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2008年 > 6月度の観察記録
6月度の観察記録
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 雨を心配しましたが,天気予報通りずっと曇りで,昼頃にはわずかに日も差してきました.木陰に入ると冷気が降りてきて大変気持ちの良い日になりました.新池の水面は,例年通りスイレン(睡蓮,スイレン科)に半分以上覆われてしまい,水鳥はいませんでした.数羽のムクドリ(椋鳥,ムクドリ科)がキュルキュルと鳴いて周辺の樹木を移動していました.カワセミ(翡翠,カワセミ科)が1羽,水面上を飛んだように見えましたが,鳴かなかったので確認出来ませんでした.新池周辺の街路の歩道のキンシバイ(金糸梅,オトギリソウ科)やビヨウヤナギ(美容柳,オトギリソウ科)は,既に盛りは過ぎていましたが黄色い花を一斉にさかせていました.新池の西側の桜並木の周辺では,先月から小さなピンクの花をひっそりと咲かせているアカバナユウゲショウ(赤花夕化粧,アカバナ科)が群生していました.新池周辺のセンダン(栴檀,センダン科)は,緑の葉だけで,丸い実はまだ確認できませんでした.元清風荘は,野草で覆われオオキンケイギク(大金鶏菊,キク科)やコモチマンネングサ(子持万年草,ベンケイソウ科)が道路端にあり,もう初夏の様相でした.

 出発時には,10名の子供を含めて48名の参加者でした.その後も数名の参加者がありました.小さな子供の参加者が多く,活気のある観察会になりました.

新池 キンシバイの花 ビヨウヤナギ アカバナユウゲショウの花
新池 キンシバイの花 ビヨウヤナギ アカバナ
ユウゲショウの花

 集合場所で,まず先月の報告を見ました.先月,観察した蚕の原種のクワゴ(野蚕,カイコガ科)を持って帰った参加者がいました.このクワゴはサナギになり繭を造りましたが,結局ヤドリバエ(寄生蠅,ヤドリバエ科)に寄生されており,出てきたヤドリバエの成虫をシャーレに入れて持ってこられたものを観察しました.普通の蠅と変わらないように見えるという感想がでました.クワゴの終齢幼虫の表面に卵が産み付けられ,その卵が孵ってクワゴの幼虫に潜り込むということでした.クワゴがサナギになって,繭で周辺から守られており,うまい寄生であるという説明がありました.ずるいという感想もでました.アオスジアゲハ(青条揚羽,アゲハチョウ科)に寄生するアオスジヤドリバエのようにクスノキの葉に産卵して食べられるのを待つより効率的であるという話が出ました.寄生蠅のDNAを多少いじれば,エイリアンのように人間にも寄生するようになるのではという物騒な話をする参加者もいました.

 ゾウムシ(象虫,ゾウムシ科)を採取して研究している人が,先日子供達と一緒に平和公園でゾウムシを採取して,103番目と104番目の新種を子供達が採取して,悔しがったという報告がありました.ブタナ(豚菜,キク科)を家に持ち帰った所,家の中で時間通りに花が4日間開閉をしたという報告がありました.日光の影響はほとんど無いので体内時計を持っているのかもしれません.参加者が持ってきたものが少なかったので,9時50分には平和公園に向かって出発しました.

クワゴの繭
クワゴの繭

 平和公園に入る前の歩道で,樹木から垂れ下がっている3cm長のシャクトリムシ(尺取虫,シャクガ科)を見つけて観察しました.手にのせても最初じっとしていたので,どちらが頭かを子供達に聞きました.しかし,すぐに尺取りを始めたので,どちらが頭かわかってしまいました.シャクトリムシの脚は,他の芋虫と違って数が少なく,胸脚の6本(歩脚)は同じですが,腹脚尾脚で4本(疣脚:いぼあし,ほかの芋虫は10本)で,胴体の真ん中あたりには退化して脚がないために,あの独特の胴体を持ち上げて逆U字形になり移動するようです.石垣の上のニセアカシア(針槐,マメ科)の枝にアワフキムシ(泡吹虫,アワフキムシ科)の泡がありました.

