ざったもののように見えました.味は,生米なのでよく分かりませんでしたが,確かにモチ米だという参加者もいました.
 観察会の途中で,樹木の根元の土をフルイにかけて,落ちた土を集めてきた人から,今後,この中から昆虫を見つけだすという話がありました.ロート状の容器に入れ,上からライトをつけて乾燥させると,下から虫が出てくるそうです.
 子供達から,泥だらけになった稲刈りが大変楽しかったという感想が出ました.冬の前の残りわずかの秋を楽しんだ観察会になりました.
 感想会後の帰り道で,平和公園の入口近くにある,先月観察したスホウチク(蘇方竹,イネ科)を見に行きました.テングス病によって,一部分が花が咲いたように見えるという話がありましたが,先月は確かに紫の花が咲いていました.地下茎が一緒の笹は一斉に花が咲くと言われていますので,何故一部分しか花が咲かなかったかは今後の課題になりました.スホウチクの横で,頭に少し怪我をしている大きなアオダイショウを見つけました.子供達は興奮しながら観察していました.

収穫した米の比較 頭に傷を負ったアオダイショウ

観察項目:トウカエデ,ピラカンサス,センダン,コサギ,カワウ,ウラギンシジミの標本,スダジイの実,シャシャンボ,カマツカ,ヒサカキ,ツルウメモドキ,ミツバアケビの実,カワラヒワ,トウカエデ,センダン,ケバエの幼虫,キイロスズメバチ,ホコリタケ,カシノナガキクイムシ(?)の入った木の穴,ウメモドキ,イネ,シンジュ,ジュズダマ,イナゴ,モチ米の玄米,ウルチ米の玄米と白米,アオダイショウ,スホウチク(概ね観察順)

伊藤義人
監修 滝川正子

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2008-7-19 771

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