昨日の雨はすっかりあがって,風のないむし暑い日になりました.最初は雲っていましたが,後半では陽も差してきて,風がまったくないため歩くと汗が噴き出しました.しかし,草木も虫たちも生命あふれるという感じでした.水面にコシアキトンボなどが飛んでいた新池では,白いスイレン(睡蓮,スイレン科)の花が咲いていました.鳥たちは,残念ながらムクドリ,ヒヨドリおよびスズメなどの標準種だけでした.今回は,観察会の代表者が都合で来られず,代表者の教え子の女性が代役をしました.参加者は,めずらしく21名と少なく,こぢんまりとした観察会でしたが,子供が9名と多くて,子供達に引っ張られる形で観察会が進みました.集合場所でも,子供達は周辺で虫とりなどに興じていました.蜂に驚く女の子達と虫捕りに余念のない男の子達でした. まず,いつもの集合場所で,先月の報告を見ました.ザトウムシの名称の由来について,第2肢で探るように歩くので,その名称がついたことが紹介されました.代表者の代役の人が,キリギリスを捕まえるために,ネギをさした枝を5〜6本用意されていて,子供達が早速興味を持ちました.キリギリスが鳴いている草むらに差し入れるとキリギリスがネギに飛びついてくるそうです.
参加者が持ってきたゾウムシとアカトンボ(種は同定できず)の紹介もありました.また,ホテイアオイ(布袋葵,ミズアオイ科)とオオフサモ(大房藻,アリノトウグサ科)の水草を沢山持ってきた参加者が,金魚などを飼う人にあげるというアナウンスもありました.今回は,先月に引き続き仕掛けた虫とりのトラップを調査するのと,12月の観察会で根際を食べたカンゾウ(萓草,ユリ科)の花を見に行くことにして出発しました.住人のいなくなった元清風荘の庭では,ムクゲ(木槿,アオイ科)の大きな白い花がきれいに咲いていました. 平和公園に入ってすぐにオニユリ(鬼百合,ユリ科)のムカゴ(珠芽)を観察しました.オニユリは,不稔性で種はできませんが,ヤマイモで有名なムカゴができます.これを植えると芽がでるそうです.すぐ近くにヘクソカズラ(屁糞葛,アカネ科,別名ヤイトバナ)のラッパ形の小さな花が咲いていました.葉を揉んでにおいをかぐと名前の由来どおりのにおいがするという説明に,女の子達は嫌がり,男の子達は早速実践して騒いでいました.今も昔も子供達の反応は変わらないようでした.
少し進んだところで,ヤマウルシ(山漆,ウルシ科)とヤマハゼ(山櫨,ウルシ科)を観察しました.ヤマウルシは,表面に毛のついた茶色の小さな実を沢山つけていました.一方,ヤマハゼは似たような大きさの実をつけていましたが,毛はついておらず,まだ緑色でした.遠くでニイニイゼミが,弱弱しく鳴いていました.1週間もすればクマゼミやアブラゼミが出てきて,騒がしくなるでしょう.道端のトウカイコモウセンゴケ(東海小毛氈苔,モウセンゴケ科)の花を観察しました.先月は,花は咲いていませんでしたが,今回は,長い茎の先端に非常にきれいな白い5弁の花を咲かせていました.食中植物のグロテスクな葉と可憐な小さな花の対比が何ともおもしろいものでした.モウセンゴケの葉は「おたま」形で,コモウセンゴケは「スプーン」形で,トウカイコモウセンゴケは,その中間だそうです. 以前はコモウセンゴケの関西型といわれていましたが,モウセンゴケが2倍体,コモウセンゴケが4倍体で,トウカイコモウセンゴケが6倍体で,葉の形も多少違うようです.トウカイコモウセンゴケの花はピンクで,ここのは白なので,トウカイコモウセンゴケではないのではという参加者もいました.
アオスジアゲハが飛んできて,クスノキ(樟または楠,クスノキ科)に産卵をしていました.早速,アオスジアゲハが飛んだ跡のクシノキの葉に産み付けられた卵を観察しました.1mm 弱の真珠色の卵でした.ひらひらと飛んで,ばらばらに産んでいるようでした.近くの背の低いアベマキ(阿部槇,ブナ科)の葉にたくさんの虫コブがついていました.虫コブをナイフで割っても中に虫はいませんでした. この観察会の代表者のもう1人の教え子の若い男子学生が,捕虫網でモンスズメバチを捕まえました.網の外からじっくりと観察しました.日頃は,怖くて近づけないですが,じっくりと見てみると,非常にきれいなことが参加者に確認されました.もちろん観察後,放してやりました.
