晴天でしたが,冷たい風が吹く小寒い日でした.それでも,風は例年の伊吹おろしのように強くはなく,よく歩いて藪こぎする観察会には問題ありませんでした.葉を落としたイチョウ(銀杏,イチョウ科),コナラ(小楢,ブナ科),アベマキ(阿部槙または?,ブナ科)などがすくっと青空を突き刺し,きりっとした感じの日でした.さざ波のたっている新池には,バン(鷭,クイナ科)(3),カイツブリ(鳰,カイツブリ科)(1),カワウ(川鵜,ウ科)(1),コサギ(小鷺,サギ科)(1)およびカルガモ(軽鴨,カモ科)(4)がきていました.また,周辺には,ツグミ(鶫,ツグミ科)(1),ムクドリ(椋鳥,ムクドリ科)(4),ジョウビタキ(尉鶲または常鶲,ツグミ科)(1,オス)も来ていました.集合場所の公園では,10数羽のスズメ(雀,スズメ科)がしきりに何かをついばんでいました.新池の土手のセンダン(栴檀,センダン科)やトウカエデ(唐楓,カエデ科)は葉や実をすっかり落として,新芽はまだ硬く冬景色でした.参加者は,出発時には子供4名を含めて30名でした.
まず,先月の報告を見ながら,前回話題になったシロフフユエダシャクガ(白斑冬枝尺蛾,シャクガ科)の羽根のない雌と片方の羽根がとれた雄を別々のシャーレに入れて持ってこられた参加者がいたので,皆で観察しました.元々は一緒の容器に入れていたそうで,2mm大の緑色の卵が1つ産み付けられていました.雌の羽根は退化してしまって,生む装置になっているということでした.昆虫は危機になるとどこででも卵を産むという話がでました. クロマダラソテツシジミ(黒斑蘇小灰蝶,シジミチョウ科)の2cm長のさなぎの抜け殻も一緒に観察しました.軽いので風で吹き飛ばされそうになりました.タイミンタチバナ(大明橘,ヤブコウジ科)の枝を自宅近くの神社から持ってこられた参加者もいました.名古屋ではめずらしい木だそうです.先日採取したアズキナシ(小豆梨,バラ科)の種は,まだNEXCO中日本に出しておらず,普通1000個の種で発芽するのは23〜24個と言われているという報告がありました.
今回は,藪こぎをしてカンアオイ(寒葵,ウマノスズクサ科)の葉と花を数えるとともに,カエルの卵を観察することにして10時前に出発しました.
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シロフフユエダシャクガの雌 |
シロフフユエダシャクガの雄 |
クロマダラソテツシジミのさなぎの抜け殻 |
タイミンタチバナ |
集合場所横の元清風荘の跡地が,バックフォーを使って整地されつつありました.多目的広場になるそうですが,今年は整地だけの予算がついたそうです.東星中学の100m走のトラックや森づくりビジターセンターなどが予定されているそうです.道路の方に出て,元清風荘の土手のハンノキ(榛の木,カバノキ科)が切られそうになって,止めたという報告がありました.名古屋市は,サクラ(桜,バラ科)は,切ると市民から苦情がくるのではじめから切らない予定だったそうです.カイズカイブキ(貝塚息吹,ヒノキ科)やピラカンサス(Pyracantha,バラ科,別名:橘擬)などはすっかり切られていました.何故か,クロガネモチ(黒鉄黐, モチノキ科)が1本移植されていました.
平和公園の駐車場横の木にアオジ(青鵐,ホオジロ科)が3羽いました.そこから平和公園に入り,まず,枯れ草で覆われた爆弾跡を見ました.進入禁止なっていた期間に,周辺の道がなくなっていて,先に進めず後戻りしました.
とんぼ池で,ニホンアカガエル(日本赤蛙,アカガエル科)の卵塊を水中に3つ見つけました.手の届くところの2つの卵塊の一部を透明な容器に採ってルーペなどで観察しました.1つの卵塊は,既に原腸胚になっていて,肛門になる白い点が卵の表面に見えました.もう1つの卵塊は,昨日生れたばかりのようで,まだ,2細胞期でした.平和公園の生き物たちにとっては,既に春が来ていて,ニホンアカガエルの後でトウキョウサンショウウオ(東京山椒魚,サンショウウオ科)とアズマヒキガエル(東蟇蛙,ヒキガエル科)が順次産卵するという説明がありました.近くの幹と枝だけのマルバヤナギ(丸葉柳,ヤナギ科)を観察して,他の木の可能性を議論している2人の男性参加者もいました.
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2細胞期のニホンアカガエルの卵 |
原腸期のニホンアカガエルの卵 |
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芝生広場から東に少し行った所で,下り斜面の藪こぎを開始しました.男の子が,アベマキの葉について落ちていた薄黄色いヤママユ(山繭,ヤママユガ科)の繭を見つけました.穴があいて中は死んでいるようでしたので,ナイフを使って繭を裂いて観察しました.中には,サナギになる前の幼虫が死んでいました.小型の寄生バチに寄生されたという推測がでました.寄生バエの場合は,繭の中にサナギ殻を残すはずで,これがないので多分寄生バチだろうということでした.ここで,アズマネザサ(東根笹,イネ科)の葉に黒い少し厚みのある多くの点がついているものを観察しました.黒い点々は菌類だという説明がありました.近くで,枯れた1本の立木にコゲラ(小啄木鳥,キツツキ科)があけた丸い穴があり,穴の深さを枯れ草の茎を差し込んで確かめた参加者がいました.虫を求めて穴をあけているということに関連して,本当かどうかは鳥に聞いて見なければわかりませんが,カシノナガキクイムシ(樫長木喰虫,ナガキクイムシ科)の幼虫はまずそうという人がいました.まだ,わずかに葉をつけたスイカズラ(吸葛,スイカズラ科)もありました.近くの木にピンクのリボンが付いており,鉛の調査点の印だという説明がありました.