シャクトリムシ アワフキムシの泡
シャクトリムシ アワフキムシの泡

 平和公園入口の駐車場横のコナラ(木楢,ブナ科)の枝についたヤママユガ(山繭蛾,ヤママユガ科)の幼虫を見に行きました.先月観察したもので,袋をかぶせて,逃げないようにして,かつ寄生バチなどに寄生されないようにしていたものです.サナギになりかけですが,まだ繭はできていませんでした.8cm長の大きさに驚きの声があがり,先月と同じようにきれいだという声もありました.背中に白い筋があり,ちょっと目には,葉と見間違う形でした.他にヤママユガの幼虫がいないか周辺を探しましたが,見つかりませんでした.

ヤママユガの幼虫の測定
ヤママユガの
幼虫の測定

 山側の農道を歩いていき,3〜4mm程度の小さな花を沢山つけているウメモドキ(梅擬,モチノキ科)を観察しました.雌木のようで,雌花だけでした.どうしてウメモドキ(梅擬)というのだろうという疑問が出されました.葉の形や枝ぶりが梅に似ているのと,小さな赤い実のなり方も梅に似ているということでした.ヤマウルシ(山漆,ウルシ科)とヌルデ(白膠木,ウルシ科)が並んであるところで,かぶれるので触らないように注意がありました.
畑で,子供達がモンシロチョウ(紋白蝶,シロチョウ科)を捕まえました.雄を捕まえて観察ビンに入れて,匂いをかいでレモンの香りがするかどうか確かめた参加者がいましたが,今回は微妙でよく分からなかったようです.雄と雌のモンシロチョウを,観察ビンに一緒に入れて観察していたところ,雌のモンシロチョウは胴体を折り曲げて,交尾拒否姿勢をしていました.既に交尾済みの雌が行う動作で,図鑑などには記述してありますが,皆初めて見るものでした.

ウメモドキの花 交尾拒否のモンシロチョウ
ウメモドキの花 交尾拒否の
モンシロチョウ

 畑の生垣のニシキギ(錦木,ニシキギ科)にミノムシ(蓑虫,ミノガ科)が2つついていました.最近はミノムシでさえ少なくなったという感想がでました.近くで,白っぽい薄紫色の細長い短冊状の八重咲きの花びらを付けたサラサウツギ(更紗空木,アジサイ科)を見つけました.ここでビニール袋に入れた2匹のオジロアシナガゾウムシ(尾白足長象虫,ゾウムシ科)が回覧されました.ほしいか聞かれた男の子は,目を輝かせてうなずいていましたが,その母親は嫌がっている様子でした.
 アキニレ(秋楡,ニレ科)の葉に虫こぶがたくさん付いているのを観察しました.こぶの先端が赤くなっていました,図鑑で調べるとこの虫こぶには,アキニレハフクロフシ(秋楡葉袋五倍子)という名前が付いている事が分かりました.近くで紅型のナミテントウ(波天道虫,テントウムシ科)の成虫と幼虫がいました.きれいな緑色のサツマノミダマシ(薩摩実騙,コガネグモ科)も葉の上にいました.

 【外部リンク】サツマノミダマシ(虫ナビ)

サラサウツギの花 オジロアシナガゾウムシ サツマノミダマシ
サラサウツギの花 オジロアシナガ
ゾウムシ
サツマノミダマシ

 キラニン広場から林に入る所で,2cm大の小さなカマキリ(蟷螂,カマキリ科)を見つけ,腕にはわせて観察しました.元気で楽しそうと言う感想が出ました.木の幹にいるキマワリ(木廻,ゴミムシダマシ科)も見つけて観察しました.名前の由来のようには動き回ってはおらずじっとしていました.雑木林の中のネジキ(捩木,ツツジ科)のしおれた花はまだ下を向いていました.ネジキの実は上向きになるそうです.
 ずっと歩いて,ササユリ(笹百合,ユリ科)の花を探しにいきました.花が咲き始めたという知らせがメイルであったそうです.しかし,ササユリの株はありましたが,まだ花はありませんでした.どこか別の場所のことだったのかもしれません.替わりにムラサキシキブ(紫式部,クマツヅラ科)の可憐な小さな紫色の花と蕾を見つけました.

キマワリ ムラサキシキブの花
キマワリ ムラサキシキブの花


満水となっているハンノキ湿地につきました.排水ますの高さを上げたため,水深が60cmを越す場所ができたため,周辺に柵が出来ていました.水面上を大きなトンボが2匹飛んでいました.ここで,女の子が宇宙人がいたと言って,木の葉の上の5mm大の2つの幼虫を持ってきました.背中に黒いギザギザのついたマントのようなものを付けた幼虫でした.黒いマント状のものを引っ張っても一部が下にくっついており,離れませんでした.後で調べて,イチモンジカメノコハムシ(一文字亀子葉虫,ハムシ科)の幼虫で,マントのようなものは脱皮殻と糞だということを教えてもらいました.不思議な形の虫で,参加者一同がびっくりしました.

