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2009年 > 1月度の観察記録
1月度の観察記録
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 観察会当日の早朝には,粉雪が降っていましたが,集合時間前にやんで終日曇りでした.新池周辺の桜の蕾はまだ堅く,ムクゲ(木槿,アオイ科)やサルスベリ(百日紅,ミシハギ科)もすっかり冬景色でした.歩道のシャリンバイ(車輪梅,バラ科)は濃紺の実を付けていました.新池の土手のセンダン(栴檀,センダン科)には,しわのある1cm大のクリーム色の実だけがたくさん枝についていました.ムクドリ(椋鳥,ムクドリ科)やヒヨドリ(鵯,ヒヨドリ科)が盛んにその実を食べていました.新池の水面にはスイレン(睡蓮,スイレン科)は全くなく,広々とした水面に3羽のカイツブリ(鳰,カイツブリ科)と3羽の鴨(種別は同定できず)が来ていました.三連休の中日にも関わらず,新池の周辺をたくさんの高校生がランニングをしていました.
 集合場所の公園の地面には,粉雪がうっすらと残っていました.背の高いイチョウ(銀杏,イチョウ科)の先端に10羽を越えるヒヨドリがとまっていました.今回は,朝日新聞の記者とカメラマンが取材のため参加しました.2人を入れて参加者は,大人23名と子供2名でした.

ムクゲの実 シャリンバイの実 センダンの実

 集合場所で,まず,先月の報告を見ました.沖縄で採取した卵からかえったクロゴマダラソテツシジミ(黒斑蘇鉄蜆,シジミチョウ科)の幼虫を11頭飼育した結果,9頭は死んで,2頭がさなぎになり,その内の1頭が室内で羽化したという報告がありました.ベランダで飼っても越冬できないことが確認されました.ヤママユガ(山繭蛾または天蚕蛾,ヤママユガ科)も室内で飼うと,冬でも羽化することが他の参加者から報告がありました.関連して,餌として与えるサヤエンドウ(莢豌豆,マメ科)に付いた農薬をどうやって取るかという話題になり,一般に言われているように,3時間の水で流すというのでは不十分で,24時間水を流して農薬を取ると良いという説明がありました.
 先月焼いたバームクーヘンの年輪は少なく(厚さ約1.8mm),2時間もかけて効率が悪く,バームクーヘン造りにはもう参加しないと言っている人がいることが紹介されました.また,セキレイに関連して,キセキレイ(黄鶺鴒,セキレイ科)は水辺にいることが多く,平和公園では最近なかなか見ることができないという説明がありました.
 参加者が持ってきた,猪高緑地のカラスザンショウ(烏山椒,ミカン科)の実を皆で一粒ずつ食べました.確かに山椒の味がしましたが,まずいという人もいました.前に食べて舌がしびれたと言った人が最初にいたためではないかということになりました.最初に感想が出るとそれにつられるようです.次に,10cm長くらいのホオノキ(朴の木,モクレン科)の実を観察しました.ホオノキはよく見ますが,落ちている実は崩れていることが多く,しっかりした形の実を見る機会は少ないということで持ってこられました.
 中日本高速道路株式会社(NEXCO中日本)が,名古屋市と協力して,地域性のある木の種の発芽を1000株行うという報告がありました.そのため,今回の観察会でも地域性のある樹木の種を集めることにしました.

カラスザンショウの実 ホオノキの実

 持ち込みの観察物が2つだけでしたので,今回は9時55分に平和公園に向かって出発しました.農道から平和公園に入ってすぐのオタマジャクシ池の横で,マサキ(正木または柾,ニシキギ科)が赤と橙の特徴的な形の実をつけていました.
 オタマジャクシ池横の溝の土で,霜柱を見つけて観察しました.霜柱の長さは,1〜2cmくらいでした.どちらの方向へ霜柱は成長するかという問いに,下から上という回答がすぐにでました.土の中は,空中より温度が高く,土を持ち上げて冷やされるということです.子供たちは喜んで,霜柱を手にとっていました.昔の名古屋では霜柱は珍しくなく,私の世代は霜柱をサクサクと踏みしめながら通学した記憶があります.最近は,舗装された道が多くなり,霜柱も珍しくなったようです.関連して麦踏みの話もでました.
 オタマジャクシ池のむかえの数本のムクゲは,ある人が種から苗木をつくり植樹したという報告がありました.

マサキの実 霜柱

 少し進んで,左側の斜面に大きな窪地がありました.焼夷弾の跡だという人がいるという説明がありましたが,焼夷弾は木造家屋を燃やすのが目的で,そんなに大きな穴はあかないのではという疑問が出されました.

