はだ寒い曇りから晴天になり,最後はポカポカ陽気の春の観察会になりました.平和公園入口のユキヤナギ(雪柳,バラ科)が白い小さな花を咲かせ始めていました.カラスノエンドウ(烏豌豆,マメ科))も紫色の小さな花をつけていました.スイレン(睡蓮,スイレン科)の芽が水面に出始めた新池には,オナガガモ(尾長鴨,カモ科)(4),マガモ(真鴨,カモ科)(2),ヒドリガモ(緋鳥鴨,カモ科)(6),バン(鷭,クイナ科)(3),カイツブリ(鳰,カイツブリ科)(2),カワウ(川鵜,ウ科)(1),コサギ(小鷺,サギ科)(1)およびアオサギ(青鷺,サギ科)(1)が来ていました.先月と同じ木の枝にジョウビタキ(常鶲,ツグミ科)の雄もいました.また,ハクセキレイ(白鶺鴒,セキレイ科)とセグロセキレイ(背黒鶺鴒,セキレイ科)も各1羽が水面上を飛んでいました.池の周辺の土手では8羽のムクドリ(椋鳥,ムクドリ科)と2羽のツグミ(鶫,ツグミ科)がしきりに何かをついばんでいました.
集合場所の早咲きのサクラの紅色の花芽はかなり大きくなっていました.幹が半分以上なくなっているソメイヨシノ(染井吉野,バラ科)の表面の樹皮をめくると,空隙だらけの幹に甲虫の幼虫がいました.新池の土手のトウカエデ(唐楓,カエデ科)は,まだとがった枝を出しているだけでした.参加者は,出発時に子供4名を含めて31名でした.
まず,先月の報告を見ながら,参加者が持ってこられたシュンラン(春蘭,ラン科)を観察しました.自宅の庭石に生えているものを持ってこられ,ほしい人が持ち帰ってよいということでした.まだ咲いてはいませんでしたが,大きな花芽が4つありました.
9:55に集合場所を出発しました.まず,元清風荘の東星中学よりの湧き水の水路を見ました.元清風荘の跡地全体は多目的広場になる予定ですが,この部分を湿地にして散策路として残すように要請しているという説明がありました.
トンボ池で,ニホンアカガエル(日本赤蛙,アカガエル科)とアズマヒキガエル(東蟇蛙,ヒキガエル科)の卵塊を観察しました.10個以上の卵塊のニホンアカガエルはすでに,卵塊から出て1.5cm長程のオタマジャクシの形になっていましたが,よく観察すると口もエラもなく,尾芽胚の状態でした.口もエラもないのにゼリー状の塊から出ても大丈夫かという質問がでました.アズマヒキガエルの帯状の卵塊は,昨日産卵されたもののようでした.帯状の卵塊から8cm長だけ取り出して,卵の数を数えた参加者がいて,36個という報告がありました.さらに,細い水路でこれまで見たことにないカエルの10cm大の卵塊が3つありました.非常に小さな1.5mm大の卵が各卵塊に200個程入っており,すくいとろうとしても軟らかくてうまく手のひらに乗りませんでした.多分,ヌマガエル(沼蛙,アカガエル科)の卵塊だろうということでしたが,後で調べてヌマガエルでないことは分かりましたが,正確に何かは分からず,多分外来種のウシガエル(牛蛙,アカガエル科)の卵塊だろうという連絡がありました.数年前までは,平和公園はアズマヒキガエルだけであったのに,カエルの勢力図が急激に変わっているようです.新参者の蛙は,人間が持ち込んだのではという危惧を感じました.
破れているカマキリ(蟷螂,カマキリ科)の卵鞘(らんしょう)を見つけて皆で観察しました.卵はほとんど残っておらず孵化した様子もないので,何かに食べられたという推測がでました.アリやトリなどの捕食者の候補を出し合いました.日当たりのよい場所で,ヒメオドリコソウ(姫踊子草,シゾ科)が小さなピンクの花を咲かせていました.ナナホシテントウ(七星天道虫,テントウムシ科)も近くにいました.
カラタチ(枳または唐橘,ミカン科)の方に向かって歩いているときに,ハナウメ(花梅,バラ科)のピンクの花を遠くに見ました.女の子が早速,枝をとってきたので,皆で観察しました.園芸種のウメで,花を観賞するもので,種々の種類があるようです.土手で,ノビル(野蒜,ユリ科ネギ属)を抜いて,7〜8mm径の鱗茎(球根)を多くの参加者が食べました.周辺に独特なにおいが充満しました.ノビルの葉の断面は三日月型ですが,図鑑にはネギのように中空であるとう解説がありました.目視で観察しても大半のものは,中空ではありませんでした.ルーペで観察して,一部中空になりつつあるものがあり,成長すると中空になるのだろうということになりました.また,気孔は,葉の表と裏にもあるという説明もありました.ここで,1人の元気一杯の男の子が水路にはまりズボンが濡れてしまいました.
周辺の土手で,ほとんどのオオイヌノフグリ(大犬の陰,ゴマノハグサ科)の青い花がしぼんでいました.よく探すと一部の花だけ1cm大の4枚の花弁の青い花を咲かせていました.図鑑には,朝に開花して昼にはしぼむ一日花という説明がありました.近くの切株で,年輪の中心が2つあるものを見つけて観察しました.成長点が2つあり,枝分かれの部分を切ったのだろうということになりました.近くのコナラ(木楢,ブナ科)の枝に,たくさんのクラウンゴール(ビールス性の虫こぶ)がついていました.
土手のカラタチを観察しました.カラタチの特徴であるとがった棘は,茎(枝)と葉のどちらが変化したものかという問いに,葉だという回答がでました.先端が茶色の棘の付け根には新芽がすべてについていました.ここで,枯れたシュロ(棕櫚,ヤシ科)の花梗中を,ビーティングネットの上で分解して,シュロゾウムシ(棕櫚象虫,ゾウムシ科)を観察しました.確かにゾウムシの特徴である長い鼻がありましたが,全体の形は外来種のゾウムシに似ていると言う参加者がいました.
最後に,さらに東に行き,湧き水を見にいきました.雨が降った後だけ水が湧き出る60cm大の窪地でした.飲み水として十分な水質を持っているという説明がありました.この地域の地下水は鉄分を含んでいるので赤くなりますが,この湧き水は雨水がしみ出しているので透明でした.昔は,降雨の後だけでなく常に湧き水がでていたそうです. 文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子 |
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観察記録200903
2009年3月の観察記録です。
| 2009-4-18 | 703 | |
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