近くのハギ(萩,マメ科)には,小さな紫の花がついていました.ヌルデ(白膠木,ウルシ科)とイタドリ(虎杖,タデ科)も観察しました.ヌルデは奇数羽状複葉で葉軸に翼があるのが最大の特徴で,他のウルシ科の木と区別できます.先端の小葉が他の葉とくっついたものも観察しました. やっとトラップを仕掛けたところに行き,最初のトラップをあけました.アリ,クモ,ハエが入っていましたが,トラップの蓋が下過ぎてうまく昆虫が入らなかったようでした.子供達が,ゴマダラカミキリをどこかから捕ってきました.非常にきれいな色をしていますが,蜜柑を栽培している人にはひどく嫌われる虫です.
周辺に,ヤブカンゾウ(薮萓草,ユリ科)の橙色の花が咲いていました.花の形から,確かにユリ科であることが分かりました. 既に,花の最盛期は終わっている感じでした.昨年12月に,根際を食べるために沢山採った場所では,花は咲いていませんでした.少し採りすぎたかもしれません. 2つ目のトラップにはクロマルクビゴミムシおよびアリが入っていました. 3つ目のトラップは水浸しでした.4つ目のトラップには,オサムシ,ザトウムシおよびカメムシの一種の幼虫が入っていました.カメムシの種類は同定できませんでした.
芝生広場近くの木柵の柱に付いているヒメベッコウ(カリバチの一種)の巣を観察しました.泥で縦長に複数の部屋(今回は11室)をつくり,狩ってきたクモの脚を取って,麻酔をかけて,それぞれの部屋に卵と一緒に入れるそうです.カンゾウを観察した場所で,野草の葉にもこの巣が作られていました.芝生広場前の新しい水田にはアメンボが沢山いました.このアメンボも子供達には珍しいもののようでした.
芝生広場の枯れた木に,コゲラの巣穴や練習であけた穴(?)を複数見つけました. 周辺では,つばめが忙しく飛んでいました.もう,2番子か3番子の子育てでしょうか. 最後に,感想会を芝生広場で行いました.子供達も感想を簡単に言いました.キリギリスも含め虫たちが沢山いて良かったというのが多かったようです.残念ながら,用意したキリギリス釣りのためのネギは役立たなかったようですが,キリギリスは1匹捕まえました.風がなく非常にむし暑かったですが,草木や昆虫の生命あふれる様子に圧倒された観察会でした.感想会のときに,甘い手作りお菓子が振る舞われ,歩いて疲れていたので,皆がきそって食べました.私も,思わず2つ食べてしまいました.子供達が自分の分が無くなると心配そうでした. 平成17年7月の観察項目:ゾウムシ,アカトンボ,ホテイアオイ,オオフサモ,オニユリのムカゴ,ヘクソカズラ,ヤマウルシ,ヤマハゼ,アオスジアゲハとその卵,モンスズメバチ,アベマキの虫こぶ,クスノキ,ソヨゴ,ハギ,ヌルデ,トウカイコモウセンゴケ,カマキリ,キリギリス,エンマコオロギ,ショウリョウバッタ,カブトムシ,アリ,ゴマダラカミキリ,クワカミキリ,クロマルクビゴミムシ,オサムシ,ザトウムシ,カメムシ,アメンボ,ヤブカンゾウ,カナヘビ,ノカンゾウ,ヒメベッコウの巣,ベニシジミ(概ね観察順)
平成16年8月の観察項目:キカラスウリ,イヌビワ,イヌビワコバチ,コガタスズメバチ,セミの羽化写真,ショウリョウバッタ,トノサマバッタ,クビキリギス,オンブバッタ,ハラビロカマキリ,タカサゴユリ,マメガキ,オミナエシ,ニホンミツバチ,トックリバチの巣,クマバチ,アオスジハナバチ,アゼムシロ(ミゾカクシ),コムラサキシキブ,カラスウリ(雌株の花,雄株の花),ニガウリ,エビスグサ,ヒョウタン(雌花,雄花),クモの子,シオカラトンボ,オオシオカラトンボ,コガネグモ,フサモ,ヒメタイコウチ,シロバナサクラタデ,ミソハギ,サギソウ,ミズギボシ,ヌマトラノオ,リョウブ,キイロコウラコマユバチ(?),ツクツクボウシ,ヤマトシジミ,カタバミ,アミタケ,ウチワヤンマ,チョウトンボ,ナナフシ,ウマオイ,メヒシバ,オヒシバ,カゼグサ,ナツズイセン,ニホンアカガエル,オオカマキリ,ザリガニ,カナヘビ(写真は,観察会の本「なごや平和公園の自然」をご覧ください.) 伊藤義人 監修 滝川正子 |
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| 2008-7-19 | 831 | |
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