日差しの強いむっとする8月特有の観察会になりました.草木も暑さにうだっているような感じでした.それでも,ツクツクボウシの鳴き声,クズ(葛,マメ科)やワレモコウ(吾木香,バラ科)の花など,その暑さの中に秋が潜んでいるのが感じられました.新池の水面はほとんど水草で覆われていましたが,残された狭い水面を種々のトンボが飛んでいました.元清風荘の庭では,サルスベリの白い花が咲いていました.9時半の集合時間には,12名くらいの参加者しか集まらず,お盆で子供達も含めて,田舎に帰っているのだろうということで,今日来ている人達は余程変わり者だろうと言う人もいました.結局,出発時には25名になり,3名の子供の参加もありました.なお,久しぶりにチョウに詳しい参加者が来られました.2年間の予定で,沖縄で働かれるということで,今日はお別れに来られたようでした.
まず,いつもの集合場所で,先月の報告を見ました.アオスジアゲハの卵が,クスノキ(樟または楠,クスノキ科)の葉の新芽に付いている写真が話題になり,幼虫が食べやすい柔らかい葉にしか産まないという説明がありました.また,トウカイコモウセンゴケ(東海小毛氈苔,モウセンゴケ科)の花はピンク色で,平和公園の花は白なので,当面,種名は不明ということになりました. 清風荘跡地を,名古屋市が公社から買い戻して,東山の森の拠点として,宿泊施設や博物館などの建設が計画されているとの報告がありました.今後も,要求を出し続けていく必要があるとのことでした. 参加人数が少なかったので,久しぶりに簡単な自己紹介をしてから,集合場所を出発しました.すぐに,セミの抜け殻を見つけ立ち止まって,種々のセミ談義になりました.参加者の1人が持ってきたクマゼミの羽化の写真を見ながら,アブラゼミの羽化はよく見ますが,クマゼミの羽化を見るのは難しいという話がでました.クマゼミは,だんだん北上しているそうですが,まだ,仙台には到達していないそうです. 乾燥に強く都会で繁殖しているそうです.東京では,昔はクマゼミはいなくて,その影響で漫画などでもセミの鳴き声は「ミーンミン」と,まだ表記されているようです.名古屋市内でも,私の子供時代はクマゼミはほとんどいませんでした.ニイニイゼミとアブラゼミが大半で.翅が透明なクマゼミやツクツクボウシを捕まえると自慢できたことを思い出しました.10〜15年くらい前に,子供達を連れてセミ捕りに行って,クマゼミが沢山とれたときはびっくりしました.なお,クマゼミは,午前中にしか鳴かないと言う話もありました.クマゼミは大きすぎて,最近の小学生は怖がるという指摘もありました.腹を鳥に食べられて死んだセミを路上で3?4匹見ましたが,全てアブラゼミでした.セミをテンプラにするとエビ天のようだという参加者がいましたが,誰か試したのでしょうか. 折れた桜の枝にカミキリムシが食べた跡がありました.虫が出てきた穴も複数付いていました.カミキリムシは,漢字では天牛と書き,ミカン農家には嫌われるそうです.実際にミカンを栽培している参加者によると,弱った木に毎年この虫はとりつくそうです.弱いものは,淘汰されるという話になりました.人間社会にこれをダイレクトに当てはめると大変ですが. 平和公園入口の駐車場にプレハブの「東山の森里山学校」のリース建物が建っていました.今後,種々の目的のために使えるようです.歩道の真ん中でオオカマキリの幼体がじっとしていました.目の周辺で手を振っても動かないので,死んでいるのかと思い後ろを押すと脱兎のごとく動きました.残念ながら,非常に早く動いたため,参加者に踏まれてしまいました.
すぐ近くの歩道横のいつものアップルミント(Apple Mint,シソ科)を見に行きました.丁度,花が咲いていて,ヤマトシジミやクマバチなど種々の昆虫が集まっていました.このミントの味はよくないそうですが,花の蜜は昆虫たちに大人気のようでした. ナガコガネグモも周辺にいましたが,写真を撮る前に,1人の参加者が蜘蛛の巣に触り,クモは下に落ちてしまいました.ジョロウグモとカヤツリグサ(蚊帳吊草,カヤツリグサ科)も近くで観察しました.蚊帳をしらない若い人には,この名前は理解できないという話が出ました. 周辺のエノキ(榎,ニレ科)にぶら下がったカボチャの実を観察しました.横の畑から蔓が伸びて,エノキを伝って,頭上に実がなっていました.このカボチャの実は,通常の横長の円筒形と違って縦長になっていました.重力の影響かもしれません.蔓は葉が変形したものであるという説明が,実際のカボチャの蔓を観察しながらありました.近くの枝には,オオカマキリがぶら下がっていました. カラスウリ(烏瓜,ウリ科)の花を見に,畑まで行きました.近くにナツスイセン(夏水仙,ヒガンバナ科)のピンク色の花が咲いていました.カラスウリの白い雄花は,全てしぼんでいました.既に,小さなうりぼうのようなカラスウリの実もなっていました.
