雨を心配しましたが,天気予報通りずっと曇りで,昼頃にはわずかに日も差してきました.木陰に入ると冷気が降りてきて大変気持ちの良い日になりました.新池の水面は,例年通りスイレン(睡蓮,スイレン科)に半分以上覆われてしまい,水鳥はいませんでした.数羽のムクドリ(椋鳥,ムクドリ科)がキュルキュルと鳴いて周辺の樹木を移動していました.カワセミ(翡翠,カワセミ科)が1羽,水面上を飛んだように見えましたが,鳴かなかったので確認出来ませんでした.新池周辺の街路の歩道のキンシバイ(金糸梅,オトギリソウ科)やビヨウヤナギ(美容柳,オトギリソウ科)は,既に盛りは過ぎていましたが黄色い花を一斉にさかせていました.新池の西側の桜並木の周辺では,先月から小さなピンクの花をひっそりと咲かせているアカバナユウゲショウ(赤花夕化粧,アカバナ科)が群生していました.新池周辺のセンダン(栴檀,センダン科)は,緑の葉だけで,丸い実はまだ確認できませんでした.元清風荘は,野草で覆われオオキンケイギク(大金鶏菊,キク科)やコモチマンネングサ(子持万年草,ベンケイソウ科)が道路端にあり,もう初夏の様相でした. 出発時には,10名の子供を含めて48名の参加者でした.その後も数名の参加者がありました.小さな子供の参加者が多く,活気のある観察会になりました.
集合場所で,まず先月の報告を見ました.先月,観察した蚕の原種のクワゴ(野蚕,カイコガ科)を持って帰った参加者がいました.このクワゴはサナギになり繭を造りましたが,結局ヤドリバエ(寄生蠅,ヤドリバエ科)に寄生されており,出てきたヤドリバエの成虫をシャーレに入れて持ってこられたものを観察しました.普通の蠅と変わらないように見えるという感想がでました.クワゴの終齢幼虫の表面に卵が産み付けられ,その卵が孵ってクワゴの幼虫に潜り込むということでした.クワゴがサナギになって,繭で周辺から守られており,うまい寄生であるという説明がありました.ずるいという感想もでました.アオスジアゲハ(青条揚羽,アゲハチョウ科)に寄生するアオスジヤドリバエのようにクスノキの葉に産卵して食べられるのを待つより効率的であるという話が出ました.寄生蠅のDNAを多少いじれば,エイリアンのように人間にも寄生するようになるのではという物騒な話をする参加者もいました. ゾウムシ(象虫,ゾウムシ科)を採取して研究している人が,先日子供達と一緒に平和公園でゾウムシを採取して,103番目と104番目の新種を子供達が採取して,悔しがったという報告がありました.ブタナ(豚菜,キク科)を家に持ち帰った所,家の中で時間通りに花が4日間開閉をしたという報告がありました.日光の影響はほとんど無いので体内時計を持っているのかもしれません.参加者が持ってきたものが少なかったので,9時50分には平和公園に向かって出発しました.
平和公園に入る前の歩道で,樹木から垂れ下がっている3cm長のシャクトリムシ(尺取虫,シャクガ科)を見つけて観察しました.手にのせても最初じっとしていたので,どちらが頭かを子供達に聞きました.しかし,すぐに尺取りを始めたので,どちらが頭かわかってしまいました.シャクトリムシの脚は,他の芋虫と違って数が少なく,胸脚の6本(歩脚)は同じですが,腹脚尾脚で4本(疣脚:いぼあし,ほかの芋虫は10本)で,胴体の真ん中あたりには退化して脚がないために,あの独特の胴体を持ち上げて逆U字形になり移動するようです.石垣の上のニセアカシア(針槐,マメ科)の枝にアワフキムシ(泡吹虫,アワフキムシ科)の泡がありました.
平和公園入口の駐車場横のコナラ(木楢,ブナ科)の枝についたヤママユガ(山繭蛾,ヤママユガ科)の幼虫を見に行きました.先月観察したもので,袋をかぶせて,逃げないようにして,かつ寄生バチなどに寄生されないようにしていたものです.サナギになりかけですが,まだ繭はできていませんでした.8cm長の大きさに驚きの声があがり,先月と同じようにきれいだという声もありました.背中に白い筋があり,ちょっと目には,葉と見間違う形でした.他にヤママユガの幼虫がいないか周辺を探しましたが,見つかりませんでした.
山側の農道を歩いていき,3〜4mm程度の小さな花を沢山つけているウメモドキ(梅擬,モチノキ科)を観察しました.雌木のようで,雌花だけでした.どうしてウメモドキ(梅擬)というのだろうという疑問が出されました.葉の形や枝ぶりが梅に似ているのと,小さな赤い実のなり方も梅に似ているということでした.ヤマウルシ(山漆,ウルシ科)とヌルデ(白膠木,ウルシ科)が並んであるところで,かぶれるので触らないように注意がありました.
畑の生垣のニシキギ(錦木,ニシキギ科)にミノムシ(蓑虫,ミノガ科)が2つついていました.最近はミノムシでさえ少なくなったという感想がでました.近くで,白っぽい薄紫色の細長い短冊状の八重咲きの花びらを付けたサラサウツギ(更紗空木,アジサイ科)を見つけました.ここでビニール袋に入れた2匹のオジロアシナガゾウムシ(尾白足長象虫,ゾウムシ科)が回覧されました.ほしいか聞かれた男の子は,目を輝かせてうなずいていましたが,その母親は嫌がっている様子でした.
キラニン広場から林に入る所で,2cm大の小さなカマキリ(蟷螂,カマキリ科)を見つけ,腕にはわせて観察しました.元気で楽しそうと言う感想が出ました.木の幹にいるキマワリ(木廻,ゴミムシダマシ科)も見つけて観察しました.名前の由来のようには動き回ってはおらずじっとしていました.雑木林の中のネジキ(捩木,ツツジ科)のしおれた花はまだ下を向いていました.ネジキの実は上向きになるそうです.
感想会のため平和公園会館の方へ向かう途中で,道路端のハチク(淡竹,イネ科,別名:アワダケ,クレタケ)を観察しました.ハチクの筍は灰汁抜きしなくても食べられて美味だそうです.ここで,3匹のナナフシを見つけました.緑色のものと枯れ草色のものがいました.ナナフシモドキ(七節擬,ナナフシ科)との違いが話題になりました.触角の長さで見分けるという話もでましたが,ナナフシは「目」や「科」の名称で,実際の種類としてはナナフシモドキとエダナナフシ(枝七節,ナナフシ科)があるようです.ナナフシモドキは普通にナナフシと言っているもののようです.エダナナフシは触角が長いので,見分けられるそうです.
感想会のために,木陰を求めて木材チップを造っている場所まで行きましたが,木材の匂いがきつくて,会館の方へ戻りました.近くのクリ(栗,ブナ科)の木が花を咲かせて白っぽく見えました.周辺の畑の端で,ミョウガ(茗荷,ショウガ科)を見つけて,根を食べるという説明をした参加者がいました. |
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2008年6月度の観察記録 | 2008-7-19 | 936 | |
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