  【外部リンク】イチモンジカメノコハムシ(幼虫図鑑)

ハンノキ湿地の端にハンテンボク(半纏木,モクレン科,別名:ユリノキ,英名:tulip tree)の木がありました.葉の形が半纏のような形に見えるためこの名前がついています.茎の翼葉も特徴のようです.花の形から別名や英名はついているようです.ヤマウコギ(山五加木,ウコギ科)とヒメウコギ(姫五加木,ウコギ科)も近くにありました.
2mm長くらいの非常に小さな細いシャクトリムシを見つけて,手にのせて観察しました.大きさからすると非常に早く尺取りをして進みました.人間の体温は,シャクトリムシにとって非常に高温に感じて,熱い鉄板の上にいるような感じではという感想がでました.

イチモンジカメノコハムシの幼虫 ハンテンボク
イチモンジカメノコ
ハムシの幼虫
ハンテンボク

感想会のため平和公園会館の方へ向かう途中で,道路端のハチク(淡竹,イネ科,別名:アワダケ,クレタケ)を観察しました.ハチクの筍は灰汁抜きしなくても食べられて美味だそうです.ここで,3匹のナナフシを見つけました.緑色のものと枯れ草色のものがいました.ナナフシモドキ(七節擬,ナナフシ科)との違いが話題になりました.触角の長さで見分けるという話もでましたが,ナナフシは「目」や「科」の名称で,実際の種類としてはナナフシモドキとエダナナフシ(枝七節,ナナフシ科)があるようです.ナナフシモドキは普通にナナフシと言っているもののようです.エダナナフシは触角が長いので,見分けられるそうです.
虫かごにたくさん捕った虫を入れていた男の子は,母親に家に帰る前に逃がすように説得されていました.私も子供の頃,虫カゴに一杯とってきた虫を,母親に何度も逃がすように言われたのを思い出しました.無理矢理,虫カゴをあけられて逃がされたこともありました.殺生をしてはいけないという理由でしたが,虫が嫌いであったのも理由だと思います.今回参加している,虫好きで虫の美しさを分かっている女の子が母親になったときは,きっとその子供達はのびのびと育つだとうと思いました.

ナナフシモドキ
ナナフシモドキ

感想会のために,木陰を求めて木材チップを造っている場所まで行きましたが,木材の匂いがきつくて,会館の方へ戻りました.近くのクリ(栗,ブナ科)の木が花を咲かせて白っぽく見えました.周辺の畑の端で,ミョウガ(茗荷,ショウガ科)を見つけて,根を食べるという説明をした参加者がいました.

 会館前の草地で,感想会をしました.小さな子供達が心待ちにしていたようで,座ると同時にお弁当を広げて食べ始めました.食べるのに夢中で,観察項目として何を見たかの問いに対しては,参加者からほとんど反応がありませんでした.感想としては,モンシロチョウの交尾拒否姿勢とイチモンジカメノコハムシの幼虫が印象に残ったというのが多く出ました.感想会が進むにつれて子供達は,網を持って周辺の虫捕りに飛び回っていました.周辺に咲いていたニワゼキショウ(庭石菖,アヤメ科)を集めて花束にした女の子もいました.観察会の途中で,畑跡で見つけたヒバカリ(日計,ナミヘビ科)の死骸は,ポリ袋に入れて持ってきて,骨格標本にするという報告もありました.
 小さな子供達が多く参加して,元気を大人にも分け与えてくれ,楽しい観察会になりました.


観察項目:クワゴの繭,ヤドリバエ,ヤドリバエのサナギ,ヤママユガの幼虫,シャクトリムシ,モンシロチョウ,ミノムシ,ウメモドキ,サラサウツギ,アゼムシロ,オジロアシナガゾウムシ,アキニレ,アキニレハフクロフシ,カマキリ,ナミテントウ,アカガエルのオタマジャクシ,アメンボウ,ネジキ,キマワリ,カンアオイ,ムラサキシキブ,イチモンジカメノコハムシの幼虫,ハンテンボク,ヤマウコギ,ヒメウコギ,ナナフシモドキ,ハチク,クリ,ミョウガ,ニワゼキショウ,ヒバカリ(概ね観察順)

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子

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2008-7-19 936

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