畑には,トウガン(冬瓜,ウリ科),ヘチマ(糸瓜,ウリ科),エビスグサ(夷草,マメ科,別名ハブソウ),アピオス(Apios,マメ科,別名アメリカホドイモ),サツマイモ(薩摩芋,ヒルガオ科),ワタ(棉,アオイ科)などが植えられており,順次観察しました.トウガンとヘチマの区別が出来ない参加者もおり,都会の人は困ったものだと言って冷やかされていました.ヘチマは,江戸時代に中国から入って来て,糸瓜(イトウリ)と言われており,それから「イ」が取れて,トウリに変化し,「ト」はイロハ歌の順からいうと,「イロハニホヘトチ」のように「ヘ」と「チ」の間にあるので「ヘチマ」としゃれで言われたのが一般的になったという解説がありました.ついでに,同じイロハ歌を語源とする「山の神」(自分の口うるさい妻の呼称)の由来についても説明があり,「うゐのおくやまけふこえて」にかけて,「おく(奥)」が「やま」の上(かみ)にあるので,このように言うようになったとする説です.アピオスは,マメ科ですが,イモのような地下茎を食べるそうです.あっさりしておいしいそうです.
芝生広場前の水田近くで,ワレモコウ(吾木香,バラ科)とミソハギ(禊萩,ミソハギ科,別名ミゾハギ)の花を観察しました.もう,自然の中では秋の準備が進んでいるという感じでした.湿地のサギソウは,今年も白いきれいな花を咲かせていました.シラタマホシクサ(白玉星草,ホシクサ科)は残念ながら今年も見ることができませんでした.ワレモコウの近くには,カキツバタ(杜若,アヤメ科)がまだ花を咲かせていました. ここから2ヶ所のスズメバチの巣の跡を見に行きました.巣は危険なため既に撤去されたものです.まず,芝生広場横のシンジュ(神樹,ニガキ科,別名ニワウルシ)の地面から1mくらいの高さのうろの中に出来ていた巣を見ました.まだ,縁にスズメバチの巣の残骸が付いていました.巣は蜂が木の樹皮を砕いて唾液と混ぜて固めたものを陶器をつくるようにして曲面を造るので,縞模様は材料に使う樹皮の色の違いからできるそうです.燃やして見ると抹香臭いにおいがしました.ベッコウハゴロモとオナガグモの幼体を,観察ビンに入れて観察しました.オナガグモは,外見ではとてもクモにみえませんが,尾(実は腹)が長く緑色をしており,他のクモを狩るそうです.チョウの好きな参加者が捕ってきたシロテンハナムグリも観察しました.うろの中から急にヤモリが出てきて,トカゲと見間違う人もいました.
芝生広場で,ホオズキ(鬼灯,ナス科)の実が配られ,昔に戻ってホオズキ笛を作りました. 毎年,スズメバチの巣ができるもう1つのシンジュのうろを見にいきました.途中で,先週観察したヒメベッコウの巣を見ましたが,既に穴があいており,巣立ったようでした.シンジュのうろは,その前に見たものと同じような大きさでした.シンジュは成長が早く軟らかいのでうろができやすいという指摘がありました. キスズメバチの死骸が中にありました.シンジュの根元からアリが,しきりに白い卵を運んでいました.アリが分家しているのか,根元の巣が大雨で水没するのを避けているのかという疑問が持ち上がりました.根元のアリの行列に巻きタバコの葉を置いてやり,フェロモンを無効にして,行列が乱れるかどうか試しましたが,感想会を終わってから見ても,多少,行列のアリが少なくなっていただけでした.なお,これらのシンジュに,毎年スズメバチの巣ができるので,切ってくれという要望が市民から名古屋市にあるそうです.スズメバチは都会の中でも棲んでおり,攻撃したり巣に近づかなければほとんど害はないので,平和公園では注意して共生すればよいでしょう.逆に,スズメバチの巣ができないような公園では来る意味がなくなるのではと思います.
ナナフシを見つけて.女の子の腕を伝って歩かせたところ,くすぐったそうでしたが,いやがる様子ではありませんでした.最近は,ナナフシも少なくなったそうです.忍者赤影のナナフシの術(姿を風景にとけ込ませる)を使う村雨右門を思い出した参加者もいました. 感想会を,シンジュの近くで行おうとしましたが,狭いのでもう少し移動して,日陰の場所で行いました. 周辺にナデシコが咲いていました.風が吹くと,気温は高くても非常に気持ちのよい感じがしました.秋の気配が既にあるという話になったときに,丁度,ツクツクボウシが鳴き出しました.モンキアゲハもさっと森の中に入って行きました.チョウの好きな参加者が,ホオズキ笛にちなんでウミホオズキの話をしたら,沖縄ではまだ売っているという指摘が他の参加者からありました. 前日に足をくじき,多少歩くのがつらかったですが,真夏の暑さの中で季節の移り変わりを感じることが出来た観察会になりました. 平成17年8月の観察項目:カミキリムシに食べられたサクラの枝,クマゼミ,アブラゼミ,ツクツクボウシ,ニイニイゼミ,オオカマキリ,アップルミント,ヤマトシジミ,ナガコガネグモ,ジョロウグモ,カボチャ(実,蔓,花),カヤツリソウ,ナツスイセン,ミズヒキ,ヘチマ,カラスウリ,トウガン,ヒョウタン,エビスグサ,アメリカホドイモ(アピオス),サツマイモ,ワタ,サギソウ,ミゾハギ,カキツバタ,ワレモコウ,ナナフシ,ベッコウハゴロモ,シロテンハナムグリ,オナガグモ,モンスズメバチ,ヤマトアリ,クロアリ,クズの花,アオスジアゲハ,アゲハチョウ,キアゲハ,モンキアゲハ,コガタスズメバチ,ヤモリ,ホオズキ,ナナフシ,ナデシコ(概ね観察順) 伊藤義人 監修 滝川正子 |
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印刷用観察記録No26(050814)
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| 2008-7-19 | 914 | |
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