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ヤママユの繭 |
寄生されて死んだヤママユの幼虫 |
ササの葉についた菌類 |
コゲラのあけた穴の深さの調査 |
さらに藪こぎの途中で,アラカシ(粗樫,ブナ科),カクレミノ(隠蓑,ウコギ科)およびセンリョウ(千両,センリョウ科)の幼木を観察しました,愛知県の普通の森では,マンリョウ(万両,ヤブコウジ科)が多いですが,平和公園はお墓に供えられたセンリョウの実をヒヨドリ(鵯,ヒヨドリ科)が運んでくるためセンリョウが多いということでした.少し離れて,5〜6齢のカクレミノもありました.サカキ(榊,ツバキ科)を見つけて,枝の先端の鎌状の芽が,供えるときに大事と言われるのは,ここに神様が宿るためという説明がありました.関連して,お通夜に線香を絶やさないのは,煙の上に仏様が宿るという話もでました.「死者が生まれ変わるまで霊魂身として香りを食べ物にしているので線香を絶やさない」という説明がWWWにありました.藪こぎの途中で,花が丁度終わったコクラン(黒蘭,ラン科)が10株くらいありました.斜面を登ってキラニン広場に着いたとき,学童保育所の人たちが,ウォーキングラリーをしていました.
キラニン広場からさらに下りの藪こぎをしてカンアオイの群生地を目指しました.途中,木の根元で枯れ葉をはいたようになって,土が見える鳥のえさ場がありました.奥の方に小さなネズミの穴のようなものもありました.男の子たちは興味津々でした.途中で,ヒイラギ(柊,ヒイラギ科)の幼木がたくさんありました.また,小さなコロニーのカンアオイもありました.ハモグリバエ(葉潜蝿,ハモグリバエ科)の幼虫が食べた跡のある葉をたくさん見つけて,皆で観察しました.これは何と問われたときに「字書き虫」と,男の子たちは即座に答えました.この後,男の子たちは幹が斜めになった木に登るのをお父さんたちに手伝ってもらっていました.男の子が木に登りたがるのは,今も昔も変わりません.
カンアオイの群生地に着き,いつものように,枯れ枝を置いて区分けして皆で葉と花の数を数えました.昨年と同じように,ヒメカンアオイ(姫寒葵,ウマノスズクサ科)の中に1株だけ大きな花と細長い葉を持つスズカカンアオイ(鈴鹿寒葵,ウマノスズクサ科)もありました.コロニーの1つは,まだ若く,花は1つしかなく,葉には模様もありませんでした.全体で,花は蕾も入れて90個で,葉は453枚でした.昨年は3月に数えて,それぞれ147個と658枚でしたが,時期が違うので,基本的にはここ数年は多くも少なくもなっていないという結論になりました.カンアオイのコロニーの中のアズマネザサ(東根笹,イネ科)とアオキ(青木,アオキ科)を抜いて,枯れ葉を薄くかぶせて観察は終わりました.近くに背の低いイボタノキ(水?の木,モクセイ科)もありました.
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ヒメカンアオイの花 |
ヒメカンアオイの花の蕾 |
イボタノキの葉 |
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結局ここで時間になってしまい,少し歩いて日差しの入る森の中で感想会をしました.コナラが青空に向かって枝を伸ばしている,気持ちのよい場所でした.周辺ではメジロ(目白,メジロ科)やシジュウカラ(四十雀,シジュウカラ科)の鳴き声が盛んにしていました.濃緑の葉をつけた背の低いモチノキ(黐,モチノキ科)もありました.柔らかそうな枯れ葉を周辺に落としているタカノツメ(鷹の爪,ウコギ科)もありました. 先月採取した谷間のフユイチゴ(冬苺,バラ科)を入れた自家製のクッキーも振る舞われました.大変おいしいクッキーでした.当日弁当の無かった私は,思わず3枚も食べてしまいました.近くの木の根元が集まって祠(ほこら)のようになっているところを指さして隠れ家を造ったという感想を言った男の子もいました.道のないところを藪こぎしてきたので,1人ではここから帰れないという参加者もいました.
春の先駆けを観察した,大変さわやかな気分の観察会になりました.藪こぎをして会館近くの道路まで出てから,一部の人たちはお墓にあるロウバイ(蝋梅,ロウバイ科)を見に行きました.
観察項目:タイミンタチバナ,シロフフユエダシャクガ(メス,オス,卵),クロマダラソテツシジミのサナギの抜け殻,ハンノキ,爆弾跡,ニホンアカガエルの卵(原腸胚,2細胞期),寄生されたヤママユの幼虫が入った繭,菌類がついたアズマネザサの葉,アラカシ,カクレミノ,センリョウ,サカキ,ヒイラギ,ヒイラギナンテン,コクラン,ハモグリバエの幼虫が食べた跡のついた葉,コゲラがあけた木の穴,鳥のえさ場,ヒメカンアオイ,スズカカンアオイ,アズマネザサ,アオキ,イボタ,モチノキ,タカノツメ(概ね観察順)
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