 これまで進入禁止であった芝生広場の通路が,両側に柵を作って通れるようになっていました.そこで,その通路を通って,芝生広場奥のクレー射撃場跡を見ながら,藪こぎを開始しました.青のビニールシートをかぶせられたクレー射撃場跡は,環境基準を超えた鉛を除去するため,土を盛ったり切り取ったりして処理の予定です.観察会で何度も斜面下りをして遊んだ場所であり,ここに入ることは今は推奨されませんが,自己責任で入る分はかまわないということでした.
 ヤマナラシ(山鳴らし,ヤナギ科)の立木を見ながら,奥に進んで,アズキナシ(小豆梨,バラ科)を見つけて,下に落ちている橙色の5mm大の丸い実を皆で集めました.わずかですが,まだ枝にも実はついていました.NEXCO中日本に渡すためには,最低500個必要ということでした.ソヨゴ(冬青,モチノキ科)の赤い実も落ちていましたが,これは拾わないように指示がありました.集めた実をコンビニ袋に入れて,40個だけ数えて,その10倍以上あるということで終了しました.
   【外部リンク】アズキナシ(神戸・六甲山系の樹木図鑑)

鉛除去が必要な元クレー射撃場 アズキナシの実

 キラニン広場に向かうときに,樹上で2羽のエナガ(柄長,エナガ科)を見ました.そろそろ営巣の準備かもしれません.キラニン広場ではハクセキレイ(白鶺鴒,セキレイ科)が1羽いました.ハクセイキレイは,駐車場のような舗装された場所が好きなようです.先月,たくさん実を取ったシャシャンボ(小小坊,ツツジ科)を,また観察しました.わずかですが,まだ実は残っていて,それを食べた参加者もいました.

 この後は,ずっと藪こぎをしながら歩きました.昨年大騒ぎになった,オオタカ(大鷹,タカ科)が営巣した谷へまず向かいました.2年以上前に「東山森づくりの会」の人たちが,陽が入るように竹を切って整備して,フユイチゴ(冬苺,バラ科)が増えた場所でした.途中で,鋭い棘を節々にたくさんつけたタラノキ(?の木,ウコギ科)の幹がすくっと数本たっていたので,素手で触ってけがをしないように注意がありました.深い谷の底は朽木などが倒れ,アズマネザサ(東根笹,イネ科)もはえ,大変荒れた様子でした.たった2年間でこれだけ荒れることに対してため息をついた参加者もいました.フユイチゴも増えていましたが,時期が多少遅く,赤いイチゴの実は多くはありませんでした.それでも,摘んで食べた人から,甘いという感想がでました.

アズマネザサの藪こぎ フユイチゴの実

 さらに谷筋を藪こぎをしました.アズマネザサが密集していて,その中にアオキ(青木,アオキ科),タラノキ,ムラサキシキブ(紫式部,クマツヅラ科)などがありました.リョウメンシダ(両面羊歯,オシダ科)やヒイラギ(柊,ヒイラギ科)の幼木もありました.元ため池だった場所で,水抜きの穴を観察しました.

アオキ リョウメンシダの表 リョウメンシダの裏 水抜き穴

 ここで,コナラ(木楢,ブナ科)の枝についた虫こぶのようなものを見つけて,細菌に感染してできるクラウンゴール(Crown Gall)であるとの説明がありました.藪こぎの途中で,葉の裏が白っぽいウラジロ(裏白,ウラジロ科)もありました.また,大きなマンネンダケ(万年茸,マンネンタケ科)を見つけて女の子が喜んで記念撮影をしました.

  【外部リンク】コナラ(ONLINE植物アルバム)

  【外部リンク】マンネンタケ(森林総合研究所九州支所)

 登りの藪こぎをして尾根の元陸軍の石柱を見てから,さらに降りの藪こぎをして,クレー射撃場跡まで戻りました.ここで,30cm大のサルノコシカケ(猿の腰掛け,サルノコシカケ科)を見つけて,皆で観察しました.

ウラジロ マンネンダケ サルノコシカケ

 感想会は,芝生広場の作業場で行いました.道を覆った落ち葉を踏んで歩いて,気持ちよかったという感想がまず出ました.麦踏みの話題で,もう若い人は麦踏みを知らないだろということになりました.カシノナガキクイムシ(樫の長木喰い虫,ナガキクイムシ科)の被害にあっているコナラが多くなっているという感想もでました.フユシャクガ(冬尺蛾,シャクガ科)の飛べない雌を見たいがどうしたらよいかという問いに対して,飛んでいる雄の周辺の枯れ葉の下をみれば比較的発見しやすいという説明がありました.なお,今回の朝日新聞の取材結果は,2月に連載される中で扱われるそうです.
 藪こぎをたくさんして,よく歩いた気持ちの良い観察会になりました.

カシノナガキクイムシの被害にあったコナラ 感想会 クロガネモチの赤い実


観察項目:カラスザンショウ,ホオノキの実,霜柱,ムクゲ,ヤマナラシ,アズキナシの実,シャシャンボ,フユイチゴ,タラノキ,ヒイラギ,アオキ,ムラサキシキブ,エナガ,リョウメンシダ,オシダ,イノデ,ウラジロ,コシダ,リュウノヒゲ,カシノナガキクイムシの被害にあったコナラ,ヤブコウジ(ジュウリョウ),センリョウ,マンリョウ,マンネンダケ,サルノコシカケ(概ね観察順)

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子

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